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第10章 Freedom国、経済の中心へ!
75話 奴隷解放に向けて
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Freedom国領に、新生闇ギルドが入り込んでいたという事実が発覚して、1年という時間が過ぎていた。ケンジは、自分しかできない事以外は、極力その担当に任せていた。
そして、この1年間で元貴族達は自分の私腹を肥やす為に、闇ギルドを利用しまくっていた事が分かった。
自分の店を持ち、従業員を不当に働かせるのは当たり前で、それに耐えられなくなった従業員は辞職したいと願うが、それが叶うことは無く辞職したいのであれば、迷惑料として到底払えない金額を提示する。
ギルドに提示しようとした人間もいたが、そういう人間は闇ギルドに依頼するぞと脅されて身動きが出来なくなったりしていた。
それでも動いた人間は闇ギルドに誘拐され、奴隷として売られて迷惑金として搾取されたりしていた。
また、ある店では材木を一手に担おうして、勢力を伸ばそうとして、ライバル商会の代表を闇ギルドに依頼し暗殺しその町の材木を独占し、その町の材木の値段をつり上げて私腹を肥やしたりしていた。
これらの事が気づけなかったのは、ケンジのせいでもあった。ケンジがあれもこれもと手を出した結果、目が届かない事になり、元貴族達はやりたい放題だったのは言うまでもなかった。
「あなた……これが貴方のやってきた事よ?」
「ああ……」
「だから、そんな焦るなと言ったのよ!」
「悪かったよ……まさかここまでの事になるとは……」
「あれもこれもと手を出すから、目が届かなくなるのよ!あたし達はずっと言い続けていたでしょ?」
「ああ……悪かった……」
「マイ様、どうかその辺で……ケンジ様も反省していますし、一年前ジョン一家の件で、新生闇ギルドの存在が明るみに出て、ケンジ様のスキルで、ドンドン壊滅に追いやっていることも事実です」
「それはそうだけど……」
「それに、闇ギルドに依頼した元貴族の存在です。闇ギルドを壊滅する事で、芋づる式に元貴族達も処刑されているのも事実であります」
「それは確かにいいことだけど、これら犠牲になった人達は本来犠牲にならなくても良かったのよ!」
「それはそうなのかもしれませんが、それを今責めても何にもなりますまい!それに、良い情報も入って来ているのです」
「いい情報とは何だ?」
ケンジは、ムシュダルクの良い情報に飛びついた。
「実はですね。この国から出国願いが出されているのですよ!」
ムシュダルクは、嬉しそうに笑顔で答えたのだった。
「何がいい情報なのよ!」
「そうだ!それのなにが!」
「いえいえ……そうではないのです!」
「何が違うんだよ!」
「出国願いが出されているのは、元貴族の人間ばかりなのです!」
「そ、それは本当か⁉」
「でも、一部なのでしょ?」
「マイ様、その一部だからいいのでございますよ」
「どういう事?」
「その出国願いを、出した元貴族達は後ろめたいことがあるという事ですよ。つまり、ケンジ様は不正をする人間には容赦なく罰します。それも、貴族法等用いず犯罪者はみんな一律に罰せられます」
「た、確かに……」
「だけど、出国願いの出さない元貴族もいるんでしょ?」
「確かにいますが、その方達は余程自分には関係ないと思っているか、大半はそういった不正をしていない元貴族達と考えられるでしょう」
「な、なるほど!やましい事がない元貴族達だけが、Freedom国に留まって来たという事か?」
「そういう事です!」
「でも、ここにきてなんでそういう事になってきているの?」
「それは当然ですよ!今まで闇ギルドを、ここまであっさりと摘発し続ける国がありましたか?元貴族達の強みである闇ギルドドンドンなくなり、その結果、自分達まで罰せられるなんてたまったもんじゃないかと思いますよ」
「だから、出国して住みにくい王国や帝国に戻ったという訳?」
「私腹を肥やした結果、処刑されたら元も子もないと考えたのでしょう」
「な、なるほど……」
