191 / 347
第5章 意外なスキル
28話 これからの事
しおりを挟む
ヒロトシは、パルランの町でサキの家の手続きを済ませた。サキが生きていたと言う事でシャーロットが相続したいたのだが、年間の維持費が払えなくなるためだ。
「ヒロトシ様、本当にありがとうございます。これであの家は売らずにすみます」
この家の年間費は、ヒロトシのギルドカードから自動的に引き落とされる事になるので、いちいちパルランの町に来なくてもいいのだ。
「さあ、一日無駄にしたが手続きも済んだし、ミトンの町へ帰るぞ」
「「「「「はい!」」」」」
ヒロトシはまだ気づいていなかった。このシャーロットの事でこの先新たな問題が発生することに。
そして、ヒロトシはトラックを家の前に出すと、当然シャーロットは目を見開き驚いた?
「こ、これは何ですか?」
「まあ、馬車の代わりだな」
すると、カノン達はそそくさと後ろに乗り込もうとした。
「おい!お前達何をシャーロットさんを助手席に座らせようとしている」
「「「「「い、いや……それは……」」」」」
「シャーロットさんはお客様として扱え!行きは急いでいたから助手席には座らせなかったが、帰りは誰かがこっちに座れ!」
「だ、だけど……」
「なんだ?カノン。行きは、誰かが助手席に座るのが当たり前だと言っていたじゃないか?」
「い、いえ……それは……」
「ヒロトシ様?どうかしたのですか?」
「いや、シャーロットさんはお客様だ。こっちの後ろに乗ってくれたらいいよ。ソファーもあるしゆっくりできるから。まあ、運転し出したら俺の隣の奴がうるさいとは思うが気にしないでくれたらいいよ」
「わ、分かりました……」
その言葉にカノンは呆気にとられ言葉が上ずった。
「ご、ご主人様?……う、嘘ですよね?」
「お前達は、日頃自分達は奴隷だとうるさいのに、自分の都合が悪いとしれっと擦り付けようとするのが気に入らない。今回はお前達は変わりばんこで助手席に座れ!」
「「「「「そ、そんな……」」」」」
「うるさい!今回はお前達に罰を与えるから反論は許さん!」
この時シアンだけはニコニコしていた。シアンは、ヒロトシとしゃべりたいので助手席を克服した人間だからだ。
「あたしはご主人様と話したいから助手席の方がいいからよかった」
「「「「「あんた狡いわよ!」」」」」
「悔しかったら、あたしみたいに克服したらいいじゃない!」
「「「「「むぐぐぐぐ!」」」」」
カノン達は、シアンの言い方に何も言い返す事が出来ずにいた。
「ああ!シアン。お前は助手席には座らせないからな。そっちの方が罰になるだろ?」
「ええええええ!そんな!」
それを聞いたカノン達はシアンを笑ったのだった。その様子を見て、シャーロットは主人と奴隷の関係じゃないと思ったのだ。罰と言われていても、奴隷達に悲壮感がなくみんなが信頼感のある感じだった。それを見ていたシャーロットはクスクス笑い笑顔となっていた。
「シャーロットさん。どうかしたのか?」
「いえ……今の雰囲気を見て、ヒロトシ様が奴隷をどのように扱っているのがよくわかったような感じがします」
「えっ?いや、罰というのはちょっと違ってだな……」
「分かっています。この方達には悲壮感が無いし、ヒロトシ様を信頼しているというか、信じているのが分かりました。多分、お姉ちゃんも大事にされていると思います」
「シャーロットさんに、そう思って貰えてよかったよ」
「ああ、それとヒロトシ様?」
「なんだ?」
「あたしの事はさん付けはしなくてもいいです。シャーロットと、呼び捨てにしてもらえると嬉しいです」
「いやいや、知り合ってまだ1日だよ。いくら年下とはいえ礼儀はわきまえないとな」
「あたしがいいと言っているんだからそうお呼びください。それに、これからあたしは姉共々、あなたに援助して貰えないと生活もできないんですから」
ヒロトシはシャーロットを見て感心した。年齢はまだ成人前の13歳だというのにしっかりしていたからだ。地球では中学生ぐらいなのに、この世界の子供は本当にしっかりしているのである。
