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28話 カグヤの宣戦布告
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ドラゴンの咆哮のリーダー、ダンは死を覚悟した。Aランクの魔物であるバンパイアがこれほどまでにいるとは思わなかったのだ。
アンナが、最後の気力を振り絞って、みんなの危機を報せたがすでに遅かった。暗闇の中襲われたら、人間はひとたまりもなく、その上6人では数百に及ぶバンパイアには敵わなかった。
「ホント、わたしの忠告は素直に聞くべきだわ。貴方達わかった?」
「「「「「「分かりました」」」」」」
返事をしたのは、ドラゴンの咆哮のメンバーだった。ダン達は全員、カグヤの手下のバンパイアになっていたのだった。
しかも、天井に逆さまにぶら下がっているバンパイアとは違い、人間だった時の能力をそのまま有していた。
「貴方は確かダンと言ったわね?」
「はい」
「貴方はバンパイアウォーリアになっているわね?」
「嬉しい誤算です」
カグヤは、嬉しい誤算で氷のような笑みを浮かべたのだった。ダンと同じくアイリーンはバンパイアマジシャン、アンナはバンパイアアークプリーデスとなっていたからだ。ただ、他の3人はレベルが足りなかったのか、普通のバンパイアだった。
「貴方達3人は、次からここに潜入してきた冒険者達を迎え撃ちなさい」
「「「任せておいてください」」」
「貴方達と同じく仲間に引き込むのですよ。わかりましたね?」
「「「潜入してきた冒険者は高ランク冒険者達です」」」
「このダンジョンは更に強力になると思います」
マサルのダンジョンの、2階層はダークゾーンとなっていて、カグヤ達にとって有利な空間となっていた。暗闇でも蝙蝠のように電波を飛ばし、相手との間合いは把握でき問題はまったくないのである。
そして、次のお客さんが2階層にやって来たのだった。
「何だ、この真っ暗な空間は?」
そのパーティーも又、ランタンを用意して奥へと進んで来た。この広い空間を慎重に進んだパーティーは、前方に3人の人影を見た。
「みんな用心をしろ。この先に何かいる」
このパーティーの斥侯員はランタンを向けた。するその姿はドラゴンの咆哮のメンバーだった。
「何だよお前達か……脅かすんじゃねえよ」
入ってきたパーティーは、ドラゴンの咆哮だった事でホッとしてため息をついた。
「お前達3人だけか?他の奴らはどうした?」
「ここに入ってきたのは緑の翼のお前達だけか?」
「とりあえずだが……ダン、おまえどうしたんだ?様子がいつもと違うみたいだが?」
緑の翼のメンバーは、ダンの様子に恐怖したのだった。
「そうか、お前達も俺達ドラゴンの咆哮と同じように単独で……」
「何を言っているんだ?」
「いや、なんでもない。なら俺達の仲間になってもらうぞ?」
緑の翼は、ダンが何を言っているのか分からなかった。冒険者仲間としてこのダンジョンの攻略に来ているのに、仲間になってもらうという言葉の意味が分からず恐怖したのだった。
「お、オイ……いったい何を言っているんだ?俺達は元々仲間じゃ……」
「きゃっ!な、なに?」
「どうした?」
「上から何かが?」
緑の翼のメンバーは魔導士の言葉に天井を見上げた。するとそこには、暗くて何も見えないが、赤い点が無数に埋め尽くされていた。
「何あれ?赤い点がいっぱい……」
「グワッ!」
緑の翼のメンバーが上を向いていた時に、前衛の3人がダン・アイリーン・アンナの3人に噛まれていた。
「ダン!お前一体何をしているんだ!」
緑の風のリーダーは目を見開き驚いた。そしてダンの口元には鋭い牙があり、仲間の首筋に噛みつき生き血を吸っていたのだった。
「なんでダン達がバンパイアに!2人とも気をつけろ!」
そう言った緑の翼のリーダーの注意はもう遅かった。後方にいた後衛職の二人も、突然上空からのバンパイアに襲われていた。
