役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第7章 覚醒

29話 帝国騎士団水上部隊の全滅

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 マルクの警告に、帝国騎士団は町に舵をとる。

「帝国をなめるな!砲門を開け!」

 帝国軍の船の前方には魔道砲が設置されていて、帝国魔法師団が魔力を充填すると、ファイヤーボールが発射する事が出来るのだ。
 マルクの町の船着き場には防波堤があり、帝国の船団が容易には入れないようになっていた。

「防波堤で防いでいるようだが、我らには関係ないのだよ!てーい!」

 帝国騎士団の船団から無数のファイヤーボールが発射された。町の住民は無数のファイヤーボールに震え上がる。

「「「「「うわぁ!」」」」」
「もう駄目だぁ!」
「「「「「「きゃあ!」」」」」」

 しかし、船団から放たれたファイヤーボールは、町の結界に守られる。

「馬鹿な奴らだ!」

 マルクの町には、古代竜のドラゴンオーブで水属性の結界が張られており、ファイヤーボールでは相性が最悪である。

「ば、馬鹿な!」

「警告を無視した愚か者共!町を攻撃した事を後悔しろ!ゴーレム、帝国軍を退けよ!」

 マルクの町の船着き場の防波堤の外側の湖の中から、そのゴーレムは姿を現した。

「なんだあの壁は?」

 帝国騎士団が驚いたのも無理はない。ゴーレムとは思えない姿で水の中から城壁が芹上がって来ただけだからだ。

「城壁を二重にしたところで意味ないわ!魔法師団魔力の充填をいそげ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 帝国騎士団は船の魔道砲に魔力を充填した。そして、マルクの町に再びファイヤーボールを撃ち込んだが、その攻撃を完璧に防いだ。

「ゴーレム!帝国軍の船を沈めよ!」

 マルクが、ゴーレムに指示を出すとゴーレムはまた、水の中にその巨大な姿を沈めた。帝国軍はゴーレム?の行動がわからなかった。そのゴーレムは、人の形をしておらずただの城壁だからだ。
 


 マルクは、防波堤の外側の湖の底にゴーレムがピッタリ収まる穴を掘っていた。マルクが指示を出すとその巨大な城壁型ゴーレムは上下を繰り返し始めたのだ。

「なっ!」

 帝国軍はその城壁が何をしているか、ようやくその目的を知ることになる。城壁型ゴーレムが湖の中に身を沈めまた高い城壁が現れる。それを一定のリズムで繰り返すと湖面は海のように波を人工的に作り出したのだ。

「まさか!あの城壁は町を守る壁ではなく、津波を作り出すシステムなのか?」
 
 それがわかった時にはもう遅かった。帝国騎士団の船団は波にもまれて、小型船はすでに転覆していた。
 ユーダン湖の湖面がこれほど荒れ狂う事は過去に一度もない。当然である。この波は城壁型ゴーレムが町の自衛システムで人工的に作り出した物だからだ。帝国軍はゴーレムになすすべもなく湖の底に沈んでしまい。あれほど立派な船団は一瞬で崩壊してしまった。

「ゴーレム!もういいぞ」

 マルクが指示を出すと、ゴーレムは上下運動を停止して、その身を湖の底に沈めた。町の中からは歓声が上がり、津波を操るマルクを拝む人までいた。

 帝国騎士団水上部隊の人間は鎧を着ていた為、ほとんどの人間が船舶と一緒に湖の底に沈んでしまった。大型船に乗っていた騎士団の中には、荒れ狂う船の中でなんとか鎧を脱ぎ捨て、命からがら水面に浮き出て岸まで泳ぎ着いた瞬間、町の警備ゴーレムに捕虜にされてしまった。騎士団長も運良く岸に這い上がったようだ。

「な、なんだ!貴様ぁ!私を誰だと思っている!」

「捕虜確保!捕虜確保!」

 武器も鎧もない帝国騎士団の人間に、ゴーレムの相手が出来るはずもなく、呆気なく捕らえられてしまった。簀巻き状態になった帝国騎士団は、マルクの町の中に連れてこられてしまい、罪人のようだった。

「貴様ぁ!私をこんな目にあわせおって、今に帝国が攻めてくるぞ!」

「訳のわからん事を。貴様達が先にこの町を侵略しようとしたんだろうが!僕達は自衛したに過ぎないよ」

「今にみておれ!魔物部隊が町を攻め落とすぞ!」

「今の状況を見てみるか?」

 マルクは、うるさい騎士団の人間の首根っこを持ち、城壁の上に引きずって行った。城壁の上に上がった騎士団長は、システィナの攻撃を見て言葉を失う。

「システィナ、案配はどうだい?」

「あっ!マルク。帝国の魔物部隊弱すぎるよっと」

 システィナは、マルクにウィンクをしてアローシャワーを繰り出した。すると、広範囲に矢が降り注ぎオーガやオークは絶命していた。

「ば、馬鹿な!オーガの大群なんだぞ!」

「オーガなんか、あたしにとっては雑魚なんだ」

 システィナは、そう言ってアローシャワーを繰り出した。城壁まで辿り着いたオーガは当然だが、城壁警備のゴーレムに踏み潰される。つまり、城壁まで辿り着く魔物は一体もいないのである。

「わかったか?魔物はこの町を攻め落とす事は出来ないんだよ」

「ば、馬鹿な!言ってみればあれはスタンピードなんだぞ!」

「あたしを攻め落とすならオーガじゃ無理だよ!」

「馬鹿な!亜人のエルフが生意気抜かすな!」

 帝国騎士団長が、システィナの事を亜人と罵り、システィナが文句を言おうとした瞬間、騎士団長のみぞおちにマルクの拳がめり込んだ。

「ぐえぇ~~~~~~!」

「今なんて言った?システィナを愚弄すると殺すぞ!」

 帝国騎士団長は、簀巻き状態で地面をのたうち回る。マルクが庇ってくれてシスティナは顔を赤らめながら、城壁に近づく魔物に矢を放った。

「あー!帝国軍の人間に告ぐ!」

 マルクは世界地図で、魔物部隊を指揮する人間を見つけて、風属性魔法のウィンドボイスで話しかけた。

「「「「「な、なんだ?」」」」」
「これはウィンドボイスか?」

 ウィンドボイスは、対象人物に声を届ける魔法だが、通信魔道具みたいに遠くまで届く訳ではなく、その効果範囲は5km程だ。しかし、こういう場合一方通行だが便利な魔法である。

「お前達の本体、水上部隊は全滅。生き残った者はすべて捕虜とした」

「「「「「なっ!」」」」」
「団長達が全滅だと!」
「そんな馬鹿な!」

 当然、帝国兵士達の嘆きは、マルクには聞こえていない。

「お前達、帝国軍はスタンピードを操る危険な国として見過ごす事は出来ない!」

「見過ごす事が出来ないだと!ならどうするつもりだ!魔物部隊はまだまだいる。命ごいをしても無駄だ!」
「「「「「ぐははははははは!」」」」」

「最終警告だ。直ちに魔物部隊を撤退させよ!」

「馬鹿め!なぜ貴様の言うことを聞かねばならん!冗談は寝てから言うんだな!」

「後一分だけ待ってやる。撤退しろ!」

「誰が聞くか魔物共よ!もっと攻めるのだ!」

 帝国兵士は、さらに魔物部隊を投入させた。
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