役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第7章 覚醒

32話 帝国は魔物に占拠されていた

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 帝都城門前は、阿鼻叫喚の地獄である。帝国兵士はマルクの魔法で黒焦げになり、帝国平民は逃げ惑う光景がそこにあった。
 シオンが焦ったのは、マルクの魔法がなんの関係のない平民に命中して殺害したからだ。

「ちょっとマルク!一体どうしちゃったのよ?平民に命中して殺したら不味いでしょ!」

「シオン。僕がおかしくなったように思えるけど、僕は正気だよ」

「どこが正気なのよ!」

「あれを見てご覧よ。帝都はもう駄目かもしれないよ」

「う、嘘でしょ・・・・・・」

「多分、元凶は皇帝だよ」

 シオンが目にしたのは、マルクがチェーンライトニングで殺した遺体だ。どう考えても人間の姿をしていなかった。また、雷に巻き込まれた罪のない人間も、その姿はどう考えても人間ではなかった。

「な、なによ・・・・・・これは?」

「僕の神眼は騙されないからね。残っている帝国兵士はマインドフレイヤに変わってしまっているみたいだね」

「マインドフレイヤってなによ?」

「本来はアストラル次元の超生命体と言ったらいいのかな?前にサイキックオークと戦った事を覚えているか?」

「あの新種のオークよね?」

「ああ!あの能力がマインドフレイヤの武器だ」

「ええ!ちょっとそれは不味いんじゃ!」

 マインドフレイヤの姿は人間の形はしているが、頭は蛸の形をして頭でっかちという印象だ。いろんな超能力を使い、脳が発達しているという感じだ。

「とにかく急ぐよ!」

 帝都に侵入すると、平民達は奴隷のようになって逃げる事も出来ないようになっていた。その足には鎖が嵌められている。

「でも、マルクと二人だけで大丈夫なの?あのサイキックオークと同じなんでしょ?」

「うん。本来はね。だけど、城門警備をしていた兵士に姿を変えていたマインドフレイヤはアストラル次元の超生命体とはちょっと違うみたいだね」

「どういう事?」

「ダンジョンで生まれたダンジョンモンスターなんだよ」

「じゃあ、帝国は魔物の飼育に失敗したって事?」

「それはわからないよ」

 マルクは帝都を城に向かって走る。町の中には人間型の魔物が襲ってきて、マルクは町の中の魔物を討伐して行く。シオンもその魔物の数に驚いたが、マルクのタンカーとして楯となって魔物を近づけないようにしていた。

「ねぇ、マルクは最初から帝都がこうなっているのを知っていたの?」

 シオンはマルクと話ながら、マインドフレイヤの槍を弾き返す。弾き返され態勢が崩れたところにマルクの魔法で止めが刺される。

「まさかこんな事になっているとは思ってないよ。ただ、僕はカノン達の同じ種族の人間が亜人と罵られて犠牲になっているのが許せなかっただけだ」

「でも、今までマルクが帝国になにかしようとはなかったよね?」

「そりゃ当然だよ。帝国は僕には関係がなかったからね。ただ、僕の生活圏内に侵略するなら話は別だよ」

「な、なるほど・・・・・・」

「それに帝国は人至上主義国家だ。好き好んで関わりは持ちたくないよ」

「たしかに!」

「それは、帝国はもう終わりかもしれないよ」

「そうね。ダンジョンの魔物が制圧下にあるなんて新しいスキルに魅了されたのは残念ね」

 マルクとシオンは、帝国の事情をまだ知らない。皇帝がダンジョンマスターになって、帝国平民達まで犠牲にしてその欲望をみたしていることを。

 帝国騎士団達は、皇帝を尊敬して命令となればなんでもする。そこに魔物を従える事ができるスキルが見つかったとなれば、大陸一の国を手に入れる事は容易だと思わせる事は簡単だ。皇帝がダンジョンマスターなのだから、魔物を従える事は簡単でスキルでもなんでもないからだ。



 その頃、自分達の目を疑い騒然となっていたのはアインシュタル王国の辺境伯の私設偵察部隊だ。
 ユーダン湖に城壁が浮き沈みして、大波を作り出し帝国騎士団水上部隊を全滅させたからだ。

「帝国軍が一瞬で壊滅しただと・・・・・・」

「隊長、あれは一体?」

「わ、わからん・・・・・・あんな町いつ出来ていたんだ?」

「しかし、アインシュタル王国が救われたのも事実です!」

「お前はこの事をすぐに、辺境伯様に報告をするのだ!」

「隊長はどうするおつもりですか?」

「私はあの町を調べる!」

「それなら私も残ります!ユーダン湖のこちら側は魔の森が広がる危険地帯です」

 王国偵察部隊は、ユーダン湖の南側で狼煙を打ち上げ連絡を取っていたが、帝国騎士団水上部隊が北側に進路を変えたので、王国偵察部隊も北側に偵察を送ったのだ。ユーダン湖はとても大きな湖なので南側から、水上部隊の確認ができなかったのだ。
 そして、偵察部隊が北側に向かうと帝国軍は謎の町に全滅させられたというわけだった。

「こちら側は魔の森が広がる危険地帯です。帝国魔物部隊も北側を進行しているはずです!」

「だからこそ、お前がこの事実を報告しないといけないんだ!私はあの町がどこの国の町なのか確かめないといけないんだ!」

「わ、分かりました・・・・・・しかし、無茶はしないでください。隊長は王国にとって必要な人なのですから!」

「ふっ!お前に心配されるほど、私はまだ衰えてはいないよ」

 隊長はこの場に残り、部下は魔の森を西にかけて行くのだった。
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