異世界転移で生産と魔法チートで誰にも縛られず自由に暮らします!

本条蒼依

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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

103話 誕生

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 紙の出現で、羊皮紙の需要が無くなると思ったがなくなる事は無かった。それは、この世界に魔法があるからである。
 冒険者には、魔法スクロールを常備する必要性があり、スクロールを使ったダイレクトスペルの存在である。本来魔法とは、その個人にその属性に適正があるかどうかで、その魔法が使用できるか決まる。
 つまり、ファイヤーボールが使用したくとも、その人物に火属性の適性が無い場合、どんなに頑張っても使用はできない。
 しかし、スクロールをダイレクトスペルすることで、一回だけだが威力の強い魔法が使用することが出来る。そして、そのスクロールは羊皮紙で製作しないといけないのだ。このスクロールは魔物の皮なら何でも構わないが、ゴブリンなど弱い魔物ではなく、少なくともオーク以上の皮が必要になる。

「本当にこの紙はたいしたものだ」
「えぇ!今まで書籍にも羊皮紙を使っていましたが、勿体なかったですものね」
「まあ、書籍に使う羊皮紙は動物の皮で魔物の皮はつかってなかったですけどね」
「でも、これを見てくれよ。紙を使う事で同じ本なのにこんなに薄くできたよ」

 このような感じで、書籍を作る工場では好評だった。また国民にとっても書籍が今までより安価になりと書籍という存在が身近になった事だ。ケンジは、書籍が身近になった事で、国民達の文字の読み書きの大事さが伝わってくれたならと思っていた。




 そんな中、やはりギルド支部では、元貴族達の賄賂が頻繁に起きていた。ギルドの販売網はそれほど大きい存在である。
 元貴族達は、自分の店を持ち始めていた。誰かの店で働くという行為が、元貴族のプライドが邪魔をしたのが原因だった。

 元貴族は、素材の店を開店し出したのである。商会は色んなものを扱い、デパートのような存在である。しかし、それとは違い元貴族達は木材や繊維(糸)や鉱物等素材の店を取り扱おうとしたのである。
 これは、国に絶対必要なもので、ギルドだけでは賄えない物だからである。個人問屋が町には絶対存在しているのである。
 そして、その素材が足り無い場合、ギルドがその店と取引する事になる。その問屋には、冒険者ではない腕の立つ者専属に雇った冒険者や元冒険者がいて、その問屋があつかう素材の採取をしているのである。

「なあ、ギルドマスターよ。わしのとこと優先とは言わないから取引をしてくれよ」

「ちょっと待ってくれ!そんな事をしたら、わしがFreedomから責任を問われることになる」

「それは、賄賂、金を受け取るからじゃ……わしらの関係は、もっと違う事を取引しようじゃないか?」

「しかし、バッカン殿……貴方の個人店を贔屓するわけには……」

「これは贔屓ではない。わしが頑張って貴方にプレゼンをして、信用が置ける商品として取引をしたものじゃ」

「それはどういう事ですか?金も受け取らないのに、貴方の店の商品を多く買うという事だけでは、ワシは納得できないですよ?」

「そうではない。わしはこうしてギルドマスターに接待をしよう!月に何回か食事に誘う様にして、その時交渉を行うのじゃ」

「それは……」

「金ではない物をお主にご馳走し、貴方の権限で他のとこより少しだけ、多めにワシのとこの商品を買って貰いたいのじゃ。それなら賄賂とは言えんじゃろ?」

「たしかに!これはお付き合いの一環の延長としての取引と言う事ですね」

「そうじゃ!他のとこの商品を買わないとは言ってないじゃろ?」

「なるほど!自分は金を受け取らず、美味しい物をご馳走してもらい、貴方の店の商品を少し多めに買えばいいと言う事ですね?」

「そういう事じゃ!」

 このギルドマスターの決断がまたもや、元貴族達の権力を大きくする事になる。貴族や平民と言う権力は無くなったが、今度は財力と言う権力が生まれようとしていたのである。

「がはははは!これで儂の店は大きくなるはずじゃ」

「旦那様?ギルドマスターとの交渉は上手く行ったのですか?」

「ああ!ばっちりじゃ。金ではなく、食事会と言う安価で取引を成功したわい!」

「それはようございました」

「売り上げが上がったから、もう10組ほど採取できる人間を雇え!」

「承知いたしました」

 このように、バッカンの繊維商店は着実に売り上げを伸ばし、店を大きくしていくのだった。 そして、店が大きくなると町の服飾店が布や皮を、こぞって購入していく事になるのである。
 大きな店は、それだけ売り上げがあると信用があるとみなされ、服飾店は布の調達に困らなくなる為、町では代表とされる繊維問屋となるのである。

「この町には、バッカン繊維商店があって良かったわ」
「ほんとうにそうよね」
「私達服飾店にとってホントありがたい存在よね」

 この町では、バッカンは確実に財力を貯めていた。



 そして、Freedomでは新たな命の誕生が迫っていた。ケンジとマイの子供の誕生である。
 その日、マイの陣痛が始まったのである。フリーの町では後継ぎの誕生に、今か今かと湧き上がっていたのはいうまでもなく、Freedom店では失敗が相次いでいた。

