上 下
180 / 347
第5章 意外なスキル

17話 カイワームの特殊能力

しおりを挟む
 ヒロトシは、リーファーに説明して何とか納得してもらおうとしていた時、ふとカイワームの方からバリボリと音が聞こえてきた。
 ヒロトシは何事かと思い、近づくとカイワームの変異上位種の1匹がとんでもない物を食べていたのだ。

「わぁ~~~~~!お前何を食べてんだ?こんなものを食べたら腹痛を起こすぞ」

 ヒロトシが取り上げたのは、なんとミスリルだった。カイワームはヒロトシの言ったことが分かっているようで、怒られるとシュンとして小さくなっていた。
 そして、他の5匹からなんか責められていたようだ。当然言葉解らないので奇声を上げているようにしか聞こえなかったが、又5匹が責めているように聞こえたので、ヒロトシは止めたのだった。

「いいか?これは食べ物じゃないんだ?ちゃんとご飯は上げただろ?」

『きしゃあぁぁぁぁ!』

「きしゃああああじゃない。こんなものはもう食べるなよ?」

『きしゃあああ!きしゃきしゃ!』

 何かを訴えているようだが、意思疎通が出来なかった。

「あの、ご主人様?何か訴えているみたいですね?」

「とはいえ、言葉が分からんからどうしようもないよ」

「ひょっとしてミスリルが食べたいんじゃ?」

『きしゃああ!』

「いやいや。駄目だろ?こんなの食べるもんじゃ」

「だけど、雑食と聞きますし……人間は食べるものじゃないけど、カイワームに取って好物なのかも?」

 ヒロトシは、他の5匹にミスリルを食べさせようとしたが、当然だがそっぽを向かれてしまった。

「ほら?他の5匹は食べないじゃないか?」

「この一匹はこういう物を食べていたから色も違うのかも?だったら、こうしましょう!」

「何かいい案でも?」

「ビアンカに通訳してもらいましょう」

「なるほど!あいつなら言葉が分かるかもな?すぐに呼んできてくれないか?」

「分かりました!」

 リーファーはヒロトシに言われて、サンライトに呼びに行ったのだ。しばらくすると、リーファーがビアンカを連れてきた。

『ヒロトシ、カイワームとお話したいのか?』

「ああ。頼む。こいつミスリルをボリボリ食べるんだよ。これは食いもんじゃ無いと教えてやってくれ」

『わかった』

 ビアンカは、サンライトでウェイトレスの様に食事を運んでいた為、ドラゴンの姿になっていた。人前では裸になってはいけないと言われていた為、人間の姿でウェイトレスの制服をずっと着ることが我慢できなかったからだ。

『きしゃあああ!』 
『きしゅききゃあああ!』

 二人を見ていたら、何を言っているのか分からなかったが会話はできているようだった。その間、他の5匹も会話していたようで、ビアンカから内容を聞くと、変異種はずっと一人でいた為、何でも食べないと生きていけなかったそうだ。
 当然、ミスリルを食べる前から体の色が濃いブルーだったが、ミスリルだけでなく鉱石を食べても今まで何も不具合はなかったそうだ。
 そればかりか、他の魔物から襲われそうになって逃げるとき、糸を巻き付けていたが切られる事も多々にあった。しかし、鉱石を食べ始めてからどんなに力の強い魔物でも、その糸は切られる事は無くなったそうだ。

『ヒロトシ。変異種はその鉱物が大好物なんだって。他の5匹は変わっている奴だから仲間外れにされるんだと言っているよ。まあ、今は同じ主人を持つ仲間だと言っているけどね』

 他の5匹は、そんなもの食べるのは止めろと言っていたそうだ。ここに来てから、腐っていない肉が食えるのに、なんで好き好んであんな物を食べようとするのか分からなかったようだ。

 ヒロトシは、その説明を聞いて引っかかる事があった。

「なあ、ビアンカ?さっき力の強い魔物から逃げるとき、その糸は鉱石を食べ始めてから絶対に切られる事はなかったと言ったな?」

『うん。なんかそう言っているよ』

「ご主人様?何か不思議な事でも?」

「ああ。ひょっとしたら凄い事かもしれないな。ビアンカ?変異種にその糸を吐いてくれと言ってくれないか?」
 
 ビアンカは、変異種にその強い糸を吐いてくれと頼んだ。変異種はその説明に糸を吐くと、その糸はなんとミスリルだった。

「こ、これは!」

「どうかしたのですか?」

「この糸ミスリルだ……」

「えええええええ!」

 ヒロトシがその糸を鑑定すると、ミスリルを細い糸に加工した絹糸と出たのだった。そして、驚くべきことが起こった。変異種は金銀銅鉄や青鉱石の糸も吐いて、最後にオリハルコンの糸まで吐いたのだった。

