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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

114話 自供

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 ブックスは、ロイの前に降り立ち、異様な雰囲気に動くことが出来なくなっていた。

「貴様ぁ……俺の部下達に何をやった?」

「はっ、何を言っているんだ?お前達が先に仕掛けてきたんだろ?この状況は立派な不法侵入じゃないか?」

「そうじゃない!お前は、今俺の部下に何をやった?」

「あっ、そういうことね。冥途の土産に説明してやるよ。1人は仲間のトラップで焼死した。最初の一人は俺のスキルだよ」

「はっ⁉スキルだと?天井に何も傷が無かったじゃないか?」

「全部種明かしするわけねえだろ!どちらにせよお前達はここで終わりだ!」

 ロイ達は剣を構えた。ブックス達は、その剣技に恐怖したのである。天井裏に潜んでいたのに、天井には傷一つつけず、部下の一人が血を流し絶命したのだから。

 部下二人は、この状況に耐えることが出来ず、足が震えていたのだ。出来るのならば降伏して命だけは助かりたいとまで思っていた。

「振動次元斬!」

 ロイは、剣を構えていただけで剣技の名前※①【振動次元斬】を言っただけだった。

「「ぎゃああああああああ!」」

 ブックスの後ろで震えていた部下が、血を流してその場に倒れた。

「なっ!何をやった……」

「俺達は雷神だ!光より早く、人間の目にその姿は見えねえよ!」

「な、なんだと……」

 雷神という名はロイの剣技にあった。昔はこれほどの剣技は当然なかったが、それでもロイには光るものがあり、パーティー名をそう名付けたのだ。

「まあ、お前はこれで終わりだよ。お前の雇い主を吐いてもらうからな」

「俺が、そう簡単にやられるとおもうのか?」

 ブックスは、そう怒鳴ってロイにその刃を向けた。ロイは、その見え見えの攻撃に反撃をしようとしたが、横からブンダスが跳びこんだのである。

「ロイ!お前は今回休んでな!俺がカタをつける!」

 ブックスの攻撃を、いとも簡単に盾で防いだのだ。

「なっ⁉俺の攻撃が!」

「ブンダス!ズルいぞ!」

「いつも、お前ばかりいいとこ持っていくんだ!今回ぐらい俺に花を持たせろ!」

「ったく……しょうがねえな。生け捕りにするんだから殺すなよ」

「と、いうわけで、この俺が相手だ!どこからでもかかってきな!」

 ブックスは、この二人のやりとりに頭に血が昇り、猛然とブンダスに襲い掛かった。

「ば、馬鹿にするなあ!」

「四肢分断術!」

 ブンダスは、盾を使い※②【四肢分断術】と叫び、盾を武器としてブックスの両肩の付け根と両足の股関節の部分を、目にもとまらぬ速さで正確に打ち抜いたのである。

「ぐおおおおおおおおお!」

 ブックスは何が起こったのか分からなかった。この盾遣いに飛び込んだ瞬間、反対に両肩と両足に衝撃を受け、部屋の壁に打ち付けられていた。
 そして、立ち上がろうにも、両手両足に力が全く入らなく激痛が走った。

