上 下
5 / 60

5話 ギルドの対応

しおりを挟む
 ガナッシュ達は、今回の実入りに気分を良くして町に帰還したのだった。そして、ギルドにクロスの死亡届を提出した。

「えっ⁉クロスさんが死んだ?」

「ああ……あいつ今回レベルを上げようと躍起になって戦えないのに前に出やがって……」

「あれじゃ……助かる者も助からんよ」

「わたしも回復しようとしたんだけど間に合わなくて……」

 パーティー暁のメンバーは、全員がクロスの自業自得だと申告したのだった。

「あなた達、クロスさんをわざと見殺しにしたんじゃないでしょうね?」

「ファ、ファナ!な、何を証拠に!」

「ガナッシュさん、何をそんなに焦る必要があるの?」

「馬鹿な事を言うな!あいつは、俺達の中でも無能だったのは、ここにいる人間全員が知っているはずだ」

「えぇ!確かに貴方達メンバーが、クロスさんを脱退させたがっていたこともね」

「そんなの当り前だろ?俺達はレベルがここまで上がって、さらに上を目指すつもりだ。いつまでたっても、あいつだけ1レベルのままじゃ犠牲になると思っての事だ」

「だから、あなた達は手っ取り早く、クロスさんを犠牲にしたとも考えられるわ」

「そんな事は……わたしはクロスが死なない様に回復をしていたわ。今回だって、クロスが焦って前に出て必死で回復してた。そのため、5階層ほどでMPの半分を失ったぐらいよ」

 すると、話を聞いていた周りの冒険者が騒めいたのだった。

「オイオイ……5階層でヒーラーのMPが半分尽きたって本当か?」
「そんな事ありえないだろ」
「魔法使いのDランクじゃあるまいし……」
「確かマリアさんって」
「ああ!聖女のSランクだよ」 
「そんなバカな!だとしたら、やはりクロスが無茶をしたとしか……」
「ああ……ガナッシュ達もレア職業のSランクだ。5階層ごときでマリアさんのMPを、そんな消費させるとは思えないからな」

 冒険者達は、自分の経験をもとに分析して話していた。これには、受付嬢のファナもガナッシュ達の話しを信じるしかなかったのである。

「周りの話を聞いたか?俺達の話の方が信憑性があるだろ?俺達は必死にフォローはしたんだ。しかし、あいつが先走った結果死んじまったんだよ」

「分かりました。貴方達の話を信じます。いらぬ邪推をしたことを謝罪いたします」

 受付嬢のファナは、ガナッシュ達に丁寧に謝罪した。

「分かってくれたらいいんだよ。謝罪を受け入れるよ」

「申し訳ありませんでした……」

 すると、一人の女性が声を上げたのだった。

「ちょっと待ってください!それでおわりなんですか?」

「オウカさん、いきなりなんですか?」

「あたしは、クロスさんにお世話になりました。ここにいる人間も少なからずお世話になっていると思います」

 オウカの言葉に、冒険者達は興味を示したのである。

「だから、何なんですか?」

「ギルドも、採取依頼でお世話になっていたんじゃありませんか?」

「それはそうですが、だから何を言いたいのですか?」

「ギルドで、救出部隊を結成してたすけにいきましょうよ!みんなもそう思いませんか?」

「若いころクロスに助けられたしな」
「そうだな」
「あのダンジョンなら俺達も潜れるだろう」

 受付嬢も、オウカの意見に賛成しようとしたが、そこにギルドマスターが部屋から出てきたのだった。

「ちょっと待て!」

「「「「「ギルドマスター」」」」」

 オウカの言葉で、ギルド仲がまとまりかけたところ、ギルドマスターはクロスの救出を止めたのだった。

「クロスを救出する事はやめるんだ!」

「な、何でですか!」

「まあ、それが普通だわな」

「ガナッシュさんまで、何で賛同しているのですか?クロスさんは、長年同じパーティーメンバーだったじゃないですか」

「オウカさん、俺からこんな事を言うのは何なんだが、クロスの救出は無理だよ」

「だからなんでですか?」

「そりゃそうだろ。クロスを救出する依頼が無いからだ。依頼のないものをギルドが動くわけないだろ?」

「だ、だから、クロスさんにお世話になった人が動こうとしているんじゃ無いですか?」

「それもギルド規約に反しているからだよ」

「規約……」

「ああ、そうだ。冒険者の生死はその人物の自己責任って事だ。俺達暁が、クロスは足並みを違え突っ込んだことにより死亡したと証言しているんだぜ。そんな人間を救出?馬鹿も休み休み言えよ」

「そ、そんな……」

「オウカ、ギルドマスターとして忠告する。ギルドを動かしたいのであれば、お前が依頼を出すか、個人で救出することだ!」

「ギルドは、クロスさんに恩は感じていないのですか?」

「感じていないと言ったら嘘になるが、もし今回そういう理由でギルドが動いたら、他の人間が遭難しても同じ行動に出ねばならん。そんな事できるわけないから、クロスの事で動くのは無理だ!」

 ギルドマスターも又、そう言いながら辛いが、ギルドのトップとしての行動を貫く事しか出来なかった。

「それに、みんなも一つ忠告しておくが、もし仮にクロスが救出されたとして、あいつが冒険者としてやっていけると思うか?俺達はもう死んでいるものとして扱っているから、パーティーから外す手続きを取る。助けたとして、あいつの面倒をお前等が見るのか?」

 ガナッシュの言葉に、他の冒険者は下を向いた。日頃のクロスを見ていたらそれも無理はなかった。仮にパーティーの空きがあったとして、誘うのなら少しでも有能な人間にしたいのは当然である。
 それに、クロスが今までやってこれたのは、Sランクの勇者パーティーだからだと、他の人間は思っていたのだ。

「俺のパーティーはもう6人だか無理だ」
「私の所もです」
「俺の所は空きはあるが、クロスをフォローできるとは思えん」
「申し訳ないうちもだ……」

 結局、ガナッシュの言葉に、他の冒険者は尻込みしてしまったのだった。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~

平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。 しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。 パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。

烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。 その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。 「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。 あなたの思うように過ごしていいのよ」 真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。 その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

処理中です...