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第4章 魔道スキルと研磨スキル

12話 役に立たないスキル

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 闇ギルドでは、今回の事が問題となり、緊急会議が開かれていた。

「総帥!これは一体どういうことなのですか?」
「そうです!今回の計画は必ずヒロトシの首を取るというものでした」
「しかし、結果は大損害となった」
「この責任は、どのようにお取りになるつもりですか?」

「皆の者には悪いとは思うが、今回の事で分かったことがある」

「それはいったい……」

「つまりだ。あの人間には手を出してはいけないと言う事だ!」

「馬鹿な!総帥自ら負けを認めるおつもりか?」

「では、ドワーフお主に聞くが、余は今回魔王を呼び出しに成功した。その魔王が、たった一人の人間に倒されたのだ。そんな人間をこれ以上どのように始末せよと言うのだ?」

「そ、それは……」

「余も今回の事は間違いだったと思い知らされたのだ……余が前の事を覆すのは良くないと知っておる。それに、闇ギルドはやられた事は必ず報復すると決めたのは歴代の総帥達でそれを今まで守ってきた。しかし、あ奴は……ヒロトシには手を出してはいけないと思い知らされた」

「しかし、闇ギルドの面子は……」

「そこまで言うのなら、お主がやって見せろ!失敗しても罪には問わぬ。しかし、もし手を出したらお主はこの世から消える事になるぞ?」

「そ、それは……」

「お主達も言っておく。ヒロトシに報復する者は心してかかるとよい!しかし、今回の事で闇ギルドはアサシンのトップの二人を失い、魔王が討伐された事をよく考えるんだな」

「では、総帥はヒロトシはどのように考えると?」

「ミトンの町からは手を引く!」

 衝撃的決定だった。長い歴史の中、闇ギルドが個人に対して撤退する事は無かったからだ。しかし、この決定に反論する意見は出なかった。
 そして、この決定で闇ギルドからの脱走者は拍車をかける事となる。




 そして、ヒロトシは闇ギルドの決定を知らずにいた。ヒロトシにとってそのような事はたいしたことではなくどうでも良かったのだ。それよりも、今回の戦闘で魔道レベルが3レベルに上がった事で、やれることが増えていたのだった。

「ご主人様なにをしているのですか?」

「ああ!魔道スキルが3レベルになってな。新しい事が出来るようになったんだよ」

 ヒロトシが作業しているところに、ハンナが声をかけてきたのだった。

「新しい事っていったい?ご主人様ってどんだけ奥が深いのですか?」

「俺も結構驚いているよ。何と今回は凄いよ。魔法付与なんだ」

「ご主人様って全属性使えるんですよね?確か、プロテクションだって使っていたはずじゃ……」

「それは対象人物にかけるバフだろ?そうじゃないよ。アイテムに付与することができるようになったんだよ」

「どういう事でしょうか?」

「例えばだな。この剣には魔法石がはめてあるだろ?こういうアイテムにストレングスを付与できるようになったんだ」

「えええええええ!」

「つまり、普通の剣の攻撃力は16だからストレングスの効果で24にアップしたと言う事だ。要はマジカルアイテムだな」

 ストレングスは、20分間攻撃力を50%あげる事が出来る魔法である。

「ダンジョンからしか、マジカルアイテムは出ないと言うのに……それに、ご主人様って全属性魔法が使えるんですよね?」

「そうだな。防具にプロテクションも付与することが出来るから、凄い事になると思うぞ」

 それを聞き、ハンナはとんでもない事になったとその場で呆然となっていた。

「だけどな……これが役に立つようで立たないんだよな……」

「まさか……」

「そのまさかなんだよ……今魔道レベルが3レベルだから、付与できる時間が1時間なんだよ……」

「それじゃ売り出す事は出来ませんね……」

「そうなんだよ。俺がいたら人物とアイテムにかけると効果は併用できるみたいなんだけどな」

「ひょっとしたら魔道スキルが5レベルになれば、その物品付与も5レベルになって、永久付与になるのかもしれませんね」

「なるほどなあ!確かにそれかもしれないな」

 実はハンナの言ったことが正解だった。この付与スキルは5レベルになれば、マジカルアイテムが作れるようになり、アクセサリーにも付与が出来て効果時間は永久となる。今は、この付与魔法は3レベルであり1時間効果が続くが、1レベルならば効果時間は20分間であり、2レベルで40分間となる。