「なんだ?俺の両手と両足が動かん!」

 肩と股関節には激痛が走り、しかしその先は自分の意思では全く動かす事が出来ないのだ。ブックスは壁に打ち付けられ、そのままうつ伏せで倒れたまま全く動けなかった。

「き、貴様ぁ~!いったい何をした!」

「ブンダスの、秘奥義久しぶりに見たぜ!」

「生け捕りにするならこの方がいいだろ?」

「まったくだ!」

 ブンダスはすぐさま、自決されない様にブックスの口を布で縛って、舌を噛み切れない様にしてしまった。

「むううううううう!ううううううううう!」

「何言っているかわからねえよ!諦めて大人しくしな!」

 ブンダス達は、自分では動けなくなったブックスを引きずり部屋から出て行き、衛兵に引き渡そうとした。

「おお!イチカじゃねえか」

「ロイ!首尾はどうでしたか?」

「俺達が失敗する訳ねえだろ?ほらコイツをよろしく頼むぜ」

 ロイは、ブックスを無造作に放り投げた。

「ムガッ!」

「ちょっと、何をするのですか!そんなモノ投げないでください!」

「悪りぃ悪りぃ……いつもの癖でよう」

「ったく……ロイはいつもデリカシーというものがないんだから」

「まあまあ。そんなこと言うなよ。こいつをひっ捕らえるのはお前の仕事じゃないか」

「ロイに、そんな事言われなくとも分かっているわよ!」

 イチカ達衛兵は、ブックスを不法侵入とマーレン氏殺害容疑でその場で逮捕。ブックスの部下達は、全員死亡と国に報告したのだった。



 そして、悪魔の群狼で唯一生き残った人間は、町中を引き回し処刑ときまったのだ。

「ちょっと待てぇ!おかしいじゃねえか。俺はちゃんと証言したはずだ!」

「だから何ですか?」

「証言したのに、なぜ処刑されなきゃならん!」

「あなたは何か勘違いなされているようですね」

「勘違いだと?」

「貴方は、今までどれだけの人を犠牲にしてきましたか?行商している人間を襲い女性をいたぶり、あまつさえ未来ある子供達を奴隷に落として来たと自分で自白したではありませんか。そんな人間どう考えても、処刑になるのは当たり前です!」

「だが、俺を捕らえた冒険者、雷神と言ったか?証言すれば命は助けると!」

「その証拠は?」

「えっ?」

「だから、その証拠はどこにあるのですか?」

「そ、それは……口約束で……」

「口約束であっても、貴方のやった事は証言したからと言って、処刑が覆るような事ではありません!」

「俺を騙しやがったな!」

「あなたは、人を騙したことは無かったというのですか?」

「ぐっ……」

「どちらにしても貴方のやってきたことは、到底許される事ではありません!もし生まれ変われるのなら、来世ではまっとうに生きる事をお勧めします」

「ち、ちくしょおおおおおおお!」

「その者を、引き回しの上張り付けに処しなさい!」

「「「「「「はっ!」」」」」」

 悪魔の群狼の、唯一の生き残りである人間が処刑された事で、完全に悪魔の群狼はこの世からいなくなった。

「さてと、あのブックスは口を割りましたか?」

「もうじきかと思います」

 ブックスは、イチカ達に逮捕されここフリーの町に搬送されてきたのである。そして、拷問に掛けられ口を割らされていたのである。

「ぐわあああああああ!」

「早く吐かぬか!お前はどいつに雇われ、マーレン氏を暗殺しようとしたのだ!」

「ぐうううううう!」

「なぜ、そんなに庇う必要がある。お前はもう終わりなんだぞ?お前の四肢はもう動かん!もし、治そうとすればエリクサーしか治らん!」

「むううううううう!」

「両手は動かせない。そして、もう自分の意思で歩く事も出来ないんだ!わかるか?もし、ここから無事でれても生きていく事は出来ないんだよ」

 苦痛を与えられ続けられていたブックスは、その言葉を聞き心が折れてしまったのだった。

「俺は……ぐっ……バッカンに雇われていた……」

「何故マーレン氏を、暗殺しようとしたのだ?」

「バッカンは、自分の繊維工場に綿花を大量に貯蔵している。だが、マーレンがいる限り何とかして綿花を供給しようとするから、邪魔になったんだ……」



 ブックスは、今まであった事を悔しそうに全部供述したのである。そこにはNFGの支社長や、他の繊維工場の責任者達の名前も全部供述したのだった。

 ケンジは、その報告を受けとうとう談合をする、元貴族やNFGの支社長も加担していた事に驚いたのだった。

「ケンジ様、談合とは何ですか?」

「要は、自分達の品物の最低価格を必要に釣り上げる行為だよ。他の店も巻き込み、品薄にさせ需要と供給のバランスをワザと崩し、値段を釣り上げ私腹を肥やす行為だよ」

 ケンジの話を聞き、ムシュダルクは呆気に取られてしまったのである。まさかそんな方法で楽に儲けようとするとは思いもしなかったからだ。前に、ケンジが貴族がいなくなっても安心できないと言った意味が、ようやくわかった気がしたのだった。

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 この話で出てきたスキル

※①【振動次元斬】
 ヘルナイトのアクティブスキル。剣に風の魔力を纏わせ、目にもとまらぬ速さで
剣を振りぬく事で対象だけを切り裂く技。
 空気を振動させることで、次元を切り裂く様に見える為そう
名付けられた。

※②【四肢分断術】
 セイントロード(タンカーの3次職)のアクティブスキル。盾を武器にして
敵の四肢を打ち神経を分断させる技。この技の恐ろしい所は打ち付けられた
箇所は激痛が走るがその先は一切の感覚が無くなり動けなくなるところ
である。


 
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