ヒロトシにとったら驚く事だが、この世界の人間は10歳から働いているので当たり前と言えば当たり前なのだ。
あと2年もすれば成人として認められ、早い子では結婚もする人もいるので、そんな驚くような事でもなかった。
そして、シャーロットはトラックの荷台の方に乗り、トラックのスピードに目を見開き驚いた。
「なんですの?この速い乗り物は?」
「シャーロットさん凄いでしょ?馬車なんかじゃ比べ物にならないから、ミトンの町までは今日中に着く事も可能なんですよ」
「本当ですか?」
後ろに乗っていたミランダが、シャーロットに自分の事の様に自慢げに話していたのが、助手席に乗っていたカノンの耳に入った。
「ちょっと!そんな事言わないでください!これ以上スピードを出されては……いやぁ~~~~~~~!ご主人様もっとスピードを落してぇ~~~~~!」
カノンの叫び声が、パルランの町からドップラー効果の様に消えていくのだった。
そして、三日をかけてミトンの町に到着したのだった。
「旦那さま。おかえりなさいませ」
「セバスただいま。何か大変な事はあったか?」
「いえ。なにもございません」
「そうか。それならよかった。そしてサキとジュリはどうだ?」
ヒロトシがそう言うと、サキが家から飛び出してきていた。
「シャーロット!」
「お姉ちゃん!」
二人は感動の再会を果たしたのだった。シャーロットは必ず生きていると信じていたので本当に嬉しかった。サキはもう2度と会えないと思っていたので涙でぐちゃぐちゃになっていた。その様子を側でジュリが微笑んでいたのは印象的だった。そして、落ち着いた3人は改めてヒロトシにお礼を言った。
「「ご主人様、本当にありがとうございます」」
「いやいや、間に合ってよかったよ」
「間に合ってとはどういう事ですか?」
「ヒロトシ様!」
その言葉にシャーロットは焦って大きな声を出した。
「まあ、そのことは家の中で説明するよ」
ヒロトシは運転で疲れていたこともあって、とりあえず屋敷の中で休憩したかった。
「セバス、悪いが疲れたよ。お茶を淹れてくれないか?」
「分かりました。シャーロットとサキとジュリの分もよろしく頼むよ」
「シャーロットたちは一緒に来てくれ」
そして、ヒロトシに付いて一緒に部屋に入ってソファーでくつろいだ。
「さてと、これからの事なんだがいいか?」
「「「はい」」」
「サキとジュリの二人は、立場上俺の奴隷だ。精神的に治るのは数年後になるだろう。これは君達と一緒に救いだされた10人も違いはあろうが一緒だと思う」
「「……」」
「あ、あの!」
「サキ。まあ、まずは聞いてくれ」
「は、はい……」
「俺は君達を役に立たないと言って、奴隷商に売ったりはしないから安心してくれ」
「「えっ……」」
「だから、数年間治療に専念をしてほしいんだ。医者には通って貰い、その治療費は俺が出すし、その間の衣食住も保証しよう」
「「「ほんとうですか?」」」
「ああ。嘘は言わない。しかし、治った時にはサンライトでちゃんと働いてもらうのが条件だ。いいかな?」
「「は、はい……はい……」」
サキとジュリは、もう冒険者として働けないだろうと自分達でも思っていた。その為、あのような人気店で働けることを光栄に思っていた。店で働く事でヒロトシの役に立って見せると瞳に涙を溜めた。
「そして、シャーロットの事なんだが、いずれ病気が完治した場合ここに残るか?それともパルランの町に帰省するか?自分で決めてくれたらいいよ。病気が完治するまで面倒は見るからさ」
「ちょ、ちょっと待ってください!シャーロットを一人で、パルランに帰すってどういう事ですか?」
サキがその説明に吠えたのだった。それには、ヒロトシはびっくりして目を見開いた。
「何でサキがそんなに怒るんだ?」
「なんでって、シャーロットは持病があって、一人で生活が出来るとは!」
「待て待て!ちゃんと俺の説明を聞いていたのか?俺はシャーロットの病気が完治したらと言ったじゃないか?」
