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第2章 研磨という技術

14話 魔物の正体

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 グリースは、倒れ込みながらシルフォードの期待に応えられなかった事に悔やみながら、死んでいくのだろうと目を固く閉じ命を諦めた。

(領主様、申し訳ありません!)

「ぎゃああああああああ!」

「えっ⁉」

 いきなりの叫び声に、グリースは後ろを振り向いた。すると、毒グモが炎の矢に貫かれて絶叫し、その場に倒れたのである。

「グリースを助けるんだ!」

「「「「「おう!」」」」」

 ズバッ!ザシュ!

「「ぐふっ!」」

 グリースは危機一髪、討伐隊と遭遇することが出来て、残りの二人毒蛇と死神と呼ばれたアサシンも討伐隊の弓矢と剣戟に倒れたのだ。

「グリース!大丈夫か?」

「だ、団長……逢う事ができて良かった……領主様を救ってください」

「領主様がどうしたというのだ!まずはこれを飲め」

 団長のマリクは、グリースにヒールポーションを与えたのだった。しかし、グリースは麻痺毒にも犯されていたので満足にしゃべる事が出来なかった。

「これも飲むんだ」

 マリクは、ハイキュアポーションを飲ませた。ハイキュアポーションなら、大抵の毒を浄化できるからである。ハイキュアを飲んだグリースは、毒が浄化出来てようやくまともにしゃべることができた。

「早速だが何があったのだ!」

「はっ!今ミトンの町は、あり得ない程のアンデット集団に襲われていて、12時間経ってもその勢力は衰えていないのです」

「なんだと?それでミトンの町は?」

「しかしながら、町の英雄であるヒロトシ殿が、スタンピードの対策をしていてくださり、その魔道具のおかげで私が町を出るまでは被害は全くありませんでした」

「そ、そうか……さすがはヒロトシ殿だ!」

「しかし、その魔道具を使うには大量のMPが必要となり、MPポーションを増産しているのですが、それもいつまでもつかわからない状態で、私が伝令に走ったのです」

「そ、それは本当か?」

「はい……今ならまだヒロトシ殿の魔道具と団長達の力をあわせれば、アンデット集団を何とかできると領主様が言っておられました。だから、頼みます」

「わ、わかった!皆の者、ミトンの町へ急ぐぞ!」

「「「「「おう!」」」」」」

 討伐隊は、マリクの号令で気合を入れ直し、ミトンの町へと急いだのだ。そして、討伐隊はミトンの町まで十何時間という距離を走りぬいたのだった。普通なら考えられない事だが、Bランク以上の人間の体力は化け物である。レベルで上がっていき、VIT(耐久力)というステータスがある世界はすごいものである。

 西から到着した討伐隊が、ミトンの町を見た光景は壮絶なものだった。右手から大量のアンデット達が、いまだに攻め続けていた。
 そして、その大量のアンデットに対して、町の城壁から赤い熱線が放射されると、アンデットが蒸発したかのように消えていくのである。

「あれが、ヒロトシ殿の開発した魔道具なのか……」
「す、すげえ!」
「とんでもない魔道具だ!」

「みんな、町へ戻るぞ!」

「「「「「おう!」」」」」」

 討伐隊は北門ではなく西門に向かって走り出した。それに気づいた町の兵士は歓声を上げたのだった。

「領主様!」

「なんだ?どうしたのだ」

「だ、団長達が帰還しました!いま西の丘の上に、その姿を見張り台の兵士が確認しました!」

 その報告にシルフォードは安堵して、それを聞いた兵士や冒険者は歓声をあげたのだった。

「た、助かった!これで何とかなる!」

 薬草がもう尽きかけていて、シルフォードは町の平民達にも声をかけてMPの協力要請を出して、なんとかだましだまし魔道具を使っていたのだった。
 平民達もレベルが低いながらも、MPを持っている。戦闘能力のない人間はレベルが低い為、MP50もあれば多い方だが3人で一発分のエネルギーが貯まるのだ。
 平民達が補充している間に、魔法使い達は瞑想しMPの回復を速めたり独自の回復方法を駆使していた。

