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第4章 魔道スキルと研磨スキル

28話 ノーマル武器

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 ヒロトシのオプション付きミスリル武器が販売されて、冒険者ギルドでの噂はそれ一色となっていた。

「おい、聞いたか?」
「ああ!聞いた聞いた。Sランクの明けの明星さん達だろ?」
「ああ!㋪美研の武器を購入できて、ダンジョンの階層を又更新して45階層まで到達できたみたいだぞ?」
「それ本当?あたし、40階層だと思ってたわ」
「ああ。そうらしいぜ」
「なんでも、今回の魔物の素材は新種みたいだ」
「新種って何だよ」
「犬の顔を持った魔物らしいぞ」
「コボルトみたいなもの?」
「コボルトに似た新種でレベルは65を超えるみたいだ」
「「「「「「すげえええ!」」」」」

 冒険者ギルドでは㋪美研の武器の威力に感心し、自分達も早くその武器が購入できるようになりたいと話題に上っていた。

「それにしてもダンジョンはまだまだ何が起こるかわからんな……」

「えぇ……わたしも反省してます」

「カチュアが反省とは珍しいな。何かあったのか?」

「今回、明けの明星が報告してきたことがあるのですが、45階層で新種の魔物を討伐してきたのです」

「ああ。聞いている。俺も長い事冒険者をやって来たが、あんなのは初めてだ」

「それで、明けの明星の説明によれば、45階層から一気に魔物の質があがり、あの武器が無ければ自分達は死んでいたと言うのです」

「じゃあ、ヒロトシ様が言っていた通りになったのか?」

「はい……わたしは魔物のレベルの事を言っているのだとばかり……しかし、今回の新種はレベルが65それも大量に襲い掛かって来たらしいのです」

「それならば、オークとかゴブリンもそうじゃないのか?」

「いえ、知能がかなりの物でダンジョンの罠を利用してきたらしいのです。それを6人で対処できたのは紛れもなく㋪美研の武器があったからだそうです」

「なるほどな……それもしょうがない事だよ。ダンジョンの事は経験がない者には、報告だけが情報源になるからわからないのもしょうがないな。俺でさえ、現役を退いた今では現場では何が起こっているのか想像がつかんからな」

「はい……ですが、ヒロトシ様はなんであそこまで……あの人はいったい」

「確かに不思議な方だよな。今は絶対的英雄と呼ばれているが、戦闘力が無いわけでもないのに冒険者ではないものな……」

「そうなんですよ。何で商人だったお人が、あそこまでダンジョンの中が予想できるのですか?」

「そんな事俺に聞かれても……慎重な考えを持ったお人しかいえないだろ」

「でも、絶対おかしいですよ!ヒロトシ様もダンジョンに入っているんじゃありませんか?」

「ちょっと落ち着けって!そんなわけないだろ?確かに3日に1回のペースでミトンの町は出て行くが、その他の日は研磨工場で働いているんだぞ?ずっと働き詰めでダンジョンに行けるわけなかろう」

「確かにそれはそうですね……」

「まあ、俺から言わせれば出来が違うんだよ」

「いつもヒロトシ様に張り合っているあなたが何を言っているのですか?」

「うぐっ……それを言うなよ」

 ギルドマスターとカチュアは、いい雰囲気で話し合っていた。そんな事は、ヒロトシには関係なく㋪美研の鍛冶工房で次の計画を話し合っていた。

「ハンナ、製作進行はどうだ?」

「順調に進んでいますよ。もっと生産量を上げるのですか?」

「いや、それはいいんだが。そのレシピで鉄鉱石の武器を製作してもらえないか?その場合、どれだけの人数が出せるか見積もりを出してもらえるか?」

「今の生産量を維持できる最低人数ですか?」

「そうだ。それ以外は、そのレシピで青鉱石で作ってほしいんだ。当然、その武器はノーマルだから俺の研磨はしない」

「どういう事でしょうか?ご主人様の研磨を用いない武器をいまさら製作しても……」

「これは、生産ギルドに卸す分だよ。ようはCランク冒険者用の武器だ」

 ハンナからの人数を見て、その人数では足りないとみて新たな鍛冶師の奴隷を購入し、人数を揃える事にした。そして、ヒロトシは青鉱石で作った武器を持って、後日生産ギルドに訪問した。

