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第2章 研磨という技術

6話 ダンジョンでの戦闘

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 ヒロトシはミランダに怒られて、ダンジョンの中での行動をもっと経験しないといけないと反省した。すると前方から、呻き声を上げながら人らしきものが数十体現れた。

「2人とも気をつけろ!ゾンビだ」

「「はい……」」

「大丈夫だ!俺が磨いた装備を信じろ!」

 ミランダとアイリーンの武器は、800#研磨で短剣+3になっていたが、2人はゾンビに対して恐怖を抱いていた。
 ミストラルの世界では、アンデットは斬りつけても襲い掛かって来るようなしつこい魔物だ。つまり、弱点である聖属性か火属性の魔法で焼き払った方が確実に仕留める事が出来る。

 ミランダとアイリーンは、震えながらもゾンビに立ち向かい、ヒロトシの役に立とうと、短剣でゾンビを斬りつけた。ズバッとゾンビに斬りつけた短剣は、本当に+3になっていて、ノーマルソードなら反撃を食らわない様に、フットワークを軽くし、ゾンビからの攻撃をかわさないといけない。
 しかし、ゾンビは短剣の一撃で糸の切れたマリオネットのように、その場に崩れ落ちた。

「これは凄いわ!」
「ええ!これならわたし達でも!」

「お前達でも、ゾンビ20体ぐらい十分に渡り合えるから自信を持て!」

「「はい!」」

 そこには、もう震えていた二人はどこにもいなかった。斬りつけても襲い掛かってこないゾンビなら何も怖くはない。ただの動きの遅いアンデットである。
 ヒロトシは、後方から二人に指示を出しゾンビを返り討ちにした。そして、時間もかからず24体のゾンビはその場に崩れ落ちたのであった。

「「ご主人様!あたし達だけで、ゾンビの大群を討伐できました」」

「ああ。ちゃんと見てた。ご苦労様」

 ヒロトシの言葉で、二人は笑顔となった。

「なあ、なんでゾンビはダンジョンに吸収されないんだ?」

「よく分かりません……ダンジョンを研究している魔法使いによれば、死んでいるからじゃないかという事です。しかし、このまま放置していてもいずれ吸収されますよ」

「そうなんだ……すぐに吸収されるのは生きているからなのか?」

「実際はよく分かりません……とにかくアンデットのような死んでいる魔物はすぐには吸収されませんね」

「なるほどなあ……不思議なもんだ」
 
 ヒロトシはゾンビに【カッティング】の魔法をかけた。ゾンビの素材は魔石だけである。ヒロトシは魔石を24個入手し収納した。

「じゃあ、先に進むぞ」

「「はい」」

 ヒロトシは、ドンドン奥へと突き進んだ。左に曲がる分かれ道はいくつかあったが、兵士の言う通りに真っ直ぐに進み、順調にゾンビ以降は魔物に遭遇せずにゴミ捨て場についた。さすがにまだ一階層なのでダンジョンの罠は無かった。

 すると、先ほどまで通路は終わり、大きな空間が現れ、その先にはそこが見えない崖が現れた。

「この崖に捨てるのか?」

「そうみたいですね」
「冒険者もいるみたいで、鉱石を捨てているようですよ?」

 その大きな空間には、他の冒険者もいた。そして、マジックバックから鉱石を捨てていたのだった。

「なるほど……」

 ヒロトシは、遠くの方にいた冒険者と同じように崖に鉱石を捨て始めたのだった。ヒロトシはインベントリから大量の屑石を投下したのだった。
 ガラガラガラと大きな音を立てて、大量の屑石はそこが見えない崖の下に落ちていった。すると、ここで想定外の事が起こったのだ。