「それがおかしいと言っているのです。シャーロットの病気は、難病で治る事が無いと言われているんですよ?」
「いやいや……魔力欠乏症なんだろ?かかりつけ医がそう言っていたぞ?」
「だからじゃないですか。魔緑草を使ったポーションか丸薬で補うしかないんですよ。この病気はそうやって付き合っていくしか……」
サキのその説明に、シャーロットは自分が如何に迷惑をかけていたのがわかり、下を向きうつむいて落ち込んでいた。
「それは分かるよ?だけど、治った場合シャーロットは奴隷じゃないんだ。自由に行動も出来るし、自分の力で生きていけるんだよ?」
「それは治った場合の事ですよね?」
「ああ、そうだよ。魔力欠乏症が、何で治らないって決めつけるんだ?」
「そうはいっても、この病気を治そうと思えば万能薬がいるはずです。もしくは、エリクサーならどんな病気も治す事が出来るでしょうが、そんな薬をどうやって手に入れるのですか?」
「お前はここにきてまだ日が浅いんだ。わからないかもしれないが、俺はオークションに宝石や鏡台を出品しているんだぞ?手に入るかもしれないじゃないか?」
「まさか、そんな高価な薬をシャーロットにお使い下さるのですか?」
「そうじゃないと治らないんだろ?だったら手に入れれば使用するに決まっているだろ?」
「そんな事をすれば、シャーロットにいくらの借金が出来ると思うのですか?とてもじゃないけど、一人で返せるわけが……」
「はぁあ?何でシャーロットが借金を負う事になるんだよ?俺が購入するって言ってるじゃないか」
「じゃあ……ご主人様は、エリクサーをタダでシャーロットに?」
「当たり前じゃないか。お前の妹なんだろ?幸せになってほしくないのか?」
ヒロトシがそう言うと、サキは瞳から涙が止めどなく流れて、手を口にあてて嗚咽をもらすほど感動していた。そして、シャーロットも又嘘のような話でポカンと呆けていた。
「なあシャーロット?お前はどうしたい?パルランの町に帰りたいと言うのならあの家はお前に返そう。それまでは俺が管理費を全額だすし何も心配はいらないよ」
「本当にそんな事をしてもらえるのですか?」
「ああ。乗り掛かった舟だ。最後まで面倒を見させてもらうよ」
「だったら、あたしはこの病気が治ったら考えがあります」
「ほうほう!それはなんだ?出来る事なら協力してやるぞ」
「本当によろしいのですか?」
「ああ!大人を頼りな。出来る事なら何でもしてやるよ」
「言質を取りましたよ。だったら、早くこの病気を治してください。治ったらその願いを聞いてもらいます」
「何で今言わないんだ?」
「あたしにも覚悟という物があります。今は時間が欲しいとだけ……」
「まあ、一人で生きていくのは覚悟がいるもんな。わかったよ。なるべく早く魔力欠病症を治してあげるよ」
ヒロトシは、エリクサーが手に入らなくとも万能薬は作れると思っていた。レアな薬草だが、ヒロトシには魔の森を捜索できる強みがあったからだ。万能薬を作るには、魔緑草と大魔苔それにマンドラゴラが必要と知っていた。
この大魔苔とマンドラゴラがなかなか見つからないが、魔の森の奥地には普通に採取できる事を知っていた。この素材を薬師に持っていけば万能薬を作ってくれるのは分かっていたのだ。
「まあ、なるべく早く薬を調達するから楽しみになってな」
「はい!ヒロトシ様」
そういって、シャーロットはヒロトシに不穏な笑顔を送ったのだった。ヒロトシは、その笑顔に少し引っかかったが笑顔で返した。
「ヒロトシ様、本当にありがとうございます。これであの家は売らずにすみます」
この家の年間費は、ヒロトシのギルドカードから自動的に引き落とされる事になるので、いちいちパルランの町に来なくてもいいのだ。
「さあ、一日無駄にしたが手続きも済んだし、ミトンの町へ帰るぞ」
「「「「「はい!」」」」」
ヒロトシはまだ気づいていなかった。このシャーロットの事でこの先新たな問題が発生することに。
そして、ヒロトシはトラックを家の前に出すと、当然シャーロットは目を見開き驚いた?
