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第1 章 自分だけの職業
37話 新しい技術
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ヒロトシは、闇ギルドでそんな事になっているのも知らずに、日々の生活を平和に暮らしていた。シェリーとハンナも、ドワーフの特性を生かし、工場で働く事になっていた。ヒロトシは計画していた事が上手く行かなかった為、次の商売を考えていたのである。
ガインとブロッガンは、ヒロトシに研磨技術を仕込まれていた。まずはバフづくりに始まって、今は鏡を磨いている訳ではない。
ヒロトシが磨いている時に、一緒に磨いてはいたが、円柱を紙やすりでカンナ掛けをしているように、傷をつけていたのだ。
「主!儂達は、いったい何をやらされているんだ?」
ガインとブロッガンが、ヒロトシに説明を求めたのである。
「これはヘアラインという磨きだよ」
「「ヘアライン?」」
この世界には金属の手すりという物がほとんど無い。普通、宿屋の廊下に設置してあるのは、木材で作ってある。
金属研磨が今までなくて、手すりのカーブの部分が不格好になる為、金属の手すりが殆どない。しかし、お金さえかければできない事もなかった。
パイプの中に砂を詰めて、真っ赤になるまでパイプを熱するのである。そして、型に合わせて叩いていく事で少しづつカーブを作り、パイプのまま直角に曲げる事が出来るのだ。この絶妙な力加減は職人技であり、力を入れ過ぎるとパイプが凹んでしまう。
そして、カーブの部分は金やすりで細かく仕上げていき、1本出来上がるまでに時間が凄くかかり、手すり1本の値段は目が飛び出るほど高価となる。
「主殿?ワシ達は鏡には携われないのか?」
「まあ、そんなに急いで何になる。職人の世界はそんなに甘いもんじゃない事は、お前達も分かりきっている事じゃないか?」
「「それは分かるが……こんなに傷をつけているだけでは……」」
「それに、主。研磨というのはピカピカに照からせるのが目的なんだろ?これじゃあ、まったく逆じゃないか?」
「お前達は何を言ってんだよ?」
「「えっ⁉」」
「これは傷をつけてんじゃない。ヘアラインという磨きだと言っただろ?」
「「これが磨きなのか?」」
「いいか?お前達が、鏡のような顔が映る400#研磨するなんて5年は早い!」
「「そんな!」」
「いいか、よく見てろよ?」
ヒロトシは、ガインとブロッガンにヘアラインの工程を、もう一度見学させたのだった。
今回は、手で持てるモノではなく1mの長さの円柱の手すりが直角に曲がり、そこから30㎝伸びた手すりだったので、フレーキという魔道具に小さめの金剛砂の付いたバフを取り付けたのだった。
フレーキという機械は、モーターから伸びたホースの先にバフを取り付ける事で、バフが高速回転し仕上げた個所を研磨できる優れた魔道具である。
手すりは作業台に固定され、フレーキを起動させると、ヒロトシの手元でバフが高速回転し始めた。
「いいか?この叩いて曲げた所をバフで滑らかにしていくんだ」
「「フムフム!」」
「まずは80#のバフで、手すりのに沿わせて、バフを当てるんだ。そして、カーブの部分も手すりの方向に合わせて掛けていく」
ガインとブロッガンは、ヒロトシがどのようにバフを掛け行くのをじっくり観察していた。
そして、パイプの叩き傷を仕上げた金やすりの傷をバフでとると、ヒロトシは今度は今までと違うバフを取り出したのだっだ。
「主、それはいったい?」
「今やっているのは、ヘアライン仕上げで鏡のような仕上げじゃないからな」
ヒロトシは、フレーキにサテンバフという特殊なバフを取り付けた。これはサイザルバフのような綿を編んだバフではなく、食器を洗うスポンジで硬い面の所を想像してもらうと分かりやすいが、その材質のようなバフだった。そのバフで仕上げると、細かい傷がパイプについた感じだった。
「これでバフの仕上げは終わりだ」
「これは、ワシ達が紙やすりで傷をつける前の感じだな」
「そうだ、俺はここまで仕上げて、お前達にヘアラインの練習用に与えていたんだ。これからはちゃんと見てろよ」
ヒロトシは、40#の紙やすりを細く切って、パイプを削り取るようにパイプに沿って、紙やすりを上下に動かした。
すると、パイプに真っ直ぐな線が引かれていくと言った感じで仕上げられていった。
その様子に、ガインとブロッガンは目を見開き驚いたのである。確かに、このヘアラインというのは傷をつけるのではなく、真っ直ぐに伸びた髪の毛1本1本が均等に並んだような綺麗なパイプと言っても過言ではなかった。
