上 下
103 / 347
第3章 新しい研磨

28話 平和なひととき

しおりを挟む
 ヒロトシ達は、ようやく家に帰る事が出来た。シルフォードの屋敷を出ると、そこには大勢の町の人達が出迎えていた。
 ヒロトシ達を一目見たいと思って、集まってきていたようだ。そして、アンデット集団を討伐した、ミルデンス達も人気があり、女性達からきゃあきゃあと黄色い声が上がっていた。

「なんか変な気分だな……」
「あたし達奴隷なのに、こんな注目を浴びるだなんて」

 シルフォードの屋敷から㋪美研に帰って間、大通りには人が溢れかえり、最後には衛兵が出動することになったほどだった。

「ふう……やっと帰ってこれたな……」

「さすがご主人様の人気は凄いですね」

「何言ってんだよ。カノンもすごい人気だったじゃないか。羽は大丈夫か?」

 カノンは町の子供達に抱きつかれて、羽を触られ続けていた。飛翔族であるカノンにとって羽は普通は他人にさわられる事を嫌うが、子供達が嬉しそうに抱きついて来ていて拒否する訳も行かず、盛大にもみくちゃにされていたのだった。
 触ってくるのは子供達だけだったのが救いだっただろう。大人達は飛翔族の事をよく知っていたので、触ってくることはなかったのが救いだった。

「そんな、わたし達はご主人様あっての事で……」

「ふっ、何を言ってんだか……いいか?今回お前達もアンデット襲撃で活躍したんだ。それをみんなわかっているからこそ、ああやって集まったんじゃないか。もうお前達を奴隷だと馬鹿にする人間はこの町にはいないよ」

 ヒロトシの言葉で、カノンやミルデンス達はまんざらでもないような顔をして照れていた。

 

 そして、㋪美研は通常業務に戻ることがやっとできたのだった。㋪美研には、冒険者が通いミスリル装備で+3の効果をつけれるようになったおかげで、ダンジョン攻略がスムーズに行えるようになっていた。

「なあ、マインちゃん?」

「何しょうか?」

「俺思ったんだけどさ。あの魔道砲って+5の効果を持っているんだよな?」

「ええ、そうですね」

「ってことは、この装備って+5の効果にする事ってできねえの?」

「やっぱり気づきましたか?」

「本当に出来るのか?だったら……」

「ちょっとお待ちください!ご主人様は+5の装備を付与する事は出来ますが、その装備では無理です」

「できねえの?」

「ええ!あそこで店の護衛をしているアイリーンを見てもらってよろしいですか?」

「ああ!ここの女性達ってホント綺麗な子が多いよな」

「そこじゃありません!アイリーンの持っている装備は+5なんです」

「ほ、本当か?だったら俺のも!」

「ですが、アイリーンの持っている装備はオリハルコン装備です」

「はぁあ?嘘だろ?なんでそんな高級品を!」

「つまりですね。+5を付与する条件はオリハルコンが必要なんですよ」

「まじかよ……だったら+4はいけないのか?」

「+4の付与がしたいのならアダマンタイトが必要ですが、アダマンタイトは重量がありすぎる為、武器には向いてないかと……」

「じゃあさ!オリハルコンもミスリル装備の時と同じように㋪で生産は出来ねえのか?」

「まあ、言いたいことは分かりますが、オリハルコンは採掘量が圧倒的に少ないですからね……ミトンの町の近くにあるダンジョンだけではちょっと無理がありますね……」

「そっかあ……㋪が特別すぎるんだな……本来ミスリルですらこんなに取れないのが実状だもんな」

「ご理解のほどありがとうございます」

 今、冒険者が通常装備となりつつあるミスリルも、㋪が魔晄炉で生産量が増えたから、それが普通になりつつあったが、他の町では青鉱石が通常装備であり、ミトンの町が特別なだけだった。
 マインに話しかけてきた冒険者だけでなく、魔道砲をみて自分の装備も+5にできないかと尋ねて来る冒険者は多数いて、そのたびにマイン達はいつもその説明をしていた。
 それ故に、高ランク冒険者はミトンの町に集まってきていた。そのおかげで、ミトンの町の近くにあるダンジョン攻略は他の地域に比べてかなり進んでいて、ダンジョンからのスタンピードの心配は皆無と言っていいほど、魔物の間引きは進んでいた。



 そんな中、ヒロトシはシュガーの町に改名した自分の村に3日に1回のペースでやってきていた。村は立派になってきていて、カエデ達は自分達の家を手に入れていてそこで生活していた。今は、ハウスで作った家には護衛メンバーや棟梁やメイド達が生活をしていて、新しい家を作り続けていた。

「だんな!いつまで家を作り続けたらいいんだ?」

「後5軒ほどでいいだろう」

「誰も住まないのにか?」

「いや、ここは予備と言うか護衛メンバー達が住むところだよ。棟梁たちはここが建ておわったら、ミトンの町に帰還することになる」

「そ、そうか……」

「後はカエデさん達に、サトウキビを生産する村にしてもらうつもりだよ。護衛メンバー達には一応ここに1ヶ月住んでもらうようにする」

「主様!」

「久しぶりだな!と言っても3日ぶりだが、いつも元気だなカインは!」

「ええ!この村に来てのびのび生活できてますからね。それと倉庫の方にサトウキビを収穫しておきました」

「そうかありがとうな」

「いえ!次はもっと収穫しておきます」

 今や、護衛メンバーも魔の森を捜索できるようになっていた為、サトウキビを見つける事が出来れば、収穫していたのである。しかし、ヒロトシが向かう場所である群生地にはまだ行けなくて、魔の森の入り口付近に運良く見つけた物を収穫していたものだった。