「こ、これは何ですか?」
「まあ、馬車の代わりだな」
すると、カノン達はそそくさと後ろに乗り込もうとした。
「おい!お前達何をシャーロットさんを助手席に座らせようとしている」
「「「「「い、いや……それは……」」」」」
「シャーロットさんはお客様として扱え!行きは急いでいたから助手席には座らせなかったが、帰りは誰かがこっちに座れ!」
「だ、だけど……」
「なんだ?カノン。行きは、誰かが助手席に座るのが当たり前だと言っていたじゃないか?」
「い、いえ……それは……」
「ヒロトシ様?どうかしたのですか?」
「いや、シャーロットさんはお客様だ。こっちの後ろに乗ってくれたらいいよ。ソファーもあるしゆっくりできるから。まあ、運転し出したら俺の隣の奴がうるさいとは思うが気にしないでくれたらいいよ」
「わ、分かりました……」
その言葉にカノンは呆気にとられ言葉が上ずった。
「ご、ご主人様?……う、嘘ですよね?」
「お前達は、日頃自分達は奴隷だとうるさいのに、自分の都合が悪いとしれっと擦り付けようとするのが気に入らない。今回はお前達は変わりばんこで助手席に座れ!」
「「「「「そ、そんな……」」」」」
「うるさい!今回はお前達に罰を与えるから反論は許さん!」
この時シアンだけはニコニコしていた。シアンは、ヒロトシとしゃべりたいので助手席を克服した人間だからだ。
「あたしはご主人様と話したいから助手席の方がいいからよかった」
「「「「「あんた狡いわよ!」」」」」
「悔しかったら、あたしみたいに克服したらいいじゃない!」
「「「「「むぐぐぐぐ!」」」」」
カノン達は、シアンの言い方に何も言い返す事が出来ずにいた。
「ああ!シアン。お前は助手席には座らせないからな。そっちの方が罰になるだろ?」
「ええええええ!そんな!」
それを聞いたカノン達はシアンを笑ったのだった。その様子を見て、シャーロットは主人と奴隷の関係じゃないと思ったのだ。罰と言われていても、奴隷達に悲壮感がなくみんなが信頼感のある感じだった。それを見ていたシャーロットはクスクス笑い笑顔となっていた。
「シャーロットさん。どうかしたのか?」
「いえ……今の雰囲気を見て、ヒロトシ様が奴隷をどのように扱っているのがよくわかったような感じがします」
「えっ?いや、罰というのはちょっと違ってだな……」
「分かっています。この方達には悲壮感が無いし、ヒロトシ様を信頼しているというか、信じているのが分かりました。多分、お姉ちゃんも大事にされていると思います」
「シャーロットさんに、そう思って貰えてよかったよ」
「ああ、それとヒロトシ様?」
「なんだ?」
「あたしの事はさん付けはしなくてもいいです。シャーロットと、呼び捨てにしてもらえると嬉しいです」
「いやいや、知り合ってまだ1日だよ。いくら年下とはいえ礼儀はわきまえないとな」
「あたしがいいと言っているんだからそうお呼びください。それに、これからあたしは姉共々、あなたに援助して貰えないと生活もできないんですから」
ヒロトシはシャーロットを見て感心した。年齢はまだ成人前の13歳だというのにしっかりしていたからだ。地球では中学生ぐらいなのに、この世界の子供は本当にしっかりしているのである。
ヒロトシにとったら驚く事だが、この世界の人間は10歳から働いているので当たり前と言えば当たり前なのだ。
あと2年もすれば成人として認められ、早い子では結婚もする人もいるので、そんな驚くような事でもなかった。
そして、シャーロットはトラックの荷台の方に乗り、トラックのスピードに目を見開き驚いた。
「なんですの?この速い乗り物は?」
「シャーロットさん凄いでしょ?馬車なんかじゃ比べ物にならないから、ミトンの町までは今日中に着く事も可能なんですよ」
「本当ですか?」
後ろに乗っていたミランダが、シャーロットに自分の事の様に自慢げに話していたのが、助手席に乗っていたカノンの耳に入った。
「ちょっと!そんな事言わないでください!これ以上スピードを出されては……いやぁ~~~~~~~!ご主人様もっとスピードを落してぇ~~~~~!」
カノンの叫び声が、パルランの町からドップラー効果の様に消えていくのだった。
そして、三日をかけてミトンの町に到着したのだった。
「旦那さま。おかえりなさいませ」
「セバスただいま。何か大変な事はあったか?」
「いえ。なにもございません」
