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第4章 魔道スキルと研磨スキル

18話 冒険者ギルドに広告

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 ノーザンは、シュガー村で生活することが決まって、㋪美研では新しい武器が販売される事が決まった。しかし、ヒロトシはこの刀をそのまま販売するつもりはなかった。

「ノーザン、ちょっといいか?」

「旦那?何かおかしい事はあったのか?」

「ああ。この刀なんだがこれと同じようなやり方で、ロングソードとかダガーなんかは作れないかな?」

「それはやったことがねえなあ……」

「やったことが無ければ挑戦してみないか?」

「刀じゃなんか不都合があるのか?」

「うん……気を悪くしないでほしいんだが、このまま売っても返品が相次いで出ると思うんだよ」

「俺の刀が返品?冗談だろ?何を根拠にそんな事を言うんだ?」

「そんなに気を悪くしないでくれ」

「いや、いくら旦那でも言っていい事と悪いことがあるだろう?だが、その根拠を言ってくれ」

「ああ……確かにノーザンの刀は良い武器だ。ただ、この剣は扱いが難しいと言った方がいい。つまり、需要が無いんだよ」

「需要が無いだと?」

 ヒロトシは刀の使用方法が、ロングソードとは全く逆であることを説明した。

「つまり、この刀は対象を引き斬る事で凄まじい攻撃力を出す事が出来るんだが、この攻撃方法がロングソードを持ち慣れている冒険者にとって使いづらいんだよ」

「な、なるほど……旦那は使い手の方に問題があると言うのか?」

「そういう事だ。ロングソードは押し斬る事で、多少雑に扱っても刃の強度が耐えられるようになっているからな」

「なるほど……俺の作った剣が悪いと言う事じゃないわけか」

「ああ。ノーザンの剣はたいしたものだよ。しかし、使い手がいないんじゃどうしようもないんだ」

「旦那はこの刀を売ってくれないのか?良い武器なら必ず買い手はつくはずだ」

「それも間違いではないと思うよ。しかし、俺は商人だからお客様第一に商品を考えるからな。ノーザンの作品を全否定はしないが、今のままではだめだと思うよ」

「そ、そうか……旦那は、俺みたいに自分が満足する作品だけじゃないんだな」

「当然だ。高い金を払って使用していくのはお客様である冒険者なんだから、冒険者が使いやすい商品を提供するのが、俺の仕事だよ」

「わ、分かったよ……俺のレシピでロングソードを作ってみるよ」

 そして、ヒロトシはミトンの町に帰り、ガイン達には柄の部分に魔宝石を組み込んだミスリル製のロンクソードやダガーを製作させていた。この魔宝石はルビーであり、違う効果を発揮するものだった。

「すいません!」

「こ、これはヒロトシ様じゃないですか!こんなところに来なくとも用事があれば呼び出してくれれば!」

「いやいや、用事があるのはこっちだからな。俺がここに来るのは当然だよ」

 ヒロトシは、冒険者ギルドの受付にやってきていた。その対応をしたのが受付嬢のミルファーだった。ミルファーも、もう受付嬢としては管理職として新人に教育する立場だった。そして、すぐに副ギルドマスターのカチュアの所に話を持っていった。

