上 下
589 / 619
第10章 Freedom国、経済の中心へ!

136話 事件性

しおりを挟む
 マリは、自分のやったことに後悔しても、もう遅かったのだった。この世界は弱い物はとことん食い物にされ、そこから逃げ出すことが出来ないのだ。

「おい!マリ。お前、明日もシフトに入れよ」

「えっ?明日はちょっと……」

「なに、口答えしているんだ?」

「ですが、週一回でいいと言ったではありませんか?」

「はぁ?契約書のどこにそんなこと書いてあるんだ?」

「ですが、ここで働くとき子供がいるから週一回でもいいって!」

「証拠はどこにあるんだ?俺はそんな事言った覚えはねえよ」

「そ、そんな……」

「いいな?明日も出勤し客を取れ。わかったな!」

「うううう……」

「返事は!」

「はい……」

 ここで働く女性達は、弱みを握られていた為言う事を聞くしかなかったのだ。 ここは、違法娼館であり犯罪奴隷ではない女が抱けるという事もあり色んな男達が集まって来る。
 男達も、女が弱みを握られていることが分かっているので色んなことをしてくるのである。女達にとって、その2時間は本当に苦痛なものであり、逃げ出したい気持ちではあるが逃げだす事のない無間地獄だった。






 ケンジ達は、保育園の設立を増やす事にしていた。国に要望書として上がってきていたからだ。

「ケンジ様、他の町からも保育園の要望書がきております」

「まあ、待て!そんないっぺんに建てられる訳ないだろう!学校の時もそうだったが、予算がそんなにある訳じゃないんだ」

「そうかもしれませんが、この要望の数は急がないと暴動が起こってもおかしくはありません」

「だからこそ、ちゃんと説明をしないといけないんだろ?国民は国の事をちゃんと見ているもんなんだぞ?」

「えっ……どういう事でしょうか?」

「国は説明責任と言うものがあるんだよ。要は、国は国民から税金を頂いている。それの税金で国を運用しているのを忘れてはいけないんだよ」

「国民から税金を頂いている?どういう事でしょうか?」

「君はまだ、この国の内政に携わるのはまだ最近だったな?」

「はい!私は去年入ったばかりのセイスと申します」

「君達の中では、今までの王族や貴族達の印象で税金は徴収される物と思っているんだろ?」

「はい!」

「だから税金は、貴族達が何に使っているか全然わからなかったし、平民がそれに口出しも出来なかっただろ?」

「それは当然です。口なんか出したら不敬罪でその場で斬られていますよ」

「だが、Freedom国が出来て、その結果平民達はどうした?」

「平民達の殆どは、Freedom国に移住し始めました」

「つまり国対して意見を言いたいが言えなかっただけで、国は見限られて滅んだという事だよ。税金は、湯水のように湧いてくるもんでもないし自分達の金じゃないんだ」

「なるほど……」

「だけど、国民達は税金がいくら集まっていて。どこにどれだけ使っているのか理解が出来ると思うか?」

「それは無理というものです」

「だから、こういう要望があった時は。丁寧に説明する義務があるんだよ。少しでも税金の透明化をはかるという訳だ」

「ですが、その説明で分かってくれるものですか?」

「理解できなければ、理解できるように説明をするんだ。その為の君達なんだよ」

「で、ですが……」

「もし君達が、上司から言われた事だけをやるというなら、君達の仕事は誰でも出来るという事になり、君達は不要と言う事になるよ?」

「そ、そんな!」

「いいかい?君達はもっと自信を持つべきだ。内政に携わる者として、あの倍率を突破して、ここに就職したことをな」

「わ、わかりました」

「うん!それでいい」

 Freedomの内政をやる新人達も又、Freedom国の内情に困惑しながら成長していた。


 そんな中、女性と子供達の自殺者が増えていた。ケンジとしては、こちらの報告書の方が最重要だと思っていた。

「ランスロットはいるか?」

「ただいま呼んできます」

「急ぎでよろしく」

 兵士は、急いでその場から出て行き、ランスロットを呼びに行ったのである。

「主君!何でしょうか?」

「あっ、ランスロット忙しいとこ悪いな。この報告書なんだがいったいどうなっている?」

「そ、それは……私達にもどういう事なのかさっぱりで……生活苦による身投げと……」

「馬鹿な事を!お前はこういう報告書に全部目を通していないのか?」

「どういう事でしょうか?」

「この町で、ここ一ヵ月何組の自殺者が出ていると思うんだ?それも、全員が母と子供だけだぞ?これがタダの身投げと言うのか?」

「それは……ですが、刺されたり首を絞められた跡もないのですよ?事件性など何も……」

「お前は、それだけで事件性が無いと判断して、報告書を上げてきたのか?」

「ですが、それ以上何を調べろと言うのですか?実際、亡骸を鑑定し【親子無理心中】と出ているのですよ」

「お前は今までこの国をいや、王国から守ってきてそんな見解しか持てていないのか?」

「今は王国の事は……」

「いいや、お前の騎士としての経験は王国の時からあるはずだ!もう一度聞くぞ?それらの経験を通して本当に事件性はないのか?」

 ケンジは、ランスロットを睨みつけながらこの身投げ事件を問うた。すると、ランスロットは重い口を開いた。

「確かに、身投げと鑑定では出ましたが、この一か月の事件の量としては裏があると思います……」

「だったら、お前は何故身投げとして、報告書を上げた?」

「そ、それは……」

「いいか、よく覚えておけ。事件の表面だけを見るな!」

「も、申し訳ございません!」

「分かったら、すぐこの事件にを調べ直せ!」

 ランスロットは、ケンジに大声で怒鳴られた。こんな事は滅多にない事で、ケンジの側にいた内政を頑張る新人達は震えあがったのだった。

「ケンジ様が、あんなに怒鳴るなんて珍しいですね」

「ムシュダルクさん……」

「なんで?いきなりあんなに怒鳴ったのですか?何かあるのですか?」

「あいつら、鳳凰騎士団や衛兵達は最近気が抜けているみたいだからな?気合を入れ直したんだよ」

「どういうことでしょうか?」

「あいつ等は今、何から国民を守っている?」

「あっ……」

「この国は大きくなり過ぎた。ヒューマン国は滅亡し、Freedom統一国家となり、他国からの戦争の心配はまずなくなっただろ?」

「た、たしかに……」

「魔物のスタンピードも、去年一回起こったが攻城兵器のおかげであっさりくい止めてしまったからな。あいつ等としては、今ダンジョンへ行き、魔物の間引きが主要戦力となっている」

「その仕事も、重要な仕事だと思いますが?」

「いいや、これからは国内の為にも動いてもらわないといけないんだよ」

「ですが、国内の事件は衛兵達がいるではありませんか?」

「今、この国は大きくなったと言っただろ?」

「はい」

「ってことは、人口が多くなっているという事だ。衛兵だけでは目が届かない所も出てくるだろ?」

「た、確かに……外からの脅威は少なくなってきましたものね」

「まあ、何が起こるかは分からないが、最近の鳳凰騎士団は余裕が見えていたからな少し気合を入れ直したわけだ」

 ケンジは、今回の事で鳳凰騎士団にも、町の中の事にも注意させることにしたのであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

処理中です...