研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第3章 新しい研磨

17話 砂糖

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 ヒロトシは、トラックに乗りミトンの町へと帰還した。

「貰った土地はいかがでしたか?」

「セバス聞いてくれ!凄い発見をしたよ」

「どういう発見ですか?」

「これが軌道に乗ったら、ミトンの町は更に裕福になると思うよ」

「それは凄い。で、どういったものですか?」

「砂糖だよ。砂糖!」

「砂糖と言うのは、エルフ国の特産の甘い粉の事ですか?」

「ああ!魔の森の中に自生してたんだ」

「本当ですか?魔の森に砂糖豆が自生していたというのですか?」

「いや、砂糖豆じゃないんだ。サトウキビと言う植物だよ」

「どういう事でしょうか?」

 ヒロトシは、サトウキビをインベントリから出しセバスにみせた。

「まあ、これを口に含んでみな?」

「こ、これは!甘い」

「これで砂糖を作るんだよ」

「もしこれが成功すれば、とんでもない事になります。砂糖はエルフ国から少ししか輸出されません。その為、この町に行商が来たら奇跡と言われております」

「だろ?たぶん㋪で独占できると思うぞ」

「どういう事ですか?自生しているというのなら他の人間でも採取はできるとおもうのですが?」

「自生していた場所が問題なんだ。魔の森の入り口とはいえ、AランクやSランクの魔物が、普通に出没する場所まで行かないといけない」

「そんな危険な場所に?」

「ああ……その場所から2m3mになろうとする植物を運ぶとなると、とんでもない労力になるからね」

「そんなに育つ植物なのですか?」

 セバスに与えたサトウキビは細かく砕いたもので、実物を見せたら目を見開いて驚いたのだった。

「これが上手く行けば、塩の問題どころかこの町は王都より賑わうかもしれないな」

「た、確かに……」

 ヒロトシは、まず研磨の作業をか片づける事にした。そして、ガイン達にサトウキビをローラーで糖分を絞り出す道具を作ってもらう事にした。
 サトウキビを絞った汁をろ過をする。そして、その汁をアヤ達メイドに煮詰めて貰い、煮汁を濃縮してもらった。
 そして、最後にその煮汁を冷やす必要があるのだが、砂糖を商品化するにあたりいちいちヒロトシが魔法で冷やす事をしていられないので、冷蔵庫を作ることにした。
 水属性の魔石を使う事で冷蔵魔道具を開発したのだった。煮汁を冷やす事で固まり、それを砕けば黒糖の出来上がりである。

「砂糖が黒いのですか?」

「ああ、これは黒糖と言ってコクがあり甘いぞ」

 アヤ達はその甘さに驚いたのだった。たしか、エルフ国の砂糖はここまで甘くはないのだ。アヤ達は以前貴族のお屋敷で働いていた。その時砂糖を一度だけ味わった記憶があったのだ。
 その精製補法に甘さの違いがあった。エルフ国は砂糖豆の殻を剥き、白色の豆の部分をすり潰す事で砂糖は出来ると聞いていた。多分、サトウキビと違うことは糖分だけを抽出していない事で、甘みが違うのだろうと推察できたのだった。

