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39話 安定した日常

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 ソフィアは二人のやり取りを見て、呆れた様子でマサルに言った。

「ご主人様……もうそのくらいで謝罪はよろしいのでは?」

「えっ?」

 マサルは周りを見ると、ソフィアを始めルナ達全員がドン引きしていた。

「ご主人様はここの主なのだから、そんな卑屈にならなくてもいいんですよ。もっと堂々としていてください!」

 ソフィアは、マサルの小心を諫めたのだった。

「そうは言ってもなあ……これは性格だしもう直らないと思うよ……」

「まあ、それはしょうがないとしても、ご主人様はもっと堂々としていたらいいんですよ。性格とかなんとか言っているから変われないだけなんです」

「いやいや……この性格で長い事いるんだから、そう簡単に……」

「だったら、それより長い寿命があるんだから、少しづつ慣れて行くようにしてくれたらいいんですよ」

 ソフィアは、マサルがダンジョンマスターになった事で、永遠ともいえる寿命になった事を引き合いに出して、少しづつ立場を理解する様に言ったのだった。

「分かったよ……なんか慣れそうにないけど、少しづつ自覚するようにするよ」

「はい。そしたら、オーブにも名前を付けてあげてください」

 ソフィアはニッコリ笑い、マサルの事を肯定した。マサルはソフィアに言われ少し考えこんだ。

「オーブは水晶だから、万物の調和という意味があるから、調和という言葉で、アルモニーという名前はどうだ?」

「アルモニー!」

「この名前は嫌か?」

「そんなことありません!アルモニーという名前気に入りました」

「そうか。じゃあこれからオーブは、アルモニーで決定」

 オーブの名前はアルモニーに決定し、アルモニーはマサルに感謝したのだった。それから、一ヶ月が経ち、マサルのダンジョンは誰も来ない日々が続いた。ダンジョンに入ってくるのは地上の魔物ぐらいで、本当に平和そのものだった。

 1ヶ月で入手できたDPは25万ポイントほどだった。しかし、その間魔物ガチャや低ランクの魔物はずっと召還し続けて、DPで罠を充実させてドンドン高ランクダンジョンになっていった。

 そんな時、久しぶりの冒険者がマサルのダンジョンにやってきたのだった。

「おい……本当にこのダンジョンに入るのか?」

「中の状態の偵察だよ。みんな依頼を受けねえから、俺達にその役目がまわって来たんだろうが……」

「だけどよう……」

「無駄口をたたくな!お前達は奴隷なんだぞ?俺達の命令を聞いてればいいんだ!それに何だその言葉遣いは!俺達には敬語を使えと言っているだろうが!」

「しかし、ご主人様……ここは騎士団や冒険者が……」

「だから、お前達を購入したに決まっているだろ?ここの一階層を偵察にお前達奴隷にはちょうどいい場所なんだ。お前達に選択権などあるわけないだろうが!」

 冒険者に無理やり連れてこられた奴隷達だった。奴隷を先に歩かせて、その後から冒険者がダンジョンの中を探索し始めたのだった。

「マスター!大変です!」

「アルモニー、どうかしたのか?」

「このダンジョンに人が!」

 アルモニーは、水晶に入り口付近の映像を映し出した。すると、奴隷を先に歩かせ、冒険者達が潜入していた。

「これなら大丈夫だよ」

「そ、そうですか?」

「ああ。騎士団でも5階層で全滅したんだ。多分、この人たちは1階層の巡回で終わるよ」

「巡回ですか?」

「この一ヶ月ずっと人間は、このダンジョンに来なかったんだ。どうなっているか確認しに来たんだろ?」

「ですが、このまま奥に入ってきたら」

「アルモニー、大丈夫だって。もし本当に、このダンジョンを攻略するつもりなら、奴隷を連れてくることなんかせず、騎士団が来ると思うよ」

「また同じようなですか?」

「いや、今度は連合国でこのダンジョンを制圧しにくるとおもうよ。そうじゃないと一国ではもう太刀打ちできないと、王国は理解しているはずだからね」

「な、なるほど……」

「たぶん、今回は1階層の様子見だとおもうよ。それに4階層のボスは、もう復活しているんだし心配することは何もないよ」

 マサルは余裕で、冒険者達を観察していた。実際の所、冒険者達は1階層だけを偵察して、帰還していったのだった。
 ダンジョンの中は、平和そのものであり、一階層はスライムやゴブリン又はウルフやベアなど、低ランクとされる魔物や動物しか出現しなかった。
 
 これらの事が1ヶ月の間続いたのだった。

「ご主人様……あのまま放っておいてよろしいのですか?」

「別に構わないよ。このままいけば数百年待たなくても、冒険者達がこのダンジョンに通いだすと思うよ」

「そうなったら平穏な生活が脅かされる事になるのでは?」

「いや、それは大丈夫だよ。多分、3階層までしか偵察は行えないはずだよ」

 実際のところ、マサルの言う通り冒険者や騎士団が偵察を行い、4階層に降りたところで、すぐに引き返して行ったのだった。偵察の何回も行い、自分達がどのくらいまで潜る事が出来るのか見極めていった。