この事が、王国と帝国の存亡の危機となったのはいうまでもなかった。王国や帝国も又、人材が不足している所に元貴族達が、横領や脱税などやりたい放題とドンドン衰退していくことになった。
Freedom国は、貴族という人間を排除することができた。元貴族の人間も又、この国では今までのような常識は通じないが、この国のルールに乗っ取り生活すれば、こんなに生活しやすい国はないという事が分かった。
そして、今だ不正をする元貴族や闇ギルドは存在するものの、大半の国民達はこのルールを受け入れ始めていた。
そんな中、ケンジは隷属の首輪の解析がなんとか目途がたったのだ。
「よし!これなら上手く行くかもしれないな……と、いうか賢者の石以外ではこれしかないな……」
とうとう、ケンジは隷属の首輪の解析をやり始めて、1年以上の月日が経っていた。ケンジは、一日の仕事が終わった後ジョン一家を呼び出した。隷属の首輪の解析が終わった事は、屋敷中に知れ渡り奴隷達は訓練場に集まり、ケンジの研究の成果を、固唾をのんで見ていたのである。
「ジョン、君達一家は1年前に、バンチェス元貴族一家に嵌められ奴隷に堕ちた」
「は、はい……」
「俺はそういう人達を救いたいと思い、隷属の首輪の仕組みを研究してきたんだ。奴隷からの解放を望む、君達家族をその研究を証明させてもらってもいいかな?」
ケンジのセリフに、訓練場に集まった奴隷達は騒めき立った。ケンジのやる事なので失敗は無いとは思うが、奴隷からの解放で奴隷紋の跡が残らないようにするのは、これまで、どんなことをしても自然に消えるまで、対処のしようがなかったからだ。
「あの、主様……もし仮に、失敗した場合どうなるのでしょうか?」
「まず、失敗の心配はいらないと思うが、もし失敗した場合もう一度、俺が責任を持って隷属の首輪で奴隷にもどしてあげるよ」
それを聞き、ジョンはホッとため息をついた。
「では、まず私からお願いします!元妻やマリには、余計な負担はかけたくありません」
ジョンは、一家の大黒柱であり進んで志願をした。
「まずこれを渡しておくから、解放された後このポーションを飲んでくれ」
「これはいったい何のポーションですか?」
「リターンポーションだよ!一応2歳若返るように2本渡しておく」
ケンジの説明に、周りにいた人達は更に騒めいた。これには、ムシュダルクも驚き奴隷に使用させるのを止めたのである。
「ケ、ケンジ様!そんな貴重なポーションを、奴隷に使う事はおやめください!」
「これしか、もう奴隷からの解放は無理だと分かったんだよ」
この説明には、ムシュダルクもそうだがマイも驚いたのだった。
「あなた、どういう事よ?」
「前に、この隷属の首輪の効果の説明をしたよな?」
「たしか、その人間の魂に直接効果を及ぼし、寿命を延ばすとか言ってましたよね?」
「ああ、そうだ!そのエネルギーに、その人間のカリスマ性を吸い取っているともな」
「それで、何でリターンポーションを使うのよ?」
「だからこそ、このリターンポーションが役に立つんだよ」
「意味が分からないわ!ちゃんと説明してよ」
「今の段階で、奴隷紋を消去できるのは賢者の石だけだ。これは、何でも願いを叶えるとして、強引に奴隷紋のその効果を消す事にある」
「それはわかるわ」
「しかし、このリターンポーションは肉体や魂の時間を遡り、その人間にあった事が無かったにする効果なんだよ。つまり、隷属の首輪を嵌められていなかった時に戻すという事なんだよ」
「ってことは?」
「ここで奴隷を解放させ、その時にリターンポーションを飲めば、肉体は隷属の首輪を嵌められる以前の状態に戻るという事だ。最初から嵌められていなかったんだから、奴隷紋は消えるという事だよ」
「そ、それは凄い!」
「ただ、これにはデメリットもあるかもしれないんだ」
「どういうこと?」
「ジョンが奴隷に堕ちて、ここで培った細工のスキル値が、1年前の数値に戻る可能性があるって事だよ」
「な、なるほど……確かに若返るという事は、スキルが元に戻ってもおかしくはないですね」
「だが、奴隷紋は消えてジョン達は一年前のように家族に戻り、自分達で生活していけるようになるのは大きいはずだよ?」
「あの……主様、ちょっとよろしいですか?」
「ジョン、なんだ?不安な事がまだあるのか?」