「「きゃあああああ!」」
「なんて事だ!ここは、バンパイアの巣窟になっていたのか……」
緑の翼のリーダーは一矢報いるためにも、剣を抜き一体のバンパイアを斬りつけた。しかし、一体のバンパイアを葬ったところで、状況は変わらなかった。
それらを、マサル達は最深部の部屋で観察していた。
「ご主人様。これはえぐいですね……」
「まあ、カグヤ達の特殊能力だな……バンパイア化にしてしまい、仲間を増やしていくなんてとんでもない能力だと思うよ」
「それにしても、Sランク冒険者達の能力も凄まじいものですよね?」
「そうだね。バンパイアウォーリアなんかに進化するなんて驚きだよね」
「しかしマスター、ダークゾーンをあんな使い方をするなんて驚きです。まさかバンパイアに、有利な場所を与えるとは……」
「まあ、蝙蝠の化身であるバンパイアには暗闇は関係ないからね。冒険者には、エルフやドワーフのようなインフラビジョンをもった種族もいるけど、バンパイアは上級アンデットだし、熱には反応しないから都合がいいんだよ」
インフラビジョンとは、サーモグラフィーのように熱を感じてみる特殊能力である。真っ暗の中で活動する生物を見る事が出来るが、アンデットのような魔物には体温が無い為反応しないのである。
「だけど、この戦法は冒険者達を殺さず仲間にしているから、ダンジョンに吸収されないのがネックだね」
「マスター。確かにDPが入ってません」
「まあ、今はそれでいいよ。Sランク冒険者を仲間にする方が、後々有利に事が運ぶよ。それに、今多数のSランク冒険者が、ダンジョン内を探索しているから、その分のDPが入っているしね」
「それは確かにそうですが」
「多分、今回相当数のSランク冒険者が犠牲になると思う」
「ご主人様、確かにそうなるでしょうが、本当にそれで大丈夫なのですか?」
「ソフィア、何か問題でもあるのか?」
「そうではないのですが、そうなると今度は国が相手になるのかと思うと、少し不安になります」
「大丈夫だよ。今回、Sランク冒険者はバンパイアで一掃されるとおもうよ」
「それって?」
「つまり、カグヤは何もしていないという事だよ。今回は、冒険者に注意勧告しただけで、何もしていない」
「「あっ……」」
「つまり、冒険者達には情報が一切漏れていないって事だよ。犠牲になった冒険者は、カグヤの事をクイーンだと思っているようだけど、そんな生易しい種族じゃないよ。カグヤは」
「「た、確かに……」」
「それに、今回の事が情報として国に伝わってここに来るまで時間があるしね。もう一人どころか、もっと仲間が増えそうな予感もあるし楽しみだよ」
「「……」」
ソフィアとルナは、マサルがもっと仲間が増えると言った真意が理解できなかった。カグヤのような災害級の仲間が、そう簡単に増える訳がないとおもっていたからだ。
しかし、マサルの言ったことは現実のものとなり、今最終ボスとなっているレッドドラゴンは、後に3階層ぐらいを守るガーディアンになるとは、この時夢にも思っていなかったのだ。それほどまでに、災害級の仲間が増える事になるのである。
「カグヤ、ちょっといいかい?」
「主様なんでしょうか?」
これは、ダンジョンシステムの一つで、ダンジョンマスターは仲間に念話で会話が出来るのである。これはFランクの時からできるシステムである。
「突入してきた冒険者の半分が君の仲間になったから、カグヤにはダンジョンの外にいる指揮者に伝言を頼みたいんだよ」
「主様、一つ訂正をしてよろしいでしょうか?」
「えっ、何か間違っていることがあった?」
「バンパイア化した冒険者は、仲間ではありません事よ。あの者達は主様の駒の一つにすぎません。主様が死ねと言えば喜んでその命を差し出す駒です」
「そ、それは……」
「主様はお優しい方です。主様の仲間はソフィアとルナだけでございます。その辺を重々お間違いのないようよろしくお願いします。それで何でしょうか?」
