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第4章 魔道スキルと研磨スキル

36話 新たなダンジョン発見

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 町の中はまた地震が来たことでパニックになっていた。お年寄りの中には山の神がお怒りになったと、騒ぐ者も多数いたほどだった。
 そして、デリー材木店が請け負った建物は、今回の地震で全てが倒壊したのは言うまでもなかった。

「お前達、デリー材木店とリヒターを逮捕せよ!」

 シルフォードは、ヒロトシが持ってきた証拠を元に逮捕を命じた。リヒターには贈賄の容疑、デリーとその従業員には手抜き工事による殺人の容疑で逮捕した。

「なんだ!ワシを誰だと思っておる。無礼者が!」

「黙れ!デリー材木店から賄賂を受け取った事は全て証拠が集まっている。あのような悪徳商店を推薦し、罪のない子供達が犠牲になった事を反省しろ!」

「はっ!孤児院の子供など我らにと……」

 リヒターが、子供達の命を侮辱しようとした瞬間、団長はリヒターの首元に剣を突きつけた。

「それ以上、子供達を侮辱することは私が許さん!このまま処刑しても構わないんだぞ?」

「ぐっ……き、貴様ぁ……ワシを誰だと……」

「もうじき処刑される愚かな人間だよ。貴様は奴隷にも落とされず、そのまま打ち首だよ」

「なっ!なぜワシが打ち首にされなければならん!」

「わからないのか?お前は自分の私欲のために、犯罪に目をつむった事で何人の人間が犠牲になったと思っておる」

 今回の地震で、潰れた建物に犠牲になった人間は孤児院の人間だけではない。当然公衆便所や図書館、錬金工房が潰れて亡くなった人間も多数いた。

「それはワシのせいではない!デリーが勝手にやった事だ!」

「ふんっ!醜いものだな。手抜き工事を知っていて容認したお前にも罪がある!」

「ば、馬鹿な!……」

「馬鹿は貴様だ!精々自分のやった行いを反省して処刑されるがいい」

「離せぇ!ワシは貴族だ!平民の命など、ワシの出世の道具にして何が悪い!」

 リヒターは、必死に抵抗したが無駄だった。兵士達に素巻きにされ兵舎へと連行された。

 そして、デリー材木店にも兵士達が乗り込んだ。デリーは必死に抵抗したが兵士に敵う訳もなく、なすすべもなく逮捕された。そこで働く従業員は全て逮捕。言い訳が凄かったが黙認していた事が駄目だった。

「私達は上から命令されただけで!」

「うるさい!黙って歩け!」

 そして、リヒターとデリーと従業員だったフランクこの3人は、地獄と呼ばれる罪で裁かれる事になる、町中を引き回し打ち首である。
 ミトンの町を1日かけて引き回すことは地獄のようなものだった。逃げる事も出来ず、町中を少し速い速度で馬に引き回されるのだ。その間この3人には罵声はもちろんの事、石が平気で飛んでくる事になる。
 そして、その日は一日馬に引きずられへとへとの状態になる。最後は夕暮れの張り付け台にさらされて処刑される事になるのだが、一気にとどめを刺される事はなく、いたぶられながらその生涯を閉じる事になる。

 リヒターの一族は、王国に報告され取り潰され没落。その決定が下されるまで、地下牢に監禁されることになる。リヒターの事を知っていて黙認していたと分かれば、特別奴隷にはなれないのだ。リヒターの家族は、当然知らなかったと弁明はするが、嘘は魔法で見破られるので意味はなかった。



 そして、今回地震の件で今まで目に見えなかった犯罪があぶり出される事となった。この事で、木材の鑑定を徹底付け報告書に上げることを義務付ける事になった。




「やっぱり、こういう事は何か問題にならないと改善されないんだな……」

「「ご主人様、改善って何ですか?」」

 ヒロトシは、今回の事を悔やんで屋敷の大広間でポツリと愚痴った。それをシアンとセレンに聞かれたのだった。

「おわっ!いつの間に後ろにいたんだ?」

「ふふっ、わたし達を誰だと思っているのですか?闇ギルド最強と言われたアサシンですよ」
「気配を消すなんてお手の物です。それより改善って?」

「ああ、今回手抜き工事が発覚しただろ?」

「「えぇ……」」

「こういう事が表に出て、犠牲者が出ないとルールは見直しされないって事だよ。最初からこういう事を予想してたら、子供達が命を落とす事は無かったかもしれないのに……」

「「確かに……」」

「まあ、そう言っている俺も何か起こらないと、その予想が建てられないのも事実だから難しい事ではあるんだけどな……」

「「そんな事は……」」

「いや、そんな事はあるよ。やっぱり悪い事を考える奴は、何かの抜け道を見つけてその部分をついて、悪い事をするからね。どうしても後手後手にまわってしまう……」

「「……」」

「まあ、これ以上犠牲者が出ない様にがんばるしかないよ」

 セレンとシアンは、これ以上何も言う事が出来なかった。実際の所、闇ギルドに所属していたころには、ヒロトシの言ったように抜け道を探し、犯罪をしていた人間を数多く見ていたからだ。
 ヒロトシやシルフォードのような人間にとったら、本当に口惜しい事だったのがよくわかっていた。町の人間が少しでも楽に生活が出来るように頑張っていたからだ。
 それなのに私腹を肥やす為だけに行動する人間の為に、善良なる町の人間にシワ寄せが来て、奴隷に落とされたり酷い時にはその命を簡単に奪われてしまうのだ。

