研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第1 章 自分だけの職業

3話 兵士の勘違い

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 ヒロトシは、町に入るのに行列に並ばないといけない事に驚愕した。

「なあ、マイン?」

「何でしょうか?」

「何で町に入るのに並ぶ必要があるんだ?」

「それはですね。先ほども言ったように、盗賊が町に自由に出入りしたら困るからですよ」

「だが、盗賊ってどうやってわかるんだ?」

「門番をやっている兵士達が確認するんですよ。入場する際に、身分証明書を提出するんです」

「身分証明なんかないぞ?」

「ない人は、こうして時間はかかりますが、こちら側に並ぶんです。はいる時に水晶に手を触れる事で、犯罪者ならわかる魔道具があるんですよ」

「へえ、便利なものがあるんだな?」

「その魔道具は、アーティファクトと呼ばれるもので、ダンジョンから取れるものらしいですよ」

「ほう!」

「水晶に触れると、名前と年齢が表示され、犯罪者なら水晶が赤く光るのです。犯罪者でなければ青く光るんですけどね」

「へえ。凄いものがあるんだな」

「まあ、でも、町の中にはどこからか侵入してくる抜け道があるみたいで、治安が良いとは言い切れないんですけどね」

「意味ないじゃん……」

「ですが、こうして確認を取らないと、もっと治安が悪くなりますから、領主様も大変だと思いますよ」

「確かにそうだよな……」

「それに、このミトンの町の領主様は、善政をしてくれているので、かなり治安は良い町なんですよ」

「そうなんですよ、ご主人様!そのおかげでこの町は活気があり、人々が他の町からやって来ることも多いんです」

「たしかに、俺もここに移住しに来たんだものな」

「たぶん、銅鏡磨きでも人口が多い分依頼も多いかと思いますよ」

「まあ、依頼が多い分には良いが、今俺をいじったのか?」

「い、いえ、そんな事は!」

「ったく、マインは調子がいい奴だな……そんな事を言う奴は、奴隷商店に売っちゃおうかな」

「えっ⁉そ、それだけは……もう調子に乗ったりしませんから……だから、捨てないでください」

「マインってホント馬鹿ね……」

 ヒロトシは、マインの土下座を見て苦笑いをしたのだった。

 ここまで旅を一緒にしてきて、マインとアイはヒロトシに心を開いていた。そのわけは食事だった。一日一回の食事でいいと言っていたが、朝昼晩の3食それもヒロトシと同じオークの肉を貰っていたからだ。
 そして、テントの中で睡眠も充分に与えられていたのだった。3人そろって睡眠が出来た訳は、結界石が女神ミレーヌからインベントリに入れられていたのだ。
 この結界石は便利がいいのである。結界を張った人間のレベルで、効果が変わってくるからである。生活魔法が使える人間なら誰でも使用可能だが、その術者のレベル以下の悪意の持った者は侵入できなくなるからだ。
 
 この世界の平均レベルは30から40と言われている。達人で80の世界であり、その中でヒロトシのレベルは300とあり得ないレベルである。この為、侵入できる者はおらず見張りも必要がなくゆっくり眠ることができた。
 