「ヒロトシ様、今日はどうかしたのですか?」

「アリベスさんはいるかい?いい話を持ってきたと言ってくれ」

「まさか!㋪美研の武器を卸してくれるのですか?」

「ちょっと違うけどそうだな」

 ヒロトシの言葉を聞き、受付嬢はすぐにアリベスを呼びに行き、ヒロトシは客室に案内された。

「ヒロトシ様!㋪の武器を卸してくれるって本当ですか?」

 アリベスは、ヒロトシが待つ部屋に息を切らして駆けこんできた。

「わあ!びっくりした。そんなドアを乱暴に開けるなよ」

「す、すいません……」

「言っておくが、オプション武器じゃないぞ」

「えっ?どういう事ですか?」

「青鉱石で製作したノーマル武器だよ。Cランク冒険者にちょうどいい武器だ」

 そういいながらヒロトシは、テーブルの上にダガーを一本置いたのだった。

「何で今更、㋪がノーマル武器を?」

「アリベスさんが、武器を卸せとうるさいからだろ?」

「そんな言い方しなくても……」

「俺は、この武器は最初㋪だけのものとしようとしていたが、生産ギルドとこれからも良い付き合いの為に卸す決断をしただけだ」

「ですが、ノーマル武器では今更ではないですか?」

「馬鹿な事を!よく見てみろよ。その武器は新レシピで製作されたものだぞ。普通の1.5倍の威力を持つ武器だ」

「えっ!まさか……」

「ああ、そのまさかだよ。オーランの町で新発売されている刀で、冒険者が使い慣れている武器だよ。それでもいまさらと言うのか?」

「い、いえ……ですが、魔宝石がついた武器は無理なのですか?」

「駄目だな!それは諦めろ」

「では、これをミスリルにしてもらう事は?」

「それも駄目だ!ミスリルは貴重だしな。それに㋪でもミスリル武器はBランク冒険者からしか販売はしていない」

「そ、そんな……」

「我儘言うのなら、これをシルフォード様のとこに持っていくぞ?」

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

「それは生産ギルドとしても困るだろ?」

「当たり前です!」

「悪い事は言わないから、これで納得しておけって。オーランの村の武器より需要は大きいから、売れない事はないはずだよ」

「わ、分かりました……」

「なんだ?そんなに不満なら卸すのをやめるよ」

「待ってください。卸してもらえますか?」

「ったく……素直にそういえばいいのに」

「申し訳ありません……」

「だけど注意しろよ。この武器を本当は卸したくなかった意味をちゃんと考えろよ?」

「どういう事ですか?」

「今、オーランの町のようにレートン以外の他の鍛冶師の様にしないようにしてくれよ。この武器が出回った場合、今までのノーマル武器は売れなくなる可能性があるからな」

「わ、分かりました……」

 ヒロトシが懸念していたのはそのことだった。今回、人員を補充したのもオーラン出身の鍛冶師達だった。レートンは、その武器の価格をできるだけ下げる事によって、他の鍛冶師達を廃業に追いやっていた。その上で数が少なくなったところに値を元に戻したのだ。
 そして、その首が回らなくなった鍛冶師を、ヒロトシが購入したのだった。今や、オーランの町には鍛冶師が少なくなっていて、レートンの店が幅を利かせていた。

 生産ギルドも、これには問題視しており、しかし打開策が建てられないでいた。

「だからな、生産ギルドオーラン支部にとりあえずこの武器を買って貰え。そして、オーラン支部に恩を売るんだ」

「なるほど!オーランの町は鉱山をいっぱい所有しており、主に鉄鋼業を産業に発展している町ですからね」

「俺もあの店はちょっと許せないからな。自分だけが得をしようとして他はどうでもいいと言うのが気に入らない」

「なんで、ヒロトシ様が気にするのですか?」

「何言ってんだよ。あの新商品は俺の家族が考えたものだよ。それを奪い取ったのが、あのレートンじゃないか」

「あっ……な、なるほど。じゃあ、ヒロトシ様はそれをなんとかしたいと考えて生産ギルドを利用しようと……」

「当たり前だろ。俺にもそれなりのメリットがなければ、生産ギルドにこんな話を持ってくるわけないだろ」

「それでは、生産ギルドの立場が!」

「何を言ってんだよ。生産ギルドはこの武器によって、どれだけの利益が転がり込むと思うんだよ」

「えっ?でも、オプション付きの方が……」

「それは諦めろと言っただろ?なんで、そんな目先の利益ばかり考えるんだ?」

「ですが」

「いいか?あの町は打開策が建てられないでいるだろ?それによって領主様も困っておられた。そりゃそうだよ。鉄鋼業を主にしている町なのに、鍛冶師が食えずに奴隷落ちしていくんだからな」

「それはそうですが……」

「ここまで言ってもまだわからないのか?それとも俺が、あの町に支店を作った方がよかったか?このノーマル武器
専門の店を。そうなれば俺は、オーランの町でも英雄になれる事になるな」

「ちょっと待ってください!」

「どうだ?この武器を生産ギルドオーラン支部に売った時、どれほどの恩が売れるのかわかるだろ?オーランの領主様から感謝される事になるんだぞ?」

「それは、そうですが……」

「ミトンの町がピンチの時、この恩がどのくらいになるか。いくらアリベスさんでもよくわかるだろ?それとも生産ギルドミトン支部は、そんな事はどうでもいいほど今の地点で経営不振なのか?」

「そんな事は……」

「だったら目先を考えるんじゃなくて、先の利益を考えろ。俺は自分の為に生産ギルドを利用しているが、生産ギルドにも多大な利益を落とす事も考えていると思うぞ?」

 アリベスは、ヒロトシの説明を聞き納得したのだった。そして、その提案を受け入れたのだった。


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