ヒロトシのやったヘアラインは、真っ直ぐにつながったような感じで、反対に自分達がやったのは、ところどころ細かく線が切れていたり、その線が曲がっていたりして汚い仕上げだった。
「いいか?ヘアラインというのは、こうして1m程のパイプなら真っ直ぐに引けるようにならないと駄目だ」
「「はい……」」
「わし達のヘアラインは曲がっていたり、1本のヘアラインになっていないんだな……」
「主殿……これが出来る様にならないと、鏡は磨かせてもらえないんだな?」
「ふっ」
ヒロトシは、ブロッガンの言葉に鼻で笑ってしまった。
「「えっ⁉」」
「お前達は、何か勘違いしているようだが、ヘアラインを舐めているといつまでも丁稚奉公だぞ」
「わしらが丁稚奉公……」
「間違えた……丁稚奉公にもならん。雑用で、一生を終わる事になるかもな」
「そ、そんな……」
「主……儂らはヘアラインを馬鹿になんかしておらん!ちょっとでも早く鏡を磨き、主の役に立ちたいだけなんだ」
「そんな焦んじゃないよ。生産職は石の上にも3年とよく言うだろ?研磨職人はヘアラインが出来てから、スタートともいえるから、気長にがんばれ!」
ヒロトシの言葉に、二人は唖然となった。ヘアラインが出来てから、研磨職人のスタートというのである。そのスタートにも立っていないヘアラインの技術も、石の上にも3年と言われたのだった。
「主!それはどういうことだよ?」
「いいか?これは俺の親方に言われた事だ。親方が俺のヘアラインを褒めてくれるようになったのは、4年目になっての事だったよ」
ヒロトシは、4月に親方の所に弟子入りした。そして、4年目の夏の終わりになった頃、後ろでいつの間にか立っていた親方に肩を叩かれて、一言だけ言われた。
『やっと、お前も見れるヘアラインになったな!』
それだけ言われただけだったが、ヒロトシは親方に初めて認められた高揚感で、その日一日とても嬉しかったのを思い出したのだった。
「あ、主が……ヘアラインを4年以上……」
「じゃあ、ワシ達は……」
「まあ、ヘアラインが出来るようになるころには、バフも満足に作れるようになるから頑張れよ」
そう言って、ヒロトシは冒険者達から預かった武器や防具を磨きだした。それの様子に、シェリーとハンナは呆然としてみていた。
そして、ガインとブロッガンはその場にたたずんでいたのだった。ヘアラインを習得しないと、次の磨きには進めないと分かったからだ。
てっきり二人は、鏡面研磨を教えてもらえるとばかり思っていたので、考えが追い付かなかったのだ。
「こらぁ!二人とも何をボーっとしているんだ!手を動かさんか!」
「「は、はい!」」
いつまでも呆けていた二人に、ヒロトシは怒鳴った。そして、二人はヘアラインの練習を再開したのだった。
しかし、二人はヒロトシの考えがまるで分かっていなかった。二人は鏡を手伝うためにヘアラインをやると思っているようだが、ヒロトシはこのヘアラインも商品の一つと考えていた。
手すりの材質は普通は木材だが、青鋼鉄で作れば見栄えが良くなり、貴族達から注文が殺到すると考えていたのだった。貴族の屋敷も材質が材木の手すりが多かった。やはり、見栄えはいいのだが、カーブの部分の仕上げがどうしても目に付くのである。
その為、廊下の1面だけにして、真っ直ぐの手すりにしていた。そして、曲がった先の壁に別の手すりを付けて、カーブのない手すりを付けていた。
そんな事も知らない二人は、先ほどヒロトシがやったようにヘアラインを練習していた。
「儂達いつになったら鏡を磨かせてくれるのかな……」
「少なくともヘアラインが出来てからだろうな……」
「二人とも一応言っておくが、これは意地悪でも何でもなく、ヘアラインは両手の力が均等になる練習だからな。人間どうしても利き腕という物がある」
「「均等に?」」
ヒロトシの説明では、利き腕はどうしても力が強い為ヘアラインを引いた時、上下に手を移動さすことにより手が伸びきった時に、利き腕に力が入りどうしても、素人がやるとヘアラインの線が曲がる事になる。
つまり、両腕の力を均等にしないとヘアラインは失敗になるのだ。そうなると、失敗した曲がった個所を修正しても、腕が伸びきったところがまた曲がり商品にならなくなるのである。
「とりあえずお前達は、そのパイプに真っ直ぐにヘアラインが引けるようにならないとどうしようもないぞ?」
「真っ直ぐに……」
