役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第4章 成長

2話 名もない村に到着

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 ロゼの馬車は、年期が入ったものだった。馬車を引く馬は重量級のロバのような立派な馬である。

「こいつらとは長い付き合いだからね。あたしが行商人を続けていられるのも、この子達がいたのおかげだよ」

「「ぶるるるる!」」

「返事した?」

 シオンが驚くのは無理もない。ロゼがそういうと馬は、ロゼがいたから自分達も幸せだと言ったような気がしたからだ。
 馬車はスピードはないがゆっくり力強く街道を、村に向かって進む。村には名前はなくロゼは大木の村と呼んでいた。村の中心に広場かありそこに一本の大きな木があったからだ。
 その村に、服や布、毛布など裁縫関係の資材を売りにいくのだ。そして、その村の特産のモロコシを購入して、王都に帰るのが行商の内容だ。

「まぁ、王都と近隣の村なら、そう滅多に危険はないよな」

 オウカが、馬車に乗りながらそんなことを言うと、マルクが意見をいう前にシオンが口を出した。

「オウカ。あんたはまたそんな悠長なことを言っているの?」

「でも、村まで一日の距離だろ?」

「そうやって油断するのが駄目なのよ!魔物は強力のはいないかもしれないけど、盗賊はいるかもしれないでしょ?」
「そうだよ。シオンのいう通りだ。そういう少しの油断が命取りになるんだよ」

「ごめん・・・・・・」

 ロゼは、オウカが叱られていたのを見て、オウカの頭を撫でて微笑んでいた。

「あんたは良い娘だねぇ。自分の間違いを素直に受け止める事が出来る。そういう人間は大成するんじゃよ。そういう仲間同士で頑張ればいい」

 ロゼからは、暁月に何も言わなかった。まだ若いパーティーだが慎重に行動しているのがわかったからだ。年寄りの助言は今は要らないと判断した。
 馬車の天井には、クレアとシスティナが目を光らせていた。クレアが遠目のスキルでウルフやゴブリンを見つけて、システィナに指示を出す。
 それをシスティナが弓矢で迎撃するので、馬車は安全に旅が出来るのだ。

「少し休憩しようかの」

 ロゼは長年通った、通りなれた拓けた場所で馬車を停めた。街道沿いに川が流れ、休憩する場所にはちょうどいい場所である。

 ロゼは、火を起こしお茶の準備をする。川で水を汲み顔を拭きさっぱりするのだ。

「じゃあ、システィナとクレアが先に休憩しなよ」

「「いいの?」」

「二人は屋根の上で見張ってくれていたからね。その後、カノンとオウカが交代で!」

 マルクは休憩の順番を決めていた。マルク達四人は、馬車を囲むように周りを警戒した。やはり、比較的安全と言っても、魔物は普通に出現はする。

「オウカ!その影にポイズンスパイダーがいるぞ」

「はい!」

「カノン!そこに擬態したジャイアントマンティスが!」

「わかっている!」

 やはり、魔物は人間の匂いを嗅ぎ付け寄ってくるのだ。日が沈む頃には村に着き、明日一日ロゼは行商をしてモロコシを買い付け次の日に王都に帰る予定だ。
 マルク達は行き帰りの二日間は、このようにロゼと馬車を護衛するのだ。しかし、村に着けばマルクの両親のような村の用心棒がいるので、村の中でゆっくりしてても構わないのだ。
 大抵の冒険者は、村の酒場で飲んでいることが多いのだが。

「シオンは最後でもいいよね?」

「あたしは疲れてないからいいよ」

「それは駄目だよ。休憩するのも仕事のうちだ」

「そうだよ、シオンちゃん。マルク君のいう通りだから休憩しなよ」

 ロゼが、顔をふきながら笑顔で話しかけてきた。
自分が思っているより、旅は精神的に辛いものだ。馬車に揺られて座布団を引いていても、体は疲れているものだ。クレアとシスティナは馬車の中で、すでに仮眠をとっているほど疲れていた。

「わかりました。最後の順番でちゃんと休憩するよ」

「うん。それがいい」

 ロゼも、それを聞いて安心したようだ。ロゼは自分の命を冒険者達に預けている。万が一の時、冒険者が疲れていては命取りになるからだ。

 準備に、マルク達は仮眠をとり、ロゼはお茶を飲み、一時間ほど馬車の中で仮眠をとっていた。ロゼはずっとこのスタイルで行商人をしているようだ。

 そして、その日の夕方に前方に本当に大きな木が見えてきた。

「マルク君、村が見えてきたぞ」

「凄い!本当に大きな木ですね」

「何でも樹齢3000年と言われておるよ」

「3000年?エルフもびっくりだな!」

「あたしのおばあちゃんでも生まれてないよ」

 馬車の屋根から、システィナがそういうと馬車の中はみんな笑うのだった。

「さぁ着いたよ。あんた達のおかげで無事に着いたよ。ありがとよ。」

「ロゼさん、帰りもあるからお礼は王都についてからだよ」

「シオンちゃん、旅は本当に危険がつきまとうものなんだよ。あたしみたいに戦う事のできない人間にとって、シオンちゃんみたいな冒険者には感謝を何回伝えても足りないくらいなんだよ」

「そうなの?」

「ああ、だから本当にありがとうよ。また帰りもよろしくねぇ」

「うん!わかった!任せておいて!」

 着いた村は、名もない村で泊まる宿屋も一軒だけだ。村人は一週間ぶりの来訪に賑やかになり、ロゼを歓迎していた。
 
「なんだよ。婆さん。まだくたばってなかったのかよ?」 

「本当にあんたは口が悪いね。あたししゃ100まで現役だよ」

「そうかいそうかい!じゃこの村も後、40年は大丈夫だな!あははははは!坊主達も婆さんを無事に護衛してくれてありがとな」

 村の用心棒の男性は、マルク達にお礼を言ってきた。ロゼにあんな口をきくので、仲が悪いのかとハラハラしたがそうではないようだ。
 男性の名は、トナーと言ってこの村の人間だ。ロゼにとってトナーは小さい頃から知っている。

「ふん!あんたも憎まれ口を叩いてばかりいないでマルクさんを見習いいな。だから、一緒になってくれる嫁さんがいないんだよ」

「なんだよ。今はそんなこと関係ないだろ?」

「いや、関係あるねぇ。あたしゃあんたのオムツを替えたこともあるんだ。息子だとも思っているんだから、あんたの子供を見ないと引退もできやしないじゃないか!」

「うるせぇよ。こんな村じゃ結婚相手は・・・・・・」

「マルクさんの爪の垢を煎じて飲ませたいよ」

 ロゼは、大きなため息をつくのだった。こんなロゼを見て、マルク達は苦笑いをしていた。
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