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第5章 意外なスキル

29話 シャーロット完治する

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 これからの事を聞き、サキ達12人は精神を回復する為に医者に通いだした。そして、シャーロットはこの屋敷にお客さんとしてもてなすつもりだったが、それでは申し訳ないとシャーロットが申し出て、家の雑用やアヤの手伝いとして家の事をやることになった。
 しかし、持病があるので無理は厳禁とし、疲れてくると部屋で休むかたちをとった。

 シャーロットはここの生活に驚きを隠せなかった。全員が奴隷というのに貴族より良い生活が送れていた事だ。1日3食の食事に暖かいベットで睡眠をとり、仕事は実働8時間であり聖の日は完全休日(職種によっては交代制で週に一回休日)でお小遣いも与えられていた。
 その小遣いで、自分の好きなものを購入でき、衣服まで支給されるのである。最後に驚いたのが1日一回必ずお風呂に入れる事だ。

「こ、こんな生活貴族以上の生活じゃない……」

「ご主人様は本当にお優しい方ですからね」

「それにこのシャンプーって何よ……」

「シャーロットちゃんこっちにいらっしゃい。わたしが髪を洗ってあげるわ」

 シャーロットはここの生活を満喫していた。周りにいるのは奴隷とは思えなかった。それほどまでに清潔で全員が美しい人間ばかりだからだ。

「これなら、お姉ちゃんもすぐに回復できそうね」

「当たり前じゃない。サキちゃんもすぐにみんなと一緒に働けるようになるわ。ご主人様に任せておけば心配はいらないわ」

「マインさん、ヒロトシ様の事を尊敬し信頼なさっているのね」

「シャーロットちゃん、わたし達にさん付けはいらないですよ」

「でも……ここにいる人たちは奴隷とは違うよ……ヒロトシ様の言っていたことがよく分かる……ヒロトシ様が貴方達を奴隷として扱っていないのに、あたしが貴方達を奴隷として扱ってはいけないわ」

「シャーロットちゃん……」

 マインは、シャーロットの言葉に嬉しくなって、シャーロットの背中を優しく洗っていた。



 そして、ヒロトシは4日の遅れを取り戻すように研磨作業にまい進した。

 ヒロトシは、研磨を急いでやり始め、急ぎの用が無くなり通常運転に戻ったのはそれから1週間後だった。まず、ヒロトシがやり始めたのは、転移マットの設置だった。パルランの町にある元サキの家に設置する為だ。ここに転移マットを設置すれば、いつでも安価で赤豆と胡椒が手に入るからだ。

 そして、転移マットが完成したら、すぐにシュガー村から魔の森に入った。そう、シャーロットの万能薬の素材の採取である。

「ヒロトシ!何をしている?」

「ビアンカは、今日はサンライトは休みか?」

「うん。最近はだいぶん店に来る人間と仲良くなれた」

「そっかそっか。そいつは良かったな」

 ビアンカは、最近ドラゴンの姿ではなく人間の姿でウェイトレスをしていた。その為、冒険者達から人気急上昇となっていた。店長のリサを追い抜き、ビアンカを目当てに来る男性客が増えていたのだ。