「領主様!帰りが遅くなり申し訳ありませんでした!」

「よくぞ戻った。グリースよく無事に帰った。私は嬉しく思うぞ」

「勿体ないお言葉ありがとうございます!」

「戻ったそうそう悪いがよろしく頼むぞ!」

 町の戻ってきた冒険者達は、栄養剤と少し腹にパンをいれた。ここまで走って帰って来たので、体力が万全ではなかったのだ。
 そして、ここからがSランク冒険者の実力が凄かったのだ。スナイパーのトルネードショットは、一発で道が開いたようにゾンビたちを薙ぎ払ったのだ。
 
「「「「「す、すげえ……」」」」」
「あれがSランクの実力なのか……」

 討伐隊の冒険者達は、北からくるアンデット達を、東門と西門から出て、挟み込む形でドンドン討伐していくのだった。下級アンデットに太刀打ちする術はなく、ドンドン森へと押されていったのだった。
 そして、私設兵団の団長マリクが率いる部隊は、アンデット集団の元に急いだ。
 
「や、やった!これで町は救われた!」
「ばんざぁ~い。やったぁ!」
「良かった……」

 平民の中には泣き崩れる人間も多数いた。そして、安堵したシルフォードは、ギルド幹部達と固く握手をして危機が去った事に笑顔となっていた。

 この様子に、ネクロマンサー達が悔しそうにみていた。

「むぐぐぐぐ……なぜ、討伐隊の奴らが帰ってきているのだ……」
「まあ、そう焦るでない。あ奴らの驚愕する顔を拝もうじゃないか」
「確かにそうじゃな!」
「かかかかかか!」

 ネクロマンサー達は、最終兵器を手に入れていて、町の討伐隊が驚愕する事を楽しみにしていた。それを見ていたガーランドは、これが最凶最悪と言われた由縁なのかと、冷や汗を流した。

 マリク達は、冒険者達がアンデット達を相手にしている隙に北の森に入り込み、アンデットがなぜ途切れないのかを探った。すると、北の森に足を踏み込むと、森が腐食しているのが分かってきた。

「どういうことだ?」
「団長……これはどういうことでしょうか?森が……」
「ああ……気をつけろよ。何があるかわからん」

 町の騎士団は、用心深く森の中を進んだ。すると、とんでもないものを見つけたのである。

「団長あれは……」
「しっ!静かにしろ……あれは……まさか!」

 北の森で発見したものは、漆黒のローブを纏った6体の得体のしれない魔道師だった。その魔道師がとんでもない速さでアンデットを生み出していたのである。

「「「アニメイトデット!」」」

 すると、地中からスケルトンやゾンビがボコボコと現れて、そのアンデット達は大行進を始めるのである。そして、残りの3体は休憩というよりその場にたたずんでいた。

「団長、あれは一体……」

「あれは、リッチなのか……」

「まさか……そんな魔物がこんな場所に6体もいるなんて……」

 リッチとは、元100レベル以上の魔法使いだった人間が、自分の研究をしたいがため、不老不死の身体手に入れた魔法生物である。そんな魔物が6体もいるのである。なぜ、そんな魔物が闇ギルドに協力しているのかもわからなかった。
 しかし、あの魔物をなんとかしない限りアンデットは無限に湧いてくるのだ。3体が魔法を使い、その間もう3体のリッチはMPを回復しているのだ。その回復スピードは尋常じゃないほど早いのである。多分、瞑想スキルを4レベル程あるのであろう。兵士達はどのように討伐出来るのか悩んだ。

 こんな化け物が6体もいるなんてどうにもならないからだ。

 リッチたちが、アニメイトデットを唱えるたび、森は腐食していくように見えた。マリクは、部下の一人に伝令をさせた。領主にリッチが6体いると報せに走らせたのだった。
 自分達は、このまま死んでしまうかもしれないが、勝敗は5分5分とよんだのだ。だから、出来るだけの事をしようと心に誓ったのだった。

