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第4章 魔道スキルと研磨スキル

19話 待ち遠しいSランク冒険者達

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 次の日、冒険やギルドでは㋪美研の事が話題に上っていた。

「この広告本当の事なのか?」
「だが、ギルドが嘘なんか言わないだろ?」
「しかし、国宝ともいえるマジックアイテムだぞ?」
「しかし……見てみろよ。Sランク冒険者からの利用可能みたいだぞ?」
「何だよ……俺達は利用できないのかよ」
「まあ、Bランクに上がれたばかりだからうまい話はないよな……」
「だけど、研磨技術は本当にすごいよな」
「確かに!俺達でもダンジョンの10階層でも余裕だったもんな」

 Sランクになれていない冒険者達はギルドの広告に興奮していて、自分達も早くSランクになれるよう話が盛り上がっていた。
 そして、今回の対象であるSランク冒険者は、㋪美研に直接情報を得に来ていた。

「マインちゃん、あのギルドの広告は本当なのか?」

「ええ。本当の事ですよ」

「なんでも武器にオプションで、ヘイストが付けられるそうじゃないか」

「いえ、ヘイストじゃないですよ」

 ヘイストとは、風属性3レベルで使える様になり、一定時間攻撃回数を2倍に上げる魔法である。魔法スキルが4レベルで3倍、5レベルになれば4倍になる強力な魔法だ。
 つまり、この魔法が武器でオプションについていれば、常に攻撃回数は2倍になると言う事である。

「ヘイストじゃない?確かギルドではヘイストと聞いたぞ?」

「それはご主人様が試作品をお持ちした武器であります」

「ど、どういう事だ?」

 マインは冒険者に同じ試作品を持ち出し説明した。

「今回ご主人様が試作品として、ギルドにお持ちしたのがこのダガーです。この柄の部分を見てもらえますか?」

「これは魔宝石か?」

「この武器はぺリドットという宝石が嵌っています。その為、オプションはヘイストと言う事になります」

「なっ⁉そ、それじゃあ……」

「はい、想像した通りここにある魔宝石が違う物であれば、オプションの種類も変わってきます。攻撃力やクリティカル確率や威力など種類は様々と言う事です」

「す、すげぇ……」

 冒険者はとんでもない情報にその場で固まっていた。すると別の冒険者が質問をしてきた。

「あの……」

「何でしょうか?」

「私達のような魔法使いでも、効果の大きいオプションはあるの?」

「例えば、新発売されるミスリルロッドの先端に、このアクアマリンを嵌めると魔力増加のオプションがつく事になります」

「そ、それじゃあ」

「はい。単純に貴方様の攻撃魔法の威力は、倍に跳ね上がる事になります」

「す、すごい……ほ、本当にそんな事が……」

「ご主人様の話では、これらの武器を持ち、パーティーメンバーからのバフは併用されると聞いています」

「それは本当なのか!」

「ええ。そのように聞いております」

「って事は、単純にオプションのある魔法は4倍になると言う事か」

「はい」

 それを聞いた㋪のホールにいたSランク冒険者は歓喜に震えるのだった。

「そ、それで、それはいつから販売するんだ?」

「それはまだ未定です。しばしお待ちください」

「なんでだよ?試作品があると言う事はもうできているって事だろ?」

 その効果を早く試してみたかった冒険者達は、マイン達受付嬢に詰め寄って困らせていた。

「確かにその通りだよ」

「「「「「「えっ」」」」」」

 いきなり後ろから声を掛けられたので、冒険者達はびっくりして振り向くと、そこにはヒロトシが立っていた。

「「「「「ヒ、ヒロトシ様!」」」」」」

「ったく、店が騒がしいと来てみれば、マイン達を困らせるんじゃない」

「「「「「「ご、ごめんなさい……」」」」」」
「しかし、そんな凄い武器がいつ販売されるだけでも教えてくれても良いと思うのですが?実際、試作品が出来ているのでしょ?」

