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第2章 研磨という技術
23話 謝罪の代償
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生産ギルドのギルドマスターロドンは、採掘師の高ランクメンバーを集めた。そして、すぐさま㋪に謝罪する様に命じたのだった。
「お前達、とんでもない事をしてくれたな」
「とんでもないと言われても私達はただ……」
「何を言っておる!ヒロトシ殿にダンジョン前の屑石を使うなと言ったそうじゃないか!」
「しかし、あの屑石でミスリルを勝手に使われたら、こちらとしては商売あがったりじゃありませんか!」
「お前達の言っていることは理解できん!あの屑石は廃棄した物だ。ヒロトシ殿がどのように使おうが、お前達には関係ない!」
「だけど……」
「そのせいで廃棄に掛る予算は、ギルドで責任を取れと領主様に言われたんだぞ!この責任をどうとるつもりだ?」
「えっ……」
「分かっているのか?我々だけでは、ダンジョンの中に入る事は出来ん!つまり、これからはお前達鉱石の依頼は廃棄に掛る金も、ギルドが取らないと維持が出来ないと言っておるのだ」
「そ、そんな!」
「いいか?そんな事になれば、ミスリルの依頼はまだ何とかなるが、鉄鉱石の依頼になれば掘れば掘るほど赤字になるんだぞ?」
「それじゃあどうすれば……」
「これはお前達の責任だ!ヒロトシ殿に謝罪をして、廃棄を請け負ってもらうしかない」
「そんな……あれだけの事をして、私達が今更謝罪しても……」
「そんな事を言っている場合か⁉このままだと、お前達はギルドから永久追放とし、ギルドに損害を与えたとして損害賠償請求をするぞ。それでも良いのか?」
「「「「「そんな!」」」」」」
「そんなではない!このままでは生産ギルドミトン支部は本当に立ち行かなくなるんだぞ?ワシも、一緒に謝罪に行くからお前達も一緒に来るんだ」
ギルドマスターロドンは、副ギルドマスターアリベスと幹部を引き連れ、採掘師を連行するかのように引きずって㋪に面会を求めたのだった。
「すまない!ヒロトシ殿と面会をしたいのだが会わせていただけないだろうか?」
「ギルドマスターさん。鏡の納品はちゃんとしますので、面会はお断りしたはずですよ」
「そうですよ。ご主人様も暇じゃないのですよ」
「そうではないのだ。今回の事は、構成員がとんでもない事をしたのは重々承知しています。だからこの通り、今回いらぬこと言った者達も一緒に謝罪がしたいのだ」
マインとアイが、視線を移すとそこには罰が悪そうにしていた採掘者達が一緒にいたのだった。
「それにしては当の本人たちは、頭を下げていないように見えますが?」
「お前たち何をしておる!頭を下げぬかぁ!」
そう言ってギルドマスターは、採掘師達の頭を押さえつけたのだった。
「何で奴隷になんか?」
「何言ってんのよ。貴方達は!奴隷とか関係ない。ちゃんと謝罪しないと、貴方達は奴隷に落とされ、ギルドも潰れるのが分からないの?」
採掘師の言い分に、アリベスが怒鳴ったのである。これには幹部の人間も採掘師を非難したのだった。
「こうしてそろってやってきても、ご主人様はお会いにはなりません。だいたいの事情は、領主様から聞いております」
「そこを何とか……このままでは本当に生産ギルドは……」
「ですが今回の事は、ご主人様はそこにいる採掘師の皆様方に後悔しないとの了承を得ております」
「そうです。そして、ご主人様はもう二度とあの屑石には関わり合いにはならないと言ったはずです」
「「「「「「ぐっ……」」」」」」
「領主様からも5年間は予算が組めないと聞いていますが、6年目からあらたに予算を組んでくれるとのことです。それまではそちらの採掘師の皆様の依頼料を削るなりして、廃棄の依頼をしてくれたらいいですよ」
「馬鹿な!そんな事をすれば、鉄鉱石の産出は誰もしなくなる」
「それは㋪には関係のない事ですよね?」
