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第5章 意外なスキル

2話 魔の森でフェンリル

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 次の日、ヒロトシはトラックでミトンの町から王都に向けて出発した。これは、ミトンの町から出発した事を見せておかないと、シルフォードが心配するからだ。
 トラックで街道を東に向けて走らせ、人がいなくなったところでシュガー村へと瞬間移動をした。これから1週間のんびり過ごし、1週間後王都の近くに瞬間移動をすれば問題はない。

 そして、ヒロトシはこの機会に魔の森の探索を行う事にした。魔の森には高ランクの魔物がたくさんいたが、今のヒロトシに勝てる魔物は皆無である。
 +5ナックルを装備して、自分で強化魔法をかけまくると殆ど無敵状態となり、魔の森で無双状態になるのだ。
 
「あんまりおもしろいものがないな……」

 魔の森をこんな奥地まで来たのは初めての事だった。するとなぜか、こんな場所に傷だらけの子犬が意識を失い倒れていた。
 ヒロトシはあわてて、その子犬に近づき手当をしようとしたら、その子犬がヒロトシの気配に気づき威嚇をしてきたのだ。

「お、おい……無理をするな。今治療をしてやるから」

『ぐるるるるる!』

 その子犬は、自分の血で汚れており汚らしかった。ヒロトシに警戒をし威嚇したが、怪我をしているのでその場にうつ伏してしまった。

「無理をするんじゃないよ。すぐに治してやるから」

 ヒロトシはすぐに子犬に触れてヒールを唱えた。子犬の怪我はすぐに治り、その可愛らしいつぶらな瞳をぱちくりさせた。
 そして、怪我を治してくれたヒロトシに懐いたようで尻尾をパタパタ激しく振っていた。

「何でこんなとこに子犬がいるんだろう……」

 ヒロトシは、その子犬は魔物かと思い神眼で鑑定するととんでもない事が鑑定された。

「はっ?フェンリル……」

 ヒロトシは嘘だろと思った。まさか伝説とされる魔物がこんな場所にいるとは思わなかったからだ。

「子供みたいだけど親がいるのかな?」

「おい、お前。親はいないのか?」

『アン!アン!』

 ただフェンリルの子供は尻尾をパタパタ振って、ヒロトシの足元にすり寄って来るだけである。ヒロトシはフェンリルの子供を抱いて、魔の森を歩いているとそこに魔の森の木々をなぎ倒し、真っ白で馬鹿でかい狼がその姿を現した。

『そこの人間!我が子を返すのだ!』

「しゃべった!この子の親か」

 フェンリルの子供は、ぴょんとヒロトシの腕からとびだし、親となんかしゃべっているように感じた。 すると、フェンリルの親は勘違いしてたと分かったみたいで、ヒロトシに頭を下げてきたのだ。

『勘違いしていたようですね……我が子を救ってくれてありがとうございます』

「あーいいよ。誤解が解けてよかったよ。あんたに襲われたら俺もただではすまないからね。おい、お前お母さんからもうはぐれるなよ?」

『アンアン!』

 フェンリルによると、子供が1週間前にはぐれてずっと探していたようで、ようやく我が子の気配が見つかり急いで来たら、ヒロトシに抱かれて攫われたのかと思ったそうだ。

「ほんじゃ、俺はこれで失礼するよ。じゃあな!」

『ちょっと待ってください。お礼をさせてください』

「別に構わないよ。子供が見つかって良かったな」

『そんなわけには!邪魔にはならないので受け取ってほしいものがあります』

「そこまで言うのなら、いただけるものなら貰おうかな?」

 フェンリルはヒロトシに向かって遠吠えをすると、ヒロトシの身体が光り輝いたのだった。

『あなたには私の加護を与えました』

「はぁあ?加護?」

 ヒロトシのステータスには、フェンリルの加護が与えられていた。

『あなたに役に立つ事になるでしょう』

「あ、ありがとう……まさかフェンリルから、加護を貰えるとは思わなかったよ」

『我が子を救ってくれたお礼です。気にしなくてもいいです』

「そ、そうか……本当にありがとう」

『それでは失礼します』
『あんあん!』

 フェンリルは子供を連れて魔の森の奥地へと帰っていった。その場に残されたヒロトシは、今だ信じられなくてボーっとしていた。

 フェンリルの加護
狼種を完全服従。
魔物に恐怖を20%の確率で与える。(相手のレベル差で変動)

「これはすごい!いい加護を貰えたな」

 ヒロトシはこの加護のおかげで、この後とんでもない事をすることになる。これは女神ミレーヌにも予想していなかった事だった。誰もが役に立たないと思っていたスキルが、この加護との相乗効果で今までになかった事が出来るようになり、そのスキルがまたしても、ヒロトシだけのものとなる。

