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第3章 新しい研磨

23話 ネクロマンサーの秘策

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 シルフォードは、兵士と王国騎士達に今回の作戦を指示した。ギルドマスターも又、冒険者達に今回の作戦を指示したのだった。

「そんな事で本当に大丈夫なのか?」
「そうだ!南門と言えばドラゴンゾンビが迫って来る方向だぞ?」
「ヒロトシ様が出ると言うのならわかるが、奴隷で本当に大丈夫なのか?」

 冒険者達は、ギルドマスターに詰め寄った。

「そんなこと、俺たち役員もヒロトシ様に確認は取った。しかし、大丈夫だとおっしゃったのだ!それに信じられない事もな」

「信じられないってなんだよ」

「ヒロトシ様の奴隷達は、あの魔の森を探索できるほどに強くて、多分この町では敵う者はいないって事だ……」

「「「「「馬鹿な……」」」」」
「あの魔の森を探索だと……」

「ああ。だから南門の事は心配せず、西門を頼むとのことだそうだ。それと、ドラゴンゾンビを始末したらすぐに援軍を送るそうだ。それまで魔道砲で凌いでほしいそうだ」

 冒険者達は、魔の森と聞きヒロトシ達の作戦を遂行するしかなかった。それほどまでに、魔の森は危険な地域であり、一般冒険者は近づく事すら出来ない場所だった。

「そこまで言うのなら、奴隷達の活躍をお手並み拝見としようか」
「そ、そうだな!」
「結局は相手にできずヒロトシ様が手助けに入るぜ」

 中には、自分が奴隷達より弱いというこの状況を認められず、強がって悪態をつく冒険者もいた。

「大丈夫だよ。その奴隷達は、この日の為に死に物狂いで訓練したからな」

「「「「「ヒ、ヒロトシ様⁉」」」」」
「い、いや、これはそういう意味じゃなくて……」

 まさか自分達の後方に、ヒロトシがいるとは思っておらず、悪態をついた冒険者達は冷や汗があり得ないぐらい流れていた。

「まあ、現実は受け止められないと思うが、君達は西門をよろしく頼む」

 ヒロトシは、今は一致団結させないと本当にやばいと思い、こうして冒険者達の所にやってきていた。

「や、やめてください!俺達が悪かったです。頭を上げてください」
「そ、そうです」
「俺達が悪かったです」
「そうです、西門は俺達冒険者が必ず守って見せます」

 冒険者は処罰されると思って焦ったが、ヒロトシがいきなり頭を下げたので別の意味で焦りまくっていた。

「そうかよろしく頼むよ」

 そういって、笑顔でヒロトシは南門に向かったのだった。

「ったく……お前達は……これが終わったらちゃんと謝罪をしておけよ」

「俺達大丈夫かな?」
「これが終わったら処罰されるんじゃ……」

「ヒロトシ様はそんなことしねえよ。俺からもちゃんと謝ってやるから心配すんな」

 ギルドマスターは、悪態をついた冒険者の頭を軽く小突いて苦笑いをした。

 そして、持ち場に戻ったヒロトシは、ミルデンス達に檄を飛ばした。

「もうすぐここにドラゴンゾンビがやって来る。今まで通りに対処すればお前達の敵ではない」

「「「「「はっ!」」」」」」
「「「「「はい!」」」」」」

 ヒロトシの前には、ミルデンスを始めミランダやアイリーン達総勢20名が神妙なおもむきで、ヒロトシの言葉を聞いていた。

「俺はここから、お前達を見ているだけだ。もし危ないと思ったら、魔道砲で援護射撃をしてやるから、心配はいらない。思い存分暴れて欲しい。以上だ!」

「分かりました!」

 ミルデンス達は、やっとヒロトシの役に立てると思い笑顔でその時をまった。

 他の門は、緊張で暗く沈み切っていた。各城門には、セバスやマイン達が魔道砲を設置して、兵士や冒険者達とアンデット集団がやって来るのを待っていた。

「皆さま!大丈夫です。この作戦は皆様の勝利におわる事になりましょう」

「おい!セバスと言ったな?」

「はい」

「お前はこの状況が本当に分かっているのか?数年前の時とは違うんだぞ」

「それはこちらも同じ事です。大丈夫ですよ」

「……」

 本当なら冒険者や兵士達は、この奴隷達を殴りたかった。何でこんなに平然としていられるのかイラついてきていたからだ。
 すると、見張り台に立っていた兵士が鐘をガンガン叩き、アンデット集団が来た事を報せた。

「き、来たぞ!前回と同様、全体が把握できない!」

「み、皆さま!魔道砲に魔力をよろしく頼みます」

 セバス達が、魔法使いに魔力提供をお願いした。すると前回より早く魔力充填が出来た。

「もう貯まったのか?」

「今回は、魔道砲の真の威力が発揮されます」

「真の威力だと?」

「まあ、見ていてください」

 セバスはそう言って、アンデット集団に魔道砲を発射したのだった」

「ま、待て!もうちょっと近づけないと!」

 冒険者達の言葉も聞かず、セバスは発射ボタンを押したのだった。すると前回とは違い、パラボラアンテナの部分は真っ赤にならず、光が満ち溢れたようになった。

「お、おい!あれは?」

 前回、魔道砲は発射ボタンを押すと、パラボラアンテナの傘の中心に設置してある火属性の魔石が反応して傘の部分が真っ赤になって放射されたのだが、今回は光が満ち溢れていた。

