役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第8章 人類の厄災

12話 土下座する領主様

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 見張り台の兵士に、領主のバッハは大声で怒鳴った。

「これ以上仲間の不安を煽るな!」

「ち、違います」

「違うとはどういう事だ?」

「西の方向の魔物が吹き飛んでいます!」

「なんだと?」

 見張り台の兵士は自分の目を疑い、何回も遠眼鏡を見直すが、上空から降り注ぐ巨大な火の玉が地上の魔物を吹き飛ばしていた。

「何を言っているんだ?もっと分かりやすく説明せんか!」

 しかし、見張り台の兵士の説明は要領を得ず、領主のバッハは城壁の階段を駆け登る。

「な、なんだあれは?」

 領主のバッハは、見張りの兵士と同じく目を皿のように大きくした。城壁の上に上がると冒険者達もその光景に歓声を上げていた。

「「「「「「す、すげぇ!」」」」」」
「俺達は助かるのか?」
「誰かわからんがもっとやれぇ!」
「「「「「「頑張れ!」」」」」」

 城壁から見ると、上空に小さな点が見えるだけだが人だという事が辛うじてわかる感じだ。その点のような人から凄まじい火球が地上に降り注ぎ、まるで禁忌の大魔法メテオのように大爆発を起こし、魔物が蒸発しているように見えた。
 この光景に見張り台の兵士の説明が要領を得ないのはしょうがない事だと、バッハは思うしかなかった。事実自分も言葉を失っていたのだから。

「リーランの町も気づいた見たいだね」

 マルクが魔物を蹴散らしていると、遠くのリーランの町から歓声が上がっているのが聞こえて、やはり大きな町だけあって、なんとか生き残ったのはさすがだと思った。

「ファイヤーボール!」

 マルクが唱えていたのはファイヤーボールで、まさかリーランの町では禁忌の大魔法と思われていたのは驚きで、落ち着いた時にバッハとの会話で笑い話となった。

 その小さな点が、魔物を蹴散らしながらリーランの町に近づいてきた。そして、城壁から確認できるようになると、バッハが声をあげる。

「マ、マルクなのか?」

「領主様!お久しぶりです。大丈夫ですか?」

 空中に浮き、マルクは魔物を吹き飛ばして手を振るとバッハを始め、懐かしい面々が涙を流し笑顔でマルクを迎え入れた。
 周りの魔物を殲滅して城壁の上に降りると真っ先に駆け寄ってきたのは、冒険者ギルドリーラン支部の受付嬢のマヤだった。

「マルクさん、お久しぶりです。本当にありがとうございます」

「マヤさんお久しぶり。元気だった?」

「元気とは言いきれませんが、マルクさんのおかげで生き残れました」



 すると、マルクの後ろから筋肉隆々のスキンヘッドの男が抱きついてきた。

「マルク、助けに来てくれたのかぁ!ありがとなあああああ!」

「うわぁ!ギルドマスター!抱きつくなぁ!」

「げほっ!な、何をする・・・・・・」

「暑苦しいオッサンが引っ付くな!僕はそんな趣味はない!」

 いきなり抱きつくギルドマスターのみぞおちに、マルクの肘打ちが決まり、ギルドマスターはその場に崩れた。その様子に冒険者達は大声笑うのだった。

「ギルドマスターが申し訳ありません。しかし、マルクさんのおかげで町はすくわれました」

「いえいえ、レジーナさんも無事で良かったです」

 マルクを囲っていた中からでてきたのは、副ギルドマスターのレジーナだった。

「しかし、マルクよく助けに来てくれた。礼を申すぞ」

「領主様止めてください。頭をあげてください」

 バッハは、マルクに深々と頭を下げた。その様子に、冒険者やギルド職員達は一歩下がる。しかし、その顔は笑顔で溢れていた。

「領主様、この辺りの魔物はほとんど壊滅させたのですが・・・・・・」

「ああ・・・・・・わかっている。この調子だと他の町はいや村は全滅であろう」

「僕の故郷は無事でしたが、周辺の村はもう・・・・・・」

「そうか。報告礼を申すぞ」

「それでなのですが・・・・・・・」

「マルクよ!この通りだ!」

 バッハの行動に、マルクは当然だか冒険者やギルド職員、兵士達も言葉を失ってびっくりしていた。

「陛下のやった事は申し訳ありません!どうかこの通りです。王国を救って下さい!」

 バッハは貴族のプライドを捨てて、平民のマルクに土下座して敬語で助けを求める。

「ち、ちょっと何をしているのですか?」

「この通りです。王国はマルクに難民の事を押し付けた。陛下は選択を誤った。勝手な話だと呆れるとは思います。大魔王を討伐して下さい」

「領主様、頭をあげてください」

「いや、了承してくれるまで頭はあげられません。王国は連合国を組み勇者を探していますが、多分大魔王を討伐できるのはマルクだけだ」

「・・・・・・そんな事は」

「いえ、時間的に不可能と思う」

 バッハは、勇者を見つけてもそれから行動してもその前に人類の歴史が終わると言っていた。実際マルクもバッハの意見が正しいと思った。王国領の西側は魔物の大量発生で大きな町以外は滅亡していたからだ。
 この世界の人間は諦めも早い。それだけ命が軽い世界なのだ。しかし、バッハはこのピンチを救えるのはマルクしかいないと思っていた。

「さっきの大魔法なら、禁忌の大魔法メテオなら大魔王に通じるであろう。仮に勇者を見つけて、そこまでの力をつけるまでには人類は大魔王に滅亡させられるであろう」

「禁忌の大魔法?メテオ?何の話を・・・・・・」

「先ほど、魔物を殲滅していたではないか?とぼけるのは!」

「確かにあの大魔法は凄かったな」
「「「「だよな!」」」」
「俺も魔法使いだがあんなすごい魔法は見たことないぜ?」

 バッハの言葉に、周りの冒険者達も賛同していたのだった。

「さっきの魔法は中級魔法のファイヤーボールですよ?」

「「「「「「「はぁあ!」」」」」」」

 マルクが魔物を殲滅した魔法は、ファイヤーボールと明かすとバッハ達は大声をあげたのだった。
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