上 下
557 / 619
第10章 Freedom国、経済の中心へ!

104話 談合

しおりを挟む
 ケンジとマイの子供が生まれ、名前をタクミと名付けられた。Freedom国はそれから1ヶ月お祭り騒ぎとなり、ダイヤの月は統一元年として更に盛り上がる事となるのだった。

 そして、ホープとホネストの町に学校の建設が始まったのである。これは紙とコルク素材のおかげと言っても良かった。紙は書籍やノート以外にも店の帳簿類色んな所で使用される事になった為、パルプが一時的に足りなくなったほどだった。しかし、棟梁のゲンゴ達が必死にパワースクロールを出してくれたおかげで、120.01以上になった伐採士が増えたのである。

 紙の製造方法は、Freedom特有の物で真似することができなかったのだ。これには伐採士が、大勢いるドワーフ国も真似できないことであった。

「いったい、Freedom国はどれだけ技術を持っているのだ?」

「偵察隊の報告では、伐採をしているだけだと言って、詳細が分からないそうです」

「どういう事なんだ?」

「なんでも高スキルの伐採士が、何かをしているのは確実なのですが、こちらも同じようにしているのですが、皆目見当がつかないそうです」

「鑑定士はなんと?」

「何回鑑定しても、木材を使って製作した紙としか出ないそうです……」

「くっそぉ……うちの国でも紙を製作できれば、Freedomから購入しなくてもいいのに……」

 一方、エルフの国でも同じような事が起きていた。

「どうだ?上手くいきそうか?」

「ダメです……木材を使ってもこのような紙にはなりません……」

「森の民と言われたエルフ族の知らない技術を、どうしてFreedomが持っているのだ?」

「それは何とも……」

「まさか、エルフの国を出た誰かが技術を?」

「そんな訳絶対ない!それに、この材質はなんだ?こんな軽くて弾力のある木材、私達は知らない!」

「なんでも、Freedom国ではコルク材と呼んでいますね」

「これも、木材から採取できると鑑定で出たんだよな?」

「はい。そのように聞いておりますが、こんな材質の木材は聞いた事も見たこともありません!」

「ひょっとして、高レベルダンジョンから取れる物なのか?」

「それがさっぱりわからないのです……」

「引き続きFreedomの動向を探れ!」

「「「「はっ!」」」」

 他国は、Freedom国の商品の秘密を探る事で奮闘していた。しかし、スキルの最高値が120.00と思い込んでいる地点でどうしようもなかったのだ。
 ケンジの奴隷達も解放されたからと言って、ケンジのは恩がある為、自主的にFreedomの秘密をしゃべる者は皆無だった。
 それに、解放された奴隷達は殆どの者がそのまま、ケンジの所で働き続ける事を選んでいたので、滅多な事では技術が流出することはなかったのだ。以前の、仕事をしたいと言った者達も又、決して口にはせず、自分の仕事をこなす毎日であった。

 Freedomの技術が他国を圧倒している中、Freedom内では新たな問題がでてきていた。
 元貴族達の問題である。貴族と言う立場は諦め、商人として成りあがろうと決めた元貴族達は、勘違いした行動に走ったのである。

「ギルドマスター!これはいったい?」

「これはいったいどういう事なのだ?」

「我々ではどうなっているのか……」

「なんで、繊維がこんなに値が高くなっているんだ?」

「なぜだか全然わかりません……繊維を扱う工場の説明では資材不足ということです」

「資材不足とはどういう事だ?」

 町の周辺には綿花が自生する場所はいくつかあるが、それだけでは当然賄うことが出来る訳はなく、魔物(蜘蛛やワーム系)を討伐し、糸袋という素材を買ったりするのが普通である。

 だが、こういう素材の数は栽培がその数を支えているのである。この町、最大の規模を誇るバッカン氏の工場ですら、数が揃えられないと申告してきたのである。

「そんなバカな‼そんないきなり数が足りなくなるものなのか?」

「それが、この町の人口は急激に成長しているみたいです」

「なぜだ?何が今までと違うのだ?」

「そんなの当り前ですよ!Freedom国の跡取りが生まれたのですよ?Freedom国は、この先滅びる事は考えられにくく盤石となったのも当たり前で、これから大陸中から人が集まってきてもおかしくありません!」