「まあ、その辺は後でゆっく話し合うとして、カグヤには表で指揮を執っている責任者に、これ以上犠牲者が出ない様にこの場から去るようにして欲しいんだ」
「本当にそれでよろしいのですか?今、突入してきている冒険者は、Sランク冒険者たちですよ?」
「ああ。全員を犠牲にしなくともいいだろう?2階に到達できた冒険者以外は、まだ一階層で手間取っている。そんな人間ならバンパイア化にしたところで、雑兵にしかならないんだしさ」
「確かに、主様の言う通りですね。分かりました。一階層で手間取っている冒険者は入り口に返す事にします」
カグヤは、一階層にあがり冒険者達を探し、【チャームパーソン】をかけて傀儡にしていったのだった。
そして、カグヤは言いなりとなった冒険者を引き連れて、冒険者の一人を残して、ダンジョンの入り口に冒険者を全て出した。
「指揮官に告ぐ!このダンジョンに手を出す事はこれ以上まかりならん!」
その声に、テントの中にいた指揮官や、幹部達や冒険者が急いで外に出てきた。
「いったい何事だ!」
そこにはボーっとした冒険者達が立ちすくんでいて、後方に真っ黒なドレスを着た艶妖な雰囲気をかもしだしたカグヤが立っていた。
「お前が指揮官か?」
「そうだ、冒険者達に何をした?」
「何もしてないわよ。このダンジョンに侵入してきた者達を返して差し上げるの。これ以上このダンジョンに係わらないで頂きたくてね」
「このダンジョンは危険だ!そのような申し出は断る」
「わたしの主様が、貴方達に温情をかけてあげようというのに、無下にしないでほしいのよね」
「何が温情だ!冒険者を返すだと?ふざけたことを!」
「貴方達の戦力じゃ、無駄に命を散らすと主様の伝言よ。これ以上、この者達がここを捜索したところで、一階層も攻略出来はしないわ。それに、こんな低レベルの劣等種にウロウロされても迷惑なのよ」
「なっ!劣等種だと?そいつらは冒険者の中でも高ランク冒険者だぞ」
「うふふふ!こいつ等が高級だとは笑わせてくれるわ。自分達の恥を、それ以上晒さなくてもいいんじゃなくて?」
「なんだと⁉」
「そうそう。その証拠に1階層を突破した冒険者達は、わたし達の雑兵として利用させていただいたわ。つまり、貴方達が頼りにしていた冒険者は、迷惑料として駒の一つとして利用させていただきますわ」
「駒の一つだと……貴様はいったい何者なんだ!」
「まあ、正体を明かすのも何なんですが、その駒の一つを見て判断してください」
カグヤは、一人だけ残しておいた冒険者をすでにバンパイアに変えていた。そして、その一人をダンジョンの外に出したのである。すると、その一人を見た指揮官は、その冒険者の名前を呼んだ。
「ゴードン!」
ゴードンは、ダンジョンの外に出ると太陽の陽のひかりに当たった。そして、いきなり苦しみだし体が灰になってしまって、この世から消滅してしまったのだ。
「バ、バンパイア……」
「なんとなく正体がわかったかしら?ここにいる冒険者はまだ駒にはしてないわ。どうせ駒にもならないし返品して差し上げます」
「き、貴様……バンパイアクイーン……」
「それ以上言う事は、不快なのでやめていただきますか?わたしは、そんな下級種族ではありません事よ」
「な、何だと……クイーンが下級種族だと」
「まあ、私の正体などどうでもいい事です。貴方達ではどうせ何もできないので、命を大事にして怯えながらその短い生涯を閉じなさいと言っているのです」
指揮官は、カグヤの異様な威圧感と絶対の自信に何もできないでいた。冒険者達の半分ほどを、迷惑料と言いその半分を無傷のまま返還してきたのだ。
カグヤはチャームパーソンを解くと、冒険者はその場に崩れ落ちたのだ。
「確かに返品しましたわよ?あと4時間はこのままでもいいですが、それ以上ここにいたら、わたしが直々に全滅させてあげますから覚悟しておいてください」
カグヤはそう言い残し、不気味な笑みを浮かべてダンジョンへと引き返していったのだった。その場に残った指揮官と幹部達は何も言いだせず、その場にたたずむ事だけで精一杯だった。