「そうか。それならよかった。そしてサキとジュリはどうだ?」
ヒロトシがそう言うと、サキが家から飛び出してきていた。
「シャーロット!」
「お姉ちゃん!」
二人は感動の再会を果たしたのだった。シャーロットは必ず生きていると信じていたので本当に嬉しかった。サキはもう2度と会えないと思っていたので涙でぐちゃぐちゃになっていた。その様子を側でジュリが微笑んでいたのは印象的だった。そして、落ち着いた3人は改めてヒロトシにお礼を言った。
「「ご主人様、本当にありがとうございます」」
「いやいや、間に合ってよかったよ」
「間に合ってとはどういう事ですか?」
「ヒロトシ様!」
その言葉にシャーロットは焦って大きな声を出した。
「まあ、そのことは家の中で説明するよ」
ヒロトシは運転で疲れていたこともあって、とりあえず屋敷の中で休憩したかった。
「セバス、悪いが疲れたよ。お茶を淹れてくれないか?」
「分かりました。シャーロットとサキとジュリの分もよろしく頼むよ」
「シャーロットたちは一緒に来てくれ」
そして、ヒロトシに付いて一緒に部屋に入ってソファーでくつろいだ。
「さてと、これからの事なんだがいいか?」
「「「はい」」」
「サキとジュリの二人は、立場上俺の奴隷だ。精神的に治るのは数年後になるだろう。これは君達と一緒に救いだされた10人も違いはあろうが一緒だと思う」
「「……」」
「あ、あの!」
「サキ。まあ、まずは聞いてくれ」
「は、はい……」
「俺は君達を役に立たないと言って、奴隷商に売ったりはしないから安心してくれ」
「「えっ……」」
「だから、数年間治療に専念をしてほしいんだ。医者には通って貰い、その治療費は俺が出すし、その間の衣食住も保証しよう」
「「「ほんとうですか?」」」
「ああ。嘘は言わない。しかし、治った時にはサンライトでちゃんと働いてもらうのが条件だ。いいかな?」
「「は、はい……はい……」」
サキとジュリは、もう冒険者として働けないだろうと自分達でも思っていた。その為、あのような人気店で働けることを光栄に思っていた。店で働く事でヒロトシの役に立って見せると瞳に涙を溜めた。
「そして、シャーロットの事なんだが、いずれ病気が完治した場合ここに残るか?それともパルランの町に帰省するか?自分で決めてくれたらいいよ。病気が完治するまで面倒は見るからさ」
「ちょ、ちょっと待ってください!シャーロットを一人で、パルランに帰すってどういう事ですか?」
サキがその説明に吠えたのだった。それには、ヒロトシはびっくりして目を見開いた。
「何でサキがそんなに怒るんだ?」
「なんでって、シャーロットは持病があって、一人で生活が出来るとは!」
「待て待て!ちゃんと俺の説明を聞いていたのか?俺はシャーロットの病気が完治したらと言ったじゃないか?」
「それがおかしいと言っているのです。シャーロットの病気は、難病で治る事が無いと言われているんですよ?」
「いやいや……魔力欠乏症なんだろ?かかりつけ医がそう言っていたぞ?」
「だからじゃないですか。魔緑草を使ったポーションか丸薬で補うしかないんですよ。この病気はそうやって付き合っていくしか……」
サキのその説明に、シャーロットは自分が如何に迷惑をかけていたのがわかり、下を向きうつむいて落ち込んでいた。
「それは分かるよ?だけど、治った場合シャーロットは奴隷じゃないんだ。自由に行動も出来るし、自分の力で生きていけるんだよ?」
「それは治った場合の事ですよね?」
「ああ、そうだよ。魔力欠乏症が、何で治らないって決めつけるんだ?」
「そうはいっても、この病気を治そうと思えば万能薬がいるはずです。もしくは、エリクサーならどんな病気も治す事が出来るでしょうが、そんな薬をどうやって手に入れるのですか?」
「お前はここにきてまだ日が浅いんだ。わからないかもしれないが、俺はオークションに宝石や鏡台を出品しているんだぞ?手に入るかもしれないじゃないか?」
「まさか、そんな高価な薬をシャーロットにお使い下さるのですか?」
「そうじゃないと治らないんだろ?だったら手に入れれば使用するに決まっているだろ?」
「そんな事をすれば、シャーロットにいくらの借金が出来ると思うのですか?とてもじゃないけど、一人で返せるわけが……」
「はぁあ?何でシャーロットが借金を負う事になるんだよ?俺が購入するって言ってるじゃないか」
