研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第4章 魔道スキルと研磨スキル

41話 知っている怪物

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 ヒロトシは、バンパイア真祖を苦もなく討伐してしまった。これに焦りを見せたのは、当然ながら魔王スルトだった。

「カミュラがやられたか……おい、何をやっておるシュテン持ち場に戻らぬか!」

「はっ!しかし……まさか、あのカミュラを倒す人間がいるなんて……」

「馬鹿者!早くいかぬか」

 スルトに怒鳴られた男性は、シュテンと呼ばれて持ち場に戻れと言われていた。少し小柄だが筋肉隆々でたくましい身体をしていて、その頭には立派な角が生えており、鬼人だと言う事が分かる。
 
「しかし、どういう事だ……あの人間この間よりさらに強くなっておる……」

 魔王スルトが驚くのは無理もなかった。カミュラにしても、前回戦ったスルトと同等の強さを有していたはずだった。
 前回の轍を踏まない様に、魔王スルトは魔力を蓄えてパワーアップをしていた。その為、クローンは魔力を消費し過ぎるのでパワーアップのほうを選択し、配下の者を召還した。
 いま、持ち場に戻らせたのは酒呑童子である。鬼人の中でも最強と謳われた鬼の一族だ。カミュラより数段上の強さだが、先ほどの戦いで不安を募らせたのだ。