「姉ちゃん!ヒールポーションじゃなくて、俺が頼んだのはキュアポーションだよ」

「あ!す、すいません……すぐに取り替えます」

「なあ、失敗するのは無理もねえがもっと落ち着けよ」

「も、申し訳ありません……」

「俺も今朝からそわそわしっぱなしなんだよな。この国の後継ぎが生まれるんだ。慌てるのもしょうがないが、もっと落ち着けよ」

「はい!ありがとうございます。マゼランさんも、落ち着いて冒険をしてくださいね」

「ああ!分かっているよ」

「すぐにポーションを取り換えますので少々お待ちください」

「ああ!よろしく頼む」

 日頃、失敗などまずしない従業員たちは、冒険者達からフォローしてもらって業務をつづけたのである。




 そして、屋敷の中ではケンジが、大広間でウロウロしていたのだった。

「ケンジ様、もうちょっと落ち着いて下さいよ」

「だってよ……」

「出産の時、男は何にも役に立たないのだから、もっとどっしり構えるものですよ」

「そんな事言っても、心配なものは心配なんだよ」

「ケンジ様が、心配してもどうしようもありません!マイ様は今、新しい命を誕生させる為がんばっているのです」

「だから、俺が側で立ち会おうと!」

「馬鹿な事を!出産の場に、男が部屋に入って何をしよというのですか?」

 地球では、父親が立ち会うという事は普通だが、ここガイアースでは男が出産の場に立ち会うなど考えられない事だった。

「だけど……」

「本当に、いつもは頼りになるのに何で今日はこんなにも……」

 シャイアは、ケンジの肩を持ってソファーに強引に座らせたのだった。その横には、ギルやシスティナ達が笑っていたのだった。

「ご主人様?」

「システィナ……」

「ご子息が、ご誕生されるまでまだまだ時間がかかるので、そんな気を張っていたら身が持ちませんよ」
「そうですよ!主がこの国の王です。もっとどっしり構えていないと!それに産室には、オリヴィアとセイラも、ついているのですから心配はいりませんよ」

 この世界には魔法がある為、陣痛の痛みはだいぶんと和らげることができるのだ。ヒーラーや聖職者がつき、ヒールや※①【ダメージレジスト】を唱えるからである。
 ガイアースでは、魔法による出産が常識なのだ。ギルが言う様に、世の中でも最強のヒーラーであるオリヴィアや最強の聖職者のセイラがいる為、ケンジがしている心配は意味が無いのである。

「んん~~~~~!」

「マイ様、頑張ってください!もうすぐですよ」

「頭が出てきました!」

「んっ、はあはあはあ」

「もう一回力んでください!」

「んん~~~~~~!」

「はい!その調子です。頑張ってください」

「はあはあはあ」

「ああ……へっこんじゃった。もう一回力んで!」

 出産は、女達の戦場だった。マイが疲れれば、セイラとオリビアが※②【リフレッシュ】などの魔法を掛けて癒す作業が続き、MPが切れそうになれば※③【リストアポーション】が補充されるのである。



 そして、10時間後部屋から、赤ん坊の泣き声が聞こえてきたのだった。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

 その鳴き声が聞こえてきた時、ケンジは気が抜けた様にソファーに脱力して座ったのだった。

「ケンジ様、おめでとうございます!」
「「主(ご主人様!)おめでとうございます!」」

 ケンジが、顔を上げたときギル達だけでなく、周りにはセバスたちもいたのだった。そして、大広間は奴隷達の歓声があがった。

 それと同時に、町の教会の鐘が一斉に鳴り響いたのだ。すると、町中から歓声で地響きがしたような感じがした。
 そして、産室からオリヴィアとセイラが笑顔で出てきたのであった。

「「ご主人様!おめでとうございます!お子さんは男の子ですよ!」」

 それを聞いたギル達は、さらに盛り上がったのである。そして、教会の鐘が落ち着き、町中の国民達も今か今かと次の鐘の音を待っていた。

「男か女かどっちだ?」
「ちょっと貴方落ち着いてよ!」
「そうよ、まだ鳴ってないよ!」

 国の御子息が誕生した場合、教会の鐘の音が鳴るのは常識であった。そして、男なら鐘の音が一回女なら2回なるのが通例なのである。

 町中に鐘の音が一回鳴り響いたのだった。

 ゴ~~~~~~~~ン!

「あ!鐘の音だ!」
「どうだ?もう一回なるか?」

 国民は、鐘の音がもう一回なるかどうか静かに待った。

「ならない……」
「って事は、男の子だ!」
「本当にもうならない?」

 その瞬間、町中からわーっと歓声が上がったのだった。

「これでこの国も安泰だ!」
「ホント!うれしいことね」
「聞いたか今の鐘?」
「ああ!聞いた聞いた!」
「明日から一か月お祭りだな!」
「いいや一年お祭り騒ぎがしてえぜ!」

 町の外は夜だというのに、昼間のような賑わいだった。ギルドの酒場では鐘の音が響いたときから、お祭り騒ぎのようになっていた。

*-----*-----*-----*

 この話で出てきた魔法・アイテム一覧

※①【ダメージレジスト】
神聖魔法      1階位
消費MP      5
詠唱速度      0.5秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間      10分
効果対象      一人
効果範囲      なし
必要秘薬      なし
備考欄
 聖属性魔法で初級回復魔法でHPの回復ではなく、痛みを和らげる
魔法である。この魔法を唱えると痛みが10分和らぐ
神父シスター職業レベル10信仰心15.00から使用可能

※②【リフレッシュ】
聖属性魔法     1階位
消費MP      5
詠唱速度      0.5秒(詠唱スキルが無い場合)
効果時間      一瞬
効果対象      一人
効果範囲      なし
必要秘薬      紫水晶1個
備考欄
 聖属性魔法で初級回復魔法で気を失いづらくなる魔法である。
魔法使い職業レベル10魔法スキル15.00から使用可能

【リストアポーション】
 使用する事でMPが10~20回復するポーション。
粗悪品・ノーマル・高品質・最高品質があり品質により、+5回復効果が上がる。
粗悪品は-5下がる。


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