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38話 王国、ダンジョンからの撤退

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 ビャクヤは、ダンジョン前をテンペストで全部吹き飛ばしてしまった。そしてダンジョン前はすっきり何もなくなってしまったのだった。

「お兄ちゃん。全部片づけてきたよ」

「ああ!ご苦労様」

「んっ」

 ビャクヤは、マサル言葉に頭を出してきたのだった。それに対して、マサルはビャクヤの頭を優しく撫でると、ビャクヤは満足したようにニッコリ笑ったのだった。
 そして、5階層に散らばっていた騎士団の荷物は全て、カグヤ達が回収したのだった。騎士団の持っていた、マジックバックだけでも一財産だった。その中には国王から褒美としてもらった装備品もあった。

「みんなのおかげで、これからは静かに生活が出来ると思う。本当にありがとう」

 マサルの言葉に、ソフィアたちは頭を下げたのだった。



 その頃、モーレンの村では村人にダンジョンの方向で大きな竜巻が発生したと報告が入り、ダンジョン前の簡易村が跡形もなくなった聞いた。

 そのことを村長は、急いでギルドに報告した。その内容にギルドは信じれなかった。その報告で騎士団は全滅したとされたからだ。実際、モーレンの村に戻ってきた騎士団の人間は誰もいなかったからだ。

 ギルドは、王国に正直に報告するしかなく、その報告に王国は騒然となったのだ。

「騎士団長のフォーガンも犠牲になったというのか?」

「そのようです……」

「それは確かな事か?あのフォーガンが犠牲になど……」

「報告によりますと、村人たちがその竜巻が発生した場所を調べると、竜巻で辺り一帯は何もなく騎士達の遺体を回収、その遺体は5km先まで飛ばされていたようです」

「……」

「しかし、全員の遺体は見つからず、それ以上遠くに飛ばされた遺体は魔物に食われてしまったもよう」

「その中には、フォーガンの遺体もあったのか?」

「いえ……フォーガン様の遺体は見つからなかったそうですが、国王様が与えた宝剣が、樹に刺さっていたようで、宝剣だけがみつかったようです」

「何てことだ!」

 国王は、その報告にテーブルを力強く叩き大きな音が鳴った。その音に、上級貴族達はビクッと体を強張らせたのだった。
 国王は、フォーガンを頼りにしていた人間の一人であり、目をかけていたのだった。その為、王女であるマリアンヌを、フォーガンの息子と一緒になってほしいと思っていたほどだった。

「その竜巻は自然災害なのか?」

「あの地域は森が生い茂っています。竜巻が起こるなんて今までありませんでした」

「ばかな!では、そのような魔法が存在するとでもいうのか?報告では、あり得ない程とてつもない大きさだったというではないか?」

 テンペストは禁忌と言われるほどのスキルである。神聖獣だからこそ使えるものであって、この世界には見つかっていない攻撃方法の一つである。つまり、王国では魔法と思っているようだが、スキルだとは思ってもいなかった。

「だとしたら、フォーガンはダンジョンから出てきた何者かにやられたと申すか?」

「その可能性は高いでしょう!」

「だとしたら、あのダンジョンは許せぬ!国の威信をかけて攻略せねばプライドが許さん!今すぐ弔い合戦だ!」

「国王!少しお待ちください」

「なんだ!何か異論があると申すのか?」

「そうです!わかっているのですか?騎士団の精鋭部隊が、この数日という短時間でフォーガン様を始め、全員が帰ってこなかったことを?」

「だから何だと申すのだ!」

「国王のお気持ちはお察ししますが、ここはあのダンジョンに近づけない様に、封鎖するという決断をしてほしいのです!」

「何を馬鹿な事を!王国騎士団が……」

「その王国騎士団の精鋭部隊が全滅したのです。今残っているのは、5番隊以降が国の警備をしているのですぞ」

「うっ……だ、だが!」

「では、国王にお聞きします。フォーガン団長が率いた第1兵団から第3兵団それに魔道部隊が敵わなかった相手にどのような策があるというのですか?」

「だからこそ、王国騎士団の実力を示すべきではないか?」

「それは勇気を示すとは違い、何も考えておらず無謀というものです」

「宰相!お主は、あのダンジョンを放っておけというのか?」

「放っておくのではなく監視するべきだと!まずは監視し、騎士団を建て直す事こそ、先決だと言っているのです」

「ダンジョンが、このまま成長したらどうするつもりだ?」

「そうならない為に、王国が監視するのです。どちらにしても騎士団長を喪った我々には攻略など夢のまた夢です。幸いあのダンジョンの近くには村があります。そこを騎士団の駐屯地にすれば見張る事は可能かと」

「その間に騎士団の再建を急がせろと?」

「今はその方がよろしいかと!」

「分かった……しかし、監視する部隊には、ダンジョン内の魔物の間引きをしっかりやって貰わなければならぬぞ」

「はい!それはしっかり言いつけさせてもらいます」

 王国は、マサルのダンジョンの攻略を諦めるしかなかった。モーレンの村に騎士団の駐屯地を作り、騎士団に魔物の間引きをさせ、ギルドにも国からの依頼書を発行し、1階層2階層ぐらいの魔物の間引きをさせる事で、スタンピードが起きない様に監視させたのだった。

 王国は、すぐそのように段取りをして新たな騎士団を派遣し、モーレン村の村長に書簡を送ったのだった。モーレン村は、ガラッと雰囲気が変わりのんびりした村ではなくなった。

 国からの命令で、冒険者ギルドモーレン支部も出来上がり、騎士の兵舎もでき人口が増えたのだった。それにより小さな柵しかなかった、モーレン村にはバリケートが出来上がり、数年後には城壁が出来上がる事になる。ダンジョンのおかげで、村から町へと発展することになる。



「それにしてもマスター?静かになりましたね」

「オーブは、こうなる事は嫌だったか?」

「いえ……わたしはマスターのやることに否定をすることはもうないですよ」

「いや、意見はしてほしいと思っているよ。オーブも家族の一員だしね」

「わたしもですか?」

「当たり前だろ?こうしてオーブと会わなければ、僕は今頃貴族に囲われていたかもしれないんだ。この場所を提供してくれたのは本当にありがたいと思っているよ」

「あ、ありがとうございます。だったら、その……あたしも我儘を……」

「ああ!いいよ。僕にできる事ならいいんだけど言ってみてよ」

「その、みんなと同じように名前を付けてほしいのですが……わたしだけオーブというのはちょっと……」

「あっ、そうか……今までごめんね。オーブなんて言い方してたら、家族じゃない感じがするのも当然だよね」

 マサルは、今までオーブと言っていたことに対して頭を下げたのだった。

「いえ、そんな!頭を上げてください。わたしも早く言えばよかっただけで……」

「本当にごめん」

 マサルはオーブに頭を下げ続け、オーブは恐縮しているように明るくなったり暗くなったり点灯して、コントのようだった。それを見ていたソフィアは呆れながら口を開いたのだった。

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