「今回は前回の失敗を考慮してます!」

 しかも、前回より届く距離が断然違ったのだ。その光がワイド上に拡がりアンデットを包み込んでしまった。そして、その光に当たったアンデットは、ターニングアンデットされたかのように浄化してしまったのだった。

「お、おい!セバスとやらどういう事なんだ!」

「前回、魔道砲に設置してあったのは火属性の魔石でした。しかし、それだと後始末に莫大な町の予算を使う事になり、ご主人様は反省して今度は聖属性の魔石を設置したのでございます」

「聖属性の魔石だと⁉」

「ですから、魔道砲から発射された魔法はホーリーライトやターニングアンデットの様に、アンデットモンスターを浄化させる効果のものです」

「す、すげぇ……」
「こ、これなら何とかなるかも」
「それに何だよあの効果範囲は⁉前回よりぜんぜんすげえじゃねえか!」

「これが本来の魔道砲の威力ですよ」

「どういうことだよ?」

「前回は旦那様の研磨効果が1ヶ月を過ぎ+4の効果に落ちてしまったのです。しかし、今回は旦那様が日々のメンテナンスをして本来の効果がでているのですよ」

「す、すげえ!」

 パラボラアンテナの傘の部分は、ヒロトシが研磨をして+5の効果が出ている。前回は塩を作りに1ヶ月町を留守にしていて、+4に落ちていた。
 しかし、今回はヒロトシがインベントリに保管をしていた為、時間経過がなく+5の効果で威力を発揮していた。
 そして、今回の奇襲はネクロマンサーだと言う事も、予想していた為火属性から聖属性の魔石に変えていた。

 これにより、森は燃えずにアンデットも浄化して死体も残らないので後々の事も考えた作戦だった。




 それを見ていて焦ったのがネクロマンサー達だった。

「何だ今のは!」
「前回と全く違うではないか!」
「照射距離が全く違うではないか」
「どういう事なんだ!」
「まあ、待て。こういう事もあろうかと思って、もう一つ切り札を用意したではないか!」
「なるほど!」
「じきにエルダーリッチも作戦を変えるだろうよ」



『くかかかかかか!まさかあの兵器がホーリーライトを出せるとはな』

『エルダーリッチ様……どういたしますか?』

『あれならあれで召還する魔物を変えればいいのだよ』

『な、なるほど』

 エルダーリッチは、アニメイトデットからサモンデーモンへと魔法を変えたのだった。これで、大量のアンデットの中にデーモンである、悪魔族が出現する事になった。

「あ、あれはひょっとして悪魔族か?」

 アンデットに紛れて、ガーゴイルや蝙蝠の羽を生やし、漆黒の肌をして異形の形をした悪魔が、ミトンの町に向かってきたのだ。その中には得体のしれない形をした者や、サキュバスなどもみられたのだ。

「あいつ等には、ホーリーライトは効果が出ないみたいだぞ?ライトに浴びて消え去るのはアンデットのみだ!」

 見張り台に立っている兵士から大声で言われた。

「アーチャー隊、魔法師団は早く城壁に昇り準備をせぬか!」

 ここでギルドマスターが檄を飛ばした。ホーリーライトが効果が無ければ、冒険者達が弓矢や魔法で対応すればいいだけである。
 下級アンデットは魔道砲で対処をして、悪魔族は正攻法で対処すれば問題はなかった。

 しかし、悪魔族の厄介な所はレジスト能力がある所だった。悪魔族よりレベルが低いとその攻撃の何十%かダメージが通らないのである。
 仮に100ダメージを与えても、そのダメージの半分以上通らなくて殺すのに時間がかかると言う訳だ。悪魔族を倒すには、レジストをされてもそんなのを関係のないぐらいの大ダメージを与えるのが有効なのだ。

「ちくしょう!このままではミトンの町が!」

「皆さん落ち着いて下さい!」

「これが落ち着いていられるか!あの悪魔をどうにかしないと!」

「旦那様はこういった想定もしておられます。こちらの魔道砲に魔力をお願いします」

「魔道砲2台で攻撃しても一緒だろうが!あいつにはホーリーライトが効かないんだぞ?」

「こういう時の為に、こちらの魔道砲は前回と同じ、火属性の魔石が設置されています。こちらの魔道砲は対アンデットではなく、それ以外の魔物に対しての魔道砲でございます」

 その説明に、冒険者達は歓喜に震えたのだった!

「それは本当か?」
「さすが、ヒロトシ様だ!」
「抜かりはないってか!さすがだぜ」

 セバスはそう説明し、火属性の方の魔道砲を発射した。するとその火力は前回とは違い物凄い熱線が放射され、ブラックデーモンはその火力に燃え尽きてしまった。

「すげえ!」

 ブラックデーモンや、ガーゴイル、サキュバスなど悪魔族はなすすべもなく燃え尽き、その威力に冒険者達は歓声を上げたのだった。


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