61 / 347
第2章 研磨という技術
22話 ダンジョン前の屑石
しおりを挟む
それから、数日が過ぎ本当にセバス達は一切働く事が出来なくなり、1週間の休日を過ごす事になった。そんな時家に訪問者が現れた。採掘者の人間である。
「すいません。お忙しいところ我々の面会に応じてくれて感謝します」
さすがと言った所だろう。ヒロトシは、すでにこの町の権力者の一人であり、成人前のヒロトシに対して敬語で話しかけられていた。
「いえいえ、そちらこそ忙しい中、家に来ていただきありがとうございます。それで要件とは?」
「単刀直入にいいます。㋪で売られているミスリル製品についてです」
「ようやく気付きましたか?」
「そうです!我々が、必死で採掘した鉱石の分ですよね?」
「そうですね。今、㋪で売り出しているのは、ダンジョン前に捨ててあった鉱石の分です」
「だったら話が早い。その鉱石を買っていただきたいのです」
「えっ、何で?」
「なんでってそりゃ、私達が採掘した鉱石だからですよ」
「でも、屑石だといって捨てたものですよね?」
「しかし、あの屑石を使って、ミスリルを抽出したのなら話は別です」
「いやいや……貴方達は、あの鉱石はもう使い道がないと思って、その権利を捨てたんですよ。その捨てたものを、俺が有効活用しただけだよ」
「それは……」
「それに貴方達は採掘しただけで、その屑石を町の税金を使って、ダンジョンに捨てているんだよ?」
「うぐっ……」
「自分達の物だと主張するのなら、今までかかった町の税金を、領主様に返金する覚悟はあって、俺にそんな事を言っているんですか?」
「そ、それは……しかし、ヒロトシさんは元手ただで、ミスリル製品を売っておかしいじゃないか!」
「捨ててあったものを使ったんだ。そりゃタダなのは当たり前だろ?それにダンジョン前にあった鉱石の山は、俺が殆ど捨てたのは分かっているはずだよ」
「しかし!今まで㋪で売り出されたミスリル製品や、あの魔道砲から考えてもとんでもないミスリルの量だ」
「だから、そのミスリルの量を貴方達は捨てたんだよ?俺が責められるいわれがあるとは思わんのだが?」
「「「「「……」」」」」
「話が終わったのなら、お引き取りをしていただいてよろしいですか?」
「ちょっと待ってくれ!」
「何でしょうか?」
「ヒロトシさんは、これからもダンジョン前に捨ててある鉱石を利用するつもりですか?」
「それは当たり前だろ?あの量のミスリルが捨ててあるのは勿体ないからな」
「それでは、それをこれからは買っていただきたい!今までの分は目をつぶるので、これからはそれらを購入して頂きたいのです」
「いやいやいや……そんなの話にもならないよ。捨てる物を購入って、俺を馬鹿にしているのか?」
「馬鹿になどしてはいません。こちらとしては命を懸けて採掘しているのです。それを捨てているからと言って、勝手に利用されてはこちらとしても商売あがったりだ」
「ほうう!そんな事を言うんだ。俺も、この町に税金を納めている者として言わせていただこう。だったら、貴方達が採掘した鉱石は最後まで、貴方達が責任を持って廃棄してもらおう!そんな廃棄のために税金を使ってほしくない!」
「それは昔から決まっている事だ!我々はあの場所に廃棄してよいと決まって、冒険者達が捨てに行ってくれることで、冒険者は生活する金を稼げると言っている」
「そうかそうか。じゃあ、俺はあの捨ててある鉱石にはもう二度と使わない。それならいいのか?」
「えっ?」
「え、じゃないよ。それなら貴方達は納得できるんだな?」
「使わないというのなら納得しよう……」
ヒロトシは、テーブルの上にダンジョン前に捨ててあった握り拳ほどの鉱石を1つ出した。
「本当にいいのか?後悔することになるよ?これはあのダンジョン前に捨ててあった鉱石だが、貴方達は俺にこういったんだよ」
「何が言いたいというのだ?」
「もし仮に、これは俺が採掘をしてきたものなんだが、もう抽出が出来ないがミスリルの含有量はまだ25%ほど残っているんだが購入してくれ。と言われたら貴方達はどうこたえる?」
「そんなの購入してもどうしようもないだろ。屑石じゃないか!」