「な、なるほど……」

「だから、この町も人口が急激に増えたのだと思います」

「それじゃ、バッカン氏の繊維工場だけでなく他の繊維工場はどうなんだ?」

「そ、それが他の工場も栽培が上手く行かなかったと言って、バッカン氏と同じような値段を提示してきているのです」

「そんなバカなことがあるのか?」

「ただ、マーレン氏の工場だけは協力的ですが、やはり多少の値上げはしょうがなく、ここ一店舗だけでは在庫が揃いそうにありません」

「どうしたらいいのだ……バッカン氏に訪問をして協力要請をしにいくぞ」

「わかりました!」

 NFGの職員達を引き連れ、ギルドマスターはこの町最大の繊維問屋に赴いたのだった。しかし、店員からバッカン氏は今回の緊急事態の為、在庫をかき集めているとのことだった。

「申し訳ございません……主人は今回の事に胸を痛めて、他の町にある知り合いの綿花の栽培業者に協力をお願いしに行きました」

「では、いつおもどりになるのだ?」

「いつになるかは、私共ではちょっとわかりかねます」

「そ、そうか……いないのでは、ここにいてもしょうがないな……」

「本当に申し訳ございません……」

「では、バッカン氏が帰って来たらギルドに至急連絡を頂きたい」

「承知いたしました」



「ギルドマスター、どうするおつもりですか?」

「町中の繊維工場をまわるしかあるまい……」

 ギルドマスターと職員達は、焦りながらバッカン氏の店を後にした。その様子を見て、対応した店員はニヤニヤしながら、店の奥に戻っていくのであった。

 その店員は、奥の部屋の扉をノックして部屋の中に入ると、そこには繊維問屋の店をやっている商人たちが一堂に集まっていた。

「旦那様、今NFGのギルドマスター達が帰っていきましたよ」

「そうか、どんな様子だった?」

「布の在庫が揃いそうになくて、焦っている様子でしたよ」

「そうかそうか!それは愉快だ。ガハハハ!」

「しかし、バッカン殿……本当に大丈夫なのですか?」

「町中の在庫が無いとなれば、商品が高くなるのは世の常ではないか?心配はいらんよ」

「お主達も、ワシの言う事を聞かなければ、どうなるかわかっておるだろ?」

「「「「「そ、それは……」」」」」

「わしの言う事を聞かねば、自分の栽培畑が不作になるのはわかるであろう?」

「「「「は、はい……」」」」」

「まったく馬鹿なやつよ。あ奴だけはワシの言う事を聞かなかったから、自分の首を絞めることになったのだ」

「「「「「……」」」」」

 バッカンは在庫を隠し、他の店の店主を脅し自分の言いなりにさせたのである。本当は在庫はうなるように蓄えており、近場に自生する綿花を狩りつくし、当分の間採取依頼をできないようにしたのである。
 そして、町での栽培畑では不作としたのである。その時に、バッカンの言いなりにならなかったのが、唯一の商人であるマーレンだった。

 マーレンはバッカンの怒りを買い、自分の所有する栽培畑をめちゃくちゃにされてしまい、今の在庫が最後の綿花だったのである。
 しかし、マーレンはなんとかやりくりをして、在庫の糸を今までより多少多めの値段で放出していたのである。

「マーレンの在庫はもうすぐ切れるはずだ。そうなればワシらの持っている在庫の綿花は、通常の3倍の値でも十分に売れるはずだ!」

「ですが、バッカン殿?NFGは、その値段で本当に買ってくれるのですか?」

「ああ!その為に種まきはしておるよ。あのギルドマスターはもう、ワシの言う事には逆らえんよ!」

 バッカンは、食事会を何回も誘い、結局はその行為に気分がよくなったギルドマスターは、調子に乗ってしまっていた。
 酒の席だったこともあり、気分がよくなったギルドマスターは、賄賂を何回か受け取っていたのである。その額は小遣い程度の物だったが、誘惑に負けてしまっていたのである。

 その為、バッカンは自分の勢力を急激に拡大し、他の店に影響が出るほど短期間で成りあがったのである。

 この事で分かるだろうが、バッカンのやっていることは談合であった。町の商品を出し惜しみ、他の店舗と協力し品物の最低価格を釣り上げたのである。



 一方、マーレンはこのままでは繊維が高騰し不味い状態になると考え、在庫が無くなる前に何とかして、自生している綿花を探しださなければと思って、部下に綿花を探し出してほしいと、指示を出したのである。マーレンの部下は、お抱えの採取士と護衛の冒険者を連れて、急いで町を出発したのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依
ファンタジー
主人公である小野田博俊(おのだひろとし)は女神ミーレヌのせいで死んでしまい、 異世界であるミストラルに転移してもらう。  そこには研磨という職業は無く、博俊は研磨でお店を開き、魔法と掛け合わせて 楽しく儲けて生活する物語。  研磨で新しい効果を生み出し、時には笑い時には悲しみありの長編小説。に、 したいとおもいます(*^-^*)

