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第4章 魔道スキルと研磨スキル

43話 捜索不可能

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 ヒロトシは、そのダンジョンの姿を見て、その場に尻もちをついた。

「何か、俺……全然のんびり生活が出来てないな……」

 ヒロトシは一息ついて、あることを決めたのだった。そして、貰ったばかりの時空属性魔法を使った。

「リコール」

 【リコール】とは時空属性3レベルで使用可能で、一回行ったことのある場所に瞬間移動が可能な魔法だ。この場法は術者のみであり、他人を送る事はできない。

 リコールを唱えたヒロトシは、シュガー村に帰ってきた。いきなり村の広場に、現れたヒロトシに村の人間が驚いたのは言うまでもなかった。

「ご、ご主人様?」

「あっ、アイただいま」

 アイが、ヒロトシに気づき大きな声を出したものだから、その場にいる全員がヒロトシをみて歓喜した。

「「「「「ご主人様おかえりなさい!」」」」」

「ただいま」

「いったい、いつ帰ってきたのですか?」

「今さっきだよ」

「でも帰って来たなら、村の門番の人間が気づき屋敷に案内するはずなのに、こんな所に一人でいるのですか……」

「まあ、その辺は晩御飯の時にでもちゃんと説明するよ。それより疲れたよ」

「あっ。申し訳ありません……屋敷まで一緒に行きます」

 ヒロトシは、ハウスで建てた大きな屋敷に帰るとセバスが慌てて出てきた。

「旦那様おかえりなさいませ。ご無事でよかった」

「ただいま。悪いが晩御飯まで休ませてもらうよ。ご飯が出来たら説明はするから、それとこれからの事も言うからよろしくな」

「承知いたしました。ごゆるりとお休みしてください」

 その日は、ヒロトシが無事に帰還した事で全員が笑顔となった。そして、その日の晩にヒロトシはこれからの事を話した。

「みんなには、だいぶん心配をかけた。しかし、魔王スルトは無事討伐ができたから安心してほしい」

 ヒロトシの言葉に、セバス達は歓声を上げた。

「そして、俺は今回の事で思ったんだ」

「何をでしょうか?」

「うん。ちっとものんびりしてないなあって。だから、当分の間ここシュガー村を拠点に生活をしようと思う」

 ヒロトシの説明に全員が思考停止したのだった。

「ちょっとお待ちください!では、㋪美研やサンライトの経営はどうなさるのですか?」

「当分……いや、年単位で休業だ。ミトンの町に戻ればまた嫌でも忙しくなるから当分休憩だ」

「ギルドのランクが落ちるのでは?」

「いや、シルフォード様やギルドマスターの依頼で、店を休業して欲しいと言って来ただろ?ランクを落とさないようにお願いぐらいできるよ」

「上手く行きますか?」

「結局最後は、国王のローベルグ様からの依頼になったんだ。無理と言うのなら、ローベルグ様を利用させてもらうよ」

「確かに、国王陛下様が出てくれるなら何とでもなりそうですね?」

「そういうこと」

 ヒロトシは、そう言ってお気楽モードに入ったのだ。

「ところで、ご主人様。本当にいつ村に入ったのですか?いきなり広場に現れた様に見えたのですが?」

「そうか。まだ言ってなかったな?あれは本当に、アイの前に瞬間移動をしたんだよ」

 その説明に意味が分からないと、全員が又動かなくなったのだ。

「瞬間移動……」

「ああ。今回、ミレーヌさんに報酬としてもらった属性魔法なんだ。ミレーヌさんには、俺専用の属性魔法だと言われたよ」

「「「「「「はぁあ⁉」」」」」」
「と言う事は、ご主人様はミトンの南の森から、シュガー村まで一瞬で帰還したと言う事ですか?」

「まあ、そういう事だな」

「う、嘘でしょ?瞬間移動なんて伝承でもありませんよ?」

「そりゃそうだろ。唯一無二ののものだとミレーヌさんも言っていたぐらいだからな。過去にもなかっただろ」

「ご主人様?それって私も瞬間移動できるのですか?」

「今は無理だな。俺が使った魔法はリコールと言う魔法で、術者のみが瞬間移動できるんだよ」

「今は無理と言う事は、いずれできるかもしれないと言う事ですか?」

「ああ。魔道が4レベルになればリコールの上位魔法があって、ゲートトラベルという魔法がある。だけど、俺の魔法レベルが3レベルだから使用できないんだ」

「な、なるほど……残念です」