「そんなぁ!鉄鉱石や金鉱石が無くなったら、町はどうなると思っているのですか?」
「アリベス様、それはご主人様がどうにかしないといけない事ではなく、ギルドがなんとかしないといけない事ですよね?」
「そうです。ご主人様は、そこにいる採掘師の皆様に何回も後悔はしないかと確認とったのですよ?その時、この人達はご主人様になんと言ったか知っていますか?」
アイがそのように追求すると、採掘師は顔を曇らせ下を向いてしまった。
「しかし、このままでは!」
「ギルドマスター。そのあたりはギルドの中で処分をしてから、謝罪に来る方がまだ望みがあるんじゃねえか?」
「ああ!そうだな俺達もそう思うぜ」
「そいつらは、自分勝手な理由で暴走したとしか思えないよ」
研磨依頼に来ていたAランク冒険者が口を挟んできた。
「「「「「冒険者は口を挟むな!」」」」」
「えらく威勢がいいじゃねえか!お前達が原因でこんな事になってんだぜ?もっと自分の立場を理解した方がいいんじゃねえのか?」
「ぐぬぬ!」
冒険者に、的を射られたことを言われて怒鳴った採掘師は、すぐに反論され黙ってしまった。
「ロドン様、今のままではご主人様は面会に応じる事は出来ません。その者達を処分してから、もう一度お越しください」
「ちょっと待ってくれ!こやつらのしたことは、許されるような事ではないのは重々承知しておる。だが、そこをなんとか?」
「「私達には何とも言えません」」
㋪のホールには沈黙がながれた。
「なぜです?その人たちがギルドに相談せず、勝手に暴走したのに庇う必要などないでしょう?」
「ヒロトシ殿!」
ギルドマスターや副ギルドマスターは、採掘者達を庇うような意見を説明していた時、カウンターの奥からヒロトシが出てきたのだ。
「ったく……そんなとこで、ごちゃごちゃされたら迷惑なんだが?」
マインとアイは、生産ギルドの対応をしていて、冒険者達の対応は闇ギルドから救いだした時の人間が対応をしていたのだった。
ハンナとシェリーは、あの時工場で働きたいと言ったが、他の5人は㋪の店舗で受付嬢として働いていた。
「ヒロトシ様!ちょっとお聞きください!」
「まあ、分かったよ。こちらに来てくれるか?ここじゃ、お客様の迷惑になるからな」
「「「「「あ、ありがとうございます」」」」」
「「ご主人様!」」
「2人共対応ありがとな。ここからは俺が相手するよ」
ヒロトシは店舗の2階に、生産ギルドのメンバーを案内したのだった。そこには、セバスもお茶の用意をしておもてなしをした。
「それで、ギルドは何でこんな奴らを庇うんだ?」
「ヒロトシ殿に、迷惑をかけたのは申し訳なく思うが、こやつらを処分することはご容赦願いたいのだ」
「理由は?」
「こやつらは、悪気があってあんな事をしたのではないと思うんだ?実際、ここで売られているミスリル製品で売り上げが落ちたのは確かな事で、ヒロトシ殿を妬んだだけなんだ」
「だが、廃棄処分をされたものを、俺に売ろうとしたんだぞ?」
「それがこやつらの浅はかな事だったんだ。しかし、こやつらは自分の仕事に誇りを持って採掘をしておる。ただヒロトシ殿の行為が納得いかず、ああいう行動を……」
「まあ、ギルドがこの人たちを庇うのは、ギルドが損するだけだよ?それでも庇い続けるというのかい?」
「処分するのは簡単ですが、こやつらは採掘師としては一流の者達です。だから、生産ギルドとしても処分したくはないのです」
「じゃあ、ここにいない採掘師達はどうするつもりなんだ?」
「それはこいつ等と共にギルドの大切な人材です。今は、まだ鉄鉱石しか採掘できませんが、次世代を担う者達ですよ」
「それを聞いて安心したよ」
ヒロトシは、ギルドが採掘師達を見捨てるかと思っていたが、そんな事は無くギルドが先導だって謝罪してなんとかしようとしていたのでヒロトシは笑顔となっていた。
「えっ?」
「いや、なんでもないよ。こちらの話だ。それで、ギルドの要望を聞こうか?」
「ほ、本当ですか?」