 これら命がけの偵察により、3階層までと情報がギルドに行き届いた。半年の間、ギルドと騎士団はマサルのダンジョンに通い続ける事で、3階層までならこのダンジョンは町の発展に、十分活用できると判断したのだった。

 しかし、そんな中でも調子に乗る人間は何人かいるものであり、3階層までなら余裕で攻略できると思い込み、油断する冒険者もいた。そう言った、冒険者はすぐに罠にひっかかり帰らぬ人となった。

 ギルドでは、帰ってこなかった冒険者の性格をちゃんと把握しており、少し力を持った冒険者には注意を促していた。

「あーあ……やはり、あいつ等は帰ってこなかったか?」

「ギルドマスター……」

「あのダンジョンは、Bランク以上しか潜入できないようにした方がいいと思うか?」

「いえ……Aランク以上では、それ以下の冒険者が入れなくなってしまいます」

「しかし、やっとBランクまで育った冒険者が犠牲になるようでは……」

「ですが、あのダンジョンは3階層までしか潜入は出来ません。つまり、魔物の素材はどんなに強くでもCランクまでです」

 受付嬢は、Cランクまでと強く訴えた。そうすれば慎重に行動さえすればCランクの冒険者にとって、良い稼ぎ場になり生活が充実する。
 そして、Aランク以上の冒険者だけ許可するとなると、当然オーガぐらいのCランクの魔物では物足りないのである。
 より高価な素材を手に入れるとなれば、4階層以上に潜らないといけなくなるが、マサルのダンジョンは4階層から急激に攻略不可能になる。
 そんなダンジョンに潜ろうとするAランク以上の冒険者は皆無である。それならば他のダンジョンに潜り稼ぐ方が効率がいいのだ。

「ムううう……本当に厄介なダンジョンだ……」

「本当にそうですね。Aランク以上は儲ける事が出来ないし、Bランク以下じゃないと儲けが満足できないんですからね」

 冒険者ギルドでは、Bランクまでの冒険者が3階層までを慎重に行動し、スタンピードが起きない様に魔物を間引く事が目的になっていた。

 そして、1ヶ月に一回程度だが、王国騎士団が4階層まで出向き、4階層の様子を偵察に来ることで、騎士団が訓練を兼ねて、魔物を間引く事しか出来なかったのだ。




 そんな、日々を過ごしていたダンジョンの最奥の部屋は、とても賑やかになっていた。

「ご主人様!本当に私達を保護して頂きありがとうございます」

「君達には、4階層を守ってもらう事になるから、しっかり訓練をして強くなってください」

 マサルは、横暴な冒険者に先導させられていた奴隷達を助けていた。囮に使われていた奴隷達は大抵は、亜人とされている奴隷ばかりで身体能力が高いとされている獣人や、手先が器用な小人族であるファニー族や、鉱石を掘る為にドワーフ族又は、薬草を採取するのにエルフ族などだった。
 そして、マサルが驚いたのは戦闘民族であるボルダン族や、龍人族や魔族達だった。

 マサルは、ある時を境に奴隷を連れた冒険者を積極的に生け捕りするように、カグヤ達に指示を出して奴隷達を保護していた。
 冒険者達の所業にマサルは許せなかった。だから、冒険者達はカグヤ達に処分され、奴隷達は廃棄奴隷となっていた。
 廃棄奴隷とは、こうしてダンジョンで主人が亡くなったり、囮にされ主人だけが逃げてしまい奴隷を捨てる行為の事である。
 そして、廃棄奴隷は見つけた人間の物となる。その奴隷は契約し直しその見つけた人間の物になるか、奴隷商人に売られるかのどちらかになるのが普通なのだ。

 そして、マサルはその奴隷達の意思を尊重し、眷族になりたいものは眷族にした。そして、永遠の時間を生きる覚悟のない者は、マサルの奴隷にしたのだった。

 ここはダンジョンの奥底であり、マサルはダンジョンから出る事は出来るが、そのような選択はソフィアたちが絶対に許可しなかった。
 しかし、マサルはダンジョンマスターである。DPさえあれば、世の中の事は全て可能である。マサルは、DPでスキルと交換し、隷属を手に入れていた。このスキルがあれば奴隷商人になる事が出来る。契約のし直しなど簡単な事だった。

 こうして、無理やりここに連れてこられていた奴隷達を全員保護していた。奴隷の中でも、ボルダン族や龍人族や魔族の眷族化はすさまじいものがあった。
 しかし、マサルの奴隷となった者はレベルの半分の上乗せが無い為、弱いままだったがダンジョンの中で生活をする為、レベルの一部がDPとして入手されていくのは、マサルにとってうれしい誤算だった。

 この奴隷達や眷族になった人間達の、食事を確保しなければいけない為、マサルは3階層までだが、冒険者を自由に行動できるようにしていた。
 この時、注意しないといけないのは一ヶ月に一回、偵察に来る王国騎士団達だけだったのだ。

 
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