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第3章 新しい研磨

2話 城門前で一泊

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 ヒロトシ達は、次々王都の中に入れる旅人や冒険者達を横目に城門の前でトラックを駐車し、長い間国王からの返事を待っていた。
 
「「ねえ、ご主人様……」」

「2人共どうした?」

 やはり、サイファーとルビーの二人には退屈だったようで、30分もしない内に暇を持て余していた。運転席と後ろのコンテナは、窓で繋がっていて愚痴を言うのだった。

「「これは退屈です……」」

「二人とも我慢しなさい」

「「だって、セバス……」」
「何もすることが無いんだよ……」

「確かに退屈だな……しかし、王城まで確認しているみたいだからな……」

「ご主人様もそうでしょ?」

「そうだけど、多分4、5時間は余裕でかかると思うぞ……」

「「ええぇ……」」

 ヒロトシも知らないことだが、兵士が連絡を持ってくる事が出来るのは、その倍の10時間ほどかかる事になる。それほどまでに王都は大きく、ミトンの町とは比べようもない大きさだった。

「ねえ、やっぱり町には入れてもらえないですか?」

 ヒロトシは、城門警護の衛兵に尋ねたが申し訳なさそうに断られてしまった。これはしょうがない事であり、衛兵も任務に忠実にこなしているだけである。
 本来なら、ギルドカードがあればフリーパスで王都に入場することが出来るが、ミトンの町からの日数と王都への用事が国王に会いに来たと言う理由で、衛兵も用心には用心をしないといけなかったからだ。

「申し訳ない……こちらとしても用心をさせていただきたいのだ」

「分かりました……」

 ヒロトシとしても、これ以上文句を言ってもどうしようもないと諦めた。入れてもらえなければ帰還しても良かったのだが、今回の用事は王族相手なのでヒロトシもまた用心をして大人しく引き下がった。




 運転席に戻ってきたヒロトシに全員が王都に入れるか聞いてきた。

「「「「「どうでした?」」」」」

「やっぱり無理だって……」

 その答えに全員がガックリした。

「しょうがない……ここを少し離れてハウスの中でくつろごうか」

 それを聞き、全員が歓声を上げたのだった。ヒロトシ自身もずっとここで時間を潰すより、部屋でゆっくりした方がいいと思っていた。

「あの……ここから少し離れた場所に移動してもいいですか?申し訳ないですが、連絡が来たら呼びに来ていただけますか?」

「どこに行くつもりだ?」

「あの広場にキャンプでもしています。ここにいても退屈なだけですし」

「わかった。そんなに離れないのならいいぞ。多分10時間以上はかかるし、今日中に入れるかわからんからな」

 ヒロトシは、衛兵の答えに愕然とした。そんなにかかるのなら最初から言ってくれたらいいのにとおもったのだ。
ヒロトシはすぐにトラックに戻り、全員にコンテナから出てもらいトラックをインベントリに収納し、全員で広場に向かったのだった。
 この場所は、王都に来たが日暮れまでに間に合わなかった人間が、キャンプする土地である。

「王都にはこんな場所があるんだな……」

「旦那様、ミトンの町にもこういう場所はありますよ」

「そうなのか?」

「まあこんなにも大きな土地ではありませんがね。夜になれば、夜勤の衛兵が駐在しますし比較的安全ですよ」

「へええ、まあ俺達には関係はないけどな」

 ヒロトシ達は、他の人間が来た場合の時を考えて、王都から離れた場所にハウスに魔力を送り一軒家を建てた。当然こんな場所にいきなり家が出現して、王都に帰ってきた冒険者や行商人や旅人たちは目を見開き驚いた。

 そして、城門警護の衛兵もびっくりして、家にとんできたのは当たり前だった。

「ふう……やっと落ち着けるな」

 ヒロトシが大広間のソファーに腰かけた途端、家の扉が激しくノックされたのだ。そして、すぐにセバスは扉を開けるとそこには、城門からダッシュしてきたであろう衛兵が扉の前に立っていたのだった。

「どうかいたしましたか?」

「どうかしたではない!なんだこれは?」

「なんだこれはと言われても、今日は王都に入れないと旦那様からお聞きしました。なので、今日はここで泊まる為にキャンプを……」

「キャンプではないだろうが!どこから家を……」

「うちの主人ヒロトシ様は有能な方なのですよ。衛兵の皆様も持っていると思うのですが、この家はダンジョンから出るハウスという魔道具です」

「馬鹿な事を!ハウスは知っているが、ハウスがこんな家になる訳がないではないか!普通はテントのようなものである」

「そんな事を言われても、実際家を建てれるのですから、それに対して文句を言われても困るというものですよ」

「そ、それはそうだが……」

「それで、ご用件はそれだけでしょうか?」

「あ、ああ……」

 ヒロトシは、他の人間に困らない様に、王都から一番離れた場所に家を建てたので、こんな場所にキャンプをする人間はいなかった。こんな離れた場所を使う時は、他の国の王族が訪問した時に、一緒に護衛に来た兵士がキャンプをするときぐらいだった。その為、城門警備の衛兵もそれ以上問いただす事が出来なかったのだ。

「それでは、失礼します」

 セバスは、家の扉を閉めてしまったのだった。衛兵達もそれ以上は何もできなくて、城門に帰るしかなかった。

 家の中には、ヒロトシが魔力を込めて作った家だけあって、地球にあるような娯楽があり、モニターも設置してあり映画鑑賞や音楽も聴けるし退屈することはない。
 ただ、TVのような放送局がないのでバラエティーや歌番組などはなかった。そんな家が突然出現したので、衛兵達が慌てるのは無理はなかった。

 ヒロトシ達は、1週間そういった旅をしてきて、この世界の旅とは全然違っていた。

「ご主人様の旅は本当に楽でした」
「本当ですよ。もう普通の旅は出来そうもないです」
「わたし達も、冒険者の時に旅はしていましたが、町に帰って来た時はすぐに井戸に体を洗いに行ったほどですよ」
「そうよね……冬は本当に辛いのよね……」

「俺もそんな話を聞くだけで旅はしたくないよ。ハウスやトラックが無かったら、俺は絶対に今回の事は断っていたよ」

「でも、旦那様……それは無理だったと思いますよ」

「なんで?」

「相手は王族です。シルフォード伯爵様を救った人間に報奨を与えないなんて、王族のプライドが許さないと思いますよ」

「その時は、ミトンでの生活は惜しいけど身を隠すよ。1週間旅をしたけど俺にはこれが限界だよ」

 ヒロトシはアイリーン達の話を聞き、半年以上もかけて王都に来る事を考えたら報奨というより、罰ゲームだと言い絶対にいらないと言い切ったのだった。



 そして、やはり兵士達はその日のうちに、ヒロトシを呼びに来る事はなく、次の日の朝早く焦った様子で家の扉をノックしたのだった。

「ヒロトシ殿!」

 家の扉を開けたのはセバスだった。

「こんなに朝早くどうかしたのですか?旦那様はまだお休みですが?」

「今回は申し訳ありませんとお伝えできませんか?ようやく、主君から連絡がきて失礼の無い様に対応しろと申されて……」

「分かりました、そのようにお伝えしておきます。旦那様は朝7時に起床いたしますので、8時ぐらいにはそちらの方に行けると思います」

「分かり申した。では、城門の列には並ばず、直接城門の方に来てください。そのまま王城に案内します」

「分かりました。旦那様にはそうのようにお伝えしておきます」

「よろしくお願いします」

 そのように衛兵はセバスに伝えて、城門に帰っていった。


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