「ああ。その代わり俺からも、その要望に対して条件を出させてもらうけどな」
「そ、それは……」
「ロドンさん、それは当たり前だろ?俺は、その要望を聞き飲もうとしているんだ。そのまま帰ってもらってもいいんだよ?」
「ちょっと待ってください!それだけは……」
「それで、要望は?」
「ううううう……」
「ギルドマスター、ここは要望を言って条件を飲むしか……」
副ギルドマスターのアリベスがロドンに小声で提案した。それに、ロドンは頷くしかなかった。
「ダンジョン前の屑石を、廃棄して頂きたいのです。それで、その屑石を購入しろなんていいません。じゃないと、生産ギルドが廃棄依頼を出さないといけなくなるのです。しかし、ギルドにその予算は無く、どうしようもないのです」
「で?」
「それも今回の事で、冒険者達が採掘の護衛依頼をボイコットする様になってしまい、ダンジョンに採掘師達が入れなくなってしまっているのです」
「それはしょうがないだろ?ミスリル製品が買えなくなったのが、採掘師達が暴走したのが原因なんだからからな。そんな事になるのは当たり前じゃないか。だから、俺は貴方達に後悔はしないのかと何回も聞いたよな?」
ヒロトシは、採掘者達に話しを振ったのだった。いきなり自分達に話しをされたが、採掘師達は言葉にならなかった。
「「「「「……」」」」」
「俺としては、もうちょっとして研磨の作業が一段落するはずだったんだ」
「何を言っているのですか?」
「これ以上冒険者達に、ミスリル製品を待たせるのも忍びなくてね……」
「だから一体何を……」
「あの屑石を使わないと決めたからね。自分で採掘しに行くつもりだったんだよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!それじゃ、私達ギルドはどうしたらいいのですか?」
「まあ、実際のとこギルドで何とかしてもらおうと思っていた。俺には関係のない話だからね」
「そ、そんな……」
「しかし、今回ギルドの対応で、一回だけチャンスを与えてもいいと思ったよ」
「ほ、本当ですか?」
「まあ、アリベスさん。ちょっと落ち着きなよ。今回謝罪を受け入れようと思ったのは、ギルドが構成員を庇おうとした事が大きいからだよ」
「あ、ありがとうございます……」
「しかし、屑石をタダで使う事は前と同じだよね?俺は謝罪を受け入れる代わりに、何かメリットがないと納得はしないよ」
「それは……」
「だが、廃棄のお金を貰おうと言っても、貴方達は出せないだろ?」
「「「「「それは無理です!」」」」」
「だから条件を変えたいがいいか?」
「何の条件でしょうか?」
「今も月一で、鏡台を納品しているだろ?オークションの取り分だよ。今はギルドが4割、俺が6割取っているだろ」
「まさか7割以上にしろと申すのか?」
「そうだよ。そのまさかだよ。8割にしてくれるのなら謝罪を受け入れ、屑石の廃棄を請け負ってやるよ」
「それはぼり過ぎでは……」
「そうかい?なら、廃棄はギルドが責任を持って請け負ったらいいよ」
「それはいくらなんでも!」
「いいかい?よく考えなよ。あの鏡台は、月一必ず3台は納品されるんだよ?その中から利益が少なくなるだけだ。しかし、俺が廃棄の依頼を受けなければ、冒険者達にダンジョンに捨てに行ってもらわなければいけないんだよ?どっちの方が金がかかると思う?」
「そ、それは……だが、しかし8割というのはあまりにぼり過ぎだ。6割1分でどうですか?」
「話にならないな……そんな安い値段で、俺に廃棄処分をさせるつもりなのか?もっと誠意というものを見せてもらわないと」
「ぐっ……」
「そうかい……鏡台の製作も2ヶ月に一回にしようか……それとも半年ほど製作を中止にしても……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ギルドマスターは、ヒロトシの意見に焦ったのだった。そのやり取りに採掘師達が、話しに割り込んできたのだった。
