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第1 章 自分だけの職業

33話 闇ギルド、ミトン支部の必死の攻防

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 町はずれの一角にやってきたヒロトシは息をのんだ。ここから先は、町の人間は絶対踏み入れないスラム街になるからだ。
 
「闇ギルドが活動するには、うってつけの場所だよな」

 足を踏み入れた瞬間に、ヒロトシは異様な目線を感じた。いい服を着た10歳ほどの少年が鴨葱状態で、この場所に入って来たからだ。

「おいおい!こんなとこに、子供のお前が入ってきて何があったんだ?」

 ヒロトシに、髭もじゃの汚らしい大人が数名声をかけ絡んできた。ヒロトシはそれを無視して、スラムの奥へと突き進んだ。

「おい!坊主、無視してんじゃねぇ!」

 男がヒロトシの肩を掴もうとした瞬間、その手は空を切りヒロトシの肩をつかみ損ねた。そして、一回転して地べたに這いつくばったのだ。
 男達は何が起こったのか理解できなかった。特に、地べたに倒れた男は、確かに少年の肩を掴んだはずなのに、なぜか自分の身体が宙を舞って、地べたにはいつくばっていたのだ。

「貴様ぁ!何をやった?」

 男達は、その少年を羽交い締めにするつもりで襲い掛かった。しかし、少年に触れようとすると大の大人の身体が宙を舞うのである。
 そして、ダメージは全くなく、ただ地べたに倒れ込んでいた。それを数十回繰り返し、ようやくヒロトシが口を開いた。

「ねえ、その辺でもうやめておきなよ。じゃないと、そろそろ本気をだすよ」

 地べたに這いつくばった大人達は、その少年の目を見て血の気が引いた。その少年の目は、冷酷に自分達を見つめていて、本気で命を取られるかと思ったのだ。
 その目は、今までこのスラムで生活していて感じたことのないもので、針で刺したような攻撃を受けただけでも、この少年は怒り狂いこの場は崩壊すると思うような恐怖を感じられた。
 そして、その目に飲まれて絡んできた大人達は、その場で気絶してしまった。ヒロトシは、そのまま介抱もせず、闇ギルド支部に向かった。

 そして、後に残されてしまった気絶した大人達の周りには、スラムの子供達が群がったのだった。すると、1分も経たずに気絶した大人達はみぐるみを剥がれて、髪の毛一本残らなかったのだ。髪の毛さえも剃られてしまっていたのだった。
 スラムの子供達は、久しぶりの実入りだったのか喜々として、大人達の物を盗んで帰っていったのだ。

 そして、ヒロトシは大きな建物の前にやってきていた。もう誰もいない廃墟と化した教会だったところだ。

「こんなところをアジトにして……」

 ヒロトシは、正面から普通にドアを開けた。すると、そこは教会の面影は無く、正面にはミレーヌの神像はあるももの、闇ギルドのホールとなっていた。

「あーあー!㋪の店主ヒロトシが、闇ギルドミトン支部を壊滅させに来ました!俺の家族に手を出したことを後悔してください!」

 いきなり正面玄関を開けられ、高々と宣言された闇ギルドの中にいたアサシンや犯罪者達は、ポカンと呆けた後、子供がそんな事を言うので大笑いしたのだった。カウンターには闇ギルドの受付嬢も、この少年は何言っているのかと思い、甲高い笑い声をあげていた。

「「「「「「「……」」」」」」」」
「がははははははは!」
「わははははっはは!何言ってんだ?あの小僧!」
「おほほほほㇹ!面白い坊やね」

 闇ギルドのホールは、ドッと大爆笑の渦になった。ヒロトシの目には、神眼で犯罪者と記されていたので、容赦なく魔法を発射したのだった。

「ファイヤーアロー!」

 ヒロトシの手から、300本からの炎の矢が容赦なく撃ち込まれたのだ。さっきまでの大爆笑の渦は、悲鳴と叫び声に変わった。
 ヒロトシは、闇ギルドの受付嬢にも容赦なくファイヤーアローを撃ち込んだのだ。犯罪者達は、そのファイヤーアローの火力が普通じゃないと慌てて転がったのだ。それもそのはずで、打ち抜かれた人間の傷を見たら、それはもう傷という物ではなく、あまりの火力で蒸発していたのだ。

「俺の手が!」
「俺の足も無くなった!」
「きゃあああああああ!」
「ぐわあああああ!」

 犯罪者達は、地面を転がり身を低くして、この危機を逃れようとした。

「何だあのガキは!」
「とんでもねえ奴だ!」

 盗賊風の男達は、鋼鉄製のテーブルを立てて壁にした。アサシンは、影の中に身をひそめた。

「そんなとこに隠れても無駄だよ!ファイヤーアロー!」

 本日2回目の、炎の矢が撃ち込まれた。

 すると、鋼鉄製のテーブルが真っ赤に熱を帯びてドロドロに溶けて、炎の矢が鋼鉄製のテーブルを突き抜けて犯罪者に命中し、犯罪者は絶叫をあげてジュッという音を立てて蒸発してしまった。
 そして、そのホールにいた人間はアサシン以外は、あっという間に全滅してしまったのだ。

「アサシン達よ。安心するのはまだ早いよ。ライトアロー!」

 今度は、ヒロトシは影の中に潜むアサシン達に、光属性のライトアローを撃ちこんだのだ。

「ば、馬鹿な!あの少年……ダブルユーザー(2属性持ち魔法使い)だと!」

 ライトアローは影を打ち消し、アサシンを次々と打ち抜いたのだ!

