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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

138話 黒幕

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 ランスロットは、頭を抱え込んで八方塞がりとなっていた。

「団長」

「レームなんだ?」

「そのハンスと言う人間に、もっと詳しく話を聞いてみてはいかがでしょうか?事実、今の段階ではハンスが重要な証言をしてくれています」

「しかし、これ以上の証言が得られるとは思えないだろ?」

 レームも又、ランスロットの意見に同意したのだった。実際の所、どこに向かっていた事すら判らない状態だったので、これ以上話を聞いたところで新たな証言が出てくるとは思えなかった。周りにいた部下達も頭を悩まし、時間だけが無駄に過ぎ去っていたのである。

「あっ!」

「ど、どうした?」

「これを見てください」

 レームが指をさしたのは、ハンスが恋人を追った時の地図だった。色んな証拠を集めて、机に広げていた中にそれはあった。

「それがどうしたのだ?」

「この地図、確かに道順がグネグネしていますが、方向は北に向かっていませんか?」

「た、確かに!」

「町の北に絞れば、今よりは手掛かりがつかめるのではありませんか?他の部隊ではなく、鳳凰騎士団の斥侯部隊なら何らかの異変が?」

「なるほど!レームよく気が付いた」

「ありがとうございます」

「そうとなれば、ブッケンよろしく頼むぞ!」

 ランスロットは、ブッケンに指示を出した。ブッケンは鳳凰騎士団斥侯部隊の団長である。レームの意見を聞き、町の北に方向が絞れれば、女性達の集職先を見つけられずとも、なにかしらの物的証拠を掴めると思ったからだ。

「任せておいてください!ここはレームの為にも、何らかの証拠を絶対掴んできますよ」

「ブッケン、よろしく頼むわよ」

「ああ!任せておけって」

 ブッケンは、一筋の光が見えた様に勢いよく席を立った。そして部下達に指示を出し、町の北方向に飛び出していったのだった。

 ランスロットは、この事を報告書に上げケンジの耳に入れるのだった。



 ブッケン達、斥侯部隊はフリーの町に飛び出していき、自分達が夜の偵察ではなく昼間に偵察業務で違和感を覚えた。普通、自分達の役目は夜の暗闇に身を隠し証拠をつかむことが殆どだった。
 しかし、今回は女性達がどこに向かっているのかを掴むためである。当然町の朝は早い。市場に至っては、陽が昇ると共に大勢の客が押し寄せるほどで周りには人の波で物凄い事になっている。

 その中、人々は自分の店やオーナーの店に出勤していくのである。斥侯部隊はその中を一般人に紛れ、異様な行動をしている人間を見定めていったのだった。

 すると、その中には万引きをする女性や子供達が結構な数で見つかったのだ。ブッケンはその様子を見て、この町もまだまだ平和とは言えないと実感したのだった。

 その盗まれた品物は、大根一本やジャガイモ2、3個と言った所だろう。その者達の容姿はやせ細り、今日食べるものもなかったように見えた。
 すると、ある女性が品物を盗み駆けだして逃げて行ったのを見たが、その女性を追いかけていく男がいたのだ。その男は万引きした女を捕まえる訳でもなく、距離を取っているようにも見える。
 そして、女が路地に隠れたのを見て、男はその女に近づいたのだ。ブッケンは、その様子に身を隠しながら見定めていた。

「おい!」

 その声に万引きした女は、ビクッと身体を強張らせたのだ。

「お前万引きしたよな?俺はこの目ではっきり見たぞ」

「ご、ごめんなさい……」

「俺は、このまま衛兵に通報してもいいんだが……」

「そ、それだけは許してください!私がいなくなっては子供達が……」

「へえ!子供達の為に万引きしたっていうのか?お前旦那は?」

「去年、亡くなりました……」

「だったら、万引きなんかせず働きゃいいだろうが」

「幼い子供がいては職場が決まらないんです……ですが食べていかないと……もう2日何も食べていないんです」

「だからって、万引きはよくねぇよな?」

「そ、それは……」

「じゃあ、この事は黙っておいてやる。しかし、俺の店で働いてくれねえか?」

「ほ、本当ですか?」

「ああ!条件も週一回でもいいぜ」

「それでは、今日量が少なくなるんじゃ……」

「そりゃ金が欲しければ、週5日とか入ってくれたら増えるぜ?俺はお前みたいな親の立場で子供優先に話しただけだよ」

「本当ですか?それなら私働きたいです!」

 男はニヤリと笑ったのだった。ブッケンは、このやり取りでコイツが一連の自殺者に関わりがあるんじゃないのかと根拠はないがそう思ったのだった。

 男と女が、ある隠れ宿のような所にいった。その場所で宿屋を経営するには場所があまりにも悪いと思った場所だった。
 ブッケンは、その女性の後をつけて、その宿屋の屋根裏に身をひそめた。