「ヒロトシさん!それはいくらなんでも言い過ぎだ!」
「お前達は黙っておれ!話がややこしくなるであろう」
「いいや黙っておれん。いくらなんでも……」
「えーっと、採掘師の皆さんは何を言っているのですか?」
「あんたが、前の俺達のようだからだよ!いくら何でも、今のアンタは暴走しているだろ?」
「これが暴走?何が言いたいんだ?」
「だからやりすぎだと!」
「その原因を作ったのはいったい誰だい?俺は、あんた達の暴走をギルドが庇ったのを見て謝罪を受け入れたんだ。もし仮に立場が反対なら、貴方達は自分が得になるような事は言わないのかい?」
「そ、それは!」
「俺は当然の権利を主張しているんだよ。それも、俺は無茶な事を言っているつもりは全然ないよ」
「それが無茶じゃないだと?」
「そうだよ。もし俺が依頼に掛るお金を請求したらギルドは潰れるのはわかるはずだが?」
「そ、それは……」
「俺はギルドが払える額で請求していると思うがどうだ?」
「しかし、うわさに聞く鏡台の値段は1億を超えるという。今まで6千万だった取り分を、8千万だなんてあまりにぼりすぎだろ?」
「つまりだ!2千万払えば、あの山のようになった屑石が無くなるという事だぞ?それだけでなく、冒険者からはまた採掘の依頼を受けてもらえる様になり、貴方達はまあ……ギルドからペナルティーはあるかもしれんが、これまで通り採掘が出来るようになるんだぞ?」
「うぐっ」
「こんだけメリットがあるんだ。しかし、それをケチったらどうなる?あんた達は、当然ギルドから損害賠償請求をされ奴隷落ちだ。向こう5年間町の予算が組めるようになるまで、ギルドは廃棄の依頼を出さなくてはいけなくなるんだぞ?」
「そ、それは……」
「そして、俺は自分で採掘に行く事になり、今のような値段でミスリル製品は売れなくなり、あんた達の後輩、次世代を担う者達は、冒険者から護衛依頼を今のような値段で受けてくれなくなるんだ」
「……」
「これのどこが、前の君達と一緒だというんだい?君達は自分の利益の確保だけで暴走したんだよ?」
「そ……」
「まあ、俺はどちらでもいいよ。君達が決めなよ。自分達が奴隷になり責任をとるのか?それともロドンさん達に、頭を下げて救ってもらうのか?」
ヒロトシがそう言うと、採掘師達はロドンと生産ギルドの幹部達に震えながら頭を下げたのだった。
「ヒロトシ殿……6割5分でお願いしたい。こやつらも反省はしている。だからこれ以上は……」
「7割5分だ!それだけの事をこの人たちは、ギルドに迷惑をかけたのを思い知らせないと駄目だ!」
「6割8分で……」
ヒロトシ達は交渉しあい、最後はヒロトシの取り分が7割に落ち着いたのだった。その結果、幹部達は7割で済んだとため息をつき、採掘師達を睨みつけ採掘師達は小さくなっていた。
「お前達、とんでもない事をしてくれたな」
「とんでもないと言われても私達はただ……」
「何を言っておる!ヒロトシ殿にダンジョン前の屑石を使うなと言ったそうじゃないか!」
「しかし、あの屑石でミスリルを勝手に使われたら、こちらとしては商売あがったりじゃありませんか!」
「お前達の言っていることは理解できん!あの屑石は廃棄した物だ。ヒロトシ殿がどのように使おうが、お前達には関係ない!」
「だけど……」
「そのせいで廃棄に掛る予算は、ギルドで責任を取れと領主様に言われたんだぞ!この責任をどうとるつもりだ?」
「えっ……」
「分かっているのか?我々だけでは、ダンジョンの中に入る事は出来ん!つまり、これからはお前達鉱石の依頼は廃棄に掛る金も、ギルドが取らないと維持が出来ないと言っておるのだ」
「そ、そんな!」
「いいか?そんな事になれば、ミスリルの依頼はまだ何とかなるが、鉄鉱石の依頼になれば掘れば掘るほど赤字になるんだぞ?」
「それじゃあどうすれば……」
「これはお前達の責任だ!ヒロトシ殿に謝罪をして、廃棄を請け負ってもらうしかない」
「そんな……あれだけの事をして、私達が今更謝罪しても……」