アンナが、最後の気力を振り絞って、みんなの危機を報せたがすでに遅かった。暗闇の中襲われたら、人間はひとたまりもなく、その上6人では数百に及ぶバンパイアには敵わなかった。
「ホント、わたしの忠告は素直に聞くべきだわ。貴方達わかった?」
「「「「「「分かりました」」」」」」
返事をしたのは、ドラゴンの咆哮のメンバーだった。ダン達は全員、カグヤの手下のバンパイアになっていたのだった。
しかも、天井に逆さまにぶら下がっているバンパイアとは違い、人間だった時の能力をそのまま有していた。
「貴方は確かダンと言ったわね?」
「はい」
「貴方はバンパイアウォーリアになっているわね?」
「嬉しい誤算です」
カグヤは、嬉しい誤算で氷のような笑みを浮かべたのだった。ダンと同じくアイリーンはバンパイアマジシャン、アンナはバンパイアアークプリーデスとなっていたからだ。ただ、他の3人はレベルが足りなかったのか、普通のバンパイアだった。
「貴方達3人は、次からここに潜入してきた冒険者達を迎え撃ちなさい」
「「「任せておいてください」」」
「貴方達と同じく仲間に引き込むのですよ。わかりましたね?」
「「「潜入してきた冒険者は高ランク冒険者達です」」」
「このダンジョンは更に強力になると思います」
マサルのダンジョンの、2階層はダークゾーンとなっていて、カグヤ達にとって有利な空間となっていた。暗闇でも蝙蝠のように電波を飛ばし、相手との間合いは把握でき問題はまったくないのである。
そして、次のお客さんが2階層にやって来たのだった。
「何だ、この真っ暗な空間は?」
そのパーティーも又、ランタンを用意して奥へと進んで来た。この広い空間を慎重に進んだパーティーは、前方に3人の人影を見た。
「みんな用心をしろ。この先に何かいる」
このパーティーの斥侯員はランタンを向けた。するその姿はドラゴンの咆哮のメンバーだった。
「何だよお前達か……脅かすんじゃねえよ」
入ってきたパーティーは、ドラゴンの咆哮だった事でホッとしてため息をついた。
「お前達3人だけか?他の奴らはどうした?」
「ここに入ってきたのは緑の翼のお前達だけか?」
「とりあえずだが……ダン、おまえどうしたんだ?様子がいつもと違うみたいだが?」
緑の翼のメンバーは、ダンの様子に恐怖したのだった。
「そうか、お前達も俺達ドラゴンの咆哮と同じように単独で……」
「何を言っているんだ?」
「いや、なんでもない。なら俺達の仲間になってもらうぞ?」
緑の翼は、ダンが何を言っているのか分からなかった。冒険者仲間としてこのダンジョンの攻略に来ているのに、仲間になってもらうという言葉の意味が分からず恐怖したのだった。
「お、オイ……いったい何を言っているんだ?俺達は元々仲間じゃ……」
「きゃっ!な、なに?」
「どうした?」
「上から何かが?」
緑の翼のメンバーは魔導士の言葉に天井を見上げた。するとそこには、暗くて何も見えないが、赤い点が無数に埋め尽くされていた。
「何あれ?赤い点がいっぱい……」
「グワッ!」
緑の翼のメンバーが上を向いていた時に、前衛の3人がダン・アイリーン・アンナの3人に噛まれていた。
「ダン!お前一体何をしているんだ!」
緑の風のリーダーは目を見開き驚いた。そしてダンの口元には鋭い牙があり、仲間の首筋に噛みつき生き血を吸っていたのだった。
「なんでダン達がバンパイアに!2人とも気をつけろ!」
そう言った緑の翼のリーダーの注意はもう遅かった。後方にいた後衛職の二人も、突然上空からのバンパイアに襲われていた。
「「きゃあああああ!」」
「なんて事だ!ここは、バンパイアの巣窟になっていたのか……」
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それらを、マサル達は最深部の部屋で観察していた。
「ご主人様。これはえぐいですね……」