「いいか?お前達は忘れているようだが、そのカーブしている叩いたところも、カーブに沿わせてヘアラインを繋げないといけないんだからな」
「「……」」
ヒロトシは、二人に涼しい顔をして言い放った。そして、二人は研磨の道のゴールは、まだまだ遠いと冷や汗をかいていた。
ガインとブロッガンは、ヒロトシに研磨技術を仕込まれていた。まずはバフづくりに始まって、今は鏡を磨いている訳ではない。
ヒロトシが磨いている時に、一緒に磨いてはいたが、円柱を紙やすりでカンナ掛けをしているように、傷をつけていたのだ。
「主!儂達は、いったい何をやらされているんだ?」
ガインとブロッガンが、ヒロトシに説明を求めたのである。
「これはヘアラインという磨きだよ」
「「ヘアライン?」」
この世界には金属の手すりという物がほとんど無い。普通、宿屋の廊下に設置してあるのは、木材で作ってある。
金属研磨が今までなくて、手すりのカーブの部分が不格好になる為、金属の手すりが殆どない。しかし、お金さえかければできない事もなかった。
パイプの中に砂を詰めて、真っ赤になるまでパイプを熱するのである。そして、型に合わせて叩いていく事で少しづつカーブを作り、パイプのまま直角に曲げる事が出来るのだ。この絶妙な力加減は職人技であり、力を入れ過ぎるとパイプが凹んでしまう。
そして、カーブの部分は金やすりで細かく仕上げていき、1本出来上がるまでに時間が凄くかかり、手すり1本の値段は目が飛び出るほど高価となる。
「主殿?ワシ達は鏡には携われないのか?」
「まあ、そんなに急いで何になる。職人の世界はそんなに甘いもんじゃない事は、お前達も分かりきっている事じゃないか?」
「「それは分かるが……こんなに傷をつけているだけでは……」」
「それに、主。研磨というのはピカピカに照からせるのが目的なんだろ?これじゃあ、まったく逆じゃないか?」
「お前達は何を言ってんだよ?」
「「えっ⁉」」
「これは傷をつけてんじゃない。ヘアラインという磨きだと言っただろ?」
「「これが磨きなのか?」」
「いいか?お前達が、鏡のような顔が映る400#研磨するなんて5年は早い!」
「「そんな!」」
「いいか、よく見てろよ?」
ヒロトシは、ガインとブロッガンにヘアラインの工程を、もう一度見学させたのだった。
今回は、手で持てるモノではなく1mの長さの円柱の手すりが直角に曲がり、そこから30㎝伸びた手すりだったので、フレーキという魔道具に小さめの金剛砂の付いたバフを取り付けたのだった。
フレーキという機械は、モーターから伸びたホースの先にバフを取り付ける事で、バフが高速回転し仕上げた個所を研磨できる優れた魔道具である。
手すりは作業台に固定され、フレーキを起動させると、ヒロトシの手元でバフが高速回転し始めた。
「いいか?この叩いて曲げた所をバフで滑らかにしていくんだ」
「「フムフム!」」
「まずは80#のバフで、手すりのに沿わせて、バフを当てるんだ。そして、カーブの部分も手すりの方向に合わせて掛けていく」
ガインとブロッガンは、ヒロトシがどのようにバフを掛け行くのをじっくり観察していた。
そして、パイプの叩き傷を仕上げた金やすりの傷をバフでとると、ヒロトシは今度は今までと違うバフを取り出したのだっだ。
「主、それはいったい?」
「今やっているのは、ヘアライン仕上げで鏡のような仕上げじゃないからな」
ヒロトシは、フレーキにサテンバフという特殊なバフを取り付けた。これはサイザルバフのような綿を編んだバフではなく、食器を洗うスポンジで硬い面の所を想像してもらうと分かりやすいが、その材質のようなバフだった。そのバフで仕上げると、細かい傷がパイプについた感じだった。
「これでバフの仕上げは終わりだ」
「これは、ワシ達が紙やすりで傷をつける前の感じだな」
「そうだ、俺はここまで仕上げて、お前達にヘアラインの練習用に与えていたんだ。これからはちゃんと見てろよ」
ヒロトシは、40#の紙やすりを細く切って、パイプを削り取るようにパイプに沿って、紙やすりを上下に動かした。
すると、パイプに真っ直ぐな線が引かれていくと言った感じで仕上げられていった。
その様子に、ガインとブロッガンは目を見開き驚いたのである。確かに、このヘアラインというのは傷をつけるのではなく、真っ直ぐに伸びた髪の毛1本1本が均等に並んだような綺麗なパイプと言っても過言ではなかった。
ヒロトシのやったヘアラインは、真っ直ぐにつながったような感じで、反対に自分達がやったのは、ところどころ細かく線が切れていたり、その線が曲がっていたりして汚い仕上げだった。