「だったらなぜそれを俺に売ろうとする。そして、貴方達はこれからはその屑石を買ってくれだと?」
「それは貴方は、この屑石の利用が出来るのだろ?だったら!」
「それで貴方達は2重に利益を上げるつもりか?使った鉱石を運ぶ手間も俺に丸投げにして」
「それは……」
「俺は、もうダンジョン前にある鉱石は使わん!それでいいだろう?」
「本当ですな?」
「ああ!もう絶対に使わないよ。だが、それで本当にいいんだね?後悔はしないんだね?」
「ああ!私達採掘師にとって、屑石を使われるほうが利益が落ちるからな。後悔などするはずがないだろう!」
「わかった。これ以降俺は何があろうと、ダンジョン前にある屑石と係わりあいにはならない。ミスリルを使うとすれば依頼を出すか、自分で採掘しに行くとするよ。それではお引き取りを」
採掘師達は、ヒロトシが自分達が捨てた鉱石を使わないと約束してくれて、ミスリルの売り上げが確保させたことに笑顔となり帰っていった。
それから数か月の月日が経ち、衛兵がヒロトシの所にやってきた。
「ヒロトシ殿は御在宅か?」
「はい。どうかしましたか?」
ヒロトシは、冒険者の対応で㋪の店頭で説明をしていた。ミスリル製品はいつ売り出してくれるのかと、冒険者が店頭に押し寄せていたからだ。
「ヒロトシ。どういう事なんだ?俺はミスリルソードが欲しくて金を貯めたんだぜ」
「申し訳ないな……ミスリルが無くなってしまったんだよ。材料がなければ作れないんだ」
「「「「「ええええ!」」」」」
「ヒロトシ殿ちょっといいか?」
「マリクさんもいったいなんだ?この通り店は大騒ぎで……」
「すまないな……ダンジョン前にある鉱石を、前のように取りに来てほしいんだ。もう山のように積み上がってしまって、どうしようもなくてな……」
「あれ?数か月前、採掘士の皆さんが㋪にきて、あの廃棄となる屑石は使わないでくれと俺は言われたんだよ」
「はぁあ?どういう事だそれは?」
「皆さんも分かっていると思いますが、あの屑石を利用して、ここのミスリル製品はお安く提供してたんですよ」
「それはなんとなく想像は出来る」
「ですが、数か月前採掘師の皆さんがここにきて、勝手に使うなと苦情を入れてきて、もし使うのなら、あの屑石を購入しろと言ってきたんですよ」
「な、なんだと!それは本当か?」
「えぇ……だから、俺は屑石にお金なんか払えないと断ると、なら使うなときつく言われてそれを了承したんです。だから、屑石の廃棄は俺には関係のない事なので、そちらで何とかしてもらえませんか?」
それを聞いたマリクや冒険者は、憤慨したのだった。捨てるものに金を払えと詰め寄ったなど、あり得ない話だった。
そのせいで、ダンジョン前は屑石でどうにもならない状態になっていた。冒険者達も又、そのせいでミスリル装備が買えなくなったことを理解して、怒りで震えていたのだった。
そして、この事はすぐさま町中の噂となった。そして、領主はせっかく廃棄処分するお金を使わなくなっていたのに、ヒロトシがその役目を降りてしまった原因の採掘師達に怒りをあらわにしたのだった。
㋪では、ミスリル装備も品切れとなってしまい、冒険者達が不満をあらわにして、鉱石の護衛依頼をボイコットしはじめたのだ。
その事で、冒険者ギルドには採掘師が押し寄せていた。
「どういう事なんだ?」
「どういう事だと言われましても、冒険者は採掘師のダンジョンへの護衛依頼は絶対に受けれないと言われてしまって……」
「そんなバカな‼冒険者達に護衛してもらわないと、我々だけでは……」
「そんな事を言われましても、冒険者がどの依頼を受けるのはその人の自由ですし、私達ギルドとしてもいい迷惑ですよ」
「何とか受けてもらえないのか?」
「私達も冒険者達にお願いはしていますが、期待はしないでくださいね。貴方達採掘師は、喧嘩を売った相手が誰だか知らない訳ではありませんよね?」
「だが、あの鉱石は儂達が持って帰って来たものだ。タダで使われた挙句、あんなに安くミスリル製品を売られたらこっちがかなわんだろ!」
「それは、わたし達のしった事ではありません。売れないのなら売れる様に営業努力して頂かないと……」
「馬鹿な事を!あんな値段で売られたら営業努力もなにもないわ!」