 ヒロトシは、さらに奥へと進んでいた。すると、まさに地獄をイメージする場所に出た。

「なんだここは?地獄そのものだな……」

「わはははははははははは!よく来たな下等生物よ!俺はシュテン!」

「シュテン?お前まさか酒呑童子か?」

 ヒロトシはその名前と、頭に生えた角を見てそう答えた。

「ほう!俺の事を知っている人間がいるとはな……おそれいったぜ!俺様も結構有名なんだな」

「いや、この世界の人間は知らないだろうぜ。俺自身もお伽噺で知っているだけだよ!そして、知られないままお前もこの世から消滅させてやるよ」

「わははははははは!下等生物如きが俺様を消滅だと、その愚かな自信後悔しながら死んでいくがよい!」

 シュテンは、そう怒鳴りながら日本刀、童子切安綱(どうじぎりやすつな)を構えて突っ込んできた。

「この刀を見たら、ノーザンの奴喜ぶだろうな」

「戦いの最中に何を言ってやがる!」

 ヒロトシは、シュテンの太刀筋を完全に見切っていて、余裕でかわし続ける。

「俺の家族が刀を作っていてな。それを見たら喜ぶよ。それにしても、それが限界なのか?もっとしっかりしろよ」

「ちぃ!当たらねえ!」

「いやああ。面白いものだな!酒呑童子がその刀を持っているだなんて!」

「何を言ってやがる!」

「お前知っているのか?その刀はお前にとどめを刺した刀なんだぞ?」

「はっ!馬鹿な事を!俺にとどめだと?にしても貴様は一体何なんだ!本当に人間なのか?」

「ほらほらどうした?鬼さんこちら?」

「ば、馬鹿にするな!」

 シュテンはヒロトシの言葉に、童子切を振りかぶりヒロトシの脳天を斬りつけようとした。

「なっ⁉」

 シュテンはヒロトシを真っ二つにしたつもりだったが、ヒロトシにあたる瞬間刀がビクとも動かなくなった。

「これぞ、真剣白羽取り!」

 シュテンの童子切は、ヒロトシの両手で見事までに捕らえられ、ビクとも動かなかった。

「くっ!は、放しやがれ……」

「ほらどうした?先ほどまでの威勢はどこに行った?」

「ぐうううううう!」

 ヒロトシはそのまま手首をひねり、シュテンを引き寄せた。

 シュテンは、その力にバランスを崩し前のめりになった。その時、後頭部に衝撃が走り地面に膝を付き、両手を地面についてしまった。

「ぐがあああああああああ!」

 ヒロトシは刀を引き寄せた瞬間身体をひねり、シュテンの後頭部に踵落しをくらわせたのだった。そして、その姿はヒロトシに土下座している格好となったのだ。

「おいおい。鬼族最強の酒呑童子が土下座だなんて情けないのもほどがあるぞ?まあ、今更謝ってもお前の命運は決まっているがな」

「き、貴様ぁ~~~~~~~!」

 シュテンが激怒したのだ。先ほどまで小柄な体だったが、あまりにヒロトシのなめた態度に激怒し、身体がドンドン大きくなり身の丈3mを越える鬼の姿へと変化した。

「ようやく本気になったか?あのまま消滅したら悔やんでも悔やみきれないものな?」

「この姿を見せたのは300年ぶりだ!後悔してももう遅い。頭から食ってやるわ!ぐははははははははは!」

 シュテンは豪快に笑いながら、その拳をヒロトシに振り上げた。

「何が鬼族最強だ……力任せの猪突猛進かよ」

 ヒロトシは、シュテンの拳にあわせてパンチを打った。

「がははははは!己は馬鹿か。体格差で撃ちあえるわけなかろう!」

 しかし、シュテンの思惑が外れた。ヒロトシの拳はシュテンの握り拳にめり込み、指の骨が大きな音を立てて折れたのだ。

「ぐわあああああああ!」

「お前の力など、オーガと変わらないんだよ。さて力の差が分かったか?」

「俺が力負けするなんて!」

 シュテンは気力を振り絞り突進し、頭突きをくらわせようとした。シュテンの角は鋭く硬い。ドラゴンの鱗も貫けるほど強力な武器だった。

「おいおい。鬼族は角を大事にしないといけないだろ?」

 ヒロトシは、シュテンの頭突きにあわせて、横にずれた。そして、角の根元に拳を討つと見事その角を圧し折ったのだ。

「ぎゃあああああああああああああああああああ!俺の角があああああああああああああああ!」

 シュテンは、自分の頭を押さえて転がりまわった。角には神経が通っていたみたいで、シュテンはその激痛に耐えられなかったのか、そのまま気絶してしまった。

「なんだ?すげえ弱いじゃん……じゃあ伝承通り、自分の武器で死んで貰おうか……」

 ヒロトシは、童子切安綱を手に持ち、息を大きく吸い振りかぶりシュテンの首を刎ねたのだった。そして、シュテンの遺体をインベントリに収納してしまった。
 
「また、名前付きの宝剣を手に入れれたな」

 童子切を鑑定すると、+5刀と表示され、オーガや鬼人に対して5倍のダメージを与える。ヒューマンタイプに対して2倍のダメージとあった。
 そして、MPを50使用で乱撃が使用可能とあり、武器のアクティブスキルがあった。

 乱撃
 混戦状態で敵に囲まれた時、全ての敵の攻撃を回避しながら反撃が出来る。効果時間1分 ダメージ基本攻撃力×0.75+STR値

「凄い!強力な武器だな……しかし、刀は使えないから宝の持ち腐れだな……まあ、これもインベントリの肥やしだな」

 そう独り事言って、ヒロトシはインベントリに収納して、ダンジョンの奥へと進んだ。すると、とうとうミレーヌの言った居城がその姿を現した。

「ここが魔王スルトがいるのか。早く倒して村に帰ろう」

 ヒロトシはその巨大な門をくぐると、居城の大広間に出た。もっとドロドロしいものと思ったが、真っ白な大理石を使った綺麗なお城である。

 中に入るとそこには、似つかわしくない大きな3つ首の犬が待ち構えていた。

『ぐるるるるるるるる!ぐがあああああああああああああ!』

「何でもありかよ……今度は地獄の門番ケルベロスとはな」

 ケルベロスは5mほどある大きな番犬だった。首は3つもあり漆黒のボディーを持ちその尻尾は大蛇である。ケルベロスの怖いところは、その大きな巨体に係わらず俊敏な動きで敵を追い詰め、牙で食いちぎり3回攻撃に加えて爪の2回攻撃、そして最後に尻尾の大蛇が猛毒攻撃を仕掛けてくるのだ。

「魔王も馬鹿だな……こんなのを最後に持って来るとは何を考えているんだか」

『ぐぁあああああああああああああああ!』

 ケルベロスは、いきなりヒロトシに突進してきた。しかし、そんな攻撃がヒロトシに通じる訳もなくあっさり交わされた。そして、ヒロトシはケルベロスの下に潜り込んで、腹に数発のパンチを連続で打った。

『ぐおおおおおおおおおおおおおおおお!』

 ヒロトシの拳は、ケルベロスにも十分通じていた。いきなり腹に痛みがが走ったケルベロスは、その場所から飛びのき、ヒロトシに向かって口を大きく開けたのだ。
 そして、雄たけびと共にその大きく開いた3つの口から炎を吹き出した。これの攻撃はドラゴンが持っているのと同じ炎のブレスだ。

 ヒロトシはその攻撃方法も見破っていた。神眼に隠し通せるものではなく炎を吐き出す前に、自分にアイスオーラをエンチャントしておいた。

 アイスオーラは、水属性3レベルで使える魔法である。かけた相手に氷の膜を張り、炎のダメージを80%軽減する魔法だ。

「ふっ!そんな攻撃がいまさら効くと思っているのか?」

 80%軽減なのに、ヒロトシは一切ダメージを負っていなかった。実は炎属性1レベルのレジストファイヤーも唱えていた為だ。これは、1レベルだというのに炎のダメージを50%も軽減するとても強い魔法だ。つまり、この2つの魔法を併用する事で炎ダメージを無効化した事になる。

 そして、ヒロトシは吐き出す炎に突っ込み、ケルベロスの攻撃をキャンセルしつつ殴り飛ばした。
 その威力は、ケルベロスの巨体を吹き飛ばすもので、殴った衝撃で左首の骨が折れて、一体のケルベロスが戦闘不能となった。後は中央の首と右首が生き残っていたが、左首がだらんとぶら下がりバランスを崩し地面に倒れ込んでいた。

「さすが動物だな。これならシュテンの方がよほど強かったぞ?」

 ヒロトシは倒れたケルベロスの腹を殴り飛ばした。

『ぐわあああああああああああ!』

 ケルベロスはあまりの衝撃に悶え苦しんでいた。弱点の腹を何発も殴られていたのだ。

 ケルベロスの背には、毛が生えていて装甲が固いが腹には毛が無かった。漆黒の肌が丸見えなのだ。ケルベロスは必死に伏せの状態で腹を庇っていたが、今度は中央の首を殴られ続けて瀕死状態になる。
 そのせいで、余計に体の重心が狂い、左側に倒れてしまう。倒れた所をまた腹を狙われるのだった。

「さてもうそろそろかな?」

 そして、どんどんHPを削られてケルベロスは、ヒロトシに撲殺されてしまったのだった。

『ぐっ、がっがっがっが……ぐおおおおおおおおおおおお!』

 最後は力を振り絞ったが、そのまま地面にひれ伏せて死んでしまった。ヒロトシは、ケルベロスの死体もインベントリに収納して大広間から続く大きな階段を上ったのだった。



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