「まあ、カグヤ達の特殊能力だな……バンパイア化にしてしまい、仲間を増やしていくなんてとんでもない能力だと思うよ」
「それにしても、Sランク冒険者達の能力も凄まじいものですよね?」
「そうだね。バンパイアウォーリアなんかに進化するなんて驚きだよね」
「しかしマスター、ダークゾーンをあんな使い方をするなんて驚きです。まさかバンパイアに、有利な場所を与えるとは……」
「まあ、蝙蝠の化身であるバンパイアには暗闇は関係ないからね。冒険者には、エルフやドワーフのようなインフラビジョンをもった種族もいるけど、バンパイアは上級アンデットだし、熱には反応しないから都合がいいんだよ」
インフラビジョンとは、サーモグラフィーのように熱を感じてみる特殊能力である。真っ暗の中で活動する生物を見る事が出来るが、アンデットのような魔物には体温が無い為反応しないのである。
「だけど、この戦法は冒険者達を殺さず仲間にしているから、ダンジョンに吸収されないのがネックだね」
「マスター。確かにDPが入ってません」
「まあ、今はそれでいいよ。Sランク冒険者を仲間にする方が、後々有利に事が運ぶよ。それに、今多数のSランク冒険者が、ダンジョン内を探索しているから、その分のDPが入っているしね」
「それは確かにそうですが」
「多分、今回相当数のSランク冒険者が犠牲になると思う」
「ご主人様、確かにそうなるでしょうが、本当にそれで大丈夫なのですか?」
「ソフィア、何か問題でもあるのか?」
「そうではないのですが、そうなると今度は国が相手になるのかと思うと、少し不安になります」
「大丈夫だよ。今回、Sランク冒険者はバンパイアで一掃されるとおもうよ」
「それって?」
「つまり、カグヤは何もしていないという事だよ。今回は、冒険者に注意勧告しただけで、何もしていない」
「「あっ……」」
「つまり、冒険者達には情報が一切漏れていないって事だよ。犠牲になった冒険者は、カグヤの事をクイーンだと思っているようだけど、そんな生易しい種族じゃないよ。カグヤは」
「「た、確かに……」」
「それに、今回の事が情報として国に伝わってここに来るまで時間があるしね。もう一人どころか、もっと仲間が増えそうな予感もあるし楽しみだよ」
「「……」」
ソフィアとルナは、マサルがもっと仲間が増えると言った真意が理解できなかった。カグヤのような災害級の仲間が、そう簡単に増える訳がないとおもっていたからだ。
しかし、マサルの言ったことは現実のものとなり、今最終ボスとなっているレッドドラゴンは、後に3階層ぐらいを守るガーディアンになるとは、この時夢にも思っていなかったのだ。それほどまでに、災害級の仲間が増える事になるのである。
「カグヤ、ちょっといいかい?」
「主様なんでしょうか?」
これは、ダンジョンシステムの一つで、ダンジョンマスターは仲間に念話で会話が出来るのである。これはFランクの時からできるシステムである。
「突入してきた冒険者の半分が君の仲間になったから、カグヤにはダンジョンの外にいる指揮者に伝言を頼みたいんだよ」
「主様、一つ訂正をしてよろしいでしょうか?」
「えっ、何か間違っていることがあった?」
「バンパイア化した冒険者は、仲間ではありません事よ。あの者達は主様の駒の一つにすぎません。主様が死ねと言えば喜んでその命を差し出す駒です」
「そ、それは……」
「主様はお優しい方です。主様の仲間はソフィアとルナだけでございます。その辺を重々お間違いのないようよろしくお願いします。それで何でしょうか?」
「まあ、その辺は後でゆっく話し合うとして、カグヤには表で指揮を執っている責任者に、これ以上犠牲者が出ない様にこの場から去るようにして欲しいんだ」
「本当にそれでよろしいのですか?今、突入してきている冒険者は、Sランク冒険者たちですよ?」
「ああ。全員を犠牲にしなくともいいだろう?2階に到達できた冒険者以外は、まだ一階層で手間取っている。そんな人間ならバンパイア化にしたところで、雑兵にしかならないんだしさ」
