上 下
587 / 619
第10章 Freedom国、経済の中心へ!

134話 就活の苦労

しおりを挟む
 グドンとガルドランは、人知れず処刑された。そして、フリーの町では保育園という事業が発表された。これには旦那を亡くし働きたくとも職場がなかなか見つからず、苦労している未亡人達に喜ばれたのは当然だった。
 保育士達を募集したところ、やはりFreedom国営と言う事もあり40人の募集に対し、集まった人間は4000人以上ととんでもない数が集まったのだ。保育所は10ヶ所とギリギリの予算で建てたが、それでも400人の合格者だった。

 その応募者の中には、マリアンヌもいたが落選してしまった。

 ケンジは、何とかして国民達が楽にならないかと色んなことを考えたが、今度はそれが国民達の貧富の差が大きくなる事に繋がったのだ。

 町が発展すれば、上手く行く人間はどんどん裕福になるが、貧乏から抜け出すことが出来ない人間も数多くいたのである。
 当初、マリアンヌはもし保育士に選ばれなくとも、マイクとマリンを保育所に預けることが出来れば、新しい職場を見つけることが出来ると思っていた。
 しかし、現実はそう甘くはなかったのである。ここはフリーの町で、人口がマリアンヌが今までいたムンシャートの町とは比べ物にならない程いる。その為、子供を預ける事の出来ない母親も続出したのである。

「まさか……マイクたちを預けることが出来ないなんて……」

 マリアンヌは、まさかの出来事に顔を青くしてしまった。こんな事になるとは思いもしなかった。ケンジから当面の生活費を貰ったとはいえ、このままではまた生活が困窮すると焦りがでてきたのだ。

 マリアンヌは、NFGの窓口に何回も相談しに行ったのだが、職場を案内してもらえるのだが子供が幼すぎる為、合格が出来ないでいた。

「母ちゃんおかえり」
「お母さんおかえり」

「ただいま。いい子にしてたかい?」

「うん。今日は近所に行って遊んでた」
「それでね。今日は孤児院の子とお友達になれたんだよ」

「へえ、それはよかったねえ」

「明日も遊ぶ約束をしたんだよ」
「うん!」

 マリアンヌは、マイク達の笑顔に情けない母親だと思い涙が出そうになった。しかし、泣いてばかりもいられないと思い、明日こそは職場を見つけようと思ったのだ。

 それから、3ヶ月が経ったがマリアンヌは今だ職を見つけていなかった。

「ケンジ様から、頂いたお金はまだあるけど、このままでは本当にどうしようなくなるわ……」

 このころになると、マリアンヌもフリーの町の生活に慣れてきていた。しかし、知り合いのいないマリアンヌにとって孤独そのものであり、就職活動しかしていなかった。
 ムンシャートの町なら知り合いはまだいるかもしれないが、3年は追放の身である。帰る事さえできないでいた。

 そして、今日はマリンが熱を出して動けないでいた。

「お母さんごめんね……」

「そんな事気にしないの。マリンは早く元気になる事だけ考えていたらいいのよ」

 マリアンヌはマリンの頭を優しく撫でていた。マリアンヌはもっとお金があったら、熱覚ましの薬を買って上げれるのにと悔やんだ。薬屋で働いていただけあって、癒し草さえあったらと悔やまれたのだ。

 マリアンヌは、このままではだめだと焦っていた。何とかして住み込みのできるお店を見つけて、マリン達が何かあった時すぐに駆けつけることが許される職場を見つけないと、本当にムンシャートの町の時みたいに住む場所も無くなってしまうと思ったのだ。
 
(やはりもう一度ケンジ様に頼ろうか……いやいや、面会などいまさらどうやってできるの?)