「ヒロトシ様、こんな所へわざわざお越しくださり申し訳ありません。それで今日はいったいどういったご用件でしょうか?」

「今日はSランク冒険者に対しての新商品を紹介したくて訪問したんだよ」

「Sランク冒険者ですか?」

「冒険者ギルドミトン支部にはSランク冒険者が増えてきただろ?」

「確かに、この近辺のSランク冒険者はこの町を拠点に活動しています。これもヒロトシ様の研磨技術によるおかげと言っても過言ではありません」

「近日中に㋪美研で新商品を売りだすんだが、ちょっと見てほしいんだ」

「しかし、Sランク冒険者だけなのですか?」

「多分、Aランク冒険者には手が出ないと思うからな?」

「まさか!オリハルコン製の武器を販売するおつもりですか?」

「違うよ。もっと凄いものだよ。これなんだが見てくれるか?」

「ヒロトシはカチュアに一本のダガーを見せた」

「これが凄いものですか?ミスリル製だと……」

「鑑定をしてみなよ。今までとは別物だよ」

 カチュアは、鑑定が出来る幹部職員をよんで鑑定をすると、その職員は言葉を失ってしまった。
 
「これはいったい……本当にこれを売り出すおつもりなのですか?」

「ちょっと何を驚いているのですか?」

「カチュア様、これはマジックアイテムですよ」

「えっ?マジックアイテムとはどういう事ですか?」

 そのダガーには魔宝石が柄の部分にあしらわれていて、その宝石はペリドットがはめられていた。そして、幹部職員は鑑定結果を興奮気味で説明しだした。

「これはダガー+3ヘイスト効果のあるオプション武器ですよ」

「ヒロトシ様それは本当ですか?」

「ああ、間違いないよ」

「そんな事が……」

「いや、嘘じゃないよ」

「ですが、ヒロトシ様は㋪美研から出る新商品と言ったではありませんか?」

「それの何が嘘なんだよ?㋪の責任者が言っているんだぞ」

「売り出すと言う事は、これが何本かあって定期的に入荷を確保できると言う事ですよね?そんな事ありえないですよ」

「ちょっと待て!カチュアはなにか勘違いしているぞ」

「勘違いって、どういう事ですか?」

「これはダンジョンから出たマジックアイテムじゃないよ。俺が販売するのはこのダガーのような、魔宝石が柄の部分についているミスリル製の武器だ」

「で、ではマジカル効果はついていないのですか?」

「売る段階ではな。しかし、この武器を研磨することでマジカル効果はつく事になる」

「ま、まさか⁉」

「俺がそんなうそをついて何の得があるんだ?」

「それだとヒロトシ様が、マジカルアイテムを作れると言う事じゃありませんか?」

「ああ、そうだよ期間限定だが、製作可能になったんだよ」

 カチュアと幹部職員は、驚きのあまりその場で固まってしまった。

「そ、そんなバカな事があるのですか?こういったマジカルアイテムは国宝とされるような装備品なのですよ?」

「確かに、ダンジョンから出た幾つかの武器防具は王国の宝物庫にあると聞くなあ」

「聞くなあってそんな呑気に!」

「まあ、そんな興奮するなって」

「興奮しない方がおかしいですよ!」

「でもな、そういう武器が宝物庫で眠っている方が俺からしたらおかしいんだよ。武器は使用してなんぼだと思わないか?まあ、俺は商人だから買ってもらってなんぼなんだけどな」

「だけど、なんでSランク冒険者なのですか?」

「そりゃ当然、購入しても維持できないからだよ」

「どういう事ですか?」

「今まで研磨はBランクになってからだったけど、これは自分の力だと過信させないためだ」

「ですが、その過信を克服したのがBランク冒険者達ですよ?それでも駄目だと言うのですか?」

「駄目だとは言わないが、Sランク冒険者じゃないと研磨依頼が出来ないと言っているんだ」

「えっ?」

「一回研磨する為に100万も支払えないだろ?しかも、この効果は3ヶ月限定だ」

「そんなに高いのですか?いや、しかし……たった100万で、マジカルアイテムが手に入るとしたら安いものですね」

「もしこれが手に入れば、さらにダンジョンの奥に入れると思う」

「た、確かに……」

「それで冒険者ギルドに頼みたいのは、冒険者を抑えてほしいと言う事なんだ」

「それならギルドがしなくとも大丈夫かと?」

「何でだ?」

「それほどまでにヒロトシ様の影響力が凄いと言う事ですよ。この武器を販売する時に、今までと同じようにギルドカードを確認するのですよね?」

 今までと同じように研磨する場合、ギルドカードの提示をしてもらっていた。その冒険者がBランクになっていると確認する為だ。
 今回もそれと同じようにSランクの提示を求めればいいだけである。そしてこの町の人間ならば、ヒロトシと言う事は誰でも知っているし、Sランクになっている冒険者ならば問題を起こすような人間はいないからだ。

「ああ」

「だったら、それで冒険者達は納得しますよ」

「そうか。それならいいんだ」

「それにしてもまた凄いものを販売しますね?」

「まあな。いつから販売するかはまだ未定だが、それまでギルドで広告を張らせてもらえないか?」

「町の掲示板はどういたしますか?」

「今回はサンライトの時の様に一般家庭には関係のない事だから冒険者ギルドだけでいいよ」

「なるほど!確かにそうですね。承知しました。明日から掲示板に広告させていただきますね」

「よろしく頼む」

 ヒロトシは、広告料をギルドに支払いに受付に向かった。すると、ベテランであるミルファーが対応してくれた。

「この内容は本当なのですか?」

「ああ。よろしく頼むよ」

 ミルファーは、武器にオプションスキルが付けれるとあり、目を見開いて驚いていた。利用可能はSランク冒険者からであり、ふるって利用よろしくお願いします。㋪美研と文字を確認していた。

「これは本当にすごいですよ!それでいつからなのですか?」

「それがまだわからないんだよな。近日中と報せておいてくれるか?」

「なるほど、まだ準備中という訳ですね」

「まあ、そういう事だ。それとこれはおすそ分けだ。数は十分あるとは思う」

 ヒロトシは、ミルファーにサンライトで売っているショートケーキを差し入れしたのだった。

「本当によろしいのですか?」

 ミルファーがそう言った瞬間、受付嬢達が群がったのだった。

「「「「「「ヒロトシ様ありがとうございます!」」」」」」
「ちょっと貴方達!すこしはヒロトシ様に遠慮しなさい」
「「「「「「きゃあああ!サンライトのショートケーキだ」」」」」」

 ケーキは、受付嬢達が休憩室に持って行ってしまったのだった。

「本当にすいません……後でみんなにはきつく叱っておきます」

「別に構わないよ。じゃあ広告の方よろしくな」

「はい。ちゃんと張り出しておきます。いつもありがとうございます」

 ミルファーはヒロトシに、頭を下げギルドを出るヒロトシに、最後まで丁寧に対応したのだった。しかし、ヒロトシがギルドを出ると、後ろでミルファーの声が響いていた。

「ちょっとあたしの分残しておいてよ!」

 ヒロトシは、その言葉が聞こえて笑顔になった。



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