研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第4章 魔道スキルと研磨スキル

22話 信頼

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 ヒロトシが、ノーザンを㋪美研に連れて帰ってきて3日が過ぎた。その日のお昼マミヤとルビーが、ノーザンを看病していた時ノーザンが目を覚ました。

「うぅ……」

「あっ!目を覚ました。マミヤ!ノーザンさんが目を覚ましたよ」

「本当?」

「ノーザンさん良かったね。もう大丈夫だよ」

「ルビーにマミヤ……何で村に?」

「ちがうよ。ここはミトンの町で、ご主人様の屋敷だよ」

「何っ!うっ……」

「飛び起きちゃ駄目だよ。ノーザンさんは腕を怪我をして重傷なんだから!」
「そうよ。5日間、目を覚まさなかったんだから安静にしていないと」

「5日?俺は5日も眠っていたと言うのか?うっ……」

「ほら、無理をしたら駄目だって。今は安静にしないと……」

「し、仕事はどうなった?旦那との約束で、俺は!」

「ほら。今はそんな事を考えず……」
「そうよ。今は身体を大事にして……」

 マミヤとルビーは、ノーザンを見て暗く沈み、ベットに寝かせようとした。ノーザンは、仕事の事が気になり、マミヤとルビーを払いのけようとしたが、利き腕である右腕がうんともすんとも動かない事に気がついた。

「なっ!何で右腕が動かねえんだ……」

「ノーザンさん、気をしっかり持ってね。ご主人様から聞いたんだけど、事故が起きた現場でスズが確認をした時、貴方の肩口に作りかけの刃物が刺さっていたんだって、その時に神経を切ったみたいで動かないかもと聞いたわ」

「う、嘘だろ……」

「本当よ。発見が遅れていれば、貴方は出血多量で死んでいたとも聞いたわ。しかし、ご主人様が念のために、回復量の多いポーションを村に預けて置いてくれたおかげで、貴方は一命をとりとめたとも聞いているわ」

「旦那がこの事を予想していただと?」

「そうよ。ご主人様はずっとあなたの事を心配してたの。だから、この数日ご主人様がどんな思いでいたか知らないでしょうけど、これ以上迷惑はかけないでゆっくりしてください」

「ぐっ……」

「後で、ご主人様があなたの今後について話があると思うわ」

「お、俺はどうなるんだ?」

 ノーザンは、マミヤとルビーに迫ったが二人にそれが分かる訳もなく、首を横に振っただけだった。

「わたし達にそれが分かるわけがないでしょ?」
「そうですよ。今はゆっくりしていてください」

 ノーザンはそんな事を言われても、落ち着けるはずが無くベットから出て、ヒロトシの所に行こうとしたが起きたばかりでそんな事は出来ず、倒れてしまった。

「もう……そんな身体で動けるはずがないでしょ?」
「本当にこれ以上無理をしたら死んじゃうんだからね」

「しかし!」

「そんなに焦るのなら、何でご主人様の言う通りにしなかったのですか?」
「そうですよ!これ以上ご主人様に迷惑をかけるのは止めてください!」

 ノーザンは二人から言われた事に反論できなかった。そして、ノーザンは2人の言う事を聞きベットに横になったのだった。

「いいですね?ちゃんと大人しくしててくださいね」

「マミヤ、大丈夫ですよ。わたしがここにいるから」




 しばらくすると、ヒロトシがマミヤとセバスと一緒に部屋に戻ってきた。

「目覚めたか?」

「だ、旦那……す、すまねぇ……仕事が出来なくなってしまって。頼まれた納期に……」

「馬鹿やろぉ!お前はこの状況で何を言ってんだ?」

「……」

「だから、俺が言っただろうが!無理してする仕事は危険が伴うと。スズが、お前を見に行かなかったら、お前は死んでたかもしれないんだぞ」

 ヒロトシは、ノーザンに向かって怒鳴りつけていた。マミヤとルビーはこんなに激しく怒ったヒロトシを見たことが無く、顔を青くしていた。

「め、面目ねえ……旦那の言う事を聞いておけばよかったと思う。しかし、俺は少しでも早く旦那の役に立ちたかったんだ……」

「今更遅いよ……お前の腕は、もう動かないじゃないか」

「旦那、俺の欠損を治したイヤリングをもう一度使ってほしい。今度はちゃんと言う事を聞いて、作業をするからこの通りだ!」

 ノーザンは、ヒロトシに頭を下げて懇願した。すると、そのお願いに口を挟んだのがセバスだった。

「ノーザン、貴方は何を言っているのですか?」

「えっ?」

「旦那様の気持ちを踏みにじった貴方に今度というチャンスはありませんよ」

「なっ!何でセバスがそんな事を!」

「何で?おかしなことおっしゃりますね。貴方の身分は犯罪奴隷なのですよ?旦那様のやさしさに甘えないでください!」

「うっ……だが、旦那は……」

「それが甘えていると言うのです。貴方は一度……いえ、2度も救われているのですよ?1回目は奴隷商から購入され、旦那様はその時あなたに対して俺を信じろと言われたはずです。だったらなぜ、その時に旦那様の言う事を信じて言う事を聞かないのです?」

「俺は今まで、あのように仕事をしてきて……」

「そして、2回目は欠損を治療された時です。普通は、奴隷にあんな高度な治療法など使わないのですよ?自分がなに様だと思っているのですか?そして、今回事故を起こし、せっかく治療をしてもらった腕を損傷して、仕事のできない体になってどういうつもりですか?」

