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33話 挑発するマサル

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 マサルは、ダンジョン内にその姿を投影させて、騎士団の前に立ち冒険者達の意見を否定した。

『冒険者の皆さん。腹が立つのは分かりますが、実際の所先の侵略で貴方達の半分は1階層も攻略できなかったのですよ?』

「「「「「ゥぐっ……」」」」」 

『そして、自分達では攻略は出来ないと判断したからこそ、国に報告し騎士団の皆さんの力を借りたのです。違いますか?』

「う、うるさい!」

 冒険者の一人が、痛いところ突かれてマサルに斬りかかったのだった。他の人間はその行動に一言もらしたが、すでに遅くてマサルは、冒険者の剣に真っ二つになったかに思えたが、斬りかかった冒険者はマサルの姿を通り過ぎてしまったのだった。

『その姿は仮の物です。斬っても意味が無いので、僕の話を聞いてもらえますか?』

「お前の話を聞く必要などない!このダンジョンは我々で攻略し貴様を討つ!それ以外の選択肢はないと思え!」

『あなたが騎士団長さんですね?』

「だから何だというのだ」

『このダンジョンは、すでに人類がどうこう出来るようなものではありません。諦めて、王国に引き返したほうが身のためだと思うんです』

「なっ!我々を愚弄する気か?」

『いえ、愚弄ではなく申し訳ないが事実です。このまま進めば、貴方達は必ず後悔する事になる』

「俺には、お前の言葉が命乞いをしているように聞こえるわ!すぐにそこまで行ってやるから、その首洗って待っていろ!」

『そうですか……僕の忠告は受け入れてもらえないのは残念ですが、王国は僕に戦争を吹っ掛けたことになるのですが、本当によろしいのですね?」

「王国が戦争だと?戦争になんかならんよ」

『その言葉忘れないでくださいよ。まあ、貴方達はここで死んでしまうからどうしようもありませんがね』

「わははははは!負け惜しみを!」

『とりあえず、ヒントだけ与えてあげますよ。4階層までは冒険者達が活動が出来る様に、死なない程度の優しいダンジョンにしておいてあげました』

「「「「俺達をどこまでも馬鹿にしやがって……」」」」」

『しかし、それ以降はこの世の地獄でも生易しい世界が拡がっています。自信のない方は引き返してくださいね。そこまで来れたら折り返し地点です。何人がここまで来れるか頑張ってください。ここまでこれた方には、
お茶菓子を出しておもてなしをしてあげますよ。あははははは』

