役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第7章 覚醒

25話 交渉決裂

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 帝国軍は、ユーダン湖を船で西に向けて進攻を始めた。また、魔物達はユーダン湖の北側、魔の森が広がる陸地を同時に出発する事になった。
 ユーダン湖の南側は、エルフ国があり魔物には愛称が悪いのだ。魔の森には魔素が多く魔物にはうってつけの土地だからだ。
 進攻が始まると、エルフの領地でアインシュタル王国の方向に、次々に打ち上げ花火が打ち上がる。
 その打ち上げ花火は、エルフ国を通る街道沿いに10km間隔で打ち上がり王国に伝達されていく。
 これにより遠くの地域の事が一瞬で伝わるのである。
 
「辺境伯様大変です!とうとう、帝国が進攻を始めた模様です!」

「とうとうきたか!」

 アインシュタル王国国境付近では、戦闘準備がまだ整ってはなく辺境伯の額から汗が流れる。

「王国各地からの援軍は?」

「どんなに急いでも一ヶ月はかかる模様です」

「そんなにか?もっと急がせるように早馬を送れ」

「辺境伯様!まだ大丈夫でございます!」

「何を言っておる?帝国軍は・・・・・・」

「ええ、狼煙のおかげで帝国軍はまだ出発したばかりでございます」

「まだ、帝国領地の国境付近だと申すのか?」

「はい!偵察部隊の発明品でございます!情報は早く伝えた方が、こちらも戦略がたてることができます」

「なるほどのう!たいしたものだ」

「それでは、伝令に走ってくれぬか?」

「伝令ですか?どこに?」

「マルクの協力をあおぐのだ。」

「マルク殿の協力ですか?どのような?」

「マルクには、王国騎士団の移動を手伝ってもらい、こちらに向かう騎士団をゲートで運んでもらうのだ」

「な、なるほど!いい案でございます」

 兵士は、辺境伯の指示を受けてマルクの私有地に向かう。すると驚く事が起こる。

「王国兵士!これ以上近づく事まかりならん!」

「はっ?ゴーレムがしゃべった!それよりなぜ、王国兵士が近づく事ができんのだ。私はマルク殿に用があってここに来た!マルク殿に会わせてほしい」

「我が主はもういません!お引き取りを!」

「じゃあ、どこに行ったと言うのだ!」

「私達には分かりません。我々は主からこの私有地に入れていいのは、王国から受け入れ拒否された者だけと指示されております」

 そこに、難民達を乗せたマルク所有の馬車がやって来た。王国兵士はそれを見て慌てて馬車を停めたのだった。

「停まれ!」

「うわっ!危ない!」

 いきなり飛び出てきた兵士に驚いた馭者は、魔法生物の手綱を引き馬車を急停車させた。

「すまぬ!マルク殿はどこに行ったのだ!」

「やぶからぼうになんですか?ご主人様ならここにはいらっしゃいませんよ」

 馭者は、マルクが購入した奴隷であり馬車の中には、帝国から逃げる事に成功した数人の他種族の者とカノンが乗っていて、カノンが急停車した馭者を叱ろうと馬車を降りてきた。

「いきなり急停車したら危ないだろ?」

「この兵士様がいきなり飛び出てきたですよ」

「はぁ?あんたもいったい何を考えている!馬車に引かれたら死んでしまうかもしれないだろ」

「貴女はマルク殿の奥方様でしたね。いいところに!」

 カノンは兵士に、マルクの奥方様でしたねと言われて少し顔がニヤつき気分が良くなる。

「いかにも私はマルクの嫁です。私の旦那様に何か御用ですか?」

「辺境伯様からマルク殿に伝言があるのです」

「辺境伯様からですって?」

 辺境伯と聞いて、カノンの表情が厳しくなり、兵士を射ぬくような視線に変わった。

「えっ?」

「兵士様、お引き取りをお願いします」

 カノンの言葉に兵士は焦り出す。カノンは絶対的の拒否の表情をし冷めきった目をしたからだ。

「ちょっとお待ち下さい!」

「王国貴族との話はございません!」

 目立つ事はなかったが、カノン達もマルク同様に王国の英雄の一人であり、下手な貴族より発言力があるのだ。
 カノンは、美人で抜群のプロポーションを持つ。そして、背中に生えた純白の羽根を持ち、風の槍天使の二つ名を持つ人気のある冒険者なのだ。

「待って下さい!マルク殿に会わせて下さい!今、王国は帝国からの脅威に立ち向かわないといけない局面にあります!」

「それは王国の仕事で、マルクを・・・・・・旦那様を巻き込まないでくれ!」

「なっ!」

「旦那様の言った通りだ。自分勝手な事ばかりでうんざりする」

「自分勝手とは・・・・・・」

「マルクは、難民達の対処をお願いしたはずだ。しかし、王国はマルクの優しさにつけこみ丸投げしたくせに、これ以上は王国でなんとかしなさい!マルクは難民達を救うことで王国に協力しているはずです!」

「しかし、王国の英雄であられるマルク殿にしか出来ない事が・・・・・・」

「ふっ!マルクにしか出来ない重要な事なら、難民達の保護だ。王国は難民達の保護は、帝国の事が片付かないとマルクに丸投げしたではないか?」

「そ、それは・・・・・・」

「マルクに、難民の事はやれ!戦争準備も手伝えと言うのは王国の甘えだ!」

「・・・・・・・」

 兵士は、王国の頼みならマルクは協力してくれると思っていたが、カノンの怒りの表情に何も言えなくなりただ下を向くしかなかった。

「そこで突っ立っていられても邪魔なだけだ。お引き取り願おう」

「王国の頼みを断ってよろしいのですか?」

 兵士はカノンに反論した。しかし、カノンは不適な笑みを浮かべて言った。

「マルクの願いを蹴ったのは王国が先だ。これ以上マルクを失望させない方がいいのは王国側だと忠告しておこう」

「王国側だと!」

「ちなみに忠告しておきます。この私有地を没収して、難民達の保護を楯にとっても意味はありませんからね。そうなれば、マルクは難民達の保護を止め王国がその責務に追われるだけと言っておきましょう!」

 兵士は、カノンの言葉を受け止め肩を落として帰るしかなかった。
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