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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

143話 ジンタン

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 ケンジが、Freedom店で窓ガラスと鏡を売り出す事で、国民は興味を物凄く示し、自分の家にも窓ガラスを設置させたいと目標に頑張り始めた。
 この窓ガラスを設置することで、昼間は陽の光を取り入れることが出来る為、部屋が明るく魔道具を使わなくてもよくなるからである。
 窓ガラスの出現前には、木窓であり部屋の中は薄暗いので、部屋の奥は魔道ランプがともっていて、光熱費が結構かかるのが普通だった。

「ねえ、Freedom店で発売された窓ガラス憧れるわね」
「ホント、うちにも窓ガラスを設置したいわよね」
「でも、技術がいるみたいで少し高いわよね……」
「ホントそうよね。一枚ならいいんだけど、何枚ともなるとちょっとねえ」
「うちの子はまだ小さいからちょっと不安でね……」
「その辺は大丈夫みたいよ」
「どういうこと?」
「何でもケンジ様はそのあたりの事も考えていて、ガラスにコーティングして割れにくくしているみたいよ」
「へえ、そうなんだ。やっぱりケンジ様は国民の事を考えてくれているのね」
「それで、もし窓ガラスが割れたとしてもガラス片は飛び散る事がないらしいよ」
「どういう事?」
「何でもひびが入るだけらしくて、飛び散る事がないらしいんだって」
「へええ!」

 町ではそういった井戸端会議が開かれていた。それだけではなく、女性達にとって話題の中心は手の出ない窓ガラスより、鏡の方が大盛況だった。

「それより、これ見てよ」
「ああ。それ買ったの?」
「うん。自分の顔がしっかり映っていいわよね」
「いいなあ。あたしも欲しい」

 女性達の話題は手鏡で盛り上がっていた。装飾も細工士が手掛けており花の絵や鳥の絵が彫ってあったりする一品だった。

 この鏡の存在は、奴隷商や娼館にも普及されたのは言うまでもない。奴隷商では特別奴隷である受付に並べられた女性達に大人気だった。
 
「この鏡台素晴らしいわ」
「ホントそうよね。顔のゆがみが一切ないし、曇りもないから化粧がしやすいわね」

 実際の所、特別奴隷の売り上げも上がっていたのである。今まで銅鏡の時には、映りが悪くなるとメンテナンスで磨き職人が磨き直しをしていたが、それも必要が無くなったのだ。

 この研磨は、鏡のように反射させなければいけない為#400研磨ではなく、#800研磨まで仕上げなければならない為、職人が丁寧に磨きあげるのである。その為、地味にお金がかかってきていたが、鏡の出現でそれがいらなくなったのだ。

 これらの事は、奴隷商ではなく娼館でもありがたかったのだ。

「ちょっと!化粧品はどこに行ったの?」
「はい。こちらにあります」
「ええ!うちにも鏡台を入れたの?」
「はい。今日、届きました」

 そこには、鏡台が10台設置されていた。

「あのケチなオーナーが、よくも10台も入れたわよね?」
「なんでも、この鏡はメンテナンスが不要らしいですよ」
「な、なるほど……オーナーらしいわね」

 鏡台に映った、自分の姿を見て娼婦たちは盛り上がった。古い銅鏡とは違い、映った顔がゆがまず化粧がしやすいのを実感した。

「ほら、あなた達も早く化粧をしなさい」

「は、はい」

「あなた達も早く慣れて、お客に気に入られないとここから出ることが出来ないわよ」

「はい……でも、私達を気に入ってくれるお客がいるのですか?」

「それを見つけるのがあなた達の仕事よ。私は一生ここからは出ることができないけど、あなた達はその可能性があるじゃない」

「それはそうですが……」

「それに、今の世の中はFreedom国のおかげで、奴隷からの解放も可能なのよ」

 犯罪奴隷に落とされここに来た女性は、まだ若い女性にはっぱをかけていた。この女性は犯罪奴隷の子供である。
 この女性達は犯罪奴隷ではない。その為、この娼館から出る事は可能で、客を取り気に入られたら客が借金奴隷として購入可能である。
 そして、購入された金額を奉仕で借金を返していく事で、奴隷からの解放される事になるのだ。

「あんた達は、あたし達の夢のようなものだからね……ここにきて人生を諦めているあたし達とは違い、あんた達は自由を手に入れるんだよ」

「わ、分かりました」

 犯罪奴隷である女性達は、自分のやった行いを反省していた。しかし、やってしまった事を後悔してももう遅く、女性達には自由はもう手に入らない為、女性達はここで生まれた子供達に夢を託していた。