錆びた剣(鈴木さん)と少年

へたまろ
ファンタジー
鈴木は気が付いたら剣だった。 誰にも気づかれず何十年……いや、何百年土の中に。 そこに、偶然通りかかった不運な少年ニコに拾われて、異世界で諸国漫遊の旅に。 剣になった鈴木が、気弱なニコに憑依してあれこれする話です。 そして、鈴木はなんと! 斬った相手の血からスキルを習得する魔剣だった。 チートキタコレ! いや、錆びた鉄のような剣ですが ちょっとアレな性格で、愉快な鈴木。 不幸な生い立ちで、対人恐怖症発症中のニコ。 凸凹コンビの珍道中。 お楽しみください。

元銀行員の俺が異世界で経営コンサルタントに転職しました

きゅちゃん
ファンタジー
元エリート (?)銀行員の高山左近が異世界に転生し、コンサルタントとしてがんばるお話です。武器屋の経営を改善したり、王国軍の人事制度を改定していったりして、異世界でビジネススキルを磨きつつ、まったり立身出世していく予定です。 元エリートではないものの銀行員、現小売で働く意識高い系の筆者が実体験や付け焼き刃の知識を元に書いていますので、ツッコミどころが多々あるかもしれません。 もしかしたらひょっとすると仕事で役に立つかもしれない…そんな気軽な気持ちで読んで頂ければと思います。

虐待して監禁してくるクソ親がいるので、仮想現実に逃げちゃいます!

学生作家志望
ファンタジー
かつて、主人公の父親は国王だったが、謎の失踪を遂げ、現在は主人公の母親が女王となってこの国の政治を任されている 表向きは優しく美しい女王、カンナ・サンダーランド。 裏では兄を贔屓、弟の主人公を城に監禁して虐待しまくるクソ親。 子供のころから当たり前になっていた生活に、14歳にもなって飽き飽きしてきた、主人公、グラハム・サンダーランドは、いつもの通り城の掃除を任されて父親の書斎にやってくる。 そこで、録音機が勝手に鳴る、物が勝手に落ちる、などの謎の現象が起こる そんな謎の現象を無視して部屋を出て行こうとすると、突然、いかにも壊れてそうな機械が音を出しながら動き始める 瞬間、周りが青に染まり、そこを白い閃光が駆け抜けていく────── 目が覚めると...そこは俺の知っているクルパドックではなく、まさかのゲーム世界!? 現実世界で生きる意味を無くしたグラハムは仮想現実にいるという父親と、愛を求めて、仲間と共に戦う物語。 重複投稿をしています! この物語に登場する特殊な言葉 オーガニゼーション 組織、ギルドのこと 鳥の羽 魔法の杖のこと

転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。 だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。 一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

転生済み最上級魔導士はギルドの事務職にジョブチェンジして平穏な日々を送りたい!

紫波すい
ファンタジー
「生き残るつもりがないのに『行ってきます』なんて、俺は言わない」  16歳の少年、クロニア・アルテドットは前世の記憶を持つ『転生者』。特異な素質を持つ、歴史の主役候補生だ。  しかしクロニアは自分も含め、親しい人はみんな揃って穏やかに長生きしたい!  そこで事務員としての採用希望でギルドへの入会試験を受けたのだが、いくつかの手違い&落ちたくないあまり全力で挑んでしまったことで、炎を操る魔導士の中で最上級の称号『紅炎』を授かることに。  当然のごとく戦闘員として配置されることになったけれど、生存最優先でどうにかして事務員になりたい……!  勝気なパーフェクト美少女の幼馴染や、弱気ながら夢のために奮闘する兎の獣人娘、謎に包まれた女好きの狙撃手らと、ギルドでの毎日を送りながら、生きることにこだわっていく物語。  試行錯誤しながらの執筆。  健康第一マイペース。  第3章「明日を願う『白氷』の絶唱」  2023/1/21……完結  第4章「悠久を渡る『黒虚』の暇つぶし」  2023/1/31……第一話公開 ※2022/12/24(土)HOT男性向けランキングにおいて、最高15位をいただきました。お読みいただいた皆様、ありがとうございます! ※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも掲載しています。

処理中です...