役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第1章 役に立たないスキル

5話 マルクの日常

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 ディクト達は、次行くダンジョンの為に打ち合わせをする為、この酒場に残った。

「俺達は打ち合わせをする。マルク、お前は役に立てないんだからいつも通り買い出しを頼んだぞ」

「わ、分かったよ……」

「シオン、お前もついて行ってやれ!ダンジョンの買い出しは物も多いからな」

「マルクにばっかりそんないいかたしなくてもいいでしょ。マルクだってパーティーの役に立とうとしているじゃない」

「シオンありがとう……だけど、役に立っていないのは本当だから……」

「言っておくが、ダンジョンに入ったら、シオンお前も俺達にちゃんとついて来いよ」

「なによ!あたしだって頑張ってるじゃない」

「俺達のランクについてこれてると本気で思っているのか?俺達はS,Aランクなんだぜ?今まではその役立たずにあわせていたのを忘れるなよ」

 ディクトやソフィアはSランク、ヴァイスやヴィトラはAランクなのだ。本気を出せば、Cランクのシオンですらついていくのは難しいと思われた。

「そんな言い方……」

「ほれ!早く行け。俺達はお前達のせいで色々考えないといけないんだからよ」

「もういいよ!マルク行こ!」

 シオンは、パーティーがぎくしゃくすることに腹を立てていた。小さい頃からみんな一緒だったのに、仲良くやればいいのにと思っていたのだ。
 確かに上を目指す事も大切だが、今の現状で生活が成り立っていたからだ。マルクの両親も冒険で大事なのは上を目指す事より、着実にマイペースで実績を積んでいく事だと言っていたからだ。

 シオンからすれば、今の状況は早すぎるのである。冒険者になると、誰でもFランクからスタートする。なのに、1年経っていないのにすでにDランクなっていた。しかし、ディクトは本当ならBランクになっててもおかしくないと言っていたのだ。

「シオン……僕達どうなってしまうのかな?」

「マルクまで何を言っているのよ。マルクは大丈夫。あたしが守ってあげるから!あたし達ダンジョンは初めての挑戦でしょ?マルクはダンジョンの魔物を倒したことないじゃない。あたしもそうだけど……そこで絶対に何かが変わるよ!」

「変わるといいな」

「絶対スキルを習得できるよ。そしたら、マルクも役に立てる様になるから自信をもって」

「シオンがいて良かったと思っているよ」

「えっ……」

「僕……ソフィアがずっと好きだった。だけど、冒険者になった頃からもう僕には興味が無いのは気が付いていたんだよ」

「マルク……」

「今日、はっきり結婚は出来ないと言われてショックじゃないと言ったら嘘になるけど、シオンがこれまで僕を仲間だと言ってくれていたから頑張れていたのは確かなんだ。本当にありがとな」

「大丈夫だよ!世の中に女の子はソフィアだけじゃないよ。世の中にはマルクの事を良いって言ってくれる女の子も必ずいるから、そんなに落ち込まないで!」
(あたしもその一人だよ……)

「えっ?今なんて?」

「何でもないよ。さあ、早くダンジョンの準備の買い出しにいこ!」

「あっ、う、うん」

 マルクとシオンは、町やギルドに食料を買い込んだ。5階層までなら、1泊2日の旅となる。マルクはポーターとしてパーティーについて行っていた。これが出来たのは両親のおかげだった。マルクの両親が冒険者時代に使用していたマジックバックを貰っていたからだ。
 マジックバックは登録すれば、その人間にしか使えなくなり、今あるのは両親から受け継いだものだ。その為、マルクは雷神でもその役目を果たせていた。
 しかし、マジックバックの容量はそんなに大きくはなく、ポーターのスキル持ちよりは大きくなかった。ポータのDランクでも200kgの荷物を持ち運べるからだ。

 マルクの、マジックバックも200kgぐらいは入るが、ポーターを仲間に入れるならCランク持ちを雇う事になり、普通に500kgは持ち運ぶことが出来るので、ヴァイスが言ったポータの雇った方が役に立つと言うのはここにあったのだ。
 余談ではあるが、ポーターSランク持ちになれば容量は10tで、中に入れた物は時間経過も遅くなると言う優秀なスキルである。