「いえ……不安とかではないのですが……そのポーションって、エリクサーより高価なのですよね?そんなポーションを、私に2本も使うとなるといくらになるのですか?」
「ケンジ様!そこですよ。私の心配しているところは、エリクサーはFreedom店でも年間定期的に数本、販売していますが、億を超える値段なのですよ?」
それを聞き、ジョン家族は血の気が引いた。仮に奴隷紋が消え、家族に戻れても借金まみれとなり、普通の暮らしなんてできないからだ。
「おいおい!ムシュダルクさん、何を言ってんだよ」
「何をって……リターンポーションだなんて今までになかったアイテムですよ?人類の夢の一つで若返ることが出来るのですよ?1本10億ドゴンでも、貴族達なら買い求めるでしょう!」
「「「10億ドゴン⁉」」」
ジョン一家は、思わず大きな声を出してしまった。値段を聞き大声を出すのは当たり前である。この世界では一ヵ月で1家4人が普通に暮らせる金額が10万ドゴンあれば十分に食べていけるからだ。ジョンは、3人が家族に戻れるのにリターンポーションが6本いる事で目をまわしたのである。
「10億ドゴンだってよ……」
「そんなんじゃ俺達も無理だよな……」
「期待したんだが、やっぱり無理か……」
「平民に戻っても借金が10億だと、身動きが出来なくなるだけだもんな」
訓練場に集まっていた奴隷達も、これでは無理だと諦めるしかなかった。
「ムシュダルクさん。ちょっといいですか?」
「なんですか?」
「1本10億ドゴンでも売れるとは言っても、売る側としてはこのポーションの価値は言い値なんだよ」
「そりゃそうですよ!私が言った10億は最低値です」
「って事は、このポーションは売れるもんじゃないって事だよ。だったら、このポーションは俺の家族に使っても何の問題はないはずだろ?」
「まさか、ケンジ様はこのポーションをタダで使うつもりですか?」
「まあ、タダではないが1本50万ドゴンなら生活しながらでも返済は可能じゃないか?」
「はぁあ⁉リターンポーションが、1本50万にするつもりですか?」
「どうせ売る事も出来ないんだし、犠牲になった家族に使うだけだよ。それにお金を儲けるのはFreedom店だけでも充分だよ」
「ケンジ様がそう言うのならば……」
そして、とうとうFreedom国では、本格的に奴隷のいない国へと進もうとしていた。
そして、この1年間で元貴族達は自分の私腹を肥やす為に、闇ギルドを利用しまくっていた事が分かった。
自分の店を持ち、従業員を不当に働かせるのは当たり前で、それに耐えられなくなった従業員は辞職したいと願うが、それが叶うことは無く辞職したいのであれば、迷惑料として到底払えない金額を提示する。
ギルドに提示しようとした人間もいたが、そういう人間は闇ギルドに依頼するぞと脅されて身動きが出来なくなったりしていた。
それでも動いた人間は闇ギルドに誘拐され、奴隷として売られて迷惑金として搾取されたりしていた。
また、ある店では材木を一手に担おうして、勢力を伸ばそうとして、ライバル商会の代表を闇ギルドに依頼し暗殺しその町の材木を独占し、その町の材木の値段をつり上げて私腹を肥やしたりしていた。
これらの事が気づけなかったのは、ケンジのせいでもあった。ケンジがあれもこれもと手を出した結果、目が届かない事になり、元貴族達はやりたい放題だったのは言うまでもなかった。
「あなた……これが貴方のやってきた事よ?」
「ああ……」
「だから、そんな焦るなと言ったのよ!」
「悪かったよ……まさかここまでの事になるとは……」
「あれもこれもと手を出すから、目が届かなくなるのよ!あたし達はずっと言い続けていたでしょ?」
「ああ……悪かった……」
「マイ様、どうかその辺で……ケンジ様も反省していますし、一年前ジョン一家の件で、新生闇ギルドの存在が明るみに出て、ケンジ様のスキルで、ドンドン壊滅に追いやっていることも事実です」
「それはそうだけど……」
「それに、闇ギルドに依頼した元貴族の存在です。闇ギルドを壊滅する事で、芋づる式に元貴族達も処刑されているのも事実であります」
「それは確かにいいことだけど、これら犠牲になった人達は本来犠牲にならなくても良かったのよ!」
「それはそうなのかもしれませんが、それを今責めても何にもなりますまい!それに、良い情報も入って来ているのです」
「いい情報とは何だ?」
ケンジは、ムシュダルクの良い情報に飛びついた。
「実はですね。この国から出国願いが出されているのですよ!」
ムシュダルクは、嬉しそうに笑顔で答えたのだった。
「何がいい情報なのよ!」
「そうだ!それのなにが!」
「いえいえ……そうではないのです!」
「何が違うんだよ!」
「出国願いが出されているのは、元貴族の人間ばかりなのです!」
「そ、それは本当か⁉」
「でも、一部なのでしょ?」
「マイ様、その一部だからいいのでございますよ」
「どういう事?」
「その出国願いを、出した元貴族達は後ろめたいことがあるという事ですよ。つまり、ケンジ様は不正をする人間には容赦なく罰します。それも、貴族法等用いず犯罪者はみんな一律に罰せられます」
「た、確かに……」
「だけど、出国願いの出さない元貴族もいるんでしょ?」
「確かにいますが、その方達は余程自分には関係ないと思っているか、大半はそういった不正をしていない元貴族達と考えられるでしょう」
「な、なるほど!やましい事がない元貴族達だけが、Freedom国に留まって来たという事か?」
「そういう事です!」
「でも、ここにきてなんでそういう事になってきているの?」
「それは当然ですよ!今まで闇ギルドを、ここまであっさりと摘発し続ける国がありましたか?元貴族達の強みである闇ギルドドンドンなくなり、その結果、自分達まで罰せられるなんてたまったもんじゃないかと思いますよ」
「だから、出国して住みにくい王国や帝国に戻ったという訳?」
「私腹を肥やした結果、処刑されたら元も子もないと考えたのでしょう」
「な、なるほど……」
この事が、王国と帝国の存亡の危機となったのはいうまでもなかった。王国や帝国も又、人材が不足している所に元貴族達が、横領や脱税などやりたい放題とドンドン衰退していくことになった。
Freedom国は、貴族という人間を排除することができた。元貴族の人間も又、この国では今までのような常識は通じないが、この国のルールに乗っ取り生活すれば、こんなに生活しやすい国はないという事が分かった。
そして、今だ不正をする元貴族や闇ギルドは存在するものの、大半の国民達はこのルールを受け入れ始めていた。
そんな中、ケンジは隷属の首輪の解析がなんとか目途がたったのだ。
「よし!これなら上手く行くかもしれないな……と、いうか賢者の石以外ではこれしかないな……」
とうとう、ケンジは隷属の首輪の解析をやり始めて、1年以上の月日が経っていた。ケンジは、一日の仕事が終わった後ジョン一家を呼び出した。隷属の首輪の解析が終わった事は、屋敷中に知れ渡り奴隷達は訓練場に集まり、ケンジの研究の成果を、固唾をのんで見ていたのである。
「ジョン、君達一家は1年前に、バンチェス元貴族一家に嵌められ奴隷に堕ちた」
「は、はい……」
「俺はそういう人達を救いたいと思い、隷属の首輪の仕組みを研究してきたんだ。奴隷からの解放を望む、君達家族をその研究を証明させてもらってもいいかな?」
ケンジのセリフに、訓練場に集まった奴隷達は騒めき立った。ケンジのやる事なので失敗は無いとは思うが、奴隷からの解放で奴隷紋の跡が残らないようにするのは、これまで、どんなことをしても自然に消えるまで、対処のしようがなかったからだ。
「あの、主様……もし仮に、失敗した場合どうなるのでしょうか?」
「まず、失敗の心配はいらないと思うが、もし失敗した場合もう一度、俺が責任を持って隷属の首輪で奴隷にもどしてあげるよ」
それを聞き、ジョンはホッとため息をついた。
「では、まず私からお願いします!元妻やマリには、余計な負担はかけたくありません」
ジョンは、一家の大黒柱であり進んで志願をした。
「まずこれを渡しておくから、解放された後このポーションを飲んでくれ」
「これはいったい何のポーションですか?」
「リターンポーションだよ!一応2歳若返るように2本渡しておく」
ケンジの説明に、周りにいた人達は更に騒めいた。これには、ムシュダルクも驚き奴隷に使用させるのを止めたのである。
「ケ、ケンジ様!そんな貴重なポーションを、奴隷に使う事はおやめください!」
「これしか、もう奴隷からの解放は無理だと分かったんだよ」