 マリアンヌは、あの時何で断ったのか後悔していたのだった。いまさら後悔してもすでに遅かった。

 すると、マリアンヌの住む宿屋の扉がノックされたのだった。

「はい?開いてますよ。」

「失礼します」

 部屋に入ってきたのは、なんとケンジとシスティナだった。

「こ、国王様⁉何でこんなところに?」

「うん、やっぱり気になってな?やっぱりこういう事になっていたか……」

「なんでここに?」

「子供、熱が出ているのか?」

「あっ、はい……二日前から熱が下がらなくて……」

 ケンジは、マリンに※①【キュアディジィーズ】を唱えた。するとマリンの体長は良くなりベットから跳び起きたのだ。

「マリン大丈夫なの?」

「うん!体がすっごく楽になった」

「魔法で治したからもう大丈夫だぞ」

 ケンジは、病気が治る魔法と説明した。マリアンヌはすぐにケンジに頭を下げお礼を言ったのだった。

「重ね重ね本当にありがとうございます」

「それで、生活の方は大丈夫なのか?」

「えっ?」

「本来なら、ご主人様がこうしてくる必要などないのですよ」

「システィナ!」

「ですが、ご主人様は忙しい身であり、わざわざこんな事に来る必要……」

「システィナ、やめるんだ!」

 システィナは、なんでケンジがわざわざ一回断られた相手にここまでする理由が分からなかったのだ。

「国王様!申し訳ありません!国王様の好意を無下にしてしまい、結果このざまです。許されるならもう一度ご慈悲のほどを!」

 マリアンヌは、ケンジにすがるように頼み込んだのだった。しかし、システィナはマリアンヌの言葉を遮るように発言をしたのだった。

「ご主人様、子供も治したのでこのまま帰りましょう!」

「ったくお前は、少し黙っていろと言っているだろ」

「ですが……」

「どうか、子供達を保育園に預からせてもらえるだけでも……」

「マリアンヌさん、今更子供達を保育園にねじ込む事は出来ないよ。それこそ依怙贔屓と言われ、今度はマリアンヌさんの子供達が、保育園でいじめが起きてしまう」

「そ、そんな……」

「だからそうならない様に、まだ皆が分からない前に、俺は貴女を保育園にねじ込みたかったんだ。話は変わるがここにきて、マリアンヌさんは知り合いを作ったりしたか?」

「いえ……NFGの窓口に相談と、この宿屋に帰る往復だけで精いっぱいでした」

「俺は、あの時一人で抱え込むなとも言ったつもりだったんだがな……」

「申し訳ございません……」

「まあいいや。そこの子供二人を連れて、一緒に来てもらえるかい?」

「あの……どこに?」

「本当はこんな事をしちゃいけないんだろうけど、職を案内してあげるよ」

「それって?」

「国営事業はもう無理だぞ?後から入ってくると君が変に思われ、居心地が悪くなってしまうからな?」

「それでは……いったいどこに?」

「まあ、ついて来たらわかるよ」

 ケンジに言われて、マリアンヌ達はついていくしかなかった。ケンジに連れられついた場所は、ここも又大きな屋敷であり門番には、幾人ものの施設兵団の兵士が立っていた。

「あ、貴方は国王陛下様⁉何故こんな場所に?」

「いつもいきなりお邪魔してごめんね。ガンスさんはいる?」

「はい!いらっしゃいますこちらにどうぞ!」

 施設兵団の兵士は緊張で直立不動で、ケンジの応対をしていた。

「あの……ガンスさんってどういうお方なのですか?」

「今は引退して、気の良いおじいちゃんだよ」

 すると、ケンジが来たと聞いて、ガンスが急いで豪快に笑いながらでてきた。

「がははははは!坊主よく来たな!まあ上がれ。上がれ」

「国王様に坊主……どういう人?」

「ガンス様はいつもあんな感じですよ」

「で、でも……」

 ケンジ達は、ガンスに引き連れられ奥の客室に通されたのだった。

「坊主、今日は何か用か?そちらの女性と関係があるのか?」

 ガンスは、もう70は過ぎているのにその覇気はいまだ健在で、本当に引退したのかという程元気である。

「こちらマリアンヌさんと言う女性で、ムンシャートの事件の犠牲者の一人です」

「何⁉あのムンシャートの犠牲者だと?」

「さすが、ガンスさんは知っていましたか?」

「坊主、馬鹿にするでない。現役を退いたと言っても情報は集めておるわ」