「じゃあ……ご主人様は、エリクサーをタダでシャーロットに?」
「当たり前じゃないか。お前の妹なんだろ?幸せになってほしくないのか?」
ヒロトシがそう言うと、サキは瞳から涙が止めどなく流れて、手を口にあてて嗚咽をもらすほど感動していた。そして、シャーロットも又嘘のような話でポカンと呆けていた。
「なあシャーロット?お前はどうしたい?パルランの町に帰りたいと言うのならあの家はお前に返そう。それまでは俺が管理費を全額だすし何も心配はいらないよ」
「本当にそんな事をしてもらえるのですか?」
「ああ。乗り掛かった舟だ。最後まで面倒を見させてもらうよ」
「だったら、あたしはこの病気が治ったら考えがあります」
「ほうほう!それはなんだ?出来る事なら協力してやるぞ」
「本当によろしいのですか?」
「ああ!大人を頼りな。出来る事なら何でもしてやるよ」
「言質を取りましたよ。だったら、早くこの病気を治してください。治ったらその願いを聞いてもらいます」
「何で今言わないんだ?」
「あたしにも覚悟という物があります。今は時間が欲しいとだけ……」
「まあ、一人で生きていくのは覚悟がいるもんな。わかったよ。なるべく早く魔力欠病症を治してあげるよ」
ヒロトシは、エリクサーが手に入らなくとも万能薬は作れると思っていた。レアな薬草だが、ヒロトシには魔の森を捜索できる強みがあったからだ。万能薬を作るには、魔緑草と大魔苔それにマンドラゴラが必要と知っていた。
この大魔苔とマンドラゴラがなかなか見つからないが、魔の森の奥地には普通に採取できる事を知っていた。この素材を薬師に持っていけば万能薬を作ってくれるのは分かっていたのだ。
「まあ、なるべく早く薬を調達するから楽しみになってな」
「はい!ヒロトシ様」
そういって、シャーロットはヒロトシに不穏な笑顔を送ったのだった。ヒロトシは、その笑顔に少し引っかかったが笑顔で返した。
0
お気に入りに追加
425
あなたにおすすめの小説
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。
本条蒼依
ファンタジー
山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、
残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして
遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。
そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を
拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、
町から逃げ出すところから始まる。
【完結】悪役だった令嬢の美味しい日記
蕪 リタ
ファンタジー
前世の妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生した主人公、実は悪役令嬢でした・・・・・・。え?そうなの?それなら破滅は避けたい!でも乙女ゲームなんてしたことない!妹には「悪役令嬢可愛い!!」と永遠聞かされただけ・・・・・・困った・・・・・・。
どれがフラグかなんてわかんないし、無視してもいいかなーって頭の片隅に仕舞い込み、あぁポテサラが食べたい・・・・・・と思考はどんどん食べ物へ。恋しい食べ物達を作っては食べ、作ってはあげて・・・・・・。あれ?いつのまにか、ヒロインともお友達になっちゃった。攻略対象達も設定とはなんだか違う?とヒロイン談。
なんだかんだで生きていける気がする?主人公が、豚汁騎士科生たちやダメダメ先生に懐かれたり。腹黒婚約者に赤面させられたと思ったら、自称ヒロインまで登場しちゃってうっかり魔王降臨しちゃったり・・・・・・。もうどうにでもなれ!とステキなお姉様方や本物の乙女ゲームヒロインたちとお菓子や食事楽しみながら、青春を謳歌するレティシアのお食事日記。
※爵位や言葉遣いは、現実や他作者様の作品と異なります。
※誤字脱字あるかもしれません。ごめんなさい。
※戦闘シーンがあるので、R指定は念のためです。
※カクヨムでも投稿してます。
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる