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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

80話 帝国の後始末

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 皇帝陛下達は、ケンジの言葉にガックリ項垂れた。そして、皇帝は意を決したように真剣な目をしてケンジに語り掛けたのだった。

「ケンジ殿!この通りだ。先ほど言われたように、この国には貴族制度がないのは分かった。我々は、貴族位を捨てる!だから頼む……帝国を吸収してほしい」

「「「「皇帝!本当にそれでよろしいのですか?」」」」

 皇帝の言葉に、重鎮たちは大きな声を上げて皇帝を止めようとした。

「これしかもう、帝国が救われる手はないだろう!」

「しかし、皇帝の位を剥奪となれば、皇帝は一生表舞台には上がれなくなるのですぞ?」

 公爵が皇帝を諫めたのだった。公爵が皇帝を止めたのは当たり前だった。皇帝の位を剥奪され、平民と同じ立場となればもう2度と権力を掴む事はできなくなり、そればかりかFreedomの監視下に置かれ、どこか田舎の町に幽閉されるのが普通なのだ。

「本当に、貴族の位を捨てるんだな?」

「はい……」

「その言葉に嘘偽りはないな?あんたを信じるから裏切るなよ?」

「分かっています。この状況で嘘など言いません……」

「分かった!帝国の吸収を認めよう!今ある帝国の領土は今より、Freedom国領とする」

「ケンジ様、本当によろしいのですか?」

「ムシュダルクさん、苦労を掛けるがよろしく頼むよ。ボーダン・アスティア、お前達もよく我慢してくれた。これからもよろしく頼むぞ」

「「「わかりました」」」

 皇帝陛下はこれでもう、表舞台には上がれないと思い、只心身ともに脱力感だけが残り、公爵達はこれで救われたと思い安堵していた。
 しかし、マードンだけはケンジの代わり様に疑問を持ち、険しい顔つきだった。

 ケンジはさっそく、帝国が滅亡しFreedom国領になる手続きを交わす事にした。
 今、帝国領は地球で言う広島岡山鳥取島根県の4県ほどの領地を治めていて、山口県はドワーフ国がすでに開拓をし始めていた。
 兵庫県神戸市の辺りにあったブリュンガスの町は撤退していた為、今はFreedom支店を置き、Freedom国領になっていた。
 つまり、この吸収合併でFreedom国領は広島県から兵庫県までと、京都福井滋賀岐阜長野静岡と、元聖教国が治めていた関東一円の領地を治める大陸最大の大国とあったのである。

 これにはドワーフとエルフ国が驚いたのである。帝国が衰退し攻め落とす事が出来ると思っていたのに、いきなりの吸収合併により大陸一の強国となったのである。

 ケンジは、早速ドワーフ国との勢力間に、7mもの城壁を築いてしまったのである。これは、静岡県の辺りに常設した魔の森から街道を守る城壁と同じものであり、1ヶ月も経たず広島と山口県の県境に高く長くそびえる城壁に、ドワーフ国は驚愕することになる。
 そして、エルフの国があるのは四国である。島国とされているエルフの国は大陸に移る時、海の距離が少ない場所を選び船で移動する為、ケンジはその場所をピックアップして、瀬戸内海沿いにいくつか衛兵を常駐する兵舎を設置したのだった。

 これらの兵士達は、当然だが帝国騎士のドラグーン騎士団である。そして、ドラグーン騎士団も又鳳凰騎士団への入隊試験を受けた所、見込みのある騎士は隊長クラス以上の人間であった。

「馬鹿な……私達が兵卒だと?」

「こういっては何だが、鳳凰騎士団の3軍と同レベルでは致し方ないだろ?君達はまだ見込みはあるから頑張ってくれ!」

 ドラグーン騎士団の隊長クラス以上の人間達は、試験結果に何も言う事ができなかった。そして、街道沿いの兵舎の常駐することになり、何かあった時街道沿いにある兵舎から転移マットですぐに知らせを入れることが仕事の一つになった。

 これには、ドワーフ族同様に、エルフ族も驚愕したのだった。大陸に上陸しようとしたら、衛兵がすぐに集まってきて警戒モードに入った。

 エルフ達が、いつも上陸する場所には何キロかにわたり城壁が出来上がっていて、勝手に上陸できない様になっていた。船着き場には、城門が出来上がっていて、見張りの兵士が常時立っていた。

 エルフ族はこの情報を持ち帰り、Freedom国だけは敵にまわすことはできないと思って、帝国の事はあったが諦めるしかなかった。

 そして、Freedom国内では、帝国貴族達の事が問題に上がっていた。

「ケンジ様、私達は何をしたらよろしいですか?」

 宰相や公爵達、元貴族達はFreedomの内政をやるつもりだったことにケンジは驚きを隠せなかった。

「何をやったらって、君達は一般市民となったから各自生活をしてくれたらいいよ?俺からは、何も言うつもりはないし、自由に生活してくれたらいいよ」

「「「「「はぁあ?」」」」」
「わし等は、帝国の内政をしてきた人間だぞ?」

「それがどうかしたのか?」

 ケンジは、帝国貴族を内政には関わらせたくない為、すっとぼけた回答をわざとした。

「わし等の力はいらないというのか?」

「ああ!そういう事か。もし、この国の内政を手伝いたいというのなら、来年募集するときに、受けてくれたらいいよ。その時に、貴方達を採用するかどうか面接で見極めるから」