 すると、そこでは最悪の事が行われていた。弱みを握られた女性達は身体を強要されていたのである。やめたいと言っても、それは許されず万引きをしたと脅され、奴隷に堕ちたら自分の子供とは一生会えなくなると不安にさせられ、無理やり働かされていたのだった。

(な、なんてことだ……)

 するとそこに、人の気配がしたのだ。したと言っても、ブッケンだからこそ気づけたものであり、気配の方向に剣を構えたのだ。
 するとそこには、ブッケンの部下達が数名屋根裏に入って来たのだ。部下達も団長がいた事にビックリしていた。

 部下達も又、不審な男と女性を追ってここまで来ていたのだった。その間も、部屋では犠牲になった女性達が客を取っていた。ブッケンが追ってきた女性は、男性にいいようにされて万引きをした事を後悔したのだった。

『みんないったん出るぞ……この事を団長に報告せねば……』

『『『『『はっ』』』』』

 斥侯部隊は、小声でうなずき兵舎へと帰っていった。そのことは、すぐにランスロットに報告されたのであった。

「なんだと!それは本当か?」

「はい……何とも痛ましい後景でありました」

「わ、わかった。この事は主君に報告する。その後の事もある。ブッケン達は、そういった違法娼館の所在がいくつあるのか引き続き詮索してくれ」

「わ、わかりました!」

 ランスロットは、そう言った違法な場所が個人でやっている訳はないと思い、大元を炙り出そうと思ったのだ。


 

 ケンジは、その報告を受けランスロットと会議を開いていた。

「報告書は確認させてもらった。それで、その後はどうなっている?」

「あれから、ブッケン達に捜索してもらった結果、違法娼館は実に見つけ難い場所にあり、各地に58か所見つけました」

「そんなにも?」

「1個所につき、女達が働かされていたのは30人ほどで、全員で200名近くに上ります。それと、ここ1週間で分かった事は女達の人員の交代が激しい事です」

「どういう事だ?」

「申し訳難いのですが、女達が死んだら新たな犠牲者が増えているのです」

「はっ?」

「つまり、女達はその状況に耐えられず自殺したのか分からないのですが、子供と一緒に行方不明になっているのです。自殺者が見つかったのは一部であり、森に入られては魔物達に襲われたのなら死体は見つかりません」

「ば、バカな‼では見つかった自殺者はその犠牲者の一部ということか?」

「そういうことです。ここ1週間偵察をしているのですが、あまりにも女性達の人員の交代が激しいのです」

「ランスロット、お前はそれが分かっていながら、いまだ偵察だけをしていたというのか?」

「それは!いくら主君でも!」

「す、すまん……お前には、何か考えがあっての事だろう。続きを話してくれ」

 ケンジの言葉に、ランスロットは声を荒げてしまった。普通ならランスロットは奴隷の立場であり、王族のケンジに対して声を荒げる事は絶対にできないが、ケンジとランスロットは信頼と言う絆で結ばれている。
 こういった会議では、言いたいことを進言していて、ケンジが間違っていたら普通に反論していたのだった。

「はい。声を荒げてしまい申し訳ありません」

「いや……俺も悪かった許してくれ」

「それで、話は戻しますが私の見解は、このような事が個人で出来る訳はないと思い、大元を見つけることが最優先と思った次第です」

「それは当然だな。お前の言う事は当たっているだろう」

「それで、その違法娼館では、1週間に一回ある場所に責任者が集まっていると情報を得ました」

「それはどこだ?」

「主君、落ち着いて聞いて下さい。その者の屋敷は元貴族の屋敷でした。元帝国領で貴族をしていたフゴー家の人間です」

「又、元貴族か……」

「その者は、バーシャス=ダンミル=フゴーと言う人間です」

 ケンジは、その報告を受け怒りをあらわにしたのは言うまでもなかった。

 ケンジは、早速作戦会議を開き、一斉逮捕に向けて動き出したのだった。日時は、1週間に一回売り上げを集める日時を調べその日に一斉に突入する計画を立てた。

 しかし、斥侯部隊が入手した違法娼館は58か所だが、集まった責任者は100人だった。つまりまだ見つけていない違法娼館があることになり、まずその場所を特定することからになったのだ。




 そして、フゴー家ではバーシャスが、にやけた顔で大笑いしていたのだった。

「ふははははは!これこそ、濡れ手に粟だな。何の苦労もせず馬鹿な女達がいるおかげで笑いが止まらんよ!」

「旦那様の商才はすばらしいですね。この町には人間がいくらでも集まってきます。国ももうどれほどいるかわからないほどいるので、平民が少しいなくなっても気づきもしません」

「それに、犠牲になっているのはその日も生活のできなかった税金を納めていない人間だ。いなくなっても誰も困らないしな。だったらわしが有効利用してやったほうがいいだろう」

「さすが旦那様、そのとおりです」

「ふははははは!」

 バーシャスは、机に置かれた100ヶ所から集められた金を見てニヤニヤしていたのだった。


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