 しかし、団長のマリクはこの魔物を勘違いしていた。この魔物の正体はリッチではなかった。この勝負は最初から勝ち目のない勝負だったのだ。そして、団長のマリクが突っ込もうとした時、リッチはこちらを向き、団長達に話しかけた。

『くかかかかかか!そこにいるのは分かっているぞ?お前達では勝てぬ』

「何だと⁉魔物が喋るだなんて……」

『我らが雇い主である闇ギルドの言葉だ!大人しく静聴せよ!』

「魔物無勢が何を偉そうに!」

 マリクの部下が、リッチの言葉に腹を立てて突っ込んだのだった。

「ま、待て!」

『フィアオーラ!』

 リッチが、フィアオーラを纏った。すると突っ込んだ部下の一人は、リッチの姿に恐怖しその場で動けなくなってしまった。そして、団長達もリッチの姿に恐怖を煽られその場から一歩も進めなくなってしまった。

『お前が、この隊のリーダーだな?』

 マリクは身体が麻痺してしまったように、自由に体が動かせなくなり、首を縦に振るのが精一杯だった。

『我らはリッチではない。勘違いするでない』

(リッチじゃないだと?だったら何だというのだ……)

『よく聞くがよい!我はエルダーリッチ!こやつらは部下であるリッチロードである。くかかかかかか!お主達に万に一つも勝ち目などない!』

(な、何だと⁉)

『降伏せよ!あの町は闇ギルドが征服する。主らは町から逃げる事をゆるさん!我らのため、年に100人の生贄で保護してやろう!』

 マリクは、闇ギルドの全貌をやっと理解した。闇ギルドはこの町を自由にして、犯罪の町にしようとしていた。その取引にリッチロードと取引をしたようだった。高ランクのネクロマンサーが、リッチロードを呼び出し、人体実験用に、ミトンの町の人間を差し出したのだ。

 その計画を聞いたMID(精神力)の高い兵士が、リッチロードのフィアオーラをレジストし跳びかかったのだ。

「お前達の好きさせるかぁ~~~~~!」

『ほう!我のフィアをレジスト出来るとは大したものだ。褒美を与えよう!デス!』

「ぐはっ!」

(カイン!)

 リッチロードは、闇属性魔法の【デス】を唱えたのだ。これは魔法スキルが4レベルにならないと使えない魔法で即死魔法である。

『主らに拒否権はない!分かったのなら町に帰るが良い!主らも我らの人体サンプルの一つだ』

「ぐはっ」

 今まで強張っていた身体が動くようになった。リッチロードはフィアオーラを切ったのだ。

『主らの雇い主に報告せよ!1時間だけ待ってやろう。町に行き町の責任者に無駄な抵抗はよして降伏せよと報告するのだ!』

「「「「「馬鹿な事を言ってんじゃねえ!」」」」」

 マリクの部下数名が、跳びかかったのだ。

『まだ立場を理解できないみたいだな!ヘルライトニング!』

 リッチロードは、跳びかかってきた兵士に【ヘルライトニング】を撃った。リッチロードの骨だけの手から黒い稲妻が放射されたのだ。
 光の速さで、兵士5人は雷に打たれた様に痙攣して、心臓麻痺で即死してしまったのだ。

 ヘルライトニングとは、稲妻の攻撃魔法ようでそうではなく、闇属性の魔法で敵の心臓を貫き、50%の確立で即死させる。仮に50%で生き残っても心臓に重大な麻痺を起こし、激しい運動は出来なくしてしまう魔法である。戦闘中に受ければどのみち助かる方法はないであろう。

『もうよいであろう!お前達では我には勝てぬ。そのまま町に帰り、言う事を聞けばよい』

 団長のマリクは、これ以上部下の命を無駄に散らせる事が出来なかった。

「お前達……引き返すぞ……悔しいが我らではあいつに太刀打ちできぬ」

『さすがは、部隊長だ。理解がよくて気分がよいわ!かかかかかかか!』

 エルダーリッチ達が、アンデットを増殖し町に向かわせていた作業を止めたのだった。

『『『『『くかかかかかか!』』』』』

 マリクは魔物にいいように扱われ悔しかったが、今は言う通りにするしかなかった。


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