「何を言っておる!面接も何もないだろうが!ワシ等は、今まで帝国の内政を担ってきた者達だぞ?」

「だが、その結果帝国を滅亡させた実績があるじゃないか?」

「「「「「なっ⁉」」」」」

「そんな人間を、この場で俺が雇うつもりはないよ?それに、今年内政の募集をかけたときの人材がいっぱいいるからな」

「馬鹿な!そんな若造より、わしらような経験豊富な人材が大切であろう!」

「申し訳ないが、この国は他の国のような常識が通じない事は元宰相さんも分かっているだろ?」

「うっ……」

「こういっては何だが、頭の固い人間より、若くて臨機応変に動ける人間の方がこの国には必要なんだよ」

「では、来年の募集で受けたら問題はないと申すのだな?」

「ああ!それは問題はないがお勧めはしないよ」

「何故じゃ!」

「貴方達は、無駄にプライドが高すぎるからだよ。貴方達はもう引退して、老後をこの国でゆっくりした方がいいと提案する」

「何だと!まだ老後なんて早いわ!」

「気に障ったなら謝るよ。だけど俺の意見を聞いてくれ。来年募集に受かったとする」

「ああ!そんなの当然じゃ!ワシ等は経験豊富だからな」

「だが、あんた達にそれを全うできるかが心配なんだよ」

「何を言っておる!」

「いいかい?貴方達は来年入る新人になるんだよ?今年入った人間の後輩にあたるんだ?二十歳そこそこの若造から指示を出され、命令に従わなきゃいけないんだよ?本当にそれに耐えられるのか?」

「ば、馬鹿な……」

「いやいや……そんないきなり、ムシュダルクさんと肩を並べて、同じ地位に就けるわけないだろ?」

「わし等は!」

「うん!帝国で中枢をになって来た人間だろ?そんな過去の栄光に縋っても意味ないだろ?帝国はもうなくなったんだよ?」

「ぐううう……」

「まあ、来年募集に対して応募するのは自由だが、そのあたりの事もちゃんとよく考えた方がいいと思うよ」

「そんな事、了承出来る訳なかろう!普通は、他の国が合併されてもその国の中枢を担っていた者は、貴族として取り上げられるものなんだぞ!」

「だから言ってただろ?この国には貴族制度はないと!貴方達はもう貴族ではなく、国民と言う立場だ」

「むぐぐぐ!」

「そんな事も分からないようでは、来年の募集には絶対受からないぞ」

「なんだと!」

「いいかい?貴方達は帝国を滅亡に導いた中枢を担っていた者達だと、自覚した方がいい!それに、先ほどから経験がと言っているようだが、滅亡に導いた経験は、はっきり言っていらないから、他の理由を用意しておいた方がいいよ」

 ケンジは、元帝国貴族達を、今のままだったら使えないからと言って、はっきり拒絶したのだった。

「じゃあ、わしらはこの国で何をしたら……」

「俺に言われても、そんなの知らないよ……今までの貯金があるだろ?それで、余生を過ごす事をお勧めするよ。また、一から出直すというのなら、それもあなたの人生だ。来年の募集に申し込みしたらいいと思うよ」

 ケンジの言葉を聞き、元宰相や元公爵達は肩を落として、その場にたたずむのだった。

 そして、ケンジは早急に帝国領の町を統合し、大きな町に元帝国民を移住させたのである。これは、聖教国の時と同じく大きな町に住民を移住させて、中規模以下の町を捨てる案である。
 しかし、元帝国領の国民はFreedom国になる事で、生活援助を受けられることになり、生活の目処が立てられることになった。
 行商もまた、Freedom国内なら転移マットのおかげで、安全に行商が出来るようになっていた。Freedom国民は、帝国が滅亡し吸収合併した事で、広島県から関東圏まで一瞬で旅が出来るようになったのだ。



 ケンジが元帝国領の中国地方を完全に治めるのに、1年半の時間を要することになる。これには、ギルドが頭を抱える事になった。まさかの、出来事だったからだ。聖教国に続き、帝国が滅亡した事は大陸中に激震が走ったのだ。
 それと同時に、帝国領の中規模以下の町の住民が一斉にいなくなり、大規模の町だけとなった。そして、町に展開していたギルドは撤退する他なかったのである。

「どうなっているのだ?状況がまったくつかめんじゃないか……」

 ギルド本部は、魔人族が治める東北地方にその拠点を移していたので、中国地方の帝国領の情報をつかむのに時間を要する為、撤退をした事情報が2週間ほど遅れる事になっていた。

「ギルドマスター。帝国領の土地はあまりに遠くて手紙が届くのに2週間はかかります」

「もっと早く出来ぬのか?」

「これでも、テイマーの鳥を使っての輸送なのでこれ以上は……」

「ムぐぐぐ……」

「まさか、Freedom国が帝国までも吸収合併するとは思いもしなかったわ!」

「まさか、王国まで吸収などせぬよな?」

「ギルドマスター、何を言っておられるのですか?仮にも王国ですよ。そんなわけないじゃありませんか」

「だが、アーチェ、モーリスよく考えてみろ。あの帝国が滅亡したのだぞ?王国支部のギルドに連絡を取れ!今すぐにだ!」

「「はい!」」

 ギルドマスターはここにきて嫌な予感がした。もし王国まで滅亡したら、ギルド自体崩壊してもおかしくないのである。
 ギルドは、町の結界の仕事を国から請け負っているからだ。ここで、王国領の町も全てなくなってしまえば、ギルドの売り上げの50%~60%がなくなってもおかしくないのである。
 今のうちに、対策を立てなければどうにもならなくなるのは明らかであり、ギルドマスターは、アーチェ達に連絡を急がせるのだった。


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