役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第4章 成長

40話 盗品

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 マルク達が、盗品を見ているといろんな物があった。ブローチの中に家族の絵が挟んである物や、指輪に名前が彫られた物があり、どう考えても盗賊達に犠牲になった商人や貴族の物である事がわかった。 

「マルク、これらはどうするの?」

「これらは保管かな?多分、僕達に連絡があると思うよ」

 中には、骨董品等もあり壷や絵画等もある。これは貴族の屋敷から盗まれたものだった。そして、これらは全部、盗賊のアジトにあった物として、衛兵に申告した後、晴れてマルクの財産となる。

「何で保管するの?マルクに絵画の趣味があったとは知らなかったよ」

「シオン、僕に絵画や骨董品を集める趣味はないよ」

「そうよね。今まで聞いた事ないもの?」
「だったら何で保管するんだ?」
「そうよね。大商会に買い取ってもらったら良いんじゃない?」
「そうよね?結構な額になるんじゃない」
「そうよね」

「まぁ待ちなよ。これらは元の持ち主がいるかもしれないだろ?」

「そりゃいるかも知れないけどさ」

「まぁ見てなって!」

 それから、1ヶ月が過ぎた後マルクの屋敷に訪問客があった。その訪問にきた客は、老夫婦であり神妙な雰囲気であった。

「こんにちは。私はハワード商会の会長をしているカイゲンと申します」
「妻のナターシャです」

「ご丁寧にどうも。僕は当屋敷の主人で、冒険者をしているマルクと言います。僕達は冒険者で言葉使いが雑なところもあると思いますがお許しを。それで、今日は何のようで?」

「今日は、マルクさんがルノーバの闇ギルドを壊滅したと聞き、この中の盗品についての事で伺ったしだいです」

「あっ!」

 マルクは老夫婦の顔を見て、会った事がないのにどこかで見たことがあったのだ。

「なにか?」

 マルクの声にナターシャが少しびっくりした。

「ひょっとして、このくらいの大きさで真ん中にダイヤが三つ付いたブローチを探していたのですか?」

「「そうです!」」
「やはりここにあるのですか?」

「少し待ってて下さいね。セバス、保管庫の中にブローチがあったはずだからもってきて」

「承知いたしました」

 セバスはマルクの言った、似ているブローチを五個すぐにもってきた。

「ご主人様、よく似たブローチが五個ありました」

 マルクは、開くブローチを開けて、中にカイゲンとナターシャともう一人の男性が描かれた小さな絵があるブローチを老夫婦に見せた。

「このブローチじゃないですか?」

「おお!」
「ああ!」
「これだ!息子の絵が描かれたブローチだ。これをずっと探していたんだ」

 カイゲンとナターシャは、そのブローチを見て涙を流していた。

「マルクさん、このブローチを売って欲しい!金ならいくら払ってもいい」
「言い値で払わさせて頂きます。どうかお願いします」

 老夫婦は必死でマルクに頼み込んだ。

「このブローチは、この男性の物ですか?」

「ええ。ここに描かれているのは、私達の一人息子のカイザーと言います」

「ひょっとして息子さんは・・・・・・」

「ええ。ご察しの通りカイザーは行商人をしていて盗賊に襲われ、その命を落としました」
「息子が襲われたのは、ルノーバの町に戻ってくる途中の山道だと聞きました」

「そうですか・・・・・・」

「このブローチは高価な装飾を施してあったので、盗賊達がこのブローチを盗っていくのは明らかだったんですが、私達は息子の遺品を諦める事ができませんでした」

 カイゲン達は、ブローチがどこかで売りに出されないか調べていたそうで、オークション会場や闇市に足を運んだこともあったそうだ。
 そんな時、闇ギルドルノーバ支部が壊滅したという噂を耳にして、一縷の望みをかけてマルクの屋敷にやって来てきたのだ。
 その望みは叶い、ようやく息子の遺品に出逢えたのである。盗賊の盗品は取り戻した人間にその権利が移り、遺品だとしても取り返すには交渉をしなければいけないのだ。
 普通に冒険者はこの時、遺品を取り戻す遺族の足元も見て値段をつり上げる。冒険者達にとって遺族の想いは関係ないからだ。
 カイゲン達も、それは覚悟をして遺品を取り戻すつもりだった。最悪中の三人で描かれた絵だけでも取り戻すつもりだったのだ。

「そうですか。では・・・・・・」

 マルクが口を開く前に、カイゲンが袋を出してきた。

「ここに五千万ミストあります。これでどうか!このブローチをお譲りください」

「はぁあ?」
「「「「「ええええええ!」」」」」

 マルク達は、ブローチの値段を聞いて大きな声を出した。

「これじゃ足りませんか?」

 カイゲンは、同じ袋を三つ出した。カイゲン達はマルクが闇ギルド支部の1つを壊滅させたと聞いていたので、相当の金額を請求してくると思い込んでいた。

「ちょっ!」

「私達達が用意できるのは、これが精一杯でしてこれで納得してもらえなければ中の絵だけでも!」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「えっ?」

「そんな必死にならなくても、いや・・・・・・・息子さんの遺品だからこそ必死になるのですよね」

「「は、はい。」」
「私達にとって息子は宝です。だから、このブローチはどうしてもこの手に!」

「はい。どうぞ、このブローチはカイゲンさんとナターシャさんがお持ち下さい。お金もいりませんから」

「「えっ?」」

「僕は、このブローチはカイゲンさん達に返すつもりで、保管庫にしまっていました。まぁ探してここに来るかまではわかりませんでしたが」

「なんで?こう言っては失礼だが、冒険者はこういう時足元を見て多額の金を請求すると聞いたが、何でこのブローチをタダで返してくれるのだ?」

 カイゲンは、商人でいまの地位を築き上げ、息子に代を譲って引退をしたのだった。
 当然、商人としての経験でタダより高いものはないと思って取引をしてきたカイゲンにとって、マルクの言葉は怪しいものだったのだ。

「それは、僕の両親もそういう義理人情のある冒険者だからですよ。父や母も昔、盗賊のアジトで盗品を売らず、遺族に遺品をタダで返していました。その時の遺族の人達は、泣きながら両親に頭を下げて帰って行きました」

「な、なるほど・・・・・・マルクさんはご両親を尊敬しているのですね」

 カイゲンとナターシャは、マルクの思いがわかりマルクを疑った事をすぐに謝罪した。

「ちなみに、ご両親の名前を聞いてもよろしいですか?」

「父はデビット、母はステラと言います」

「ま、まさかマルクさんの両親はエターナルか?」

「知っていましたか?」

「ああ!懐かしい!私が現役の頃、護衛依頼を受けてもらっていたよ。そうか!デビットとステラのご子息でしたか」

 カイゲンは、デビットとステラの名を聞いて、完全に気を許したようだ。マルクはエターナルがどれほどの功績をあげたか、思い知って自分まで誇らしくなった。
 エターナルの功績は、マルクに比べたら普通の冒険者としての功績だ。闇ギルドを壊滅させたんじゃなく盗賊のアジトだった。しかし、エターナルの名はあちこちで聞き、人々はエターナルの名を聞いてデビットとステラに感謝してくるのだ。
 マルクも、そういう冒険者になりたいとずっと諦めず冒険者を目指してきたのだ。
 カイゲン達はマルクにお金を受け取って欲しいと言ったが、マルクは受け取らなかった。シオン達もマルクの意見に賛同していた。

 マルクは、ブローチのある場所は、カイゲンさんの所が当然と言って、タダで返したのだった。
 カイゲン夫妻は、マルク達に何回も頭を下げて涙を流して帰っていった。
 
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