「そんな事を言っている場合か⁉このままだと、お前達はギルドから永久追放とし、ギルドに損害を与えたとして損害賠償請求をするぞ。それでも良いのか?」
「「「「「そんな!」」」」」」
「そんなではない!このままでは生産ギルドミトン支部は本当に立ち行かなくなるんだぞ?ワシも、一緒に謝罪に行くからお前達も一緒に来るんだ」
ギルドマスターロドンは、副ギルドマスターアリベスと幹部を引き連れ、採掘師を連行するかのように引きずって㋪に面会を求めたのだった。
「すまない!ヒロトシ殿と面会をしたいのだが会わせていただけないだろうか?」
「ギルドマスターさん。鏡の納品はちゃんとしますので、面会はお断りしたはずですよ」
「そうですよ。ご主人様も暇じゃないのですよ」
「そうではないのだ。今回の事は、構成員がとんでもない事をしたのは重々承知しています。だからこの通り、今回いらぬこと言った者達も一緒に謝罪がしたいのだ」
マインとアイが、視線を移すとそこには罰が悪そうにしていた採掘者達が一緒にいたのだった。
「それにしては当の本人たちは、頭を下げていないように見えますが?」
「お前たち何をしておる!頭を下げぬかぁ!」
そう言ってギルドマスターは、採掘師達の頭を押さえつけたのだった。
「何で奴隷になんか?」
「何言ってんのよ。貴方達は!奴隷とか関係ない。ちゃんと謝罪しないと、貴方達は奴隷に落とされ、ギルドも潰れるのが分からないの?」
採掘師の言い分に、アリベスが怒鳴ったのである。これには幹部の人間も採掘師を非難したのだった。
「こうしてそろってやってきても、ご主人様はお会いにはなりません。だいたいの事情は、領主様から聞いております」
「そこを何とか……このままでは本当に生産ギルドは……」
「ですが今回の事は、ご主人様はそこにいる採掘師の皆様方に後悔しないとの了承を得ております」
「そうです。そして、ご主人様はもう二度とあの屑石には関わり合いにはならないと言ったはずです」
「「「「「「ぐっ……」」」」」」
「領主様からも5年間は予算が組めないと聞いていますが、6年目からあらたに予算を組んでくれるとのことです。それまではそちらの採掘師の皆様の依頼料を削るなりして、廃棄の依頼をしてくれたらいいですよ」
「馬鹿な!そんな事をすれば、鉄鉱石の産出は誰もしなくなる」
「それは㋪には関係のない事ですよね?」
「そんなぁ!鉄鉱石や金鉱石が無くなったら、町はどうなると思っているのですか?」
「アリベス様、それはご主人様がどうにかしないといけない事ではなく、ギルドがなんとかしないといけない事ですよね?」
「そうです。ご主人様は、そこにいる採掘師の皆様に何回も後悔はしないかと確認とったのですよ?その時、この人達はご主人様になんと言ったか知っていますか?」
アイがそのように追求すると、採掘師は顔を曇らせ下を向いてしまった。
「しかし、このままでは!」
「ギルドマスター。そのあたりはギルドの中で処分をしてから、謝罪に来る方がまだ望みがあるんじゃねえか?」
「ああ!そうだな俺達もそう思うぜ」
「そいつらは、自分勝手な理由で暴走したとしか思えないよ」
研磨依頼に来ていたAランク冒険者が口を挟んできた。
「「「「「冒険者は口を挟むな!」」」」」
「えらく威勢がいいじゃねえか!お前達が原因でこんな事になってんだぜ?もっと自分の立場を理解した方がいいんじゃねえのか?」
「ぐぬぬ!」
冒険者に、的を射られたことを言われて怒鳴った採掘師は、すぐに反論され黙ってしまった。
「ロドン様、今のままではご主人様は面会に応じる事は出来ません。その者達を処分してから、もう一度お越しください」
「ちょっと待ってくれ!こやつらのしたことは、許されるような事ではないのは重々承知しておる。だが、そこをなんとか?」
「「私達には何とも言えません」」
㋪のホールには沈黙がながれた。
「なぜです?その人たちがギルドに相談せず、勝手に暴走したのに庇う必要などないでしょう?」
「ヒロトシ殿!」