「マリアンヌさん、こちらガンスさん。メイガン商会の会長さんだよ」

「えっ⁉メイガン商会の?」

「がはははは!そういう反応をしてくれるのは嬉しいのう!」

「は、初めましてマリアンヌと申します」

「そうかお主があの事件の……それで坊主?この人をワシの所で雇えと言う事か?」

「さすが、ガンスさん話が早い。何とかなりませんか?」

「坊主……何とかなりませんかって、お主の頼みじゃわしは断る事は出来んよ。だが、理由を聞きたいのう?何でその人を?」

「それはですね。今、この国は国民が普通に生活が出来る様にしたいのですが、現実はまだまだです」

「まあ、そうだな。坊主はよく頑張っておるよ。学校の時も驚いたが、今度出来た保育所あんな画期的な物は今までなかったからの」

「しかし、その施設に入れた子供は一部です。入所を希望したのはその何倍ものの数です。反対に言えばそれほどまでに生活が満足に出来ずにいる国民がいるという事です」

「そういうことだな」

「ここにいるマリアンヌさんも、子供を二人も抱えて生活が出来ずにいる1人です」

「ふむ」

「それで、俺は考えていることがあるんですが、それにはガンスさんのような人達の協力です」

「どういう事だ?」

「商会の求人雇用の拡大ですよ」

「はあ?」

「いいですか?この世界は男性は寿命はかなり低いですが、女性は長いです」

「まあ、それは当然だな。わしも運がよく生き残れただけで、運が悪ければ行商中に命を落としていただろうしな」

「つまりです。フリーの町だけでも、あれだけ働きたいが働けない女性がいると言う事です」

「な、なるほど……しかし、子供達がいるという事で足かせになっているだろ?経営者はそこを嫌がっているんじゃないのか?」

「しかし、商会は住み込みを基本やっていないではありませんか?せっかく見つかった職業なら女性達は一生懸命働くと思いますよ?」

「つまり坊主は、商会に住み込み従業員を推奨せよと言っておるのか?」

「そういうことです」

「まあ、いい考えだとは思うが、商会の経営者はまず動かんと思うぞ。やはり、子供が熱を出したりした場合、母親は子供につきっきりになる。それで仕事を休まれては誰かにシワ寄せになるからな。それならば、そういう問題がない人間を雇うのが普通だろ?」

「ガンスさんも年を取られたみたいですね」

「な、なんだと!わしは引退したがまだ健在じゃぞ!」

「まあまあ、話は最後まで聴いて下さいよ。俺は、商会だけに押し付けたりしませんよ」

「どういう事じゃ?」

「つまり、国としては保育園の事業を立ち上げた。ですが、それだけでは手は足りないのです」

「なるほどなあ!そいつなら商会も動こうとするかもな」

「でしょ?」

 マリアンヌとシスティナは、二人の会話がさっぱり分からなかった。ガンスも頭の回転がはやく、ケンジの言いたいことを瞬時に悟り、会話を進めていくからであり、会話が繋がっておらず二人だけが分かっているのである。

「わかった、それならばマリアンヌをうちの商会で雇おう」

 それを聞き、マリアンヌはケンジとガンスに頭を下げたのだった。



 それから、各商会にはこの話がまわり、未亡人の従業員を特別枠で雇うと一部税金が免除されるという保証制度を用いてほしいと通達がFreedom国からでたのである。
 商会なら、独身寮があるのでそこを利用すれば可能であった。フリーの町には、各町の商会の本店が一堂に集まっていたので、これもまた幸いとなった。




 国民達は、国の補償に更にわきあがり、国は更に発展をしていくのだった。しかし、その裏で新たな犯罪が出てくることになる。

 
しおりを挟む
感想 223

あなたにおすすめの小説

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

無能と呼ばれてパーティーを追放!最強に成り上がり人生最高!

本条蒼依
ファンタジー
 主人公クロスは、マスターで聞いた事のない職業だが、Eランクという最低ランクの職業を得た。 そして、差別を受けた田舎を飛び出し、冒険者ギルドに所属しポーターとして生活をしていたが、 同じパーティーメンバーからも疎まれている状況で話は始まる。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...