「そ、それは……」

「貴方は犯罪奴隷の身分で、2回も旦那様にエリクサー級の治療をさせるおつもりですか?」

 ノーザンは、セバスの言う事に何も反論出来なかった。そして、ただ謝罪を繰り返すだけだった。

「旦那も同じ意見なのか?」

「貴方はまだそんな事を!」

「まあまあセバス、そのくらいにしておいてやってくれ。ノーザンも反省しているみたいだしさ」

「旦那様!またそんな甘い事を……」

「旦那……俺は反省した。だから……」

「ノーザン、お前はまた本当に鍛冶師として働きたいのか?」

「「ご主人様!」」

「なんだよ……お前達には聞いていないだろ?」

「いえ、私達もセバスに同意します。今回はいくらなんでも。ノーザンの行動は目を見張るものがあります」

「ノーザン、仲間からはそういう意見が出ているがどう思う?」

「頼む。いや、頼みます。もう一度チャンスをください!腕を治したら、旦那の為に身を粉にして働く事を誓う」

「そうか……その言葉に嘘偽りはないんだな?」

「はい!」

「「ご主人様」」

「ノーザン、お前のレシピはもう使わなくても良いよ。ハンナとシェリーの弟子となって鍛冶師を出直すように!わかったね?」

「なっ……レシピは使わなくていい?なんでだ?」

「お前はあれほど言ったのに、まだ身を粉にして働くと言ったよな?そんな人間を個人工房で働かすわけにはいかない。又、無理をして怪我をするに決まっているからな」

「そ、そんな!じゃあ、俺の技法はどうするんだ?」

「まだそんな事を言っているのか?」

「だけど、旦那は俺の刀の技法でロングソードを作れと言ったじゃないか?」

「お前はもう腕が動かないんだぞ?」

「だから、この間のイヤリングを……」

「使っていいのか?後悔することになるぞ?」

「後悔ってなんだ?」

「治療費だよ。前回は俺の家族になった人間が怪我をしていたんだ。治療をするのは当たり前の事だよ。しかし、今回はお前の自業自得で腕が動かなくなったんだ」

「だが、俺は奴隷でそんな金は……」

「気づいたか?ノーザンお前は鍛冶師として働ける代わりに、刀のレシピを俺に売れ」

「そ、そんな!」

「お前は、もう一度弟子からやり直した方がいい。刀のレシピを開発した事は凄い事だが、性格に難があるから油断をするんだ」

「だったら、俺を奴隷商に売ってくれ!あのレシピは俺の命だ」

「今、言った誓いは嘘だったのか?」

「嘘じゃねえ……だけど、レシピを取られると言うのなら話は別だ」

「ノーザン、貴方は何を勘違いしているのですか?」

「なんでぇ!セバスには関係のない事だ。黙っていてくれ」

「だから、何を勘違いしているのですか?貴方は旦那様の奴隷なんですよ?旦那様はお優しいお方です。こういう情況になっても治療費と言って下さっているのですよ」

「あっ……」

「いくらあなたでも気づきましたか?貴方の資産は治療費関係なく旦那様の物です。腕を治さなくとも、本来は貴方からレシピを強引に取れるのですよ」

 セバスは、ノーザンの言動に相当頭にきているようだ。言葉は丁寧だが内容は本当に怖かった。その様子を見て、ヒロトシはノーザンに話しかけた。

「どうしても嫌か?」

「旦那……申し訳ねえ!この通りだもう一度チャンスをくれ……」

「それはまた、シュガー村で個人工房で働きたいと言う事か?」

「そうだ……」

「それは無理だな。腕が治ったとしてもそれは容認する事はは出来ない。あの工房はなにか別の期会に利用するつもりだ。お前は、俺の目の届くところで働いてもらうのが大前提だ」

「だが……」

「じゃあいいよ。レシピは諦めるよ」

「旦那様!」

「そ、それじゃ!」

「何を勘違いしているんだ?お前には鍛冶師自体を諦めてもらう」

「そ、そんな!それじゃ約束が……」

「いや、何を言っているんだ?最初に誓いを破棄したのはノーザンだよね?」

「うっ……」

「それに俺は1週間前に言ったはずだよ?そんな無理をしてやる技術は廃れるって……」

「俺がまだいるじゃないか?」

「だけど、もう腕が動かないだろ?自業自得でこの技術は世の中からなくなるんだ。いや、オーランの村では初期装備として残るか」

「お、俺の技術が初期装備だと……」

「ああ、冒険者の間ではCランクまでのつなぎの武器と言う噂だよまあ、しょうがないよ。教えたのは試作品だってノーザンも自分で言っていたじゃないか」

「じゃあ、俺はこれから何をすれば……」

「みんなの雑用なんかがいいんじゃないか?鍛冶の手伝いは無理だろ?」

「そんな!」

「しょうがないよ。自分でそのように選択したんだからね」

「わかりました。レシピを教えるので腕を治してくれ」

「いや、もういいよ」

「えっ⁉」

「俺は、もうノーザンの事は信じれないからね。君には雑用で余生を過ごしてもらうよ」

「そんな!」

「勘違いはしないでくれよ。1日働けばちゃんと衣食住は保証するし、普通の生活は出来るから頑張ってくれ」

 ヒロトシにそう言われて、ノーザンはその場で崩れ落ちたのだった。

「マミヤ、ルビー、悪いがこのままノーザンの世話をしてほしい。雑用は当分の間やらせないでほしい」

「「そんな!」」
「ご主人様は優しすぎます。もう気づいているんだから、今日からでも!」

「いや、まだ駄目だ!鑑定して、もう大丈夫というまでは絶対安静だ」

「「わ、分かりました……」」

 ヒロトシは、マミヤとルビーにそのように指示を出し、二人は納得いかない感じだった。


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