「最近冒険者が、色々プレゼントをくれるんだ。この光るのも綺麗でしょ」

 ビアンカは、冒険者からもらったイヤリングを嬉しそうに見せてきた。さすがはドラゴンである。宝石やお宝が大好きなようで目を輝かせていた。

「ったく、あいつ等は……リサやマイン達に脈が無いと見るや、今度はビアンカに標的を絞ってくるとはな」

「ふふっ、ヒロトシ。妬いているのか?」

「なっ!ビアンカそんな事いつの間に覚えたんだ?」

「あたしの気になる人間はヒロトシだけだよ。安心して!あいつ等からは物を貰えるから笑顔でいるだけ」

「ったく、末恐ろしいとはこのことだな……あんまり無茶な事を要求はするなよ」

「あたしは何も言わない!あいつ等が勝手にくれるだけだよ。食事に誘ってくるけど、優しく断っているがそれでも物をくれるんだ」

「キャバ嬢か……」

 ヒロトシは、ビアンカの説明に苦笑をすると、ビアンカも笑っていた。

「そんな事はどうでもいいけど、ヒロトシ何をしていたんだ?」

「又、魔の森に入ろうと思ってな。その準備だな」

「なにをするんだ?」

「この間、生産ギルドに行ったんだが、エリクサーがやっぱり手に入りそうになくてな」

「そうなのか?」

「やっぱり貴族様から人気の薬だからな。数が少ないうえに人気だから、オークションへの出品は無理なようだ」

「なるほど……」

「だから、シャーロットの薬は万能薬にしようと思ってな。大魔苔とマンドラゴラを採取して来ようと思うんだ」

「マンドラゴラの採取は大変だよ」

「そうでもないさ」

「抜くときに呪いがかかるんだよ。叫び声を聞いたらダメなんだよ」

「そんな事は知っているよ」

「だったら……」

「だけど、それも魔法で解決だよ」

「えっ?まさか……ヒロトシあの魔法が使えるのか?」

「サイレントだろ?使えるよ」

「それなら大丈夫だな」

 サイレントとは、風属性3レベル魔法で使うと音が聞こえなくなる魔法だ。これによりマンドラゴラを採取するときの絶叫音は聞こえなくなり解決する。

「まあ、後は見つけるだけだ」

「ホント、ヒロトシは万能だな」

「まあ、それほどでもあるけど。あははははは」

「そこは遠慮気味に言った方がいいよ」

「ホント、ビアンカは色んな知識をつけたな」

「当然だよ!あたしも竜水晶で勉強をしているんだよ」

「うんうん。偉い偉い」

「あ~~~~~!又子供あつかいして」

「いやいや、そんな事はないぞ。本当に感心をしているんだ。最初、人間社会に溶け込む事が出来るかと思っていたが、それならもう大丈夫だなって」

「そう?それならいいんだけど……」

「そりゃそうさ。最初は人前で裸になっても気にしなかったんだからな」

「いやぁ~~~それは言わないでよ。服が本当に嫌だったんだからさ」

「ごわごわが嫌だったっけ?だからって裸の方がいいって言ってたぐらい人間社会の事が分からなかったんだから、それから考えれば感心するのは当たり前じゃないか」

「意地悪っ!」

「痛っ!」

 ビアンカは、ヒロトシの二の腕をつねって舌を出した。そして、部屋を出ていくのだった。ビアンカのその行動を見て計算なのか天然でやっているのか、ヒロトシは分からなくなったのと同時に、その小悪魔的な魅力に冒険者達はやられたんだなと思った。

「冒険者達よ。南無ぅ……」

 ヒロトシは、一人で手を合わせた。



 そして、ヒロトシは早速魔の森に行き、薬草をあっという間に集めた。それを生産ギルドに持っていき、万能薬を作る依頼を出したのだった。

「ヒロトシ様いらっしゃいませ。今日は何の用ですか?」

「ああ。万能薬を作ってほしくてな」

「はっ?万能薬ですか……」

「ああ。エリクサーが手に入りそうにないだろ?だから、万能薬だ」

「ちょっと待ってください」

「なんでだ?生産ギルドにお抱えの薬師がいるだろ?」

「それはそうですが、薬草はどうするのですか?エリクサーと同じく万能薬だって、素材が手に入らないので有名な薬ですよ」

「それなら大丈夫だよ」

「何でですか?魔緑草は普通にありますが、大魔苔は?それに、マンドラゴラなんか年に一本持ち込まれるかどうかの素材なんですよ?」

「俺を誰だと思っている。用意しているに決まっているだろ?」

「はぁあ?用意している?マンドラゴラを?」

 その声に、生産ギルドのホールは騒めき立った。

「お、おい……嘘だろ?」
「マンドラゴラを用意したと言ったよな?」
「いや、いくら何でもヒロトシ様だと言っても、あのマンドラゴラだぞ?」
「そうだよな?違う素材じゃないのか?」

 ヒロトシは、素材のマンドラゴラと大魔苔と魔緑草をカウンターに置いた。

「これは!本当に全部そろっているじゃないですか?」

「だから言ったじゃないか?これで依頼を請け負ってほしい」

「わ、わかりました!」

 新人受付嬢は、ヒロトシの依頼をギルドで請けおった。万能薬は、薬学のスキルが4レベルないと製作できない薬だ。その為、素材を用意しても高価な値段となる。
 ヒロトシは詐欺にあわない様に、生産ギルドお抱えの薬師に依頼を出す事にしたのだ。タダでさえ高価な薬でギルドのお抱えの薬師となると、ギルドも中間マージンを取るため割高になるがそれでも構わなかった。

 1週間後、ヒロトシはギルドから万能薬を作ってもらい、確認するとその万能薬は最高級品とあり、どんな病気も治療可能と鑑定が出ていた。

「確かに最高級品だ。ありがとう」

「こちらこそありがとうございます。又のご利用お待ちしています」

 ヒロトシは、万能薬をインベントリに収納し屋敷へと帰った。そして、その万能薬をシャーロットに渡した。

「ほ、本当に万能薬を手に入れたのですか?」

「約束したじゃないか?必ず病気を治してやるって」

「ですが、こんな高級な薬……」

 万能薬を製作してもらうのに300万ゴールドかかっていた。本来ならマンドラゴラ1本200万、大魔苔10g100万かかるのだ。つまり合計600万ゴールドかかるような代物である。

「飲まないと言うのは無しだからな。これはシャーロット、君を治療する為に持ってきたものだからな」

「分かりました。ヒロトシ様の厚意を素直に受け取らせていただきます」

「ああ。それでいい。これでサキも安心できるだろ?」

「は、はい……はい……本当にありがとうございます」

 サキもジュリも涙を流し感謝をしていた。そして、シャーロットはヒロトシの目の前で万能薬を飲むと、シャーロットの顔色は赤みをさし、健康そのものとなったのだ。

「か、体が軽い!」

「治ったようだね」

 すると、サキとジュリはシャーロットに抱きついて、病気が治ったのが分かり人目も気にせず大泣きしていた。シャーロットも又、今まで二人の姉にこんなにも心配をかけていたのだと思い感謝をした。


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