ギルドマスターや副ギルドマスターは、採掘者達を庇うような意見を説明していた時、カウンターの奥からヒロトシが出てきたのだ。
「ったく……そんなとこで、ごちゃごちゃされたら迷惑なんだが?」
マインとアイは、生産ギルドの対応をしていて、冒険者達の対応は闇ギルドから救いだした時の人間が対応をしていたのだった。
ハンナとシェリーは、あの時工場で働きたいと言ったが、他の5人は㋪の店舗で受付嬢として働いていた。
「ヒロトシ様!ちょっとお聞きください!」
「まあ、分かったよ。こちらに来てくれるか?ここじゃ、お客様の迷惑になるからな」
「「「「「あ、ありがとうございます」」」」」
「「ご主人様!」」
「2人共対応ありがとな。ここからは俺が相手するよ」
ヒロトシは店舗の2階に、生産ギルドのメンバーを案内したのだった。そこには、セバスもお茶の用意をしておもてなしをした。
「それで、ギルドは何でこんな奴らを庇うんだ?」
「ヒロトシ殿に、迷惑をかけたのは申し訳なく思うが、こやつらを処分することはご容赦願いたいのだ」
「理由は?」
「こやつらは、悪気があってあんな事をしたのではないと思うんだ?実際、ここで売られているミスリル製品で売り上げが落ちたのは確かな事で、ヒロトシ殿を妬んだだけなんだ」
「だが、廃棄処分をされたものを、俺に売ろうとしたんだぞ?」
「それがこやつらの浅はかな事だったんだ。しかし、こやつらは自分の仕事に誇りを持って採掘をしておる。ただヒロトシ殿の行為が納得いかず、ああいう行動を……」
「まあ、ギルドがこの人たちを庇うのは、ギルドが損するだけだよ?それでも庇い続けるというのかい?」
「処分するのは簡単ですが、こやつらは採掘師としては一流の者達です。だから、生産ギルドとしても処分したくはないのです」
「じゃあ、ここにいない採掘師達はどうするつもりなんだ?」
「それはこいつ等と共にギルドの大切な人材です。今は、まだ鉄鉱石しか採掘できませんが、次世代を担う者達ですよ」
「それを聞いて安心したよ」
ヒロトシは、ギルドが採掘師達を見捨てるかと思っていたが、そんな事は無くギルドが先導だって謝罪してなんとかしようとしていたのでヒロトシは笑顔となっていた。
「えっ?」
「いや、なんでもないよ。こちらの話だ。それで、ギルドの要望を聞こうか?」
「ほ、本当ですか?」
「ああ。その代わり俺からも、その要望に対して条件を出させてもらうけどな」
「そ、それは……」
「ロドンさん、それは当たり前だろ?俺は、その要望を聞き飲もうとしているんだ。そのまま帰ってもらってもいいんだよ?」
「ちょっと待ってください!それだけは……」
「それで、要望は?」
「ううううう……」
「ギルドマスター、ここは要望を言って条件を飲むしか……」
副ギルドマスターのアリベスがロドンに小声で提案した。それに、ロドンは頷くしかなかった。
「ダンジョン前の屑石を、廃棄して頂きたいのです。それで、その屑石を購入しろなんていいません。じゃないと、生産ギルドが廃棄依頼を出さないといけなくなるのです。しかし、ギルドにその予算は無く、どうしようもないのです」
「で?」
「それも今回の事で、冒険者達が採掘の護衛依頼をボイコットする様になってしまい、ダンジョンに採掘師達が入れなくなってしまっているのです」
「それはしょうがないだろ?ミスリル製品が買えなくなったのが、採掘師達が暴走したのが原因なんだからからな。そんな事になるのは当たり前じゃないか。だから、俺は貴方達に後悔はしないのかと何回も聞いたよな?」
ヒロトシは、採掘者達に話しを振ったのだった。いきなり自分達に話しをされたが、採掘師達は言葉にならなかった。
「「「「「……」」」」」
「俺としては、もうちょっとして研磨の作業が一段落するはずだったんだ」
「何を言っているのですか?」
「これ以上冒険者達に、ミスリル製品を待たせるのも忍びなくてね……」
「だから一体何を……」