「だから、それを冒険者ギルドに言われても……それにBランク冒険者達は、㋪のミスリルの武器を買う為頑張っていたのですよ。Cランク以下の人は㋪で磨いてもらう事を目標に頑張っていたのです」
「「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」
「お前達がいらん事を言ったおかげで、㋪には何時ミスリルが入荷するか、目処も立たないんだぞ!」
「あんたらがいらんことをしたから、ミスリルの武器が買えなくなったじゃないか!」
「俺達は㋪に迷惑をかけたやつの依頼は受けねえ!」
「そうだ!お前等はダンジョンじゃなく地上で採掘しておけ!」
「「「「ぐっ!」」」」」
「お分かりですか?冒険者達がどちらの味方付くかと言えば、㋪の方です」
「わかった!後悔するなよ?」
「ああ。言っておきますが、生産ギルドや商人ギルドに頼っても無理だと思いますよ」
「何だと!」
「いいですか?生産ギルドは㋪から鏡を納入しています。今回の事で生産ギルドは、㋪に謝罪をしておりますが面会を断られました。なんとか鏡の納入は許してもらったとのことです」
「生産ギルドが㋪に謝罪?」
「そして、商人ギルドは㋪に逆らう事は絶対にありません。この町だけでも、納税額はトップの店です。どちらにつくかは明らかです」
「馬鹿な……」
「貴方達は、自分の利益の事しか考えなかった……もう少しやり方を考える事でしたね……私から、序言出来るとすれば採掘師達全員で謝罪する事です」
「儂達が間違っていたの言うのか!ヒロトシさんは、タダで儂達の鉱石を使っていたんだぞ?」
「利用できない物をヒロトシ様は、みんなの為に使える様にしたのです。どういう技術か知りませんが、これはヒロトシ様の強みです。他の者がそれを非難する事は出来ないはずですよ」
「で、では領主様に!」
「それはもっとやめておいた方がよろしいかと……」
「なぜだ?」
「それは、領主様が㋪の後ろ盾になっているからですよ。領主様はヒロトシ様に感謝状を贈っています。どちらの味方になるかと言えば、㋪に決まっておいでです。まずは謝罪をして、あの屑石はヒロトシ様の自由に使用して頂いた方がいいでしょう」
「何で……」
「本当に馬鹿な事をしたものです……そんな交渉、㋪に通ると思ったのですか?そのせいで生産ギルドはとんでもない損害が出るというのに……」
「どういう事だ?」
「貴方達は早く謝罪しないと、採掘師の全体にとんでもないことが起きますよ」
この時、生産ギルドでは領主の使いが訪問していて、ギルドマスターと副ギルドマスターが応対していた。
「今回から、鉱石の廃棄処分はそちらで行なってほしいとのことです」
「ば、馬鹿な!なぜ我々ギルドが……」
「貴方達ギルド構成員が勝手な事をしたおかげで、予算が組めなくなったからです。少なくとも向こう5年間はギルドで責任を取ってほしいのです」
「それは無理だ!予算を組み直してほしい。生産ギルドで廃棄にお金を出す事は出来ん……」
「そうではないのです。今回㋪には塩を町の予算で買い取った事で余裕が、まったくないのだ。ヒロトシ殿には、あの屑石を利用してもいい代わりに、タダで廃棄業務をしてもらっていたのだ」
「ヒロトシ殿は廃棄業務の金をとっていなかったと申すのか?」
「はい……しかし、採掘師の人間が今回あのような事をした事で、責任をとってもらいたいのだ。鉄鉱石は今だ採掘はしておるだろ?」
ミスリルのようなレア鉱石はダンジョンで採掘しているが、鉄鉱石は地上でも掘る事が出来る。その為、冒険者の護衛はいらないのだ。護衛をつける人間もいるが、注意すれば大人数で作業すれば何とかなるのである。
町にとっても、鉄鉱石や金銀銅鉱石は必要なもので、採掘を中止することはできず、今もダンジョン前には屑石が溜まっていくのだ。
「しかし、廃棄のお金をギルドで賄う事など……」
「もし、それが無理ならヒロトシ殿に謝罪し、あの屑石をなんとかしてもらう様に、原因を作った者達にしてもらってくれないか?取り敢えず、町からの廃棄依頼は出せない状態で屑石が崩れそうなのだ」
「分かり申した……」
生産ギルドは、採掘師を集めて先ほどの事を話し、すぐさま㋪に謝罪し、ヒロトシに廃棄をお願いしてもらいに行かせようとしたのだった。