『ぎゃあおおおおおおおおおおおおお!』

 崖の下から、なにやら魔物の咆哮が聞こえてきたのである。

「なんだ!今の声は!」

 その広い空間にいた冒険者達も、聞いた事のない声に辺りを見回していた。

「「ご主人様?」」
「いったい何が起こったのですか?」

「分からない……だけど、崖の下から聞こえてきたような……」

「ああ!まさか……ご主人様が大量に屑石を捨てたから、崖の下に魔物がいたんじゃ……」

「な、なるほど!あの大量の石が魔物にあたったと……」

「や、やばいですよ!その魔物がとべる魔物だったら……」
「どうするんですか?こんな底の見えない深い層の魔物がとんで来たら、本当にどうしようもなくなりますよ?」

 ヒロトシは、周りを確認するとレベル20前後の冒険者が、4パーティーで24人が不安そうにしていた。

「みんな、すまない!すぐにここから退避してくれ」

 ヒロトシは、魔法で冒険者達に退避を促した。冒険者達は、声の主が㋪の店長だと、すぐに分かった様子で、ヒロトシの側にやってきたのだった。

「どういう事だ?」
「あ、お前は㋪のオーナーだな?」
「いったいなんだ?今の雄たけびみたいなのは?」

「今は詳しくは説明できないが、俺がたった今この崖の下に大量に屑石を捨てたせいで、崖の下にいる魔物を刺激したようだ……」

「馬鹿な!ここから落としたと言っても魔物が怒るような量じゃないだろ?」

「いや……俺のマジックボックスは特別製で、表にあった山のような量を捨てたんだよ」
「「本当です!ご主人様は嘘など言いません!」」

「オイオイ……そんな事を信じろと言われても!」

「時間が無い!今は俺の言う通りにして退避してほしい。もし下にいた魔物が飛べる魔物だった場合、君達では対処できるはずがない」

 飛べる魔物と聞き、20レベル前後しかない冒険者達は、顔が真っ青になっていた。そして、冒険者は逃げようとしないヒロトシに声をかけた。

「ヒロトシ!お前はどうするつもりだよ?」

「俺はここに残る!やってしまった事は、自分で始末つけないといけないからな」

「「ご主人様も一緒に逃げましょう!」」

「ミランダとアイリーンは後方にさがってろ。俺は大丈夫だから!やばいぞ!本当に飛んで上がって来る物体があるぞ!みんな早く下がれ!」

 神眼で見ていたヒロトシの目には、マンティコアと表示されていた。ヒロトシの号令で、冒険者達は慌ててダンジョンの出口に向かって走った。そして、この広い空間を出る時に冒険者達は後ろを振り向くと、巨大な生物が崖から
姿を現していた。
 その姿は、ライオンのような顔に、山羊のような角が生えていて、その背には蝙蝠のような羽根が付き、その尻尾はサソリのようだった。

「「「「「マ、マンティ……コアだ……」」」」」

 その姿を見た冒険者達は、急いで地上に出ようとした。そして、その場に残ったヒロトシはマンティコアに殺さるだろうと思い、目をつぶって全速疾走したのだった。



「「ご、ご主人様!」」

「お前達はここから動くなよ。もう間に合わない」

 ヒロトシは二人の場所に、結界石を置いた。これは野営に使うときの物で、㋪の敷地内に張ってあるものと一緒である。
 この中にいれば、悪意のあるものは300レベル以上じゃないと、絶対に侵入は不可能で安全である。

 マンティコアは、上から降ってきた屑石が大量に当たり興奮していた。

「まさか下にこんな魔物がいたなんて知らなかった……恨みはないが、放っておくととんでもない事になるからな」

『ガァアアアアアアアア!」

 マンティコアは、ヒロトシに向かって威圧してきて跳びかかってきたのだ。

「「ご、ご主人様!」」

 ヒロトシは、マンティコアの攻撃を余裕で躱して、後方に飛んだ。

 そして、エアカッターを飛ばし、マンティコアの翼を切断してしまった。マンティコアは、自分の身体に傷をつけられたのは初めての事で、顔が歪み咆哮を上げた。

 そして、大きく息を吸い込んだ。

「お前の攻撃方法は、すでにわかってるよ」

 マンティコアは、大きく吸い込んだ息を吐き出すように、口から炎のブレスを吐いた。ヒロトシはその攻撃を読んでおり、素早いスピードで躱し、ヒロトシは右方向へと移動した。
 そして、又エアカッターを飛ばしたのだった。そのエアカッターは、マンティコアの翼をも簡単に切断できるものだ。
 右側から、放ったエアカッターは、マンティコアの首を簡単に斬り飛ばしてしまったのだ。
 いくら強い魔物でも、首を飛ばされてしまっては生きていられない。アンデットならば、首を斬り飛ばされても向かってこれるのだが、マンティコアはその巨体を支えられなくなり、その場に倒れると同時にダンジョンに吸収されてしまった。
 そして、その場にはマンティコアの素材の、爪・牙・角・羽根・毒針の尻尾・マンティコアの皮、最後にあり得ないほど大きな魔石がその場に転がっていた。

 マンティコアを倒したことが分かり、ミランダとアイリーンは泣きながらヒロトシに抱きついたのだ。

「「ご主人様!」」
「無事でよかった!」
「本当に無茶な事はしないでください!」

「無茶じゃないさ。俺はドラゴンも倒せると言っただろ?だったら、マンティコアぐらい目じゃないさ」

「なにを言っているのですか!」
「そうですよ。マンティコアはAランクの冒険者が30人以上で討伐する魔物なんですよ」

「それは、なんとなくわかるけど……」

「いいえ、全然わかっていません!ご主人様は、肝心なとこは大雑把だから、考えもせず今回のような事を平気で起こすのです」
「そうですよ……鉱石を捨てるのももうちょっと少しづつ……」

「ああ……悪かったよ。もうちょっと慎重に行動するべきだった。本当にごめん!」

 ヒロトシは、ミランダとアイリーンに謝罪したのだった。


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