異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします！

第１０章 Ｆｒｅｅｄｏｍ国、経済の中心へ！

１４８話 見逃せない事

　地下牢に閉じ込められていた少女たちは、怯えていたのだった。新しい人間がここに来たら、一人いなくなる事を知っていたからである。

「あ、新しい人間がここに……」
「つ、次はだれが……」

　だが、それ以上に少女たちは人生に疲れ切っていて、反対に楽になりたいとも思っていた。



　一方、ジンタンはジューンの事を捜索していた。あと一歩のところで足取りがつかめなくなったのを悔やんだ。エディンという名前を掴んだが、それ以降本当に足取りがつかめなかった。

「どういう事だ……」

「ジンタン様、言ったではありませんか……ここＦｒｅｅｄｏｍ国はとんでもない大国だと」

「だからなんだ！」

「いったん潜り込んでしまえば、一個人などいくらでも身を隠せるという事です。人を隠すなら人の中という事ですよ」

「……」

「それより、ジンタン様には良い縁談が来ております。そんなどこの馬の骨と分からない人間より、こちらの方を見てください」

　御付きの人間は、ジンタンに諦める様に促す事で大変だった。



　ケンジは、今回の事でほとほと自分の力が無いことを悟っていた。この大国をどうにかして変えていきたいと痛烈に思っていたのである。

「ケンジ様……どうかしましたか？」

「あっ、ムシュダルクさん……俺は何をやっているんだろうなあって思ってな……」

「ケンジ様は、よくやっておいでですよ？」

「本当にそう思うか？俺は確かに貴族を廃止した事に成功したが、結局はそれだけじゃないか？」

「「「「「そんな事はございません！」」」」」

　ムシュダルクがそう叫んだと同時に、セバスやギル達も部屋に入ってきてそう叫んでいた。そして、セバスが続けて話し出した。

「ケンジ様は、貴族を廃止しただけ？何を馬鹿な事を！国民達の生活を向上したではありませんか？学校を作り、保育所を作り銭湯という平民では手の届かなかったものを日常に取り入れたではありませんか？」

「だが、それもまだない町はいっぱい存在する。特に元帝国領なんかは遅れていて、元貴族達の横暴がまかり通っている」

「ご主人様、それはまだ手がつかない場所であり、これからではありませんか？ほったらかしにしている訳ではありません！実際ギルドＮＦＧは改善され、今まで以上に運営されているではありませんか？」

「だが、俺は今回奴隷商の元締めには、何の影響も与えることが出来なかった」

「そ、それはケンジ様の力が足りなかったわけではありません！」

「だが、そのことで今も苦しんでいる奴隷達が存在しているんだぞ？」

「それはそうかもしれませんが、何でもいっぺんに解決など出来る訳がないではありませんか？今はまだ準備を整える時期だと、みんな言ったではありませんか？」

「それは聞いた。タクミが成長して、孫の代が王位継承したぐらいに世の中の常識が変わるって事だろ？そんな長い間、奴隷達には人権が存在しないというのか？」

「そんな一喜一憂に世間の常識が変わるわけありませんよ。奴隷達の解放が、出来るようになっただけでも凄い事なのですよ」

　セバスは、ケンジがどれほど世の中に影響を与えているのかを、丁寧にかつ熱く説明したのだった。しかし、セバスの説明には感謝したがやはりケンジは納得していなかったのだ。