「すいません。お忙しいところ我々の面会に応じてくれて感謝します」
さすがと言った所だろう。ヒロトシは、すでにこの町の権力者の一人であり、成人前のヒロトシに対して敬語で話しかけられていた。
「いえいえ、そちらこそ忙しい中、家に来ていただきありがとうございます。それで要件とは?」
「単刀直入にいいます。㋪で売られているミスリル製品についてです」
「ようやく気付きましたか?」
「そうです!我々が、必死で採掘した鉱石の分ですよね?」
「そうですね。今、㋪で売り出しているのは、ダンジョン前に捨ててあった鉱石の分です」
「だったら話が早い。その鉱石を買っていただきたいのです」
「えっ、何で?」
「なんでってそりゃ、私達が採掘した鉱石だからですよ」
「でも、屑石だといって捨てたものですよね?」
「しかし、あの屑石を使って、ミスリルを抽出したのなら話は別です」
「いやいや……貴方達は、あの鉱石はもう使い道がないと思って、その権利を捨てたんですよ。その捨てたものを、俺が有効活用しただけだよ」
「それは……」
「それに貴方達は採掘しただけで、その屑石を町の税金を使って、ダンジョンに捨てているんだよ?」
「うぐっ……」
「自分達の物だと主張するのなら、今までかかった町の税金を、領主様に返金する覚悟はあって、俺にそんな事を言っているんですか?」
「そ、それは……しかし、ヒロトシさんは元手ただで、ミスリル製品を売っておかしいじゃないか!」
「捨ててあったものを使ったんだ。そりゃタダなのは当たり前だろ?それにダンジョン前にあった鉱石の山は、俺が殆ど捨てたのは分かっているはずだよ」
「しかし!今まで㋪で売り出されたミスリル製品や、あの魔道砲から考えてもとんでもないミスリルの量だ」
「だから、そのミスリルの量を貴方達は捨てたんだよ?俺が責められるいわれがあるとは思わんのだが?」
「「「「「……」」」」」
「話が終わったのなら、お引き取りをしていただいてよろしいですか?」
「ちょっと待ってくれ!」
「何でしょうか?」
「ヒロトシさんは、これからもダンジョン前に捨ててある鉱石を利用するつもりですか?」
「それは当たり前だろ?あの量のミスリルが捨ててあるのは勿体ないからな」
「それでは、それをこれからは買っていただきたい!今までの分は目をつぶるので、これからはそれらを購入して頂きたいのです」
「いやいやいや……そんなの話にもならないよ。捨てる物を購入って、俺を馬鹿にしているのか?」
「馬鹿になどしてはいません。こちらとしては命を懸けて採掘しているのです。それを捨てているからと言って、勝手に利用されてはこちらとしても商売あがったりだ」
「ほうう!そんな事を言うんだ。俺も、この町に税金を納めている者として言わせていただこう。だったら、貴方達が採掘した鉱石は最後まで、貴方達が責任を持って廃棄してもらおう!そんな廃棄のために税金を使ってほしくない!」
「それは昔から決まっている事だ!我々はあの場所に廃棄してよいと決まって、冒険者達が捨てに行ってくれることで、冒険者は生活する金を稼げると言っている」
「そうかそうか。じゃあ、俺はあの捨ててある鉱石にはもう二度と使わない。それならいいのか?」
「えっ?」
「え、じゃないよ。それなら貴方達は納得できるんだな?」
「使わないというのなら納得しよう……」
ヒロトシは、テーブルの上にダンジョン前に捨ててあった握り拳ほどの鉱石を1つ出した。
「本当にいいのか?後悔することになるよ?これはあのダンジョン前に捨ててあった鉱石だが、貴方達は俺にこういったんだよ」
「何が言いたいというのだ?」
「もし仮に、これは俺が採掘をしてきたものなんだが、もう抽出が出来ないがミスリルの含有量はまだ25%ほど残っているんだが購入してくれ。と言われたら貴方達はどうこたえる?」
「そんなの購入してもどうしようもないだろ。屑石じゃないか!」
「だったらなぜそれを俺に売ろうとする。そして、貴方達はこれからはその屑石を買ってくれだと?」
「それは貴方は、この屑石の利用が出来るのだろ?だったら!」
「それで貴方達は2重に利益を上げるつもりか?使った鉱石を運ぶ手間も俺に丸投げにして」