「それにわたし達Sランク冒険者は数が少ないでしょ?そんな数を揃えなくともいいはずですよね?」

「ああ。君達Sランク冒険者は希少で数が少ない。武器も今までの様に数ははけないだろう。だからこそ、時間をかけるのが分からないか?」

「どういう事ですか?」

「君達が、これから行こうとしているのは未知の世界だ。違うかい?」

「「「「「うっ……」」」」」

「こう言っては何だが、今までのダンジョンの魔物はミスリル装備でも、何とかできる魔物だ。しかし、これからはそういう魔物ばかりではないんだよ?それに世の中には君達には理解できない魔物もいる。それこそ魔の森に生息する魔物のようなね」

「それは……」

「もし、そんな魔物に出会ってしまった場合、命綱と言える武器が適当な試作品のような武器だった場合、君達の命はそこまでになるのが、何故考えが及ばない?」

「うぐっ……」

 ヒロトシの言葉に、Sランク冒険者達はぐうの音も出なかった。

「もし……今の君達が、本当にSランク冒険者の実態となれば、俺はこのオプション武器の販売をやめざるを得なくなるぞ?」

「「「「「ちょ、ちょっとまってください!」」」」」」
「それだけは!」

 ヒロトシは、Sランク冒険者達を睨んでいた。そして、いつの間にか㋪美研のホールには、正座している冒険者達ばかりになっていた。

「ヒロトシ様、俺達が愚かでした!だから販売を中止するなんて言わないでください!」

「君達は冒険者達を背負っている人間なんだぞ?後輩たちにいい見本で無くてはならないんだ」

「「「「「「はい……」」」」」」

「分かってくれたならいいよ」

 Sランク冒険者達はホッとして正座をやめた。長時間にわたってヒロトシに叱られ、足がしびれて立ち上がれない人間が続出した事で、この後、冒険者の間で笑い話になり、酒の肴になったのは言うまでもなかった。

「「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」」

「まあ、苛めるのはこれぐらいにしておこうか。今、まだ未定としているのは、新しく武器を改良しているからなんだ?」

「改良とはどういう事ですか?」

「今の所詳しく言えないが、オーランの町で新しい武器が開発されたのは知っているか?」

「それは知っています。何でも切れ味が凄まじい武器と聞いていますが、それでもヒロトシ様の研磨技術の方が優っていますよ。あの刀と言う武器は、Cランクの冒険者達にはちょうど良い武器だと思います」

「いやいや、あの武器を侮ったらいけないよ?あの武器のレシピは分からないが、ノーマル武器であそこまでの攻撃力を出せるんだからね」

「ですが、ヒロトシ様の研磨技術の方はマジカルであり、どんな魔物にも対応できるではありませんか」

 研磨技術で+武器になっていると言う事は、普通の魔物には大ダメージを与える事が出来て、更にゴースト系の魔物にも攻撃を加える事ができるのだ。

「今の段階では、確かにマジカルになっている分、こっちの方が有利だ」

「ですよね?だったら、刀を話に持ち出す必要は何もないかと……」

「それは違うよ。ノーマル武器は基本武器だ。その基本が優秀なら、こっちも大幅に改良する余地は残っていると言う事だ」

「「「「「……」」」」」

「いいかい?君達も冒険者の経験は基本があってなんぼだろ?」

「はい」

「と言う事は、生産もそれが基本だよ。もし、あのような刀が基本でそれを研磨したらどうなる?」

「「「「「「あっ!」」」」」」

「そういう事だ。基本攻撃力が上がった武器を研磨技術で、更に攻撃力は上がるということなんだぞ?」

「じゃあ、ヒロトシ様はその為に」

「そういう事だ。だから今は未定としている」

 その理由を聞き、Sランク冒険者達は販売予定が未定と言った訳が分かり納得したようだった。

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