「いいか?ヘアラインというのは、こうして1m程のパイプなら真っ直ぐに引けるようにならないと駄目だ」
「「はい……」」
「わし達のヘアラインは曲がっていたり、1本のヘアラインになっていないんだな……」
「主殿……これが出来る様にならないと、鏡は磨かせてもらえないんだな?」
「ふっ」
ヒロトシは、ブロッガンの言葉に鼻で笑ってしまった。
「「えっ⁉」」
「お前達は、何か勘違いしているようだが、ヘアラインを舐めているといつまでも丁稚奉公だぞ」
「わしらが丁稚奉公……」
「間違えた……丁稚奉公にもならん。雑用で、一生を終わる事になるかもな」
「そ、そんな……」
「主……儂らはヘアラインを馬鹿になんかしておらん!ちょっとでも早く鏡を磨き、主の役に立ちたいだけなんだ」
「そんな焦んじゃないよ。生産職は石の上にも3年とよく言うだろ?研磨職人はヘアラインが出来てから、スタートともいえるから、気長にがんばれ!」
ヒロトシの言葉に、二人は唖然となった。ヘアラインが出来てから、研磨職人のスタートというのである。そのスタートにも立っていないヘアラインの技術も、石の上にも3年と言われたのだった。
「主!それはどういうことだよ?」
「いいか?これは俺の親方に言われた事だ。親方が俺のヘアラインを褒めてくれるようになったのは、4年目になっての事だったよ」
ヒロトシは、4月に親方の所に弟子入りした。そして、4年目の夏の終わりになった頃、後ろでいつの間にか立っていた親方に肩を叩かれて、一言だけ言われた。
『やっと、お前も見れるヘアラインになったな!』
それだけ言われただけだったが、ヒロトシは親方に初めて認められた高揚感で、その日一日とても嬉しかったのを思い出したのだった。
「あ、主が……ヘアラインを4年以上……」
「じゃあ、ワシ達は……」
「まあ、ヘアラインが出来るようになるころには、バフも満足に作れるようになるから頑張れよ」
そう言って、ヒロトシは冒険者達から預かった武器や防具を磨きだした。それの様子に、シェリーとハンナは呆然としてみていた。
そして、ガインとブロッガンはその場にたたずんでいたのだった。ヘアラインを習得しないと、次の磨きには進めないと分かったからだ。
てっきり二人は、鏡面研磨を教えてもらえるとばかり思っていたので、考えが追い付かなかったのだ。
「こらぁ!二人とも何をボーっとしているんだ!手を動かさんか!」
「「は、はい!」」
いつまでも呆けていた二人に、ヒロトシは怒鳴った。そして、二人はヘアラインの練習を再開したのだった。
しかし、二人はヒロトシの考えがまるで分かっていなかった。二人は鏡を手伝うためにヘアラインをやると思っているようだが、ヒロトシはこのヘアラインも商品の一つと考えていた。
手すりの材質は普通は木材だが、青鋼鉄で作れば見栄えが良くなり、貴族達から注文が殺到すると考えていたのだった。貴族の屋敷も材質が材木の手すりが多かった。やはり、見栄えはいいのだが、カーブの部分の仕上げがどうしても目に付くのである。
その為、廊下の1面だけにして、真っ直ぐの手すりにしていた。そして、曲がった先の壁に別の手すりを付けて、カーブのない手すりを付けていた。
そんな事も知らない二人は、先ほどヒロトシがやったようにヘアラインを練習していた。
「儂達いつになったら鏡を磨かせてくれるのかな……」
「少なくともヘアラインが出来てからだろうな……」
「二人とも一応言っておくが、これは意地悪でも何でもなく、ヘアラインは両手の力が均等になる練習だからな。人間どうしても利き腕という物がある」
「「均等に?」」
ヒロトシの説明では、利き腕はどうしても力が強い為ヘアラインを引いた時、上下に手を移動さすことにより手が伸びきった時に、利き腕に力が入りどうしても、素人がやるとヘアラインの線が曲がる事になる。
つまり、両腕の力を均等にしないとヘアラインは失敗になるのだ。そうなると、失敗した曲がった個所を修正しても、腕が伸びきったところがまた曲がり商品にならなくなるのである。
「とりあえずお前達は、そのパイプに真っ直ぐにヘアラインが引けるようにならないとどうしようもないぞ?」
「真っ直ぐに……」
「いいか?お前達は忘れているようだが、そのカーブしている叩いたところも、カーブに沿わせてヘアラインを繋げないといけないんだからな」
「「……」」
ヒロトシは、二人に涼しい顔をして言い放った。そして、二人は研磨の道のゴールは、まだまだ遠いと冷や汗をかいていた。
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