「ああ!いつもありがとな」

「いえ!俺ももっと強くなって群生地に行けるようになるまで頑張ります」

「ああ!たのむぞ」

「はい!」

 ヒロトシは、魔の森に向かい森の奥へと入っていった。そして、サトウキビを収穫して帰ってくるのがルーティンだった。帰ってきたヒロトシに、カエデ達が出迎えてくれていた。

「ヒロトシ様、おかえりなさい」

「ああ、わざわざ出迎えてくれてありがとな。なんか生活に不便な事とか遠慮なく言ってくれよ」

「大丈夫です。こんな立派な家まで与えてくれて、これ以上のぜいたくはいえませんよ」

「そうか?新しい人間の方はどうだ?上手くやっているか?」

「ええ!大丈夫です。闇ギルドにいた時に、顔や名前も知っていたぐらいですしね」

「そうか。それは良かったな」

「それより、サトウキビは凄いですね。どんどん成長していきますよ」

「そんなにか?」

「ええ。普通あんな急激に成長はしません。それに、他の野菜もここでは成長が早い上に美味しいのです」

「へええ!それは良い事だよな」

 カエデ達の予想は、この土地に原因があると説明した。この辺りには魔素が濃いからかもしれないと言うのだ。

「ひょっとしたら魔素が濃いからかもしれませんね」

「へええ……確かに、魔の森に自生しているサトウキビは3日から6日で元に戻っているもんな。考えられない速さで復元しているもんな」

「この辺りも魔の森に近いから、その恩恵があるみたいです」

「なるほどな!まあ、サトウキビの成長が早いのは良い事だよ。引き続き世話の方よろしく頼むな」

「はい、任せておいてください!」

 シュガーの村では、サトウキビやトウモロコシ、小麦などを色々なものを育てていた。それらは成長が早く1ヶ月から2ヶ月で収穫が出来る程だった。そして、ミトンの町で売られている物より栄養が高く美味しく感じるほどだった。

「それでなんなんですが、やはりこれらの野菜を売ってみたらいかがでしょうか?この村では、こんなに処理できませんからね。腐らせるのは勿体ないかと思います」

 ヒロトシは、カエデの申し出をありがたく受け取ることにしたのだった。そして、ヒロトシはミトンの町に帰り新しいお店を開く計画を立てたのだった。


しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

◆完結◆修学旅行……からの異世界転移!不易流行少年少女長編ファンタジー『3年2組 ボクらのクエスト』《全7章》

カワカツ
ファンタジー
修学旅行中のバスが異世界に転落!? 単身目覚めた少年は「友との再会・元世界へ帰る道」をさがす旅に歩み出すが…… 構想8年・執筆3年超の長編ファンタジー! ※1話5分程度。 ※各章トップに表紙イラストを挿入しています(自作低クオリティ笑)。 〜以下、あらすじ〜  市立南町中学校3年生は卒業前の『思い出作り』を楽しみにしつつ修学旅行出発の日を迎えた。  しかし、賀川篤樹(かがわあつき)が乗る3年2組の観光バスが交通事故に遭い数十mの崖から転落してしまう。  車外に投げ出された篤樹は事故現場の崖下ではなく見たことも無い森に囲まれた草原で意識を取り戻した。  助けを求めて叫ぶ篤樹の前に現れたのは『腐れトロル』と呼ばれる怪物。明らかな殺意をもって追いかけて来る腐れトロルから逃れるために森の中へと駆け込んだ篤樹……しかしついに追い詰められ絶対絶命のピンチを迎えた時、エシャーと名乗る少女に助けられる。  特徴的な尖った耳を持つエシャーは『ルエルフ』と呼ばれるエルフ亜種族の少女であり、彼女達の村は外界と隔絶された別空間に存在する事を教えられる。  『ルー』と呼ばれる古代魔法と『カギジュ』と呼ばれる人造魔法、そして『サーガ』と呼ばれる魔物が存在する異世界に迷い込んだことを知った篤樹は、エシャーと共にルエルフ村を出ることに。  外界で出会った『王室文化法暦省』のエリート職員エルグレド、エルフ族の女性レイラという心強い協力者に助けられ、篤樹は元の世界に戻るための道を探す旅を始める。  中学3年生の自分が持っている知識や常識・情報では理解出来ない異世界の旅の中、ここに『飛ばされて来た』のは自分一人だけではない事を知った篤樹は、他の同級生達との再会に期待を寄せるが……  不易流行の本格長編王道ファンタジー作品!    筆者推奨の作品イメージ歌<乃木坂46『夜明けまで強がらなくていい』2019>を聴きながら映像化イメージを膨らませつつお読み下さい! ※本作品は「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」にも投稿しています。各サイト読者様の励ましを糧についに完結です。 ※少年少女文庫・児童文学を念頭に置いた年齢制限不要な表現・描写の異世界転移ファンタジー作品です。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...