研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第2章 研磨という技術

25話 冒険者達とのパイプ

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 今回の事で、ミスリル鉱石が又、手に入ることになった㋪は魔晄炉を使い、ミスリルを抽出してミスリル武器を販売し出した。
 すると、冒険者はそのことを歓迎し、朝一で㋪に並びミスリル武器を買い求めたのだった。

「マインちゃん!やっとミスリル武器が販売できるようになったのか?」

「おかげさまで」

「ホント俺達待ってたんだぜ」

「お待たせしてごめんなさいね」

「待たせたお詫びに、今度食事でもどうだい?」

「それとこれは話は別です!私の身も心もご主人様の物ですからごめんなさい!」

「やっぱだめかぁ~~~!」

 横から女性冒険者が口を挟んできた。

「当たり前でしょ!あんたみたいな甲斐性なし誰が付き合うってのよ」

「ひでぇ……」

「「「「「わはははははは!」」」」」

 ㋪美研のホールは冒険者達で賑わっていた。その時、アリベスが㋪美研に入ってきたのだった。生産ギルドを見た冒険者達は先ほどまでの笑顔は無くなり、㋪美研から出て行ってしまったのだった。

「行こうぜ!」
「そうね。ホントどういう神経しているのかしら」
「本当だぜ、あんだけ㋪に迷惑をかけておいて、採掘師をそのまま許すなんて信じられねえぜ」

「ぐっ……」

 アリベスは、冒険者達の声にぐっとこらえていた。生産ギルドとヒロトシの間で交わされた事だが、冒険者としてはミスリル装備が買えなかったことにどうしても納得が出来なかったみたいだ。
 それ故に、いまだ採掘者達の護衛依頼を受けてもらえない状態が続いていたのだった。これには、領主も困り果てていたのだった。ダンジョンに入らないとミスリル鉱石のようなレア鉱石が採掘できないのである。
 地上の鉱山でも採掘は出来るが、さらに少なくなりほとんど採掘できない状態だったからだ。

「「アリベス様いらっしゃいませ」」
「食器類の方は、月初めになると聞いていますが……」

「今日はその話ではなく……ヒロトシ様に相談というか……話しを聞いて頂きたくて……」

「ひょっとして冒険者達の事でしょうか?」

「はい……」

「それはご主人様に相談してもどうしようもない事では?」

「そ、それはそうなのですが……ヒロトシ様から冒険者達の間に入って欲しいのです……」

「ご主人様にそんな事をさせるつもりですか?いくら何でもご主人様に甘え過ぎじゃ!」

「お願いします!このままでは、本当にミスリルの採掘が出来ないのです」

「ですが、ご主人様がそんな事する必要はありませんよね?」

「そんな事言わずお願いします。このままではミスリル以上のレア鉱石は採掘できなくて産出0になるのですよ?そうなればあの廃棄場にレア素材は無くなり、ヒロトシ様にとっても不都合じゃないですか?」

 アリベスの言う通りだった。ミスリルやオリハルコンが採掘されなければ、鉄鉱石や金銀銅鉱石の屑石しか捨てられない事になる。

「いえいえ……そうなればご主人様が、ダンジョン前に行く必要は無くなるだけですよ。もし、そうなれば報酬となる鉱石はないんだから、鉄鉱石の屑石はご主人様が廃棄する必要は無くなります」

「そんな事言わないでくださいよ」

「言うも言わないも、ミスリルの屑石を使ってもいいという事で、廃棄をついでにするという約束じゃないですか?本来ならご主人様が屑石の廃棄処分をしなくてもいいはずですよね?」

「そ、それは……」

「本来なら捨ててあるものをどのように使おうが勝手のはずですよね?ご主人様はお優しい方だから、廃棄を請け負っただけという事を忘れないでくださいよ」

「本当に申し訳ございません。本当に生産ギルドだけでは、もうどうしようもないのです。どうか、ヒロトシ様に冒険者の間に立ってください。この通りです」

 アリベスは、生産ギルドの副ギルドマスターである。しかし、本当にどうしようもないのか、奴隷であるマイン達受付嬢に土下座したのだった。

「ちょ、ちょっとおやめください!副ギルドマスターが土下座なんて!」
「そうですよ!私達は奴隷なのですよ」

「貴方達はただの奴隷じゃありません。ヒロトシ様の奴隷です。ある意味平民いや……貴族様より立場は上ですよ」

「何を言っているのですか!そんなわけあるわけないじゃないですか」

 アリベスの言う事の方が正しいのだ。ヒロトシの奴隷に何かした場合、ヒロトシが許さないだろう。つまり、今ではヒロトシに忖度するのではなく、㋪に忖度しないととんでもない事になるのは誰の目にも明らかであった。