「悪いな」

「それってどこにでも行けるのですか?」

「一回訪れた場所じゃないと無理だな。魔法を使用する時に、頭の中でその場所を思い浮かべる作業がいるんだよ」

「なるほど!じゃあ、ご主人様は王都にも行けると言う事ですか?」

「ああ!王都も大丈夫だな」

「すごい!」

 その説明に、ここにいる全員が感動して、今日の晩御飯はダンジョンの事で盛り上がった。



 そして、時は半日ほどさかのぼる。ミトンの町では、シルフォード達はヒロトシが無事で討伐できる事を祈り続けていた。
 その時、またもやミトンの町に地震が襲ったのだ。この地震は、ヒロトシが魔王スルトを倒し、ダンジョンが維持できずに崩れた時のものだった。ミトンの町は、これで3回の大きな地震が襲ったことになる。

「おおおおお!ミトンの町はもう終わりじゃ……」
「お爺さん、そんな事はありませんよ!今ヒロトシ様が、ミトンの町の平和を取り戻そうとしているんです」
「じゃが、こんなに何回も地震が起きては……」

 町の年寄りたちが不安になりそう口々に言いだしていた。これは無理もなく、今回の地震で建物が又倒壊したからだ。そして、この地震で町の側を通る河川が濁り始めて、異様な後景をかもし出していた。

「ほれ、見てみい。あんな川の色、儂は生まれてこのかた見たことがねえ」

「お爺さん。大丈夫ですよ。そうならない為に、ヒロトシ様が頑張ってくれているんですから」

 町の人間は、何かあった時頑丈な作りである教会に避難していた。そして、ギルド受付嬢や冒険者達は、町の人間の不安を取り除くために奮闘していたのだった。
 そして、シルフォードはヒロトシの事が気になり、南の森に偵察を送る事にした。兵士数名に指示を出した事が、さらにミトンの町に不安を募らす事になるのを知らずに早馬を走らせた。

 ダンジョン前に着いた兵士達は言葉を失っていた。

「そ、そんなバカな……」
「本当にダンジョンがあったのはここなのか?」
「当たり前だ簡易村もあるではないか?」
「だがダンジョンが……」
「ヒロトシ様は生き埋めに?」
「馬鹿な事を!」

 兵士達が、そう思うのも無理はなかった。地震の震源地だったダンジョン前は、簡易村が跡形もなく残骸となっていた。ダンジョンの入り口は埋まってしまい、地割れや森の木々はなぎ倒されたようになっていた。
 そして、兵士達は簡易村をくまなく捜索をしようとしたがどうにもならなくて、とりあえずミトンの町に帰還し報告するしかなかった。

「シルフォード様……」

「ダンジョンはどうだった?」

「それが……」

 兵士達は、ダンジョン前の事を正直に報告した。

「馬鹿な!ダンジョンが埋まっていたと申すのか?」

「はい……跡形もなく……ダンジョン前の簡易村は壊滅。地割れもひどく森の木々は、魔物が暴れたような感じでなぎ倒されていました」

「それで、ヒロトシ君は?」

「あれではもう……」

「そ、そんな……それじゃあ、魔王の存在は?」

「同じく魔王の存在も確認はできず、あれほど異様な雰囲気は感じられず、ダンジョンもろ共埋まってしまったのかと……」

 この噂はたちまち町中に拡がった。魔王の存在が感じられないとなれば、町の人間を安心させないといけないからだ。シルフォードにはやることが大量に残っている。
 まずは町の復興をしないといけない為、町の人間のやる気を起こさせないいけないのだが、ヒロトシが帰らない噂がネックとなっていた。
 本来であれば、帰還凱旋パレードをして、町の人間が沸き上がることを期待していた。それから町の復興が成ると思い込んでいたのだ。
 しかし、ふたを開けてみればヒロトシと魔王が同士撃ちで、ヒロトシの命の代償で平和が戻ったような形になっていて、町中がお通夜のような感じになっていた。

「シルフォード様……これからどうすれば……」

「どうするも何も、これからは私達がしっかりしないといけないに決まっているではないか?」

「しかし、今ミトンの町はお通夜のような感じで……」

「だから何だと言うのだ!ヒロトシ君は自ら命を捨ててミトンの町を、いや王国領だけではなく大陸を救ってくれたのだぞ?」

「ハイ……それはそうですが……」

「だったら、気合を入れ直さぬか!」

 シルフォードは自分に言い聞かせるように、部下の気持ちを奮い立たそうとしていた。




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