 ヒロトシは、シュガー村に帰る途中この加護のおかげで、だいぶんと楽をしていた。魔物が殆どの確率で恐怖を覚え、その場で動けなくなり恐怖を感じ動けなくなっていくのだ。
 
「これなら、魔の森でも余裕だよな……」

 シュガー村に帰ってきたヒロトシはご機嫌で帰ってきた。

「旦那様!いったいどこに行ってたのですか?」

「どこって魔の森の探索をしてただけだよ」

「心配しましたよ。ミルデンスから魔の森の様子がおかしいと報告があって、全員が引き返して来たのです」

「あっ……」

「何か心当たりでも?」

「ああ。魔の森でフェンリルと出くわした」

「はっ?フェンリルってどういう事ですか?まさか伝説の魔物とか言わないですよね?」

「そのまさかだよ。フェンリルの怪我をした子供を見つけてな。それを親に返したんだ」

「何を言っているのですか?そんなバカな事が本当に?」

「嘘なんか言わないよ。多分フェンリルが出てきたことで、他の魔物に影響が出たんじゃないのか?今は収まっているんだろ?」

「えぇ……確かにその通りですが、まさかフェンリルが本当に実在したなんて……」

「そう考えたらつじつまが合うだろ?今は魔の森も落ち着いているから問題はないしな」

「それで何かあったんでしょ?」

「何かってなんだよ?」

「旦那様が、ただフェンリルに会っただけとは考えられません。何かほかにあったんじゃないですか?」

 さすがセバスである。ヒロトシになにかあったことを察知していた。

「お前ってすごいな……何でそんなに俺の事がわかるんだ?」

「当たり前でございます!で、なにがあったのですか?」

「子供を救った事で、フェンリルの加護を貰ったんだよ」

 フェンリルは伝説の魔物と言い伝えられている。だが、加護を与えることが出来るとなれば、魔物ではなく聖獣という事になるのだ。そのことを聞き、セバスはその場に固まってしまった。少ししたら、セバスは正気を取り戻し大きくため息をついたのだった。

「本当に旦那様の行動は予想を遥か超えてきますね。あんまり無茶をしないでください!」

「そんな事言っても、今回は向こうからやって来たんだ。俺のせいじゃないだろ?」

「そんな事を言っても信じられませんよ。日頃、旦那様の行動が突拍子もないことばかりで、今回も旦那様が呼び寄せたんじゃないですか?」

 確かにセバスの言う通りかもしれないと、ヒロトシは自分でもそう思った。

「はあ……俺はのんびりできない人生かもしれないな……」

「あっ……いえ、私が言い過ぎました。申し訳ありません」

「でも、この加護のおかげでより強くなったし、セバスが心配する必要はなくなったともいえるぞ?」

「そんな時が来る事はまずありません!旦那様が普通に町で生活してくれるというのならわかりますが、ちょっと目をはなすとすぐ一人でどこかに行ってしまうのですから……」

 セバスはブツブツと文句を言っていた。ヒロトシは話題を変えようとセバスに話しかけた。

「そういえばさ!俺、今回ミレーヌさんに新しいスキルを貰ったんだよ」

「また新しいスキルを貰ったのですか?また凄いものなんですか?」

「いや、あんまり役に立たないとされているテイムだよ」

「何でまたテイムを?動物を手なずけるしか用途はありませんよね?」

「今回、ミトンの町を復興させる依頼料でもらったんだ。いいだろ?」

「まあ、それぐらいなら目立つ事も無いですし、でもなんでテイムなのですか?」

 ヒロトシは、話題を変えることが出来て笑顔になった。

「いや、俺が選んだわけじゃなくてそんな凄いスキルじゃなくて、役に立たないと言ったら変だが、普通のスキルと言ったらテイムをくれたんだ」

「それにしても、それなら鍛冶とか旦那様が利用できるようなものにしたら良かったじゃないですか?」

「俺さ、このテイムでもいいと思ったんだよね」

「何でですか?」

「昔からペットを飼いたいと思ってたんだ。これがあれば躾けも楽になるだろ?それに犬とか猫じゃない動物も飼えそうじゃないか?」

「まあ、確かに鳥とか飼っても連絡には便利そうですけどね」

 ㋪美研には通信機があるので、伝書鳩は必要はないがテイムしていれば放し飼いも出来るので便利といえば便利である。
 テイムがあれば、厩舎というスキルも使う事が出来る。これは、テイムした動物を収納できるものだ。このおかげで馬をテイムし、運搬が楽に行う事が出来て、町中で馬を並べて販売することが可能になる。

「まあ、それならば観賞用の鳥なんかもいっぱいいますから、心の癒しになるかもしれませんね」

 ヒロトシは、テイムできる時を楽しみにしていた。この辺りには動物はいないからだ。ミトンの町に戻ったら改めて草原や野原で、動物をテイムしようと思っていた。


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