　そんな中、また新たな犠牲者が出たのだった。

「くっ……また、奴隷の犠牲者か……」

　その少女の首には、隷属の首輪がはまっていて、廃棄奴隷になった状態で捨てられていたのだった。ランスロットは、その死体を運びケンジに報告を上げたのだった。

「しゅ、主君……また犠牲者が出ました……昨晩に捨てられた模様で朝、町の人間が見つけたようです」

「そうか……安置場に案内してくれ」

　ケンジは、早速行動を起こしたのだった。

「ケ、ケンジ様どこに？」

「今は急いでいるから、後で説明する！」

　ケンジはムシュダルクを振り切り、死体が安置されている場所に向かったのだった。ケンジは、安置場に着いたと同時に、ランスロットにどの死体が今日の犠牲者か聞いた。

「主君、この遺体がそうですが。どうするおつもりですか？」

　ケンジは涙を流し、その遺体の頬を撫でたのだった。そして、自分がいたらない事を詫びて、その遺体を抱きかかえ屋敷に連れて帰ったのだった。

「しゅ、主君……いったいどこに？」

　ケンジは、ランスロットの言葉を制止ただついてくるように言った。会議場に着くと、マイや国の重鎮達が驚いたのだった。

「あ、あなた！いったい何をするつもりなの？」

「みんな聞いてくれ！俺はこれから事件やこういう事に重点を置くことにする」

「な、何を言っているのですか？ケンジ様には、やる事が他にもたくさんあるのですよ？」

「ムシュダルクさん、俺は今までやりたい事をやって生きてきた。それは国を豊かにする事もそうだが、こういう理不尽な事もやっぱ放ってはおけない」

「だからと言って……」

「大丈夫だ！俺はもっと頑張るから。それに学校卒業し優秀な人材が増えてきている中、国の事を任せられる人間がいっぱい出てきているだろ？」

「それはそうですが……」

「まあ、見てなって。俺はこの数日考え抜いて、ある案が浮かんだだから」

「どういう事でしょうか？」

　ケンジはそういって、今回の事件の犠牲者にポーションを振りまいたのだ。

　すると、遺体が光り輝き収まると、遺体に刻まれた傷は完治し、その死体は目を覚ましたのだ。

「あなた！こんなところで、神の涙なんか使う事ないでしょ！」

　この後景に、新人の内政に携わる人間は目を見開いて驚いたのである。まさか、Ｆｒｅｅｄｏｍに死者蘇生の技術があるとは思いもしなかったからである。

「こ、ここは？……」

　少女は目を覚まし、この状況が全然わからなかった。目の前には一人の男性がいて、周りには驚いて目を見開いた偉そうな人間がたくさんいたのである。
　しかし、少女はケンジの顔を見て驚いたのだった。奴隷だった人間でもケンジの顔は広まっており、すぐに土下座をしたのだった。

「な、なんで国王様が……目の前に？」

「土下座をやめてくれないか？君には聞きたいことがあるんだがいいかな？」

「そ、そういえばあたし……トーガン様に拷問を受けていたのに……ここは一体？」

　少女は、何が起こっているのか全然わかっていなくてパニックを起こしていた。

「何が起こっているか分からないとは思うが、説明させてくれないか？」

「は、はい……申し訳ございません」

「君の名前は？」

「アイリスと言います」

「アイリスか、いい名前だ」

　ケンジは、事の説明をし、アイリスは一回死んで町の人気のない場所に捨てられていたと説明したのだった。しかし、アイリスは死んだことに少しの間理解が出来なかった。

「ってことは、あたしは生き返ったという事ですか？」

「ああ！俺が生き返らせた」

「う、嘘でしょ？……」

　しかし、周りにいた人間がアイリスに興奮して説明をしたのだった。

　その説明に、アイリスは信じるしかなかったのだ。今までドーガンのもとにいて、あらゆる苦痛を与えられていたのに、奴隷紋は隷属の首輪に戻り廃棄されていたのが分かったからだ。

「それで、アイリス。君には聞きたいことがあるが、今まで誰が主人だった？家の場所は覚えているか？今まで何をされていた？」

「ちょっとあなた、落ち着いて。アイリスが驚いているわ」

　マイがケンジを落ち着かせた。そして、アイリスは自分のされていた事やドーガンの事を話し始めたのだった。

「ローゼリアいるか？」

「ここに」

「ドーガンの屋敷を偵察してくれ！」

「わ、分かりました」

　ケンジは、ローゼリアに偵察を指示して、こういった輩は必ず不正をしていると言い、奴隷の事で逮捕は無理だが別件で逮捕するつもりだった。

「ケ、ケンジ様……」

「ムシュダルクさん達は通常通り国の事を頼んだぞ？それに、俺のやることが少しは分かっただろ？」

「そ、それは……こんな事されたら犯罪者達には物凄い抑止力になりますよ。それに、多分ですが奴隷商にも何らかの圧力をかける事にもなります」

　今まで、奴隷には人権が無い為、殺されても文句など言えないと元締めをはじめ奴隷商は当たり前にそう言っていたのだ。
　だが、ケンジの技術は死人を生き返らせる蘇生術を持っていると明らかにする事で、今までは死人に口なし状態で泣き寝入りしていたことも沢山あったが、ケンジは言い逃れができない状態にしたのである。

　つまり、奴隷商でもそういう事が日常で起こっていた事を、見逃さないとケンジは圧力をかけたことになるのである。

　

　この事に、奴隷商の元締めは驚愕したのだった。まさか、蘇生術までＦｒｅｅｄｏｍが、いやケンジが持っているとは思わなかったのだ。そんな事など、お伽噺の話であり転移マットに続き信じられなかったのだ。　



　ケンジは、奴隷商の元締めに書簡を送ることにした。そこには、犯罪奴隷以外の奴隷の人権を持たせる様にと要望が書かれてあった。
　今まで死人に口なしだったものが、死人に口ありになった事で、廃棄した奴隷の口から犯罪が暴かれる事になったのだから、奴隷商人からしたらたまったものではなかった。
　つまり違法奴隷が存在する中、どの奴隷商人が違法な契約を結ばせたのか分かる事になるのである。

「こんな事が出来るなんて……」
「元締め！いったいどうするおつもりですか？」
「クッ……Ｆｒｅｅｄｏｍやってくれるじゃない……」

　奴隷商も又、違法奴隷を契約させる事で売り上げを上げていたのだった。違法奴隷商を見て見ぬふりをしていたのである。
　表向きは否定していたが、盗賊から安く買い取った捕虜を違法奴隷商人が奴隷に落とし、それを買い取り奴隷を販売していたのである。

　その契約で自分は違法奴隷だという事を言えない様にしていたのだが、死んでしまった奴隷を蘇生できるとなれば廃棄奴隷となり、その縛りはなくなってしまうのである。

　そのことで、Ｆｒｅｅｄｏｍ国はこれらの違法奴隷を取り締まる事ができるようになるのだ。