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第10章 Freedom国、経済の中心へ!
100話 元貴族の判決
しおりを挟む今回の、学校事業はケンジの見通しが完全に足りなかったのだった。ケンジは、元貴族達は絶対にギルドマスターと手を組み、私腹を肥やすと思い込んでいたからだ。
「今回は、完全に俺の思い上がりが失態だな……」
「何を言っておられるのですか?」
「いや……何でもない」
ケンジは、各地に出来上がっている学校の実態を、調べるようにと指示を出そうとしたのである。すると、ムシュダルクは、その行動を否定したのである。
「ちょっとお待ちください!」
「なんだ?なんで止める?」
「なぜ?Freedomが、私立の学校に入学した者の為に動くのですか?」
「そりゃ、当然Freedom国の国民の為だからだよ」
「今はそれより、孤児院の予算の方を考えないと大変な事に!」
「それも当然かんがえるよ。だが、今の私立の学校の実態をつかむ必要がある!じゃないと、この先何が起こるのか対策が立てられないだろ?」
「それはそうですが……では、孤児院の方は?」
「それは俺の私的財産で賄う」
「馬鹿な事を言わないでください!いくらかかると思っているのですか?」
「ずっとという訳じゃないから安心しろ!期間は半年で、それまでに新しい事を成功させる。その後は、その新しい物で孤児院の予算を賄うように運用させるから問題は無いだろ?」
「ですが、それまでの半年私的財産だなんて……」
「大丈夫だって!解放させた奴隷達の分が浮いているんだ。それまでに何とかすれば……」
「何とかできなかった場合どうするのですか?今回は、完全に後手に回っている感じがいたします」
「だから、ムシュダルクさんは諦めろというのか?」
「そ、それは……」
「確かに、詐欺にあった親達の気持ちも分からんでもないが、それに関してFreedomが動くつもりはないよ。だが、孤児院は国の補助金があって、初めて運営できるものだろ?」
「はい……」
「今回、Freedomが動く事は、孤児院の予算と学校の実態の把握。そして、今回詐欺をした商人と元貴族の逮捕!この3つだ」
「しかし、逮捕と言っても誰が被害届を?」
「何を言っているんだ。いるだろうが!」
「しかし、被害者の親は奴隷に落とされているのでは?」
「奴隷に、落とされていない家族が何組かいるだろ?それに、今回の件は最初から、学校を計画倒産させられた節があるだろ?学校の建築に携わった生産者達に証言を求めるんだよ」
「しかし、ギルドを通さず勝手に取引したのだから、自業自得と思うのですが?」
「いやいや……Freedomが生産者達を救う訳じゃないだろ?ただ証言を取り、犯罪の証拠を確実なものにする協力要請だよ。それによって逮捕された商人達に損害賠償させればいいんだよ」
「な、なるほど……」
「いいかい?なんでも、国が補償するわけじゃないんだ!今回も私立の学校に入学させるのは、その個人の自己責任と言っていただろ?」
「は、はい……」
「実際用心をしている家族もいるだろ?国営の学校が、開校するのを待っている国民達もいるんだ」
「わ、わかりました」
今回の事で、国から指導が入った私立の学校があったのは言うまでもなかった。商人達は、当然の如くFreedom国の指導に反論したが、そのまま続けて行けば、ラトーラの町の学校のようになった場合、詐欺容疑で逮捕される事を説明したのである。
そして、商人のバックにいる元貴族の人間には、アイデア料と称する賄賂は、意図的に国民を奴隷に落とす行為として軒並み逮捕されたのである。
これ対して、元貴族達の反発は凄いことになった。実際、国民達を奴隷に落としていなかったからである。
「何故、ワシが逮捕されなくてはならない!」
「あなたには詐欺容疑の疑いがあるからです!」
「馬鹿な!儂らはまだ何も!」
「今からやろうとしていたのですよね?証拠はこのように上がっています」
「ぐっ!」
商人達は計画書を提出して、元貴族達の責任としたのだった。今まで、しっぽ切りを当たり前のようにしていた元貴族が裏切られる結果となったのである。
今までは、貴族の権力が当たり前にあった世の中だが、今は貴族の権力はなく、同じ立場の人間であることが貴族達の誤算だった。
この計画書で、元貴族達の罪は十分にわかる物であるからだ。元貴族達の罪は、故意に他人を陥れる物で奴隷に落とす行為として、禁固刑に処された。
そして、財産の没収である。これにより、出所してから立ち直るのに、相当の努力しないといけなくなったのである。
そして、商人達には計画書を見直しを国から要求されたのである。商人達はこれでは逮捕されるのがわかり、元貴族達のバックを失った事で、国からの要求を素直に飲むしかなかった。
そして、国から国民達に再度忠告が発せられたのである。国民達の意識改革であり、今回学校事業でラトーラの町の事が発表され、各町の私立の学校に国から指導が入った事も発表されたのだ。
この発表に、国民達は再度子供達の教育の事を考えこむことになった。
「なあ?お前のとこはどうするんだ?」
「私達の所は、残念だが退学させる事に決めたよ……」
「えっ?」
「ああ……今までにかかった金は、高い授業料として諦める事にした」
「そうか……しかし、国からこの町の学校にも指導が入ったらしいぞ?」
「確かにそうかもしれんが、最初は俺達を嵌めようとしていたって事だろ?」
「そうだよな……」
「学校経営者が変わるのならともかくもう信じられないし、そんな人間に俺達の大事な娘を預ける事はできないよ」
こういった話し合いが、国民達の間であって学校をやめる人間が大量に出ることになった。