「本当は上白糖を作りたいが、真空管や遠心分離機がいるから諦めたが、黒糖でも十分勝負できそうだな」

 これらの工程が全てすんだのは半年後の事だった。




 その間もヒロトシは、カエデ達が住む村に通い続けていた。

「みんな、お待たせ。元気していたか?」

「ご主人様!みてください。大工の棟梁達凄いですよ。3日であそこまで家を建てちゃいましたよ」

 あそこまでとは言ったが、まだ基礎工事の段階だった。

「順調そうで何よりだ。それと結界の方はどうだ?大丈夫だったろ?」

「はい!それはもう。結界内に入れない魔物達は矢で狙い撃ちで楽勝でした」

「盗賊の部類は?」

「いえ、それはありませんね。この地域が危険地帯なので、人間は足を踏み入れないみたいですね」

「分かった。じゃあお前達は作業を進めてくれ。1ヶ月したら交替するから頑張ってくれ!」

 ヒロトシが言った作業とは、畑仕事である。日頃魔物がいない時は、この村で野菜を作る事になっていた。

「えっ……」

「えって、何だよ……」

「いえ……わたし達1ヶ月ここで生活するのですか?」

 ミランダたちは、聞いてないよとばかりに落ち込んでいた。

「そんなに落ち込むな」

「でも、ご主人様と1ヶ月も会えないだなんて……」

「だから、3日に一回はこうして逢いに来るだろ?」

「ですが……ここにきても、すぐに森に出向いてそのあとすぐに帰るじゃないですか?」

「それはしょうがない。俺も帰って研磨作業をしないといけないんだからな。お客を待たせるわけにはいかん」

「でも……」

「甘えるんじゃない。1ヶ月なんてすぐだよすぐ。それにここで修業をしたらレベルも上がるだろ?」

「それはそうですが……」

 護衛メンバーは、魔物が入れない城壁の上から矢を撃てばいいだけであった。今の現状は、安全地帯から狙い撃ちで経験値が入るので手軽にレベルが上がっていくのである。
 普通なら、BランクやAランクの魔物を、そんなに手軽に討伐などできない。しかし、安全地帯から余裕で討伐が出来、魔物が逃げたら放っておけばいいからだ。

「お前達が成長すれば、俺の護衛も務まるかもしれないから頑張れよ」

「本当ですか?」

「まあ、お前が成長しても俺はさらに上をいくだろうけどね」

「それじゃあ、意味が無いじゃないですか?」

「意味が無いと言う事はないだろう?お前達の経験は何一つ無駄はないんだぞ?」

「でも……」

「お前達は何でそうなんだ?ガイン達も同じような事で文句をいうんだ」

「どういう事ですか?」

「ガイン達も今のままじゃ意味が無いと言っていたんだ。今はやっと鏡面研磨が出来るようになって、手鏡を徐々にやり始めている」

「それとわたし達に何の関係が?」

「一緒だよ。今あいつ等が鏡面研磨が出来るようになったのは、下積み時代の3年があってようやくスタート地点に立てたんだよ?無駄な事なんて一つもない。護衛メンバーであるお前も、今は俺よりは弱いが弱いなりにやれることはたくさんあって、それはお前の未来に役立つはずだぞ?」

「わたしの未来ではなく、今のご主人様の側で役に立ちたいと言っているのです」

「お前達は、十分に役に立っているよ。功を焦るな!お前達は直接危険が伴う仕事だ。焦るととんでもない事になるんだぞ?」

「それは……」

「いいか?お前達が、ここでカエデさんや俺の家族であるメイド達を護衛メンバーとして行動しているからこそ、俺は安心してミトンの町で商売が出来るんだ。十分に役に立っているじゃないか」

「でも……」

「いいか?今の経験は絶対に将来の糧になる。今のまま、俺の側で成長せずレベルだけ上がっても、張りぼての護衛になるぞ。これは絶対に言える事だ」

「張りぼて……」

「ああ、そうだ。俺の研磨依頼はBランク冒険者からだって事は知っているだろ?」

「はい……」

「レベルが低いうちに、強力な武器が手には入ればそれに振り回されるから、研磨依頼はBランクからだ。お前達もそう言えるんだぞ?俺の側で強くなっても意味が無いんだ。ここの魔物は強すぎる為、絶対に未来の自分や俺の役に立つ」

「未来のご主人様の役に?」

「そうだ!ガイン達もこの3年間下積みで俺の足を引っ張っていたが、それはしょうがない事だ。なんせ、経験が無かったんだからな。しかし経験を積んで、今は俺がいなくても手鏡の生産は止まらない様になった」

「過去のガイン達は、今のわたし達と同じと言う事なのですか?」

「ようやくわかったか?」

「では、わたし達も護衛メンバーとして、未来のご主人様の役に立てると?」

「ああ。今は俺の側にいても反対に俺に守られるだけだ。将来的にはある計画を立てているから、それを楽しみにして、今は経験値を積む事だ」

「その計画は教えてくれないのですか?」

「ああ、教えない」

「ご主人様の意地悪!でも、わかりました。今は自分の為に頑張ります」

「それでいい。その頑張りが、将来俺の役に立てるようになるからな」

 ヒロトシの頭の中にはある計画があり、それに対して進めていくのだった。


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