研磨職人！異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

第３章 新しい研磨

２９話 塩の生産

　ここガーラの町では、塩の生産が盛んな街である。

「おい！聞いたか？ミトンの町で砂糖の使ったお菓子を売り出す店が出たらしいぞ？」
「まさか！砂糖がこんな遠くの町までくるわけねえだろ？」
「そうだぜ！もしエルフの国と懇意にした商人がいたとしても、その砂糖は貴族様が買い占めるさ」
「いや……それが、行商人がミトンの町でクッキーを買い、他の町に行商しだしたと言うぜ」
「ま、まじかよ！」
「ああ、大マジだ！しかし、購入制限があるらしくそんなに多く購入できないらしいが、それでも連日大賑わいなんだとよ！」
「そいつはすげえな。ミトンの町は、今や砂糖と塩が普通に手に入るって事か？」

　ガーラの町でも㋪美研の噂は凄くて、他の町からの移住がいまだ増えていると聞いた。

「しかし、ミトンの町と言や、ミトンの町の塩精製工場の噂を聞いたか？」
「あー聞いた聞いた。塩職人が逃げ出したらしいな」
「まあ、あんな長時間労働させられたら死んじまうもんな。俺なら給料が少し高いからと言っても、あんなとこで働こうとは思わねえな」
「俺も俺も……だけど、結局逃げ出したけど、自分の部屋で死んじまったらしいぜ」
「死んじまったら何もかも終わりだってのに、おっかねえ……くわばらくわばら……」



　そのころ、塩精製工場では職人たちが、汗を流して塩の精製をしていた。

「今月の塩の生産量がたりねえぞ！もっと早く作らねえか！」

「「「「「……」」」」」
「管理官……ちょっと待ってください。今月分はもう納めたはずじゃ……」

「うるせえ！ミトンの町から注文が入ったんだよ。いちいち逆らうんじゃねえよ！」

「そんな……ちょっと待ってくださいよ！これ以上は本当に無理です」

「だったら、ここを辞めてもらってもいいんだぜ？まあ、そうなれば寮から追い出されて、また借金が増えて今度は本当に奴隷におちるかもしれないけどな……」

「くううう……」

「お前等は、言う通りに塩の生産を増やせばいいんだよ」

「ちょっとまってください！なら人員をもっと増やしてください。この間も１人死んでしまって、このままじゃ俺達も……」

「今、人を探している最中なんだよ」

「しかし、このままでは……」

「お前達も分かっているとは思っているが、今ミトンの町は人口増加が起こっているんだ。その為、塩の生産が追いついていないんだ」

「それならそれで、今のこの状況をミトンの町に説明してくれても！」

「そんなことできるわけねえだろうが！相手は貴族様だ！言われた通りにしないと、俺達が不敬罪に処されるだろうが！」

「「「「「……」」」」」

「何黙ってやがる！分かったのならさっさと作業を進めろ！」

　ミトンの町の出張塩精製工場は、ブラックな職場へと変わっていた。ヒロトシが１年ほど前に、シルフォードに忠告した事が現実のものとなったいたのだ。しかし、実際にはもっとひどい現状になっていたのだ。

　塩精製ミトン出張所は、その責任者であるケルビンは、ニヤニヤして事務所でゆったりお茶をしていた。

「これがミトンの町で発売されたクッキーという物か」

「はい。ケルビン様そのようですね」

「ほう、こいつはうまいな。紅茶にとてもあう菓子だ。それにしても、５袋だけなのか？」

「はい……なんでも一度に購入できるのが５袋までだそうです」

「一袋５枚しか入っておらんのに少ないな……」

「販売しているのが、㋪系列のお店なので誰も文句が言えないそうです」

「あの英雄か……忌々しい奴よのう……シルフォード様もあ奴の言いなりだ。まあ、当然そうなるのも無理はなかろう」

「ですが、なんとかしたいものですね」

「いやいや。絶対にあ奴には逆らうでない。じゃないと、今塩の工場が知られるわけにはいかんからな」

　ケルビンは、シルフォードに頼まれ塩工場の建設を任された貴族の一人だった。まだ貴族位は低くなんとか、出世しようと資金を集めているような貴族である。
　この塩工場を任される事によって、ミトンの町への塩の安定供給を命じられたのだ。しかし、町の人口が増えて、色々な役職が出来てきて、シルフォードの目が届かなくなっていた。