「お願いします。どうかヒロトシ様にとりつぎを!」

「「わかりました!」」
「分かりましたから、どうか土下座をお止め下さい」

 マインとアイが、焦りながらアリベスを立たせようとした。

「ちょっと、クレア!ご主人様を呼んできてください」

「わ、わかりました」

 クレアは、闇ギルドに囚われていた人間の一人で魔族の女性である。普段はおっとりした癒し系の美人であり、冒険者達からも人気の女性だ。

 クレアはマインに、ヒロトシを呼んできてほしいと言われて、慌てて呼びにいった。

「もう……こんな無茶な事はおやめください」

「でも、このままではこの町には、ミスリルの販売が本当にこの店だけになってしまうのです」

「そんな事を言われても、ご主人様には関係のない事ではありませんか?それにご主人様が、そんな頼みごとをタダで受けると本当に思っているのですか?」

「それは……」

「本当によろしいのですか?今回冒険者とのパイプを受けたら、食器セットの配分が又変わりますよ?」

「そ、そんな……」

 するとカウンターから、ヒロトシの声が聞こえてきた。

「まったくあんた達、生産ギルドは本当に厄介だな」

「ヒロトシ様!」

「話は聞いたが、俺が冒険者達とのパイプ役をしたら、マインの言う事は現実になるよ」

「そ、それは……」

「まあ……でも、このままだと町の財政も厳しいものとなるのは本当みたいですね?領主様」

「えっ⁉」

「ああ……何とかならんかな?」

 ヒロトシの後ろには、領主のシルフォードがいたのだった。実は領主も、ヒロトシに採掘師の護衛依頼をなんとかして欲しいと、頼みに来ていたのだった。
 シルフォードも、このままでは地上の鉄鉱石だけでは、採掘師達が他の町に移住してしまうと、相談に来ていたのだった。
 他の町に行けば、冒険者からの護衛依頼は受けられる為、ダンジョンに入る事が出来るが、この町では今回の事で冒険者達と溝が出来てしまった為、ダンジョンに潜る事が出来ないからだ。それならば、この町に固執する必要は無く移住する人間が出てくるのも時間の問題だった。

「アリベスさん。今回はこのように、領主様の依頼でもあるから心配しなくてもいいよ。俺が冒険者とのパイプになってあげるよ」

「ほ、本当ですか⁉」

「ああ……だから、もう少し待ってておくれ。採掘師の人間には、生産ギルドから説明しておいてくれ」

「わかりました!本当にありがとうございます!」

 アリベスは、何回も領主とヒロトシに頭を下げていた。そして、領主とアリベスは客室に案内されて話し合いになった。

「しかし、ヒロトシ君。今回はどのように冒険者達を説得するつもりだい?私も冒険者ギルドに頼んだのだが、いまだ冒険者達は納得しておらんのだぞ?」

「生産ギルドでも依頼料を上げたんですが、誰一人受けてくれないのです」

「そりゃそうですよ。今回の事は採掘者の理不尽な暴走です。冒険者達にも、それも高ランク冒険者に迷惑をかけたんですよ?実力主義である高ランク冒険者がボイコットしているのに、下の者が動くわけありませんよ」

「では、どうすれば……」

「本当はもうちょっと、ミスリル装備が全体に広まってからにしたかったんですがしょうがないです」

「「ミスリル装備がひろまってから?」」

「ええ。俺がミスリルを安く販売したのはどうしてだと思います?」

「それは日頃の感謝だと言っていたではありませんか?」

「俺は商人だよ?そんな慈善事業をするわけないだろ?言葉のあやだよ」

「じゃあ、ヒロトシ君は何かのメリットがあって、ミスリルの装備を広めたというのかい?」
「それはどんなメリットがあるのですか?……安く売っているのがデメリットじゃ」

「ミスリル装備は高くてなかなか買えないから、高ランクの冒険者ですら青鉱石やダマスカス鉱石製の装備なのは知っているでしょ?」

「まあ、ミスリルは中々抽出できないからな。しょうがない事だよ」

「それでは俺の磨きが活かせないんですよ」

「磨きが活かせないってどういう事ですか?十分冒険者に活かされているではありませんか?」

「実は俺の研磨は、ミスリルじゃないと+3装備にできないんですよ」

「「はっ?」」

「+3装備だと?それは本当か?」
「ま、まさか……そんな事が可能なのですか?」

「えぇ。ミスリルの材料で作られた装備を800#研磨する事で、俺の研磨技術は+3装備にすることが出来るんだよ」

「それが本当なら、冒険者は大騒ぎになるぞ?」

「だから、これを条件に交渉してあげますよ」

「それなら、冒険者はヒロトシ様の言う事を聞いてくれる!」

「ただ、問題はまだミスリル装備を購入できていない冒険者だ……その人達をどのように説得するかだな」

「では、生産ギルドが職人を用意しましょう。材料を貰えれば製作に協力しますよ」

「製作料はいくらだ?」

「それは、生産ギルドが負担します。㋪はミスリルを用意して頂ければなにもいりません」

「本当にいいのか?」

「冒険者達が、採掘者の依頼を受けて貰えるようになるのが最優先です。それにそれぐらいしか協力できないことを許してください」

「わかった。生産ギルドに甘えさせてもらうよ。冒険者ギルドのほうは任せておいてくれ」

 その話を聞いた、シルフォードとアリベスはホッとした顔となっていた。


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