「ぐっ!」
「ぐはっ!」
「うぐっ」
「ぎゃああああああ!」

 影に同化していたアサシン達は、ライトアローの反発しあう効果に倍のダメージをおって絶命していくのだった。

 ヒロトシは魔道スキルは1レベルである。つまり、ファイヤーアローなどの初期レベルの魔法しか使えない。ファイヤーボールが使えていたなら、一網打尽に出来ていただろう。
 しかし、ヒロトシのレベルが高い為、普通なら矢1本のダメージは高くても10ダメージ程なのだが、INT(知力)補正がとんでもなく高いのだ。
 INTが3000あるヒロトシの、矢のダメージは3000。しかも、レベルが300がある為、矢の数は300本であり、いくら闇ギルドが犯罪組織といえどどうにもならなかった。

 その中、高レベアサシンがヒロトシの懐に突っ込むことに成功したが、防御力と回避力が2.5倍となっているヒロトシにダメージを与えれるわけは無く、余裕でかわされSTR(腕力)3000というとんでもないダメージを受けて瞬殺されてしまった。

「あ、あいつ、魔法使いじゃねえのかよ……」
「素手でアサシンを倒しやがった」
「何だよあの素手は……胴体が真っ二つになったぞ?」
「武闘家なのか?」

 それらを見て、生き残っていた3人のアサシンは、この場から逃げ出そうとしたのだった。

「シャドーアイ」

「「「な、なんだ⁉」」」

「勝手に逃げ出そうとするなよ。お前達3人で最後なんだから……」

「な、何で……貴様が闇属性の魔法を!」
「目、目が……」
「な、何も見えねえ!どこだ!どこにいやがる!」

「何でって使えるからに決まっているだろ?」

 アサシン達は、ヒロトシが光属性と火属性の魔法を使っていたので、【シャドーアイ】で自分達の視力を奪った闇属性を使ったことに驚愕したのだ。それに、光属性と反発しあう闇属性を使った事で余計に理解できなかったのだ。
 その恐怖に、アサシンの一人はダガーを持ち、目標など無く振り回した。

「貴様は光属性を使ったではないか!」

「だから闇属性はつかえないと思い込むのはおかしいだろ?」

「使える方がおかしい!何故使える?」

「フッ……死んでいくお前達にもう関係はないだろ?」

「なんだっ……!」

 そう怒鳴ろうとしたところで、ゴトッという音が聞こえた。後の二人のアサシンは、あの少年に首を斬られたと理解した。
 視界を奪われた二人のアサシンは、自分の命はこれまでと思い、その場に膝をついた。その瞬間、二人の首は宙を舞った。

 そして、ヒロトシはそこに転がっていた死体を全て、インベントリに収納してしまった。ヒロトシは、そのまま廃墟となった教会の2階へと上がった。
 そして、2階に身を隠していた犯罪者達は、ヒロトシに不意打ちを試みるも全て躱されて、反撃をくらい瞬殺されていったのだ。

「どうなっておるのだ!闇ギルドが、あんな小僧一人になすすべもないのか?」

「だ、駄目です……アサシン全員の首が宙に舞うだけです……それにあの魔法はとんでもない火力で……」

「それでも闇ギルドのアサシンか!気合を入れ直すのだ!」

 闇ギルドの構成員は基本逃げる事はしない。逃げると後の報復が怖いからである。当然一度所属すると抜ける事も出来ない。その為、構成員は必死で敵対する組織には抵抗をするのだが、今のこの状況は到底受け入れることが出来なかった。
 10歳ぐらいの成人前の少年が、闇ギルドの支部とはいえたった一人で宣戦布告し、高レベルアサシンを次々戦闘不能にして、ギルドマスターを追い詰めようとしていた。
 しかも、その少年は全力を出しているように感じられないのだ。なんと言ったらいいのか、自分が突き進む先に、邪魔な小石があれば気にする事なく、足を振ったらその小石はどこかに飛んでいくように、アサシン達がその少年になすすべもなく吹き飛ぶのである。

「お前達に勝ち目はない!大人しくして殺されろ!」

「なんなんだ!貴様は!」
「鬼神の生まれ変わりか!」
「ここは闇ギルドだぞ!分かってんのか⁉」

「その闇ギルドが、今日この日を持ってこの町からなくなる日だよ!俺の家族に手を出しやがって、お前達は後悔しながら死んでいけ!」

 ヒロトシは、ファイヤーアローを撃ちこんだ。その数にアサシン達はなすすべもなく、絶叫とともに体の一部が蒸発し、この世を去っていくのだった。
 
「ここが最後の部屋か!」

 ヒロトシは、無造作にその扉を開いた。するとその先には、数多くのアサシンが待ち構えていて、投擲や弓矢を撃ちこんできた。

「「「「「「死ねぇええええええええええ!」」」」」」」

 しかし、その投擲や矢は当たる事はなかった。当たったかのように思った矢やクナイは、ヒロトシの後方に素通りして、廊下の壁に刺さったりしていた。

「な、何故だ!なぜ爆発しねえ?」

 ヒロトシの手には、オークション会場で大爆発をした、矢じりの代わりにエクスプロージョンポーション付きの矢が数本握られていた。

「こいつが、あの時放たれた矢か……こいつのせいでカノンは!」

 その兵器を見て、ヒロトシの顔は怒りで震えていたのだった。


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