　そして、ケルビンは塩を作る職人を貧乏で借金があるような人間を雇い始め、他の職場に雇われないような人間ばかり集めたのだ。
　そして、その従業員を少し高い値段で重労働をさせていたのだった。しかし、その従業員達を工場の寮に住まわせて家賃を多めに給料から天引きをして安い賃金で長時間労働を強いた。そして、疲れ切った従業員は遅刻やミスを繰り返すと容赦なく、給料を差し引いたのだった。

「これでは、全然借金が減らないので、ここを辞めさせてもらいます」

「ちょっと待て！ここをやめてお前はどうするつもりだ？借金を返す当てはあるのか？」

「そ、それは……」

「悪い事は言わん。辞めるなんて事は言うな」

「しかし、このままでも一緒で……」

「それは君がミスをしたり遅刻をするからであろう？それさえなければ金はちゃんと貯まるはずだ。違うかね？」

「それはそうかもしれませんが……」

「だったら、君がしっかりしたら、ここをやめる必要はないだろ？」

「は、はい……」

「だったら、仕事場に戻りたまえ」

　従業員は、そのように言いくるめられて職場に戻らされた。そして、ある者は、借金が返せなくてこの工場に借金を立て替えてもらっていた者もいた。

「あの俺ももう限界です……辞めさせてください！」

「君はこの工場に、借金を立て替えてもらっているだろ？無理に決まっているじゃないか。借金はどうするつもりだね？」

「それは必ず働いて返していきます」

「いやいや……君は借りるときに誓約書にサインをしたじゃないか？」

「確かにしました。だから、それは必ず返すと……」

「そうじゃない。ここを読んでくれたまえ。ちゃんと書いてあるだろ？」

　誓約書には『借金を返さずにここを辞めるときは借りた金の３倍の値段を一括で返します』とそう書いてあったのだ。

「なっ！こんなところにこんなに小さく書いてあるなんて……こんな事が書いてあるなんて知らなかったんだ！」

「だけど、金を立て替えるときにちゃんと言いましたよね？しっかり隅々まで確認してくださいって！」

「そ、それは……」

「辞めるのなら構いませんが、一括で払って貰いましょうか？もし、払えないのなら、職場に戻るか奴隷に落ちてもらう事になりますがよろしいですか？」

「ちょ、ちょっと待ってくれ！」

「待ってくれ？」

「い、いえ……待ってください……もう辞めるなんて事言わないので、ここで働かせてください」

「そうか。君は他の者と違って期待をしているんだ。これからもよろしくたのむよ。がはははははは！」

　従業員はそのまま、事務所から出て行くしかなく落ち込みながら工場に行くしかなかった。こうして、ケルビンは逃げ場のない情況をつくり、強制労働ともいえる状況を作り出し従業員達を働かせていた。

「旦那様……もう少し塩の生産量を抑えたほうがよろしいかと……」

　ケルビンに意見をしてきたのは、眼鏡をかけてきりっとしたスタイルが抜群の女性だった。

「何を言っておる！塩の生産量を上げてミトンの町以外に送れば、資産が増やせるんだ。このような機会に儲けれるだけ儲けた方がいいに決まっている」

「しかし……今月に入って従業員が二名も……」

「いいかソフィアよく聞け！今のうちに資産を増やし、金が増やして出世する事の方が大事だ！シルフォード様に賄賂を贈ってもどうしようもない。だったら他の貴族に金を渡し、推薦してもらった方が手っ取り早いのだ」

　ケルビンは、シルフォードの目が届かない事を言い事に好き勝手していた。ミトンに送る塩の量以上に生産をしていたのだ。そして、その塩を着服し横流しをして、自分の資産を増やしていたのだった。
　そして、その塩の横領で得た金を、正義感のあるシルフォードではなく、他の貴族に賄賂を贈り自分の出世をもくろんでいたのだった。

「しかし……」

「えええい！うるさい！貴様ワシに口ごたえをするつもりか？いいんだぞ？お前を奴隷に落としても？嫌だろ？」

「そ、そんな……申し訳ありませんでした……」

「お前は、そういう処理をしてればいいのだ！だったら、ばれる事もあるまい！そうじゃないのか？」

「は、はい……」

　このソフィアと呼ばれた女性も又、ケルビンに借金を肩代わりしてもらっていて身動きのできない状態だった。