「君は、ここで生まれた女なのか?」

「はい、そうです……今日は、ご指名して頂きありがとうございます」

「君の母親は?」

「去年、亡くなりました。あたしは、何とか成人できて、今月から客を取れるようになったので、これから指名をしていただけるとありがたいです」

「分かった分かった。その代わりサービスしてくれよ」

「ありがとうございます」

 2時間後、その男は満足したように帰っていった。数日後、又その男がこの娼館に遊びに来たのだった。

「いらっしゃいませ」

「支配人、今日も遊びに来たぜ」

「これはこれは、ジンタン様ご贔屓にありがとうございます。今日はどの女の子をご指名いたしますか?」

「この間来たとき指名した女はいるか?」

「はい。あの女がお気に入りですか?」

「ああ!あの女はいいな。献身的にサービスをしてくれてこの間は満足だった」

 支配人は、客の反応を見て満足そうに笑顔になった。その反応を見た支配人はジンタンに提案した。

「ジンタン様、実はあの女はここで生まれた子供なのですよ」

「ああ、この間来たとき、そんな事言っていたかな……」

「それでですね。あの女は犯罪奴隷ではないのです」

「そうだな。それがどうした?」

 ジンタンは、普通に対応していたのだった。支配人は首を傾げて、ジンタンの言葉を待っていたが何も言ってこなかった為、会話が終わってしまったのだった。

 支配人はジンタンが元貴族だった為、その女を買ってくれるのではないかと思ったのだが、そういうつもりはなかったのかと思ったのだ。
 ここ娼館では、女を買ってほしいというのはタブーであり、客の方からいうのが普通である。なぜなら、奴隷として購入するのなら奴隷商店という場所があり、娼館が積極的に販売すると奴隷商から睨まれるからである。
 その為、客の方からお気に入りの女が欲しいというのなら、販売OKと暗黙のルールが出来ていたのだった。

「それはそうと、この間の女はいるのか?だったら早く用意してくれ」

「は、はい。わかりました」

 支配人は、思い違いだと思いそれ以上は待つことなく、ジンタンを部屋まで案内したのだった。

「ジンタン様、ご指名ありがとうございます」

「おう。また指名してやったぞ。お前、名はなんと申す?」

「はい、ジューンといいます」

「そうか。今日もよろしく頼むぞ」

「はい」

 ジンタンは、元貴族であり本来このような場所には来ることはない。わざわざ、娼館に来て女遊びをする必要がないのである。しかし、ジンタンの性格がそうしていた。
 貴族だった窮屈な暮らしが無くなり、その上次男坊である。家督は長男が継げばいいし、自分は気ままに生活が出来ればいいと思っていたからだ。
 その日も、ジンタンはジューンを抱き酒を飲み騒いで帰っていっただけだった。

「ジューン。ジンタン様は何か言っていなかったか?」

「いえ、支配人何も言っておりません」

「そうか?私の見込み違いだったかな?」

 支配人は、ジンタンがジューンの事を物凄く気に入ったと思い、ジューンを購入してくれると思っていたが、そういう訳ではなかったと思いなおした。

「ジューン、お前ももっと愛想よくしないと、ここから出る事は出来ないぞ?」

「はい……申し訳ございません」

「分かったのなら、鏡台を買ってやったんだから笑顔の練習でもしたらどうなんだ」

「は、はい……」

 こうして、娼婦の一日は過ぎていくことになる。



 そして、ジンタンは御付きの人間に、小言を言われていたのだった。

「ジンタン様、いつまでフラフラしているおつもりですか?」

「別に構わんだろ?家は兄貴が継ぐんだし……」

「しかし、お兄様に何かあった時は、ジンタン様が次の後継者なのですよ?」

「兄貴が生きているんだし、今からそんな事を考えてもしょうがないだろ?それに、この国では貴族制度はもうないんだ。そんな昔の制度にとらわれなくともいいだろ?」

「何を言っているのですか?貴族ではないとはいえ、ジンタン様はグルード家の一員なのですよ」

「でもなあ、俺は貴族の制度は窮屈で嫌だったんだ。それが無くなって俺は清々しているんだよ?今更そんな事言われても……」

「それならそれで、もっと何か打ち込めるものを探したり何かないのですか?わたくしは、ジンタン様の将来が心配になります」

「今は、娼館通いに打ち込んでいるな。さっきもジューンという女に撃ちこんで来たしな。あはははは!」

「そういう事を言っているのではありません!」

 御付きのメイドは、ジンタンの言葉に顔を赤らめていたのだった。


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