この説明には、ムシュダルクもそうだがマイも驚いたのだった。
「あなた、どういう事よ?」
「前に、この隷属の首輪の効果の説明をしたよな?」
「たしか、その人間の魂に直接効果を及ぼし、寿命を延ばすとか言ってましたよね?」
「ああ、そうだ!そのエネルギーに、その人間のカリスマ性を吸い取っているともな」
「それで、何でリターンポーションを使うのよ?」
「だからこそ、このリターンポーションが役に立つんだよ」
「意味が分からないわ!ちゃんと説明してよ」
「今の段階で、奴隷紋を消去できるのは賢者の石だけだ。これは、何でも願いを叶えるとして、強引に奴隷紋のその効果を消す事にある」
「それはわかるわ」
「しかし、このリターンポーションは肉体や魂の時間を遡り、その人間にあった事が無かったにする効果なんだよ。つまり、隷属の首輪を嵌められていなかった時に戻すという事なんだよ」
「ってことは?」
「ここで奴隷を解放させ、その時にリターンポーションを飲めば、肉体は隷属の首輪を嵌められる以前の状態に戻るという事だ。最初から嵌められていなかったんだから、奴隷紋は消えるという事だよ」
「そ、それは凄い!」
「ただ、これにはデメリットもあるかもしれないんだ」
「どういうこと?」
「ジョンが奴隷に堕ちて、ここで培った細工のスキル値が、1年前の数値に戻る可能性があるって事だよ」
「な、なるほど……確かに若返るという事は、スキルが元に戻ってもおかしくはないですね」
「だが、奴隷紋は消えてジョン達は一年前のように家族に戻り、自分達で生活していけるようになるのは大きいはずだよ?」
「あの……主様、ちょっとよろしいですか?」
「ジョン、なんだ?不安な事がまだあるのか?」
「いえ……不安とかではないのですが……そのポーションって、エリクサーより高価なのですよね?そんなポーションを、私に2本も使うとなるといくらになるのですか?」
「ケンジ様!そこですよ。私の心配しているところは、エリクサーはFreedom店でも年間定期的に数本、販売していますが、億を超える値段なのですよ?」
それを聞き、ジョン家族は血の気が引いた。仮に奴隷紋が消え、家族に戻れても借金まみれとなり、普通の暮らしなんてできないからだ。
「おいおい!ムシュダルクさん、何を言ってんだよ」
「何をって……リターンポーションだなんて今までになかったアイテムですよ?人類の夢の一つで若返ることが出来るのですよ?1本10億ドゴンでも、貴族達なら買い求めるでしょう!」
「「「10億ドゴン⁉」」」
ジョン一家は、思わず大きな声を出してしまった。値段を聞き大声を出すのは当たり前である。この世界では一ヵ月で1家4人が普通に暮らせる金額が10万ドゴンあれば十分に食べていけるからだ。ジョンは、3人が家族に戻れるのにリターンポーションが6本いる事で目をまわしたのである。
「10億ドゴンだってよ……」
「そんなんじゃ俺達も無理だよな……」
「期待したんだが、やっぱり無理か……」
「平民に戻っても借金が10億だと、身動きが出来なくなるだけだもんな」
訓練場に集まっていた奴隷達も、これでは無理だと諦めるしかなかった。
「ムシュダルクさん。ちょっといいですか?」
「なんですか?」
「1本10億ドゴンでも売れるとは言っても、売る側としてはこのポーションの価値は言い値なんだよ」
「そりゃそうですよ!私が言った10億は最低値です」
「って事は、このポーションは売れるもんじゃないって事だよ。だったら、このポーションは俺の家族に使っても何の問題はないはずだろ?」
「まさか、ケンジ様はこのポーションをタダで使うつもりですか?」
「まあ、タダではないが1本50万ドゴンなら生活しながらでも返済は可能じゃないか?」
「はぁあ⁉リターンポーションが、1本50万にするつもりですか?」
「どうせ売る事も出来ないんだし、犠牲になった家族に使うだけだよ。それにお金を儲けるのはFreedom店だけでも充分だよ」
「ケンジ様がそう言うのならば……」
そして、とうとうFreedom国では、本格的に奴隷のいない国へと進もうとしていた。
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