「確かに、主様の言う通りですね。分かりました。一階層で手間取っている冒険者は入り口に返す事にします」
カグヤは、一階層にあがり冒険者達を探し、【チャームパーソン】をかけて傀儡にしていったのだった。
そして、カグヤは言いなりとなった冒険者を引き連れて、冒険者の一人を残して、ダンジョンの入り口に冒険者を全て出した。
「指揮官に告ぐ!このダンジョンに手を出す事はこれ以上まかりならん!」
その声に、テントの中にいた指揮官や、幹部達や冒険者が急いで外に出てきた。
「いったい何事だ!」
そこにはボーっとした冒険者達が立ちすくんでいて、後方に真っ黒なドレスを着た艶妖な雰囲気をかもしだしたカグヤが立っていた。
「お前が指揮官か?」
「そうだ、冒険者達に何をした?」
「何もしてないわよ。このダンジョンに侵入してきた者達を返して差し上げるの。これ以上このダンジョンに係わらないで頂きたくてね」
「このダンジョンは危険だ!そのような申し出は断る」
「わたしの主様が、貴方達に温情をかけてあげようというのに、無下にしないでほしいのよね」
「何が温情だ!冒険者を返すだと?ふざけたことを!」
「貴方達の戦力じゃ、無駄に命を散らすと主様の伝言よ。これ以上、この者達がここを捜索したところで、一階層も攻略出来はしないわ。それに、こんな低レベルの劣等種にウロウロされても迷惑なのよ」
「なっ!劣等種だと?そいつらは冒険者の中でも高ランク冒険者だぞ」
「うふふふ!こいつ等が高級だとは笑わせてくれるわ。自分達の恥を、それ以上晒さなくてもいいんじゃなくて?」
「なんだと⁉」
「そうそう。その証拠に1階層を突破した冒険者達は、わたし達の雑兵として利用させていただいたわ。つまり、貴方達が頼りにしていた冒険者は、迷惑料として駒の一つとして利用させていただきますわ」
「駒の一つだと……貴様はいったい何者なんだ!」
「まあ、正体を明かすのも何なんですが、その駒の一つを見て判断してください」
カグヤは、一人だけ残しておいた冒険者をすでにバンパイアに変えていた。そして、その一人をダンジョンの外に出したのである。すると、その一人を見た指揮官は、その冒険者の名前を呼んだ。
「ゴードン!」
ゴードンは、ダンジョンの外に出ると太陽の陽のひかりに当たった。そして、いきなり苦しみだし体が灰になってしまって、この世から消滅してしまったのだ。
「バ、バンパイア……」
「なんとなく正体がわかったかしら?ここにいる冒険者はまだ駒にはしてないわ。どうせ駒にもならないし返品して差し上げます」
「き、貴様……バンパイアクイーン……」
「それ以上言う事は、不快なのでやめていただきますか?わたしは、そんな下級種族ではありません事よ」
「な、何だと……クイーンが下級種族だと」
「まあ、私の正体などどうでもいい事です。貴方達ではどうせ何もできないので、命を大事にして怯えながらその短い生涯を閉じなさいと言っているのです」
指揮官は、カグヤの異様な威圧感と絶対の自信に何もできないでいた。冒険者達の半分ほどを、迷惑料と言いその半分を無傷のまま返還してきたのだ。
カグヤはチャームパーソンを解くと、冒険者はその場に崩れ落ちたのだ。
「確かに返品しましたわよ?あと4時間はこのままでもいいですが、それ以上ここにいたら、わたしが直々に全滅させてあげますから覚悟しておいてください」
カグヤはそう言い残し、不気味な笑みを浮かべてダンジョンへと引き返していったのだった。その場に残った指揮官と幹部達は何も言いだせず、その場にたたずむ事だけで精一杯だった。
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その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
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