役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依

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第1章 役に立たないスキル

1話 幼馴染

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 ここは地球ではない異次元の世界。つまり異世界の物語である。シンアースの世界では、スキルや魔法がありファンタジーの世界と言えばよく分かるだろう。

 この世界の人間達は、生まれて7歳になると教会に神聖の儀を受けに行くことになり、女神様からレアスキルを授かることになり、そのスキルで生涯生活をしていくことになる。授かるレアスキルは多種多様でランクがあり、上はSランクから下はEランクまである。

 例えば、剣術のSランクを授かると、片手剣の扱いがうまくなり、達人クラスとなりダメージも10倍となり生涯冒険者として大成できる。
 しかし、剣術のEランクを授かると素人に毛が生えたようなものとなり、ダメージもマイナス補正がかかるほど使えないものになる。
 そうなるとレアスキルには頼らず、修業をして後天的に生えるノーマルスキルで生活をしていくことになる。つまり、その人物にはレアスキル剣術(E)とノーマルスキル短剣術とか鍛冶など修業した生産スキルで、生活を成りたてないといけなくなるのだ。

 仮に、レアスキルで鍛冶Sランクを授かると、マジカルアイテムまで作れるようになり、どちらにしてもノーマルスキルでは苦しい生活となるので、シンアースの人間達は神聖の儀でより高いランクのスキルを貰える様に女神様に祈り続けるのだ。
 
 この物語は、そのシンアースの世界で暮らす主人公マルクが裏切られ、それでも冒険者として諦めず大成する物語である。

  

 ある名もない小さな村に、冒険者を引退し用心棒として生活をしている一組の夫婦がいた。その夫婦は神聖の儀でCランクのスキルを貰い、冒険者として稼ぎ貯金をして、早々に田舎暮らしをしていた。
 Cランクのスキルは悪いとは言えない、剣術なら2倍のダメージを叩きだし、冒険者として活躍が出来るからだ。
その夫は剣士として妻は魔法使いとして活躍して、貯金をして一緒になったのだ。
 そして、その夫婦に待望の赤ん坊が生まれ、夫婦は子供にマルクと名付けて可愛がり育てていた。そんな両親に育てられたマルクは、将来自分も冒険者となって活躍するのを夢見ていた。

「マルク!どこ行くの?」

「ソフィア達と遊んでくる!」

「遅くならないようにね。ったく……あの子はいつもソフィアちゃんと一緒ね」

「マルクの将来のお嫁さんだからな。それに、二人で冒険者になると約束しているんだ。しょうがないだろ?」

「あなた……あたしはマルク達には、できたら生産職で生活して欲しいんだけど……」

「たしかに、冒険者は危険がつきものだ。お前の言いたいことはよくわかるが、あの子たちが決めた事だからな」

「でも、冒険者になって、あたし達より先に死ぬことにでもなったら……」

「まてまて、心配するのはしょうがないが、マルクを俺達より早く殺すなよ?」

「だって、心配なんだもの……」

「それにマルク達はまだ5歳だし、そんな事を心配するのは早いよ」

「でも……」

「お前は心配過ぎるんだよ。まあ、その心配性のおかげで、俺達はこうして生きていられるんだけどな。でも、大丈夫だよ」

「なんで、大丈夫と言えるのよ」

「あいつは俺達の子だぞ?レアスキルだっていいものが貰えるさ。それに、マルクに生産系のスキルがつくかもしれないだろ?」

 マルクの両親は、心配はしていたが悪いものになるとは思っていなかった。これは統計的なものではあるが、両親が普通のランクスキルだった場合、大抵悪くなることはなかったからだ。そればかりか、Cランク同士の場合はBランクになり一ランク上のランクになる事が多いのだ。

 余談ではあるが、これはCランクまでの話で、両親がAランクだった場合その子供がSランクになると言う事はない。

「俺達の子供がEランクになるなんて事も無いだろうしな」

「確かにそれはそうね。Cランクになれば、どんな職業でも十分幸せになれると思うしね」

「そういう事だ。今からそんな事心配しても気疲れするだけだぞ」

「分かったわよ。そんな風に言う事ないでしょ?子供の心配しただけでしょ」

「まあ、とにかくマルクには将来のお嫁さんもいることだし、不幸な事はないよ」

 マルクの両親は、まさかあんなことになるとは思いもしていなかった。自分の子供に絶望するとは、このときは思ってもいなかったのだ。



 その頃、マルクは両親がそんな心配をしているとは思ってもおらず、幼馴染のソフィアの家に来ていた。

「ソフィア、今日は何をして遊ぶ?」

「みんなでかくれんぼしようよ。広間に行けばみんないると思うよ」

「そうだね!かくれんぼしに行こう!」

 マルクとソフィアは、仲良く村の広場に行くとそこには、村の子供達が集まっていた。ディクトを始めヴァイスとシオンとヴィトラが広場に集まっていた。全員が同い年で、マルクの幼馴染だ。

「マルク遅えぞ?」

「ごめん!ちょっと母さんに呼びとめられちゃってさ」

「ソフィアちゃんも、こんな奴待ってないで早くこればよかったのに」

 ディクトは、ソフィアの事が気に入っていて、いつもマルクといるのが気に入らなかった。いつもこんな感じでマルクにきつく当たっていたのだ。

「ディクト君そんな事言わないでよ。マルクとはずっと一緒なんだから、みんな仲良くしたらいいじゃない」

「いつもそうやって、ソフィアちゃんはマルクの事庇うんだからな」

「あはははは!ソフィアちゃんディクトの奴、もっと構ってほしいって言っているぞ」

「ヴァイス!何言ってやがる。俺はタダ……」

「まあまあ、そんな絡んでいないで楽しくしようぜ。将来の事なんて今から考えても無駄だなんだからよ」

「何言ってんだ!」

 この世界の子供はマセているようだった。全員がまだ5歳だと言うのに、こういう考え方が普通に出来ていた。

 これは、神聖の儀があるからだろう。7歳にしてスキルで将来の事が決まる世界では、親がこういう事を口うるさく言って、いい子にしないと女神様はちゃんと見ていて悪い事をしたら、悪いスキルを与えると言って将来困る事になると教えているのだ。
 そして、いい子にしていたらいいスキルを授かり幸せになれると、5歳にはちゃんと自覚して信じていた。

「なあ、ソフィアちゃん」

「なあに?」

「俺はソフィアちゃんの為にも良いスキルを貰い幸せにするから、俺の事をちゃんと見ていてくれよな?」

「ちょっとディクト君。なにを言っているんだよ。僕とソフィアは!」

「ただの約束だろ?ソフィアちゃんだって、スキルのいい男の方がいいだろ?」

「それはそうだけど。まだみんなもらってないじゃない。今は仲良くしないと女神様がちゃんと見てるよ」

「うっ……」

「そ、そうだよ……今は仲良く遊ぼうよ」

「わ、分かった……じゃあ、今日は何をする?」

「「かくれんぼしようよ!」」

「わかった!シオンとヴィトラもそれでいいか?」

 シオンはマルクを見て、マルクとソフィアの意見に賛同した。シオンもマルクの事がひそかにいいと思っていた。

「うん。あたしもそれがいい!」

 ヴィトラは、いつも何を考えているのか分からない子だったが、いつも何でもいいと答えるような子だった。

「あたしはなんでもいいよ」

 こうして、マルク達は全員が幼馴染として、毎日のようにみんなで遊んでいた。そして、全員が7歳となる年、運命の神聖の儀が行われる事となる。


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