「それは……」
「俺は、もうダンジョン前にある鉱石は使わん!それでいいだろう?」
「本当ですな?」
「ああ!もう絶対に使わないよ。だが、それで本当にいいんだね?後悔はしないんだね?」
「ああ!私達採掘師にとって、屑石を使われるほうが利益が落ちるからな。後悔などするはずがないだろう!」
「わかった。これ以降俺は何があろうと、ダンジョン前にある屑石と係わりあいにはならない。ミスリルを使うとすれば依頼を出すか、自分で採掘しに行くとするよ。それではお引き取りを」
採掘師達は、ヒロトシが自分達が捨てた鉱石を使わないと約束してくれて、ミスリルの売り上げが確保させたことに笑顔となり帰っていった。
それから数か月の月日が経ち、衛兵がヒロトシの所にやってきた。
「ヒロトシ殿は御在宅か?」
「はい。どうかしましたか?」
ヒロトシは、冒険者の対応で㋪の店頭で説明をしていた。ミスリル製品はいつ売り出してくれるのかと、冒険者が店頭に押し寄せていたからだ。
「ヒロトシ。どういう事なんだ?俺はミスリルソードが欲しくて金を貯めたんだぜ」
「申し訳ないな……ミスリルが無くなってしまったんだよ。材料がなければ作れないんだ」
「「「「「ええええ!」」」」」
「ヒロトシ殿ちょっといいか?」
「マリクさんもいったいなんだ?この通り店は大騒ぎで……」
「すまないな……ダンジョン前にある鉱石を、前のように取りに来てほしいんだ。もう山のように積み上がってしまって、どうしようもなくてな……」
「あれ?数か月前、採掘士の皆さんが㋪にきて、あの廃棄となる屑石は使わないでくれと俺は言われたんだよ」
「はぁあ?どういう事だそれは?」
「皆さんも分かっていると思いますが、あの屑石を利用して、ここのミスリル製品はお安く提供してたんですよ」
「それはなんとなく想像は出来る」
「ですが、数か月前採掘師の皆さんがここにきて、勝手に使うなと苦情を入れてきて、もし使うのなら、あの屑石を購入しろと言ってきたんですよ」
「な、なんだと!それは本当か?」
「えぇ……だから、俺は屑石にお金なんか払えないと断ると、なら使うなときつく言われてそれを了承したんです。だから、屑石の廃棄は俺には関係のない事なので、そちらで何とかしてもらえませんか?」
それを聞いたマリクや冒険者は、憤慨したのだった。捨てるものに金を払えと詰め寄ったなど、あり得ない話だった。
そのせいで、ダンジョン前は屑石でどうにもならない状態になっていた。冒険者達も又、そのせいでミスリル装備が買えなくなったことを理解して、怒りで震えていたのだった。
そして、この事はすぐさま町中の噂となった。そして、領主はせっかく廃棄処分するお金を使わなくなっていたのに、ヒロトシがその役目を降りてしまった原因の採掘師達に怒りをあらわにしたのだった。
㋪では、ミスリル装備も品切れとなってしまい、冒険者達が不満をあらわにして、鉱石の護衛依頼をボイコットしはじめたのだ。
その事で、冒険者ギルドには採掘師が押し寄せていた。
「どういう事なんだ?」
「どういう事だと言われましても、冒険者は採掘師のダンジョンへの護衛依頼は絶対に受けれないと言われてしまって……」
「そんなバカな‼冒険者達に護衛してもらわないと、我々だけでは……」
「そんな事を言われましても、冒険者がどの依頼を受けるのはその人の自由ですし、私達ギルドとしてもいい迷惑ですよ」
「何とか受けてもらえないのか?」
「私達も冒険者達にお願いはしていますが、期待はしないでくださいね。貴方達採掘師は、喧嘩を売った相手が誰だか知らない訳ではありませんよね?」
「だが、あの鉱石は儂達が持って帰って来たものだ。タダで使われた挙句、あんなに安くミスリル製品を売られたらこっちがかなわんだろ!」
「それは、わたし達のしった事ではありません。売れないのなら売れる様に営業努力して頂かないと……」
「馬鹿な事を!あんな値段で売られたら営業努力もなにもないわ!」
「だから、それを冒険者ギルドに言われても……それにBランク冒険者達は、㋪のミスリルの武器を買う為頑張っていたのですよ。Cランク以下の人は㋪で磨いてもらう事を目標に頑張っていたのです」