「でも、今はどうしようもありませんね……」

「そうだな。俺もダンジョンに潜って、魔物を討伐して付与魔法スキルレベルをあげないと使い物にならないな」

「ご主人様はそんなことしなくてもいいです」

「何でだよ……」

「今更そんなスキルに頼らなくても㋪美研とサンライトで十分じゃありませんか」

「な、なるほど……確かにそれはそうだな……」

 ヒロトシは、ハンナの言う通りだと思った。しかし、この後ヒロトシだからこそ、有効活用できる手段があったのだった。



 そんなことがあって、数ヶ月が過ぎ去り、ヒロトシはシルフォードの依頼でまたオーランの町に来ていた。

「あ、あのご主人様……もっとスピードを落としてください」

「なんだ、シアンもこのスピードは苦手なのか?」

「当たり前です。情報にあった乗り物はこんなスピードで、きゃああああ!」

 トラックが砂利道で跳ねたようだ。

「闇ギルド最強のアサシンも、可愛い声を出すじゃないか」

「可愛いって……いきなりそんな事言わないで、きゃあああああ!ご主人様後生です……もっとスピードを落としてください!」

「そんな事言ったら今日中に、オーランの町に到着出来ないだろ?」

「それでもいいので……お願いします……」

 助手席に乗っていたシアンは半泣き状態だった。コンテナに乗っていたセレンはこんなスピードで移動したら、確かに誰も追跡は無理だと納得していた。

 そして、半日かけてオーランの町に到着し、シアンは帰りはセレンに助手席を譲ろうと心に誓っていた。

「ヒロトシ様、今回もダンジョン前の集積場の整理の依頼を受けてくれてありがとうございます」

「大丈夫ですよ。今回は俺もオーランの町に用があったんですよ」

「ひょっとして、今噂の鍛冶職人の事ですか?」

「そうそう。何でも凄い切れ味の剣が発明されたようで、それを見に来たのですよ」

「なるほど。確かにヒロトシ様の研磨技術と合わせれば凄い事になりそうですね」

 ヒロトシは、ダンジョン前に警護している兵士と楽しそうに会話をして、屑石を収納してしまったのだった。

「ありがとうございます。これでまた当分の間廃棄に困らなくて助かります」

「いえいえ、こちらこそありがとうございます」

 ヒロトシは、金銀銅鉄鉱石をダンジョンのゴミ捨て場に捨て、残りのレア鉱石をいただいたのだ。そして、すぐにオーランの町に行き、噂の鍛冶屋に行き剣を見せて貰う事にしたのだった。

「ごめんください!」

「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」

 ヒロトシが噂の武器防具屋に入ると、美しい女性が対応してくれたのだ。さすが人気の店で、受付嬢みたいな従業員が対応してくれた。

「あの、噂で聞いたのですが切れ味の凄い剣があると聞いたのですが、みせて頂ける事は出来ますか?」

「ご購入の予定はありますか?」

「いや、噂に聞く剣を見てみたいんだよ。俺は商人だから剣は扱わないしな」

 ヒロトシには、格闘術ならあるが剣術のスキルはない。その為、噂の剣を見て見たかった。しかしそういうと、従業員の女性から笑顔が消えいきなりぞんざいな態度となった。

「申し訳ありません……購入しないのならお引き取り下さい。こちらも暇ではないのです」

「えぇ……見せても貰えないのですか?」

「申し訳ありません。お引き取りを」

「分かったよ……そんな邪険にしなくてもいいだろ?」

 ヒロトシは追い出される様に店をでた。

「なんですか?あの店は!」
「本当に失礼ですね」

「ああ……でもあんな店が本当に流行っているのか?」

「おお!兄ちゃん、あんたもあの店から追い出されたくちかい?」

 店の前でシアンとセレンが文句を言っていると、町のおじさんから声をかけられた。

「えぇ……剣を買うつもりじゃなく見せてほしいと言ったら、追い出されてしまいました」
「本当に失礼なお店です」
「何で人気なのか分かりませんね」

「いや、全然人気じゃないよ」

「でも、噂になっている店だと聞いたんだが違うのか?」

「噂になっているが、武器はいいだけで店主が変わってから、いい噂はないよ」

「そうなんだ……」

「冒険者は、少しでも良い武器を手に入れたいものだからな。良い武器って事は間違いではないが、その武器が手に入れば、この店にはもう用はない感じだよ」

「な、なるほど……」

「それで、前の店主はどうなったんだ?」

「ああ……いい腕の鍛冶屋だったんだけどな。奴隷に落ちちまったよ」

「何で?」

「なんでも一番最初の一本が人殺しに使われたらしいんだ。つまりだな、鍛冶師にとって一番最初の武器は、その鍛冶師の物になるだろ?」

「確かに聞いた事はあるな」

「その武器が犯罪現場にあって、殺された遺体にその剣が刺さっていたんだよ。それで前の店主が容疑者となって御用となっちまったんだよ……」

「それで今の店主は、その人の弟子って事ですか?」

「そういうわけだ」

 ヒロトシはそれを聞き、今の店主が無茶苦茶怪しいと思った。どう考えても得したのは今の店主であり、そんな大事なものを、前の店主が殺人現場に残すわけがないと確信するものだった。


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