そして、ラトーラの町を逃げた商人を、エルフの国に脱出するところを、捕らえることに成功したのだった。
「貴様は、他国に出ることを許す事はできない!」
「何故ですか?私達はエルフの国に行商を……」
「お主は、ラトーラの町で詐欺を働いたと容疑が固まっている」
「なっ⁉」
「町から出る時用心の為に、転移マットを使わなかったのが裏目に出たみたいだな」
商人は家族と共に行商を装い、転移マットを使わず街道を旅して行方をくらまし、国外へと逃亡しようとしたのだった。その為、町から町への時間がかかり、その間に包囲を固められたのである。
「貴方達、容疑者の家族には問題ないが一緒についてきてもらおう!」
商人の妻と3人の子供達は、衛兵の言う通りに従うしかなかった。3人の子供達は何が起こったのか分からず不安そうな顔をして、自分の父親を見つめていた。
「父ちゃんをどうするつもりだ‼」
「君達には悪いが、君のお父さんは悪い事をしたんだ。だから、その罰を受けねばならんのだよ」
衛兵は、子供達に丁寧にかつ、怖がらないように説明をしたのである。
「つらいとは思うが、今からはお主達がお母さんを守ってやってくれ!」
「父ちゃん……本当に悪い事をしたのか?」
「……」
商人の男は、自分の息子に見つめられて、なんと答えたらいいのか解らず、下を向いて黙ったまま罪悪感に包まれていた。
「父ちゃん!」
商人は、自分の息子に何も答えることが出来ずに、兵士に引きずられていくのであった。
「馬鹿が……自分の息子に、そんな姿を見せやがって恥じないのか」
「……」
兵士達はなんともやるせない気持ちになり、商人の子供を見つめるしかなかった。商人は、タダ俯いて何も言わず涙を流していたのである。この商人が捕まった事で、グンダスの証拠も挙がりグンダスも逮捕される事になった。
そして、グンダスは学校事業で得た金を元手に、ラトーラ支部のギルドマスターと繋がりを持とうとしていたのである。
ギルドマスターに、この町の材木を取引に使う商会の斡旋をしていたのであった。グンダスは、ある材木工場に出向き、ギルドと優先的に取引をしてやると、間に立つから売り上げの一部をよこせと言った。
グンダスは、お抱えの材木工場がありその工場と優先的に取引をして欲しいと、ギルドマスターに金を握らせたのだった。
ギルドマスターは、グンダスからの賄賂に目がくらみ、材木を優先的に買い取ることを約束。この材木は町の復興に使われる材木である。材木工場は、ギルドからの発注により潤いその売り上げの一部が、グンダスに流れるかたちにしたのである。
しかし、商人が逮捕され間一髪のところで、税金がグンダスの所に流れる事は阻止されたのである。今回は未遂に終わった事で、材木工場は注意勧告を受け、ラトーラ支部のギルドマスターは平に降格、雑務作業に回されたのだった。
そして、グンダスと商人は罪に問われた。
「こんな馬鹿なことがあるかぁ!儂が何をやった?」
「静粛に!グンダス、貴方は自分の私利私欲を満たす為、子供を想う親の気持ちを利用し、何組もの家族を奴隷に落としたことは許されぬ事だ!そんな事も分からないのか?」
「そういうのは騙される方が悪いのだ!そもそも、平民の分際で教育など受けても意味はない!そうやってしゃしゃり出るから騙されるのだ!平民は平民らしく貴族の為に黙って働いていたら、奴隷に堕ちず済んだのだ!」
「静粛に!貴方の言われる事は色々とおかしい!このFreedom国には貴族も平民もいない!貴方を含めた全員が同じ立場である」
「馬鹿な事を言うでない!ワシは元貴族で平民と同じ訳!」
「たしかに、もうすぐ同じ立場ではなくなる!それはあっている」
「そうであろう!だったら!」
「あなたは、何の罪もない家族達を奴隷に落とした罪を償わないといけない!」
「な、なんだと……」
「グンダス!判決を言い渡す!罪状、学校経営というFreedom国の事業に対する迷惑行為。および、詐欺行為で何人もの家庭を奴隷に落とし、またギルドへの贈賄等の罪により第一級犯罪奴隷と処す!」
これは、犯罪奴隷の中でも最も罪が重く、奴隷商人に売られることは無くダンジョンや鉱山に、直接送られる奴隷の事である。つまり、死ぬまで強制労働を強いられる奴隷の事である。
「何で、儂が……」
「貴方は先ほど言いましたね。何で国民と同じ立場なんだと?確かに同じ立場ではなくなりました。国民より下の立場になりましたけど、何か最後に伝えたい事はありますか?」
「何故、ワシが第一級犯罪奴隷なんだ!元貴族なら特別奴隷であろう!」
「その問いに答えましょう。それはこの国には貴族がいないからです!つまり、国民の立場であるあなたにはそういった今までのような優遇処置などありえません!」
「なっ⁉」
「以上です!その者を犯罪奴隷に落とし、3日後ジーフマウン鉱山へ送還しろ!」
「「「「「はっ!」」」」」
「待てぇ~~~~~!儂を誰だと思っておる!手を離せえぇ!」
「五月蠅い‼判決は下った!大人しくしろ!」
グンダスは、抵抗むなしく兵士達に引きずられて、牢屋に入れられてしまったのだ。そして、グンダスの財産は全て没収。グンダスの家族もまた路頭に迷う事になった。その、財産の一部は学校建設をした生産者達に支給された事は言うまでもなかった。
そして、生産者達には安全に商売したいのなら、ギルドをちゃんと利用する様に忠告したのである。
一方グンダスの家族は、このままでは生活が出来ないので、Freedom国に難民申請を申告し、国の援助を受けることにした。
そして、グンダスの妻と子供達は父の教訓を受け、自分達は貴族ではもうないと思う事にしたのだった。グンダスを反面教師にして自分達は、国民として生きていくことにしたのである。
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