『きしゃああああああ!』

「どうした?」

『ヒロトシ、その糸を吐くからその鉱石を食わせろだって。ここに連れてきてくれて命の危険が無くなったから感謝しているからお礼するだって言っているよ」

「だが……鉱石なんか食って大丈夫なのか?」

 ヒロトシが、変異種を神眼で見てもこれら鉱石を原料に糸を作っているとは出なかったのだ。ただ単に好物という事で食べたいみたいだった。
 これら鉱石を食べて身体が進化しただけで、食べなくともこれらの糸を吐き分けることができるようだった。

『大丈夫だって』

「わかった。じゃあ、いくつでもとは言わないが、ご飯の時にインゴット1本つけるよ」

 それを聞いた変異種のカイワームは喜んでいるようだった。野生の時はミスリル鉱石だったが、㋪美研にあるミスリルは鉱石から抽出した純度の高いものだったからだ。

『ヒロトシ。変異種が嬉しいって言ってるよ』

「変異種って言うのもなんか変だな。名前はあるのか聞いてみてくれ」

『名前無いって言ってるよ』

「そうか……じゃあ6匹に名前を付けてやるか」

 そういうと、6匹のカイワーム達は喜んでいた。ヒロトシは、変異種に身体の色からブルーと名付けた。身体の色からとった名前だが、ブルーはその名前を気に入ったようだった。
 後の5匹も色からとり、レッド・グリーン・イエロー・ホワイト・ブラックと名付けると、体をくねらせ喜んでいた。

 そして、ビアンカは5匹に通常の糸を吐くように言い聞かせ、ブルーにはミスリルの糸を吐く様に指示を出し、サンライトに帰っていった。

「リーファー、お前にはこのミスリルの糸でTシャツを作ってほしい」

 ヒロトシはTシャツの説明をして、リーファーに作ってもらった。この指示にリーファーは満足がいったようで、裁縫スキルでヒロトシの役に立てると思ったのだった。そして、このミスリル製の布で出来た服がとんでもない事になる。

「ご主人様。こんな感じでよろしいですか?」

「おお!いい出来だよ。これなら十分だな」

 ヒロトシはそのTシャツを、台の上に置き留め具に挟みしわにならないように固定した。そして、丁寧に布にクリームの研磨剤で磨き始めた。
 するとそのシャツは、+3シャツになり、魔法使いでも着れる防御の高い装備品となった。魔法使いだけではなくファイターも鎧の下にアンダーシャツとして着込める事が出来て、さらにダメージを軽減できることになった。

「う、嘘でしょ?布の服が+装備になるだなんて!」

「これもブルーのおかげだな。いくらスキルが人外になろうとも、ミスリルを糸には加工は出来ないだろうしな」

「そんなの当たり前ですよ!仮に+装備にしなくても行商人達にも人気が出ますよ」

 当然と言えば当然の事だった。行商をしている人間は戦闘力が無い為、少しでも防御力は上げておきたいが、ミスリルの鎖帷子は軽いとはいえ、やはり普通の人間にとっては重くて移動が遅くなる。しかし、この服ならば軽くて防御力もあり、買い求められるのは容易に想像が出来た。

 そして、㋪美研では新装備としてミスリルシャツを売り出す事になり、凄い反響を生んだ。

「マインちゃん。今度のこの装備は一体何なんだよ?なんで布の服がこんなに馬鹿高い値段なんだ?」
「そうだぜこんなシャツ誰も買わないと思うぞ?」

「いえいえ、この装備はミスリルで出来ているんですよ。つまりこのシャツで相当の防御力が望めるのです」

「「「「「はぁあ⁉」」」」」」

「つまりですね。魔法使いの皆さんにとって防御力の問題はこの服で解決されるのです」

「こ、これがミスリルだって?」

「そうです!シャツにしたら300万ゴールドは高いと思いますが、それを補うだけの商品なんですよ?」

「う、嘘だろ?ミスリルのシャツがあるなんて……」
「でも、シャツならあたしだって着れるよ。重くないしね」
「す、すごい!本当に軽い」

「ですが、驚くのはまだ早いのですよ」

「「「「「えっ!まだなにかあるのか?」」」」」」

「このシャツはミスリル製なので研磨技術を施せるのです」

「「「「「なんだって!」」」」」

「つまり魔法使いの方が、このシャツ一枚で相当の防御力を持てるのです。まあ、シャツを磨く事になるので研磨料金は高くなるのですが、ファイターの方でも鎧の下に着込めるので、防御力はさらに上げることが可能です」

 その説明を聞き、冒険者達はその場に固まって思考が停止していたのだった。


しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

処理中です...