「あの屑石を使わないと決めたからね。自分で採掘しに行くつもりだったんだよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!それじゃ、私達ギルドはどうしたらいいのですか?」
「まあ、実際のとこギルドで何とかしてもらおうと思っていた。俺には関係のない話だからね」
「そ、そんな……」
「しかし、今回ギルドの対応で、一回だけチャンスを与えてもいいと思ったよ」
「ほ、本当ですか?」
「まあ、アリベスさん。ちょっと落ち着きなよ。今回謝罪を受け入れようと思ったのは、ギルドが構成員を庇おうとした事が大きいからだよ」
「あ、ありがとうございます……」
「しかし、屑石をタダで使う事は前と同じだよね?俺は謝罪を受け入れる代わりに、何かメリットがないと納得はしないよ」
「それは……」
「だが、廃棄のお金を貰おうと言っても、貴方達は出せないだろ?」
「「「「「それは無理です!」」」」」
「だから条件を変えたいがいいか?」
「何の条件でしょうか?」
「今も月一で、鏡台を納品しているだろ?オークションの取り分だよ。今はギルドが4割、俺が6割取っているだろ」
「まさか7割以上にしろと申すのか?」
「そうだよ。そのまさかだよ。8割にしてくれるのなら謝罪を受け入れ、屑石の廃棄を請け負ってやるよ」
「それはぼり過ぎでは……」
「そうかい?なら、廃棄はギルドが責任を持って請け負ったらいいよ」
「それはいくらなんでも!」
「いいかい?よく考えなよ。あの鏡台は、月一必ず3台は納品されるんだよ?その中から利益が少なくなるだけだ。しかし、俺が廃棄の依頼を受けなければ、冒険者達にダンジョンに捨てに行ってもらわなければいけないんだよ?どっちの方が金がかかると思う?」
「そ、それは……だが、しかし8割というのはあまりにぼり過ぎだ。6割1分でどうですか?」
「話にならないな……そんな安い値段で、俺に廃棄処分をさせるつもりなのか?もっと誠意というものを見せてもらわないと」
「ぐっ……」
「そうかい……鏡台の製作も2ヶ月に一回にしようか……それとも半年ほど製作を中止にしても……」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
ギルドマスターは、ヒロトシの意見に焦ったのだった。そのやり取りに採掘師達が、話しに割り込んできたのだった。
「ヒロトシさん!それはいくらなんでも言い過ぎだ!」
「お前達は黙っておれ!話がややこしくなるであろう」
「いいや黙っておれん。いくらなんでも……」
「えーっと、採掘師の皆さんは何を言っているのですか?」
「あんたが、前の俺達のようだからだよ!いくら何でも、今のアンタは暴走しているだろ?」
「これが暴走?何が言いたいんだ?」
「だからやりすぎだと!」
「その原因を作ったのはいったい誰だい?俺は、あんた達の暴走をギルドが庇ったのを見て謝罪を受け入れたんだ。もし仮に立場が反対なら、貴方達は自分が得になるような事は言わないのかい?」
「そ、それは!」
「俺は当然の権利を主張しているんだよ。それも、俺は無茶な事を言っているつもりは全然ないよ」
「それが無茶じゃないだと?」
「そうだよ。もし俺が依頼に掛るお金を請求したらギルドは潰れるのはわかるはずだが?」
「そ、それは……」
「俺はギルドが払える額で請求していると思うがどうだ?」
「しかし、うわさに聞く鏡台の値段は1億を超えるという。今まで6千万だった取り分を、8千万だなんてあまりにぼりすぎだろ?」
「つまりだ!2千万払えば、あの山のようになった屑石が無くなるという事だぞ?それだけでなく、冒険者からはまた採掘の依頼を受けてもらえる様になり、貴方達はまあ……ギルドからペナルティーはあるかもしれんが、これまで通り採掘が出来るようになるんだぞ?」
「うぐっ」
「こんだけメリットがあるんだ。しかし、それをケチったらどうなる?あんた達は、当然ギルドから損害賠償請求をされ奴隷落ちだ。向こう5年間町の予算が組めるようになるまで、ギルドは廃棄の依頼を出さなくてはいけなくなるんだぞ?」