 マサルがそう言った所で、映像は切れたのだった。

「むぐぐぐぐ!あの錬金術師め!我々を愚弄しやがって……」

「しかし、団長。あの錬金術師の言っていることが本当なら、4階層までは普通に進軍できそうですね」

「ああ。それにそこまで行ければ折り返しとも言っていたから、このダンジョンは全部で10階層ほどしかないと教えてくれたようなものだ」

「た、確かに!」

「ふっ。馬鹿なやつよ!ダンジョンの情報を教えていきおったわ。皆の者、必ずあのダンジョンマスターを討ち取ろうぞ!」

「「「「「おお~~~~~!」」」」」

 しかし、騎士団の団長を始め、案内役にかってでた冒険者達はすぐに後悔することになるが、このときはまだわからなかった。

 そして、映像を切ったオーブは、マサルの言い方に困惑していた。

「マ、マスター……一体どうしたのですか?あんな挑発をするなんてマスターらしくありませんよ」

「ふう……やっぱりなれない事をすると疲れるね。これでもう大丈夫だよ」

 周りを見ると、普段お人よしと思われたマサルが、あんな挑発行為をするのでソフィアたちも引いていた。

「それで、なぜあんなことを?」

「今回で、王国からの侵略行為を終わらせたかったんだよ」

「どういう事ですか?」 

「僕は、君達が負けるとは思っていないから、そこは全然心配してないんだが、だからこそ心配なんだよ」

「強いから心配?どういうことですか?」

「僕は君達と、これからこの場所で長い時間生活していくと思う。それなのに王国が、何回もこの場所にやってこられると鬱陶しいんだよね」

「どういうことでしょうか?」

「つまり、一番最初にビャクヤが相手にすると思うんだが……」

「あたしは負けないよ!あんな奴等に負けるわけないよ!」

「ああ。それに関しては心配ないと思う。しかし、ビャクヤが強すぎるがため中途半端ではだめなんだよ。ここで一気に叩いておかないとな」

「なるほど……だから、あんな挑発行為をしたのですね。これで、騎士団は絶対に4階層を突破してくるというわけですね」

「そういうことだね。4階層までで引き返されたら反対に、情報が外に漏れるから厄介になるんだよ」

「だったら、今のうちに全滅させてしまえばいいじゃないですか?」

「いや、今対応するのはまずいよ。まだ入り口近くにいるんだから……」

「たしかに……でもご主人様、逃げ出す冒険者がいるんじゃ……」

「ソフィア、だからわざわざ僕が映像まで見せて挑発したんだよ?」

「えっ?」

「このダンジョンは4階層まで優しいとばらしたんだ。それも戦闘能力のなさそうな僕の姿を見せてね」

「なるほど……」

「自分で言うのも情けないが、あの場には僕が逃げた姿を見た冒険者もいたから、その冒険者から騎士達に情報が漏れているはずだよ。僕が錬金術師だってことがね」

「ご主人様は、そこまで考えて?」

「まあ、あの冒険者がいたのは偶然だけどね。でも、とりあえずは女神様も自分達を守る為なら、人間達を全滅させるのは問題はないと言ってくれたしね。王国にはダンジョン攻略を撤退してもらう事を最優先としよう」

「でも、ご主人様それでよろしいのですか?」

「ソフィア何か問題でもあるのか?」

「今、侵入してきている騎士団は、間違いなく全滅してしまいますよね?当然、ダンジョンの入り口に簡易村を作っている騎士達も同様、全滅になると思います」

「それがなにか問題でも?」

「そうなれば、このダンジョンは、本当に人類が手出しできないダンジョンと認定されます。そうなれば、1階層から3階層まで優しくした意味が無くなりませんか?」

「ああ……そういうことか。別に構わないんだよ」

「どういう事ですか?」

「だって、僕たちの寿命はもう、あってないようなものでしょ?」

「確かにご主人様が死亡しなければ、私達も永遠といえる時間を過ごす事になりますね」

「だから、カグヤのような存在も、お伽噺のような感じになるんだよ」

「えーっと、どういう事でしょうか?」

「ヒューマン族はエルフと違って、80歳まで生きたら大往生と言われるから、このダンジョンの事も200年もしたら、ひと昔という感じになるってことだよ」

「な、なるほど!王国騎士団が退けられたこのダンジョンは最初は厳戒態勢がひかれるけど、こちら側から何もしなければいずれそれもなくなるというわけですね」

「まあ、それが200年後か300年後か分からないけど、こちらとしては地上を、どうこうするつもりはないからね。静かになっていいって事だよ。そして、人々がそれを忘れたころに又、冒険者が浅い層をうろついてくれたら、本来であるダンジョンとしての機能を果たせばいいってことだよ」

「なるほど……確かにダンジョンは、ここだけじゃないですものね」

「今回の優先事項は、騎士団の全滅。そして、ここを王国が危険地帯と認識させることが目的だよ」

「「「「「「はい!」」」」」」




 マサル達が、目的を確認したころ騎士団達は、マサルに馬鹿にされた事でダンジョンをドンドン攻略していった。
3階層まで来て、もう簡単には逃げ出す事が出来ない感じの所まで、騎士団一向は到達していた。

「今日はここでキャンプを張る事にする!準備に掛れ!」

 そこは広い空間で、騎士団の部隊が十分休憩が取れる所だった。騎士団は3部隊からなる精鋭部隊で構成されていた。
 国から支給されたマジックバックには、騎士団が半年以上は旅が出来る物資があり、魔法部隊も1部隊同行され安全に野営ができるのである。

 時おりダンジョンの魔物は、騎士団がいる場所に出くわせて、圧倒的な数の暴力で討伐されてしまい、ダンジョンへと吸収されてしまっていた。

 そして、テントでは騎士達がこれからの行動の作戦会議を開いていた。

「明日からは4階層に突入する。あの錬金術師は4階層までは優しくしたと言ったが、どうなるかわからんから十分注意を怠るな」

「「「「「はい!」」」」」

「俺の予想では、4階層から本格的なダンジョン攻略になる思っている」

「団長。それはなぜでしょうか?先ほども注意を怠るなと言われましたが、本当にあの錬金術師の言った通りになるのでしょうか?」

「俺も、ここまでの緩いダンジョンには正直、冒険者達の言う事が本当なのか疑問に感じる所もある。しかし、実際Sランク冒険者が多数犠牲になっているのは確かだ」

「それはそうかもしれませんが、Sランク冒険者が出来立てのダンジョンに油断し、数々の偶然が重なって命を落としたのでは?」

「たしかに、油断をすればSランク冒険者でも、あっという間に命を落とす事になるだろう。これは我々騎士団も同じ事と言えよう」

「そ、それは……」

「だから、ここが本当に出来たばかりのダンジョンで、このままダンジョン攻略が簡単に出来たとしても油断だけは絶対してはいけない。わかったな?」

「「「「「はい!」」」」」」

 騎士団長は、ここまで潜ってきて油断を仕掛けていた隊員に、活を入れ直したのだった。

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