 そうして、今回の手抜き工事の一件は幕を閉じたのだった。



 その頃、あるSランク冒険者達の手によって、ミトンの町の近くに第2のダンジョンが発見される事になった。

「た、大変だ!」

「ジョージさんどうかしたのですか?まさかまたスタンピードが?」

 冒険者ギルドに慌てて帰ってきたSランクパーティー【黄金の獅子】のリーダーは受付嬢のミルファーに説明をした。

「いや、違うんだ!それよりもっと大変な事だ。南の森に新たなダンジョンが出来ていたんだ」

「なんですって!」

 冒険者ギルドではもう一つ新たなダンジョンが見つかり騒然となった。一つの町の近くにダンジョンが2つも出来ることはめったにない。
 可能性は0ではないが、こんな事はまず聞いたことが無く、これからは2つのダンジョンの間引きをしていかないといけなくなる。

 この情報は、一気に町中に広まる事になる。ダンジョンが2つになるのはスタンピードが起こりやすくなる。普通に考えるなら、魔物を間引く手間が単純に2倍になるからだ。
 しかし、デメリットはあるもののメリットはダンジョンの素材が2倍になると言う事である。

 ミトンの町にとったら、このダンジョンはメリットの方が高いと冒険者ギルドでは認識されたのだった。
 これは、ミトンの町に㋪美研が存在することにある。先日新しい武器が生産ギルドを通じてCランク冒険者に売り出される事になったので、Cランク冒険者も、魔物の間引きには充分役に立つのだ。
 
「聞いたか?」
「ああ!聞いた聞いた。黄金の獅子がダンジョンを見つけたらしいな」
「スタンピードの心配はあるが、㋪のおかげでその心配はいらないらしいぞ」
「確かに、あの武器はとんでもないらしいな」
「ああ……Sランク冒険者にしか購入できないらしいが、あの武器でその冒険者は何倍ものの強さを手に入れれるらしいぜ」
「らしいな。その黄金の獅子達はヒポグリフォンを討伐したらしいぜ」

 ダンジョンに潜り、ボス部屋からヒポグリフォンが出たらしく、その魔物を討伐したらしいのだ。これは冒険者の中でも快挙と言われるものだ。
 本来ならばヒポグリフォンが出たと言われたら、連合で討伐するような魔物だ。それを1パーティーで討伐を成功させたからだ。

 しかし、このダンジョンは普通のダンジョンとは違う物だった。できたばかりのダンジョンは、ギルドが偵察を送る所から始まる。これは、駆けだし冒険者が犠牲にならない様にする為だ。

 偵察に来た冒険者達は、ダンジョンの中に違和感を感じた。魔物があまりにも少ないからだ。

「なんか変な感じだな?」
「ああ……気を引き責めていくぞ」

 そのパーティーは、奥に入っていったが戻る事はなかった。その間には、ダンジョン前には簡易村が出来上がっていく。これは、兵士が常駐できるようにするためだ。

「しかし……なんだな、ここはなんか少し寒気がするな」
「確かに……」
「ダンジョンから漂う雰囲気がなあ……」
「まだできたてにしては、迫力ある感じだな」
「まるで地獄の門があったらこんな感じなのか」

 簡易村を作る為に、やってきていた大工達はダンジョンを横目に兵舎を建てていた。

 その頃、ミトンの町ではシルフォード達は新たなダンジョンの発見に浮かれていた。
 これで町には、更に活気づく事になるし、地震での被害予算をまかなう事が出来ると思っていた。その為、王国に新たなダンジョンが見つかったと報告していた。

「これで何とか、地震で負った負債をまかなえることができるかもしれない」

「たしかに、ダンジョンは町を活気づけるにはもってこいの存在ですしね」

「しかし、魔物の間引きにはそれなりの予算を組まないといけないのは、今のこの時期には大変ですな……」

「何を言っておるのだ。私達はもっと予算がないころから、この町の政を担ってきたではないか!今や、この町には㋪美研のような店を筆頭に、色んな商会も集まってきている。それに冒険者達もSランクが集まり問題はないだろ?」

「「「「「確かに」」」」」

 シルフォード達は、町の予算についてこれからの運営を話していた。地震で負った町の人間への援助資金や、新たなダンジョンへの守衛予算など決める事はいっぱいだった。


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