 そんな旅をしてきた3人だったので、マインとアイはヒロトシに懐くのは無理もなかったのだ。

「ところで、あっちの列はどんどん進んでいるけど、あっちに並んだ方が早いんじゃないのか?」

「向こうの列は、市民権を持つ人かギルド所属の列です。住民票やギルドカードを持っていたら、確認はいらないんですよ。身分証を見せたら自由に入れるんです」 

「へえ。あっちの方がいいな」

「ご主人様もこの町でお店経営する為に来たのだから、商人ギルドに登録したら、ギルドカードを貰えますから大丈夫ですよ」

「そうですね。こっちの列は旅人か、他の町で市民権を持っていたけど、何らかの理由で移住してきた人の列になります」

「なるほどなあ……」

 そんな事を話していたら、時間が経つのは早く、ヒロトシ達の番になった。門番の兵士達にヒロトシは話しかけられる事になった。

「この町には何をしに?」

「この町で商売をしたいと思います」

「はぁあ?君はまだ子供じゃないか?」

 兵士が驚くのは無理もなかった。ヒロトシ自身は51歳だと思っているが、他人から見たら成人前の12歳だったからだ。

「でも、12歳からギルドに所属できると聞いています。だから、俺はこの町の噂を聞きここまで来ました」

「まあ、俺達が君の目標を止める事はないが、本当に大丈夫なのか?」

「はい!」

「まあ、分かったけど、この水晶に触れてくれるか?」

 ヒロトシは何の抵抗もせず水晶に触れると、水晶は青く光ったが、兵士達も顔が真っ青になった。

「申し訳ありません。知らないとはいえ無礼な口をきいてお許しください」

「えっ、えっ、えっ、どうしたんですか?」

「オノダ様!まさか貴族の方だとは知らずに……貴族様なら真ん中の門を利用してくださればよかったのです」

「「「えええええ!」」」

 これにはマインとアイも驚いたのだった。ヒロトシと名のっていたが、水晶には名前がちゃんと表示されていて、オノダ=ヒロトシ(12)と表示されていた。苗字は貴族しかなく、平民は名前だけが普通なのだ。

「いやいや、俺は貴族じゃないよ」

「ですが、このように苗字がヒロトシと表示されているではないですか?」

「ヒロトシは名前で苗字はオノダです。俺はこことは別の遠いところから来たんだよ。そこでは普通にみんな苗字を名乗っていたところなんだ。だから、俺は貴族じゃないよ」

「な、なるほど……確かにこの辺りでは苗字は後に表示されるからな……で、ではどこから?」

「東の島国で、日本ってところだよ。そんな国を言われてもわからないだろ?」

「確かに聞いた事のない国の名前だね」

「だから、俺は貴族じゃないからヒロトシと、この子たちに名乗ってたんだよ」

「事情は分かった。こちらも取り乱して悪かったね。水晶も青色に光ったし問題はない事としよう。では、3人分で30ゴールド。銅貨3枚を支払ってくれ」

 ヒロトシはバックから銅貨3枚を支払い、注意事項を聞いた。この許可書は1週間の滞在許可書であり、それ以上滞在したい場合もう一度ここで銅貨3枚支払うか、市民権を得る為役所で手続きを取るか、ギルドで登録をしてギルドカードを貰う事を教えられた。
 1週間して手続きを取らず、衛兵に捕まると罰金一人に対して100ゴールドの支払いになる。もし罰金が払えなかった場合は、奴隷落ちになるから注意するようにと兵士から言われたのだった。
 手続きが取れたら、滞在許可書はここに還すようにと言われて、ヒロトシたちはようやく町に入ることを許されたのだった。

 ミトンの町に入ったヒロトシは、活気ある町にドキドキしたのだ。そこで暮らす人たちは人間だけでなく、マイン達みたいに獣人族やエルフや巨人族や小人族もいたのだ。

「なあ、あの角の生えた人は何族なんだ?」

「あの人は魔人族ですね。角が生えている人でもあちらの方は竜人族ですよ」

「へえ!すごいなあ。俺初めて見たよ」

「まあ、ご主人様は遠くから来たみたいですし、しょうがないといえばしょうがないですね」

「ああ、エルフを見たのも初めてだ。本当に綺麗な人なんだな」

「確かにエルフ族は、初めて見るのならビックリするぐらい目を奪われますね」

「ああ。これからここで生活できると思ったらドキドキするよ」

 ヒロトシは、目の前の事が見たことが無い事ばかりだったので、本当にワクワクしてこれからの生活が楽しみになっていた。

「ご主人様、とりあえず商人ギルドに行きますか?」

「まず、奴隷商店でマイン達の契約の更新をしよう。今のままでは仮契約だからな」

「「はい!ありがとうございます」」

 奴隷契約はしないといけないからだ、主人が無くなると奴隷紋は黒くなる。そして、契約し直すと借金奴隷とか戦闘奴隷ではなく特別奴隷となるのだ。
 初めて奴隷に落ちる時、その種類によって奴隷紋の色がつき、借金なら青色・戦闘は緑・貴族が没落すると金となる。今回の場合は、主人が変わり拾われた奴隷との事で奴隷紋は黄色に輝いた。
 しかし、色が変更されない場合もある。それは犯罪奴隷の場合、主人が亡くなると奴隷紋は赤黒くなり、更新しても紋章は赤くなるだけである。

 当然だが、マインとアイの奴隷紋は黄色に変化して、これで正式にヒロトシの奴隷となった。更新料は思ったより高額で一人1000ゴールドもしたのだった。

 ヒロトシは、奴隷商人に銀貨を2枚支払い、奴隷商店を出たのだった。

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