 買い出しに行き、シオンはびっくりしていた。

「えっ?なんでポーションを買うのに、マルクがお金を出しているのよ?」

「あっ、アハハ……それは僕はパーティーで役に立っていないだろ?だから、ディクトに金ぐらい払えって言われていて……」

「なにそれ!パーティー共有のお金を出していなかったの?なんで言わないのよ」

「一応、貰っているんだよ。しかし、足りない分だけこうして……」

「ディクトの奴!ほんとうに腹が立ってきたわ。あたしが言ってあげるよ。パーティーで使う物資じゃない!お金には余裕があるはずだからパーティーから出せばいいじゃない」

「いいよ。これ以上パーティーに居づらい状況になりたくないしさ。それに、町の人は優しいしさ」

「でも……」

「これも父さんと母さんのおかげなんだよ。この町で結構両親は有名でさ。父さんお子供ならという事で結構まけてくれたりするんだよ」

「ホントおじさん達様様だね」

「でも、それじゃ町の人に悪いからさ。こうして足りない分はお店の手伝いや、こうして家の掃除をしたりしているんだ」

「そ、そっか……」

「そしたら、町の人達は喜んでくれるし、通常では購入できない程まけてくれるから準備も出来るんだよ」

 雑貨屋の店主は、その話を聞いてマルクに話しかけてきた。

「マルク、お前の父さんや母さんには世話になったからな。今の状況に負けんじゃねえぞ」

「はい!ありがとうございます」

 店の掃除が終わり、マルクは包帯とタオルを店主の親父から貰っていた。

「次はどこに行くの?」

「鍛冶屋だよ」

「鍛冶屋になんかマルクに必要ないでしょ?」

「いや、ディクトの剣を砥ぎに出しているんだよ」

「はぁあ⁉ディクトの奴、砥ぎもマルクに金を出させていたの?」

「ま、まあな……」

「それはおかしいよ!自分の武器は自分で管理するのが普通だよ」

「まあ、分かっているんだけどね……」

「もう許さない!絶対一言、言ってやる!」

「やめてくれよ……僕はいいから……スキルさえ手に入れれば、今の状況は必ず変わるからさ。それまで、僕が頑張ればいい事だけだから!」

「でも……」

「それに鍛冶屋の親父さんもいい人なんだよ?ドワーフで無愛想だけど、サービスしてくれたりもするしさ」

「本当にいいの?」

「うん。このダンジョンで必ずスキルを手に入れるから大丈夫!」

「わかった!頑張ろうね」

「うん!」

 そして、マルク達は冒険の準備を終えた。その夜、マルクの宿屋にヴィトラが1人やってきた。同じパーティーだが、ヴィトラ達とマルクの宿屋は違っていた。マルクは役に立たないので、報酬の取り分を減らされていて、最下級の宿屋にしか泊まれないでいたのだ。

「貴方、こんなとこに泊まっていたの?」

「ヴィトラ、何でこんなとこに来てんだ?危ないから自分の宿屋に帰れよ」

「用事が住んだらすぐ帰るわよ」

「それで用事って何だ?」

「あんた、本当にうちのパーティーに居残るの?」

「そんな事を聞くためにここに来たのか?」

「ディクトのいう事を聞いて、パーティーを抜けたらいいのに?」

「なんでだよ?この状況で雷神を抜けたらどこに入れると言うんだよ?」

「ソロでやればいいじゃない。貴方はおじさんに、ソロでの薬草採取や色んなことを教えられていたでしょ?」

「だけど……それだけじゃ、この宿にさえ泊まる事は出来なくなるんだぞ?」

「貴方は貴方のペースで冒険者をしていけばいいじゃない」

「そ、それじゃ……」

「ソフィアは守れないと言うつもりなの?」

「うっ……」

「ソフィアはもうディクトのものよ。貴方も分かっているでしょ?」

「そ、それは……」

「つまり、貴方が雷神にいる理由はないの。だったら、雷神を抜けて貴方のペースで冒険者を続けるべきだわ。もし無理なら村に戻り、自給自足の生活に戻ればいいだけじゃない」

 ヴィトラの言う事が正解であり、マルクは二の句が告げないでいた。

「今からでも遅くはないわ。ディクトにパーティーを抜けると言いなさい。貴方には冒険者としてやっていけないからその方がいいわよ」

「スキルが習得できれば……僕だって!」

「そう言って、この7年習得できなかったじゃない。貴方の気持ちは分かるけど諦めた方がいいわ。今度はダンジョンよ。今までとは違うんだからね」

「……」

 マルクは、ヴィトラの言う事に賛同はしなかった。

「そう……忠告はしたからね。どうなっても、わたしはもう貴方の事はしらないわ。それだけは覚えておいて」

「何でそんな事言うんだよ!同じ……」

「同じ村の出身やパーティーというつもり?明らかに貴方は、わたし達の足を引っ張っているじゃない。わたしは同じパーティーの一員とは認めない。認めて欲しいなら魔法使いとして役に立ってみせたら?」

「うぐっ……」

 そう吐き捨てて、ヴィトラはマルクの宿屋を出て行くのだった。



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