「「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」
「お前達がいらん事を言ったおかげで、㋪には何時ミスリルが入荷するか、目処も立たないんだぞ!」
「あんたらがいらんことをしたから、ミスリルの武器が買えなくなったじゃないか!」
「俺達は㋪に迷惑をかけたやつの依頼は受けねえ!」
「そうだ!お前等はダンジョンじゃなく地上で採掘しておけ!」
「「「「ぐっ!」」」」」
「お分かりですか?冒険者達がどちらの味方付くかと言えば、㋪の方です」
「わかった!後悔するなよ?」
「ああ。言っておきますが、生産ギルドや商人ギルドに頼っても無理だと思いますよ」
「何だと!」
「いいですか?生産ギルドは㋪から鏡を納入しています。今回の事で生産ギルドは、㋪に謝罪をしておりますが面会を断られました。なんとか鏡の納入は許してもらったとのことです」
「生産ギルドが㋪に謝罪?」
「そして、商人ギルドは㋪に逆らう事は絶対にありません。この町だけでも、納税額はトップの店です。どちらにつくかは明らかです」
「馬鹿な……」
「貴方達は、自分の利益の事しか考えなかった……もう少しやり方を考える事でしたね……私から、序言出来るとすれば採掘師達全員で謝罪する事です」
「儂達が間違っていたの言うのか!ヒロトシさんは、タダで儂達の鉱石を使っていたんだぞ?」
「利用できない物をヒロトシ様は、みんなの為に使える様にしたのです。どういう技術か知りませんが、これはヒロトシ様の強みです。他の者がそれを非難する事は出来ないはずですよ」
「で、では領主様に!」
「それはもっとやめておいた方がよろしいかと……」
「なぜだ?」
「それは、領主様が㋪の後ろ盾になっているからですよ。領主様はヒロトシ様に感謝状を贈っています。どちらの味方になるかと言えば、㋪に決まっておいでです。まずは謝罪をして、あの屑石はヒロトシ様の自由に使用して頂いた方がいいでしょう」
「何で……」
「本当に馬鹿な事をしたものです……そんな交渉、㋪に通ると思ったのですか?そのせいで生産ギルドはとんでもない損害が出るというのに……」
「どういう事だ?」
「貴方達は早く謝罪しないと、採掘師の全体にとんでもないことが起きますよ」
この時、生産ギルドでは領主の使いが訪問していて、ギルドマスターと副ギルドマスターが応対していた。
「今回から、鉱石の廃棄処分はそちらで行なってほしいとのことです」
「ば、馬鹿な!なぜ我々ギルドが……」
「貴方達ギルド構成員が勝手な事をしたおかげで、予算が組めなくなったからです。少なくとも向こう5年間はギルドで責任を取ってほしいのです」
「それは無理だ!予算を組み直してほしい。生産ギルドで廃棄にお金を出す事は出来ん……」
「そうではないのです。今回㋪には塩を町の予算で買い取った事で余裕が、まったくないのだ。ヒロトシ殿には、あの屑石を利用してもいい代わりに、タダで廃棄業務をしてもらっていたのだ」
「ヒロトシ殿は廃棄業務の金をとっていなかったと申すのか?」
「はい……しかし、採掘師の人間が今回あのような事をした事で、責任をとってもらいたいのだ。鉄鉱石は今だ採掘はしておるだろ?」
ミスリルのようなレア鉱石はダンジョンで採掘しているが、鉄鉱石は地上でも掘る事が出来る。その為、冒険者の護衛はいらないのだ。護衛をつける人間もいるが、注意すれば大人数で作業すれば何とかなるのである。
町にとっても、鉄鉱石や金銀銅鉱石は必要なもので、採掘を中止することはできず、今もダンジョン前には屑石が溜まっていくのだ。
「しかし、廃棄のお金をギルドで賄う事など……」
「もし、それが無理ならヒロトシ殿に謝罪し、あの屑石をなんとかしてもらう様に、原因を作った者達にしてもらってくれないか?取り敢えず、町からの廃棄依頼は出せない状態で屑石が崩れそうなのだ」
「分かり申した……」
生産ギルドは、採掘師を集めて先ほどの事を話し、すぐさま㋪に謝罪し、ヒロトシに廃棄をお願いしてもらいに行かせようとしたのだった。
1
お気に入りに追加
424
あなたにおすすめの小説
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる