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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

112話 想定外の帰還

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 ロイが感じた視線の先には、ブックスの部下数名が町の路地に潜伏して苦虫を噛み潰した顔をしていた。

「何であいつ等が町に戻ってきているんだ?」
「そんなの知るか!」
「とにかくお前はブックスさんに報せるんだ!バッカンには報せるなよ」
「ああ!分かっている」

 諜報部員である一人はスッと姿を消したのである。そして、リーダーであるブックスにマーレンの採取士達が無地帰還した事を報告したのだった。

「な、なんだと!一体どういうことだ!あの盗賊達は悪魔の群狼じゃなかったのか?」

「そのはずでしたが、予想外の事が起きた模様で……」

「予想外とはなんだ?」

「それが……冒険者に救われたみたいなのです」

「馬鹿な!相手はあの悪魔の群狼だぞ?並みの冒険者が太刀打ちできるわけがなかろう!」

「それが、私達は見た事がない冒険者で、装備品も立派であんな装備見たことがありません。多分ミスリルではなく、オリハルコンで作られた感じで……」

 ロイのフルプレートはケンジが作った装備であり、一見オリハルコンに見えるが、オリハルコンではなくヒイロカネとオリハルコンの合金である。
 装備の質で言えば、マードックやシスティナよりも上級装備になり、そこに属性石を吸収させた神鋼魔石をしようしているアーティファクト級の装備である。

 普通なら、こんな装備をした冒険者なら有名になるのだが、一般的に知られていないのはロイ達が奴隷だったことにある。ロイ達はケンジの指示で行動していたからであり、Freedomが統一国家になったおかげで、単独行動が出来るようになったからである。

 雷神が、奴隷になる前はまだまだ駆け出しであり、そんな中奴隷に堕ちたので世間からは認知されていなかった。しかし、ケンジに拾われてから実力をつけ、ケンジの指示だけを遂行していた為、ブックス達が知らないのは当然であり無理もなかった。

「おい!バッカンにはこの事は?」

「報告しておりません!」

「そうか……でかした。こんなことあいつに知られては何を言われるか」

「で、どういたしますか?」

「こんな事になるとは……しょうがない。今夜のマーレンの屋敷に襲撃をかけるしかあるまい……」

「あの冒険者達もいますがどうしますか?」

「マーレン宅に、採取士を送り届けたら帰還してくれるといいんだが……送り届けた冒険者は4人だと言ったな?」

「はい!」

「4人ならば、我が総力を結集すれば十分であろう!すぐに全員を集めろ!マーレン宅に奇襲をかける」

「はっ!」

 ブックス達は、まさかこんなことになるとは思いもしなかった。盗賊達に襲われて無事に帰還するなど、誰が予想するかと思い、舌打ちをしたのだった。

 そして、ブックス達はロイ達がこの国の騎士団である鳳凰騎士団団長より強いとは思ってもおらず、時間が無いことがブックス達の判断を見誤らせた。
 本来、ブックス達はもっと慎重派であるが、採取士達が無事に戻った事で、自分達のミッションが失敗したという焦りと、冒険者の人数が4人だけという事で何とかできると思い込んでしまったのだ。

 本来ならここは、バッカンを見捨てて逃亡することが唯一の手段だったのだ。




 そして、その夜ブックス達は無謀ともいえるミッションを決行することになる。

「あの、冒険者達はどうなった?」

「諜報員の報告では離れの客室に案内されたようです」

「そうか!それは都合がよい!短期決戦でマーレン達を皆殺しにせよ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 ブックス達は一斉に、マーレン氏の屋敷に潜入したのだった。





 ブックス達が侵入を開始する数時間前、ロイ達は作戦会議を開いていた。

「マーレンさんと屋敷にいる人達は用心の為、客室の方でお休みください」

「で、では貴方達は?」

「先ほども説明したように、今夜襲撃があると俺達は踏んでいます。実際、今この時もこの屋敷を監視する人間が多数感じています。だから、私達が貴方達に変わりこっちの母家で警備させていただきます」

「それで、大丈夫なのですか?」

「えぇ!離れにある客室にはパメラの結界を張るつもりですので、悪意のある人間はまず侵入はできないはずです」

「でしたら貴方達も客室の方にいれば、みんな安全に……」

「それだと、証拠がつかめないだろ?まあ、任せておけって!襲ってきた人間を生け捕りにして裏で操っている奴を炙り出してやるさ!」

「本当に大丈夫なのですか?」

 マーレンは心配でしょうがなかった。確かに採取士達を救ってくれた事は理解できてはいるが、今襲ってこようとしているのは闇ギルドのような連中である。
 
「旦那様!私達はこの人たちをずっと見て来ました」

「ミーレ、いきなり大声を出してなんだ?」

「私達は、この方達に救われたのです。この3日間この方達を見てきて信頼出来る方達だと申し上げます!」

「だが、こう言っては失礼だと思うがこの人達は奴隷ではないか?本当に大丈夫なのか?」

「旦那様!何を言っているのですか。この人達の実力は、あの悪魔の群狼を壊滅させているのですよ?それに、本来なら私達を守る必要はないのですよ!」

「そ、それはそうなのだが……」

「ミーレさん、そのぐらいでいいよ。マーレンさんが不安になるのはしょうがない事だよ」

「で、ですが!」

「それに、まだ奴隷に対してのみんなの意識が変わってない事は分かっているしな」

「だったらもっと反論した方が!」

「まあ、そうなんだがな……だが、俺達はマーレンさんの言った言葉にそれほど気にはしていないんだ」

「どういう事でしょうか?」

「奴隷の立場の俺達が、こんな事を言っていいのか分からないが、貴方達を守るのは2の次なんだよ」

「「「「「なっ⁉」」」」」」

「だけど、勘違いして欲しくないが適当に護衛をする訳じゃないからな!相手がどんなやつでも、完璧に護衛を成功させるだけの自信は持っているから安心してほしい」

「それは、いったいどういう事なんですか?」

 マーレン達は、少しイラついたような表情でロイに食って掛かったのだ。

「気に障ったのなら謝罪します。申し訳ありません」

 ロイ達は素直に、マーレン達に謝ったのだった。

「話は戻すが、俺達にとっての行動の原点はこの国の王ケンジ様の為にある。つまり、今回貴方達をケンジ様に会わす事が最重要事項になる。それによってこの町の繊維が不要に足りない事実だ」

「それって……」

「そうだ!この事をケンジ様の耳に入れる事で、裏で暗躍している奴の炙り出しだ!それによって、ケンジ様が理想となさる国創りに俺達は協力することが第一目的であって、その要因の一つである貴方達の護衛が必要だから、俺達はここにいると思ってくれて構わない」

「それは……」

「貴方達の命を守ることで、この町の不正が炙り出せるから、俺達はあなた達の命を命がけで守るという事だ。だから、貴方が俺達を不要と言って追い出し自分の信頼がおける冒険者がいるというのなら、その人間に任せてもらってもいいと言う事だ!」

「でも、私達に……」

「ロイ!そんな言い方しなくても……」

「だが、実際その通りじゃないか!俺達は主の役に立つことが一番だろ?」

「だからって、言い方っていうものがあるじゃない!」

 マーレンは、ロイに謝罪した。今、頼りになるのはロイ達しかいないからだ。このままでは、自分の命の心配が出るのでどうしても守ってもらいたかった。

「ロイさん……先ほどは失礼な事を言って申し訳なかった」

「謝罪はいいですよ。俺達はあなたの為じゃなくケンジ様の為に必ず貴方達を、ケンジ様と面会させますので!」

「ロイが、失礼な態度で申し訳ありません……」

 パメラは空気を読み、パーティーとして謝罪したのである。

「いや……先に、私が失礼な事言ったので申し訳なかった……」

 雷神では、パメラがバランサーを担っていたようで、今までも問題なくやってこれたのである。つまり、悪魔の群狼でリーダーは俺だとロイは言っていたが、実際は色んな面でパメラが雷神を仕切っているのである。

「ったく……ロイはいつも頑ななんだから!」

 パメラは、ロイの頭を強引に下げさせたのだった。

「マーレンさん、安心してください!確かに、私達は主であるケンジ様の事を一番に考えていますが、国を豊かにしようとしているケンジ様は、国民の事を一番に考えています。だから、当然あなたの命を守る事が最重要で行動させていただきます」

「はい……」

「ミーレさん達、採取士の皆さんは私達の実力を見てわかっていただいてます。だから、大船に乗ったつもりで安心して頂けるとありがたいです」

「旦那様!この雷神の皆さんは、あの指名手配のゴンズイーマをも討伐したのですよ」

「なんだと⁉」

「悪魔の群狼の長が、あのゴンズイーマだったんです!」

 それを聞き、マーレンは信じられないといい、その場に放心してしまっていた。

「まあ、俺達に掛ればゴンズイーマなんて小者だけどな!」

「又、あんたはすぐ調子に乗るんだから!」

「痛ぁ~~~!デイニーいきなり頭をどつくなよ。これ以上頭が悪くなったらどうすんだよ!」

「はっ!貴方は何も考えず、敵に猪突猛進で突っ込んでたらいいのよ!頭を使うのはあたし達で十分よ!」

 それを見た、マーレン達は自分達が命を狙われている緊張が少しほぐれて笑顔になった。

「そういう事ですので、マーレンさん達は枕を高くして今日はお休みください!明日の朝には、あなたを狙っている人間は始末いたしますので」

 パメラは、暗殺に来る人間は当たり前のように捕らえられると言い切ったのである。



 そして、その晩マーレン氏の屋敷は長い夜が始まった。


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