「そ、それは……」
「そして、俺は自分で採掘に行く事になり、今のような値段でミスリル製品は売れなくなり、あんた達の後輩、次世代を担う者達は、冒険者から護衛依頼を今のような値段で受けてくれなくなるんだ」
「……」
「これのどこが、前の君達と一緒だというんだい?君達は自分の利益の確保だけで暴走したんだよ?」
「そ……」
「まあ、俺はどちらでもいいよ。君達が決めなよ。自分達が奴隷になり責任をとるのか?それともロドンさん達に、頭を下げて救ってもらうのか?」
ヒロトシがそう言うと、採掘師達はロドンと生産ギルドの幹部達に震えながら頭を下げたのだった。
「ヒロトシ殿……6割5分でお願いしたい。こやつらも反省はしている。だからこれ以上は……」
「7割5分だ!それだけの事をこの人たちは、ギルドに迷惑をかけたのを思い知らせないと駄目だ!」
「6割8分で……」
ヒロトシ達は交渉しあい、最後はヒロトシの取り分が7割に落ち着いたのだった。その結果、幹部達は7割で済んだとため息をつき、採掘師達を睨みつけ採掘師達は小さくなっていた。
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※1話5分程度。
※各章トップに表紙イラストを挿入しています(自作低クオリティ笑)。
〜以下、あらすじ〜
市立南町中学校3年生は卒業前の『思い出作り』を楽しみにしつつ修学旅行出発の日を迎えた。
しかし、賀川篤樹(かがわあつき)が乗る3年2組の観光バスが交通事故に遭い数十mの崖から転落してしまう。
車外に投げ出された篤樹は事故現場の崖下ではなく見たことも無い森に囲まれた草原で意識を取り戻した。
助けを求めて叫ぶ篤樹の前に現れたのは『腐れトロル』と呼ばれる怪物。明らかな殺意をもって追いかけて来る腐れトロルから逃れるために森の中へと駆け込んだ篤樹……しかしついに追い詰められ絶対絶命のピンチを迎えた時、エシャーと名乗る少女に助けられる。
特徴的な尖った耳を持つエシャーは『ルエルフ』と呼ばれるエルフ亜種族の少女であり、彼女達の村は外界と隔絶された別空間に存在する事を教えられる。
『ルー』と呼ばれる古代魔法と『カギジュ』と呼ばれる人造魔法、そして『サーガ』と呼ばれる魔物が存在する異世界に迷い込んだことを知った篤樹は、エシャーと共にルエルフ村を出ることに。
外界で出会った『王室文化法暦省』のエリート職員エルグレド、エルフ族の女性レイラという心強い協力者に助けられ、篤樹は元の世界に戻るための道を探す旅を始める。
中学3年生の自分が持っている知識や常識・情報では理解出来ない異世界の旅の中、ここに『飛ばされて来た』のは自分一人だけではない事を知った篤樹は、他の同級生達との再会に期待を寄せるが……
不易流行の本格長編王道ファンタジー作品!
筆者推奨の作品イメージ歌<乃木坂46『夜明けまで強がらなくていい』2019>を聴きながら映像化イメージを膨らませつつお読み下さい!
※本作品は「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」にも投稿しています。各サイト読者様の励ましを糧についに完結です。
※少年少女文庫・児童文学を念頭に置いた年齢制限不要な表現・描写の異世界転移ファンタジー作品です。
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よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
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本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
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